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比較レビュー:本当に使えるヘッドランプがお店で見ても分からないので点け比べてみた 2017

前ページでは比較したモデルのランキングと、評価・スペックの一覧、そしてそれに基づくおすすめを紹介しました。ここからはその評価について、どのような基準で評価したのか、なぜそのような評価になったのかについて解説していきます。

各項目詳細レビュー

遠距離(トレイル)照射

ここでは主にトレッキングやトレイルランでの夜間行動中に前方を照らすために必要な性能を比較しています。

ライトを照らすことで真昼に近くなればなるほどより快適(見やすい)わけですから、光は遠くに届けば届くほど良い。ただしそれには限度がありますから、ヘッドランプは限られた光をライトの周囲にある反射板によって集約することで、できる限り光を遠くに届かせようとします。するとどうしても光の照射範囲は絞られてしまう。遠距離照射では光のパワーだけでなく、このバランスが非常に大切といえます。なお、「照射距離」そもそも何よって人は、以前書いた「ヘッドランプの選び方」に詳しく書いていますので参考までに。

実際に照らしてみると大きく違う、暗い夜道での歩きやすさ、走りやすさ

まずは各モデルが公表しているスペックから、遠距離モード最大出力での光の強さと照射距離を比べてみます(下表)。

アイテムBlack Diamond スポットBlack Diamond リボルトBlack Diamond スプリンターmilestone MS-B3PETZL ティカPETZL リアクティックプラスPETZL NAO+モンベル パワーヘッドランプGENTOS GT-105RLEDLENSER SEO7R
カタログ最大光量(lm)300300200160200300750160320220
カタログ照射距離(m)808050706011014011054130

PETZL NAO+は別格に光量・照射距離ともに高いことが見てとれます。そしておもしろいことに300前後のモデルでも照射距離が100mに満たないモデルもあれば、200前後にもかかわらず100mを超えているモデルもあるということにあれっと思った方は鋭い。

この各モデル毎の微妙な違いが実際に光を点け比べてみた時どのように現れるのか?次に全モデルを最も照射距離が出る設定で約2m離れた壁に照射してみた写真を見てください。

アイテムBlack Diamond スポットBlack Diamond リボルトBlack Diamond スプリンターmilestone MS-B3PETZL ティカPETZL リアクティックプラスPETZL NAO+モンベル パワーヘッドランプGENTOS GT-105RLEDLENSER SEO7R
照射範囲写真

まずPETZL NAO+はやはり光の強さも照射範囲の大きさもスゴイ。そしてそれに次いでなかなか優秀と感じられたのがBlack Diamond リボルトPETZL リアクティックプラス、次点でBlack Diamond スポット。これらは前方の目盛りが消えてしまうくらい強い光を相当大きな範囲照らしてくれているのが分かります。それ以外のモデルは中心付近の光量はあるものの広がりが弱いとか、広がってしまって中心付近が弱いとか、そうした何かしらの難点がありました。

今回興味深かったのはLEDLENSER SEO7Rです。SEO7Rは光の照射範囲を手動で調節でき、上の写真は光が最も遠距離まで届くスポットモードにした状態ですが、最大光量は220とこのなかでは中程度にもかかわらず、光が照らされている部分はNAO+に負けないくらい強い、つまり照射距離的には非常に高評価をあげていい。

一見これで遠距離照射的には高く評価しても良さそうですが、ただ一方SEO7Rは見て分かるとおり照らされている範囲は縁までフラットに強い光が広がっていますが、その照射範囲自体が他と比べて極端に狭く、縁の明暗差が激しい。このあたりの特徴は実際のトレイルでどのように見えるのか、知りたいですよね。ということで、今度はこの違いが実際の夜道でどう影響するのか、夜の高尾山でトレイルを歩いてみた比較動画がありますので、こちらを見てみましょう(下写真)。

アイテムBlack Diamond スポットBlack Diamond リボルトBlack Diamond スプリンターmilestone MS-B3PETZL ティカPETZL リアクティックプラスPETZL NAO+モンベル パワーヘッドランプGENTOS GT-105RLEDLENSER SEO7R
屋外照射写真

※静止画は別の場所で一本道を撮影した写真になります。なお写真ではかなり暗く見えているとしても、人間の視覚は無意識のうちに暗さに対応していくため、暗いと思われるライトも実際には写真よりもかなり明るく見えていくということはご注意ください。

例によってNAO+は別格として、PETZL リアクティックプラス(動画1:18あたり)は近距離・遠距離がミックスされ、なおかつ中心から下半分に台形状に広がった光が足元までしっかり明るく照らしてくれていて歩きやすさでは頭ひとつ抜きん出ていました。またBlack Diamond リボルトも表示スペックのわりには遠く・広く光が届いており、光の縁周辺の滑らかさも見やすくて快適でした。一方でLEDLENSER SEO7R(動画2:19あたり)ですが、中心付近は非常に奥まで照らされているもののいかんせん範囲が狭すぎる。道標や分岐などを見逃せないトレイルでこの照射範囲では、前方に影なのか縁なのか見分けがつきにくい部分が常にあり、ストレスが溜まります。このスポットモードを使用するのは現実的ではないため、結局はワイドモードを使用することになり、実質的にはスペック上の照射距離を使えていません。このため総合的な遠距離照射の評価としては下げざるを得ませんでした。

近距離(手元)照射

キャンプや登山においては夜中歩くことは緊急時以外そこまで多くはないため、ある意味最も使用頻度が高いともいえるのが近距離照射モード。もちろん明るいにこしたことはないのですが、直視できなくなるほどの明かるさは手元の地図すら見にくくしてしまうため不要です。それよりも大切なのは、身体や視線を動かさないで周囲の状況をストレスなく把握できるような「より広く、均一に点灯されたビーム」ということになります。

それを踏まえた上で、今回は各モデルの近距離モード(近距離モードがないモデルは通常モードの「中」レベル)を地上1.5mの高さから約3m離れた白い壁に照らした様子をご覧ください。

アイテムBlack Diamond スポットBlack Diamond リボルトBlack Diamond スプリンターmilestone MS-B3PETZL ティカPETZL リアクティックプラスPETZL NAO+モンベル パワーヘッドランプGENTOS GT-105RLEDLENSER SEO7R
近距離照射写真

最も目に優しいレベルで明るく、そして広く均一に拡がる光をつくっていたのは、いずれも今シーズンモデルチェンジしたBlack Diamond リボルトBlack Diamond スポット。この2モデルに関しては明るさもさることながら、照射範囲が自分の視界よりもギリギリ広いくらいだったため、前方のライト縁が気になるというストレスが全くありませんでした。テント内や早朝の準備などの快適さは普段あまり気にしませんが、比較してみるとここまで違うものかとあらためて驚きです。

その他気になったところでは、GENTOS GT-105RLEDLENSER SEO7Rの明るさと光のフラットさが際立っていました。中心から縁に至るまでの光の減衰が少なくフラットであるため、照射範囲内での見やすさはピカ一。ただし遠距離照射のときと同様、照射範囲が他と比べて狭く、どうしても縁が気になるという点で快適性が劣っていました。

バッテリー寿命

照射時間(電池寿命)は単純に長ければ長いほど良いということは当たり前なのですが、ヘッドランプという道具の性質上、寿命が尽きるまで100%のパフォーマンスを発揮できるわけではなく、評価にあたってはその寿命の中身を比較することが重要です。

例えば「10時間」という表示があったとしても、当然HIGHクラスの光量が10時間もつわけではありません。また、10時間かけて一定ずつ光量が減っていくというわけでもありません。実態はそんな甘いものではなく、モデルによってははじめの1時間で最大光量から半分程度に減ってしまうものもあります。さらに表示された寿命が一体どのような状態でどのような照射モードで測ったものなのか、一見すると分かりにくい表示になっていたりすることもあります。

これはブランドが公表している計測値が自社基準によるものであるところが大きく、主要なブランド間ではその基準も揃ってきてはいるものの、まだまだ表示された寿命はあくまでも目安として考える程度に留めておく必要があります。ちなみに最近では「ANSI/NEMA FL1」といった新しい統一規格での計測値を表示するブランド出てきており、そうした標準化の動きを今後も期待したいところです。

今回は各モデルが同じ条件ではそれぞれどのような減り方をするのかということを知るため、遠距離モード(ブーストモードなどの瞬間的なモードを除いたMAX出力)で5時間照らし続け、その間の照度の変化を測定しました。2m離れた場所から壁の照度計に向かって照射した光を測定した結果が下のグラフです。横軸は時間、縦軸は照射距離です。ちなみにここでの照射距離は照度計によって得られた照度(lux)から「逆二乗の法則」を用いて算出した理論上の距離です。絶対的な数値として信頼できるとは考えていないので、あくまでも5時間での変化量としてお考えください。

【大きな画像で見たい方】PDFはこちら

グラフが分かりにくくてアレですが、何が分かったのか以下ポイントを説明します。

まず5時間を経過して高い照度(照射距離)を保っていたのはPETZL リアクティックプラス(28m)、Black Diamond リボルト(26m)、PETZL NAO+(23m)で、これら3モデルは総じて5時間絶った後でも明るい、という意味ではひとまず「寿命が長い」モデルであるといえます。なかでも一定時間まで最大に近い照度を保つ「コンスタントライティング」機能を有したリアクティックプラスは使用時間が3時間限定なら170分経過後でも70mという驚異的な照射距離を保っていたことは特筆すべきで、その点NAO+は少し予想を下回りました(元の照度が強いのでそれでも明るいには違いないですが)。一方リボルトははじめの30分での落ち込みがやや激しいものの、そこからはほとんど明るさが落ちずにずっと快適で使えるところが他のどのモデルと比べても優秀でした。

次に、これも3時間限定で考えれば最大照度からの落差が最も少なかったBlack Diamond スプリンターも、さすがトレイルラン向けとあってレースのような最大照度が長時間必要なケースには適しており、バッテリー消耗に強いモデルといえます。その他、LEDLENSER SEO7Rも4時間過ぎまで最大照度の50%程度をずっと維持しており、長い時間快適に使えるモデルであることが分かります。この点カタログ情報では何も触れていなかったのですが、もっとアピールしていいのに。

まとめると、

  • 5時間程度までの長時間耐久ならばBlack Diamond リボルトLEDLENSER SEO7R
  • 3時間限定で優秀なのはPETZL リアクティックプラスPETZL NAO+Black Diamond スプリンター

といったところでしょう。

重量・機能性・操作性

この項目では光の性能以外で、道具としての使い勝手や便利機能、操作性について評価しています。まず重量に関して、基本的には軽いものほど点数が高いわけですが、軽量な専用バッテリーを使用したLEDLENSER SEO7Rは多機能な割に重量も抑えられており、このなかでは特に注目です。

機能性についてはどうしても今年リニューアルしたモデルが強くなってしまうという結果になってしまったことは否めません。誤点灯を防ぐロック機構、充電可能なバッテリー、バッテリー残量表示、自動調光、無段階調光、スマホ操作など前回に比べて質・量ともに多種多様な機能をもったヘッドランプが多くなり、単純に比較することは難しくなってきていますが、基本的には加点方式で、より有効な機能がたくさん付いているモデルほど高い評価としています。

それを踏まえて価格的にも最高峰のPETZL NAO+はスマホ連動も含めて最新鋭の機能が満載、まさに至れり尽くせりです。特に背面のRED表示やバッテリーパックの分離によるバランスの良さ、外れにくいヘッドバンドなどランニング向け機能が充実しているのが特徴。操作性についても1ボタンで混乱することは少なかったです。その点、同様コンセプトのPETZL リアクティックプラスは機能・操作性ともに一歩劣るところで、特に操作性に関しては2つのボタンの組み合わせでやはり混乱しがちです。ここは何とか改善してほしいところ。

一方ランニングに適した機能は少ないものの、防水機能といった過酷な状況に対応した機能が充実したBlack Diamond リボルト、Black Diamond スポットは登山での使用を考えればこちらの方が機能的にマッチしているといえるでしょう。ただ自動調光機能に対抗?するべく配置されたワンタッチでMAX照度になるボタン「パワータップテクノロジー」は機能的には満足なものの、操作性に関しては正直誤作動しがちで少し気になりました。それを除けば概ね1ボタンで操作が完結する点は好印象です。

その他PETZL ティカモンベル パワーヘッドランプは操作性という観点から最もシンプルで誰にでも使いやすいといえる一方、機能面は(価格的に考えても)案の定、最低限に絞られています。ただ、もちろんまったく使いものにならないというわけではまったくありませんので、これらはコスト優先で最低限の使い勝手で十分と割り切れる人にはおすすめといえます。

まとめ

ある程度予想されたことですが、やはり今回の比較ではタイミング的にリニューアルした2大ブランドの良さがどうしても目立ってしまいました。そのなかでも個人的にはペツルの細部にわたる工夫と、先鋭的な機能による未来感が使っていて心地よかった印象。BDも決して悪くはないし嫌いではないのですが、新しいモデルのデザインを含めてちょっと今回は期待を上回る部分が少なかった気がします。そしてやや余談ですが、今回新たに加わったLEDLENSERのクセの強さには驚かされました。抜群にフラットで見やすいビーム、先進的な機能など丁寧に作り込まれた高い品質であることは実感できるですが、いかんせんクセが強い。使った感触的にはある程度の慣れが必要なのと、シーンを選ぶのかなという気がしましたが、ランナーなどの愛用者も多いともいわれているので、できることなら引き続き他のモデルも試してみたいと思います。

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