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冬山テント泊を快適に過ごすための冬用シュラフ(スリーピングバッグ)の選び方とおすすめ8選

極寒のなかでもぬくぬくと熟睡したい!

どこまでも重く、荷物もかさばりがちな冬山のテント泊において、やっぱり妥協したくないギアのひとつがシュラフ(スリーピングバッグ、寝袋とも)。体力の消耗の激しい冬山では睡眠による体力回復が重要なことはいうまでもありませんが、一方冷えと寒さによって快適に眠ることが難しい季節でもあります。ただ、品質の確かなシュラフを適切に選べば、たとえ氷点下のテントの中ですら、その浮遊しているかような軽やかな寝心地にきっと驚くことでしょう。下手したらいつも自分が寝ている環境よりも断然良かったりします。

そんな冬用シュラフを適切に選ぶという行為は、高価だからというだけでなく、羽毛布団を選ぶ時の「よい素材について」の知識と、優れたアウトドア・ギアを選ぶ時の「よい道具について」という2つの知識が必要となり、それなりに敷居の高い現実があります。

そこで今回は、そんな超高級山道具である冬用シュラフについて、前半では冬ならではの考慮すべきポイント、後半部では編集部がおすすめする珠玉の8点をご紹介します。それでは早速みていきましょう。

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目次

冬用シュラフを選ぶ時に考慮すべきポイント

編集部のおすすめシュラフ(スリーピングバッグ)8選

冬用シュラフを選ぶ時に考慮すべきポイント

ポイント1:どんな形にするか

スリーピングバッグの一般的な選び方として、多くの入門書やガイドブックには「マミー型」や「封筒型」などのフォルムの違いがについての説明がありますが、冬のシュラフ選びに関していうと、悩むことはまずありません。冬はまずマミー型一択です。理由は簡単、保温性と重量という、どう考えても最優先のポイントにおいてマミー型の方が最適だからです。実際、(テント泊など登山向け)冬用シュラフと銘打っているモデルでそれ以外の形はまず見当たりませんので、ここは何も考えずにマミー型でいきましょう。

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マミー型は身体のラインに沿って余分なスペースがない分、軽くてコンパクトなので冬にはもってこい。

ポイント2:どんな中綿素材にするか

スリーピングバッグの中綿として使用されている断熱素材には大別して2つの選択肢があります。1つは天然素材であるダウン、もう1つはダウンの特徴を再現した化繊インサレーションの2種類。これについても、冬に限ってはダウンが断然おすすめです。もちろん春~秋の話であれば、化繊のメリットである濡れへの強さや速乾性、手入れの容易さから、化繊を選んだ方がいいケースが十分あり得ます(この辺は後日、シュラフの選び方など別の記事で説明したいと思います)。しかしこと冬に関しては、特に濡れやすく湿度の高い環境で長期間使用する、あるいはよほど明確な好みがない限り、保温性や快適性、コンパクトさなどから、まずはダウンを選んで間違いはないでしょう。もちろんその時は、濡れないように細心の備えを忘れずに。

ダウンを選ぶと決めたら、できればダウンの品質にもこだわりたいものです。ダウンの中でもダウンボールが大きく、かつ嵩高性に富んだヨーロッパ産のグースダウンは、ダックダウンに比べて総合的な品質は段違い。重量あたりの保温性が高いので、一般的なダウンよりも驚くほど暖かく、しかも軽くてフカフカです。もちろんその分の出費は覚悟しなければなりません。

ポイント3:どれくらいの暖かさにするか

冬山のテントでの夜がどれだけ酷い寒さになるのか、あるいはならないのか、自分をはじめとした都会育ちの多くの人々には想像もつかないことです。そんな状況で適切にシュラフを選ぶためにできることは、まずできる限り自分が泊まることになる場所・時期の最低気温を把握すること。ちなみに気温は標高が100m上がると約0.6℃下がりますので、平地の最低気温が6℃であれば、同じ時期、標高1,000mの場所は0℃のはずです。

そして次にチェックすべきは、ほとんどのシュラフに表示されている、適応温度表示を確認すること。これにはメーカーが独自の経験や基準に基づいて示しているパターンと、ヨーロピアン・ノーム(EN13537)と呼ばれる、EUでのシュラフに関する温度表記の共通基準が表示されているパターンの2つがあります。

どちらも大いに参考にすべきなのですが、基準値や表示は目安であり、あくまでも参考にしかならないということは心に留めておくべきです。寒がりの人はその基準では耐えられないかもしれないし、逆に暑がりの人や、あらゆる防寒着を着込んだ人なら逆に基準値よりも寒い場所で快適に眠れるかもしれません。その他、スリーピングパッド(マット)の性能や、シュラフのサイズ・フィット感、外気温・湿度など環境要因などの影響も当然受けます。

あくまで参考ですが、自分がこれまで経験した限りでは、メーカーの独自基準値に比べて EN 基準はかなり慎重な数値である気がします。メーカー独自基準でリミット温度が「-15」となっているモデルよりも、EN基準でリミット表示が「-10」のモデルの方が下手したら暖かいと思える時があったり、なかったり。すべてのメーカー基準値を見たわけではないので、あくまでも個人的な感想ですが。

ここで言いたいのは、そのくらい、基準値には幅があると思っておいた方が良いということ。正しいシュラフを選ぶことも大切ですが、もっと大切なのは、もし万が一眠れないほど寒かったときに、あらゆる防寒具を着込む、着られない手袋などもシュラフの中に放り込んで余分な空間を埋めてみる、シュラフの上からバックパックを穿くなど、寒さを凌ぐための工夫の引き出しをいろいろともっておくことです。はじめてで経験が無いうちには、なるべく用心のために防寒着は多めにもっていくなど、リスクヘッジをしながら、いろいろ試行錯誤を試みて自分なりの引き出しを増やしていくことが、最も安全に自分にとって最適な基準と限界を知るための現実的な方法でしょう。

ポイント4:撥水?防水?シュラフカバーの必要性

冬山のテントで厄介なことのひとつに、テント内がどうしても濡れやすいという事実があります。原因のひとつは結露。テントでは炊事による水蒸気や、人の呼吸による湿気などで外に比べて湿度が高く、それらが外気によって冷やされることでテントの内壁に結露が発生し、水滴や霜となってシュラフを濡らします。もうひとつ、テント内で雪を溶かして水をつくったり、出入りの際の雪の侵入によって、いつの間にかテントの床は水溜まりができているなんとことも雪山あるあるです。大切なダウンが濡れてしまったらアウトですから、シュラフの防水対策は万全に行ないましょう

そのためにまず欠かせないとされるのが防水透湿素材のシュラフカバーです。寝る時にシュラフをシュラフカバーでスッポリと覆ってしまえば、まず濡れることはありません。このときシュラフカバーは透湿性の素材であることが重要で、そうでないと寝ている間、自分の汗の蒸発による湿気でシュラフが濡れるという笑えない事態に繋がってしまいます。その他嬉しいことに、シュラフカバーを被ることでほんの少しだけ保温性アップも期待できます

とはいえ、何だかんだで荷物になるし、金額もバカにならないシュラフカバーをもっていかないで済むのならばそれに越したことはないと考えるのは僕だけではないはず。そこで以下、近年の技術革新によって可能となった、シュラフカバー以外の2つの水濡れ対策を考えてみます。

まず、撥水ダウンのシュラフはダウンが水を吸わないからシュラフカバーの必要はないのでは?と考えたくなりますが、残念ながらこれはあくまでも「撥水」であって、濡れを完全に防いでくれるものではありません。よって防水のためのシュラフカバーは必要です。ただ、表生地の撥水力と合わせてある程度の水分は寄せつけませんので、場所と天候、日程などで総合的に判断しましょう(個人的には、標高の低い場所で1泊程度なら、カットしちゃうこともしばしば)。

もうひとつ、表生地に防水透湿機能をもった素材を使っているシュラフはどうでしょうか。これならば確かにシュラフカバーは必要ないと、ひとまずはいえます。ただし、単に「防水透湿生地を使っているシュラフ」では縫い目やジッパー部分からの浸水は防げません。このため厳密な意味で防水が必要なのであれば、止水ジッパーや縫い目のシームテープなどを使った本格的な機能を備えた防水シュラフでなければならないことに注意しましょう。

イスカ(ISUKA) ゴアテックスシュラフカバーウルトラライト ワイド ネイビーブルー 200821

濡れが禁物のダウンシュラフにとって、シュラフカバーは基本必携装備。

ポイント5:その他あるとよい機能は?

重量・収納性

厳冬期用のシュラフは下手をすれば2~3人用のテント並にもなるサイズですから、できる限り軽くてコンパクトなモデルがいいのは間違いありません。ただ、その重量とサイズを決める大きな要素はダウンの性能によるところが大きいため、あまりに収納性にこだわりすぎると財布がもちません。

ひとつ知っておくとよいのは、カタログにあるスペック上の収納サイズは付属のスタッフサックに入った時のサイズでしかないということ。下の写真のように、購入したままの状態では大きめでも、別売りのコンプレッションサックを用いることで、かなりコンパクトに収納できるものもあります

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付属のバッグが少し余裕を持たせた大きさの場合、コンプレッションスタッフサックを使えばグッとコンパクトに(右端)。

フード

体温の8割ほどが首~頭部から放熱されているといわれるくらい重要なこの部分がどれだけきっちりとつくられているかチェックしましょう。頭部を立体的に包み込むフォルムになっていたり、ダウンがふんだんに配置されていたり、顔出し口を圧迫感なく密閉できたりといった工夫があるかないかで、実際に感じる暖かさがまるで違います。

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フードの形状・厚みはブランドによって微妙に異なる。どれも暖かいが、ドローコードでの締め方や、顔の覆う範囲などで好き嫌いは多少あるかも。

ショルダー

頭部と同じようにしっかり保温する必要がある首もと~肩には、マフラーのようなチューブ状、あるいはU字状のショルダーウォーマーが付いていると、中の熱が逃げないので格段に快適。モデルによって形状はさまざま。

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首・肩周りの保温も形はさまざま。チューブをドローコードで締める形は調整しやすい一方、U字型よりも部品が多くなり重量の面ではロスになるなど一長一短。

ジッパー

ジッパー部分でチェックすべきは2点。ひとつはここから熱が逃げないように、ジッパーの内側ライン上に中綿の詰まったドラフトチューブが配置されているかどうか。

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もうひとつはジッパーの上げ下げによって極薄の生地をファスナーが噛み込み、生地を傷めたりしないように噛み込み防止機構が付いていないかどうか。

いずれにしてもより安全・快適なシュラフにとって、これからのスタンダードとなる機能です。

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写真はナンガとYKKの共同開発による噛み込み軽減ファスナー。滑らかで開閉しやすいと共に、万が一噛み込んだとしても生地を傷めにくくなっている。

足元のシルエット・構造

足元の保温性を特にケアしてあるかどうかは、人によっては非常に悩みの種となりやすい部分でもあるので重要です。特に気になる人は、全体的に身体の形にほどよくフィットする3D構造であることはもちろん、足元のダウン量を増やすなどの特別な工夫があるものを選ぶとよいでしょう。

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寒さを感じやすい足元の羽毛を多めに封入。また足の形に合わせた立体的な構造が足全体を無駄なく均等に保温してくれる。

サイズのバリエーション

暖かく寝るためには、自分とシュラフとの間に余分な隙間(デッドスペース)をつくらないことがポイントで、そのためには自分の身長・体型に合ったシュラフを選ぶことが大切です。購入の際には高・低身長タイプや、女性向けのバリエーションが選べるモデルがあるかどうかチェックしましょう。

サイドジッパーの左右位置

一般的にはサイドジッパーが左側にあると、右利きの人にとって使いやすいといわれます。どちらを選んだとしても致命的な結果にはなりませんが、完璧な使い心地のためには忘れずにチェックしておきましょう。

編集部のおすすめ冬用シュラフ(スリーピングバッグ)8選

上記のチェックポイントを踏まえて、ここからは既に体験済みのモデルからいつかは体験したいモデルも含め、冬用シュラフのおすすめをご紹介していきます。同一モデルで適応温度のラインナップがあるものがほとんどですが、ここで紹介するのは目安として(泊まる場所にもよりますが)本州2,000m級の山岳における厳冬期の最低気温(-10~-15℃前後)がリミット温度のモデルとしました。もちろんあくまでも目安ですので、購入の際には自分に適した温度にアジャストしてみてください。

ISUKA エア 630EX

長らく日本の登山を牽引してきた老舗シュラフブランド。職人気質の丁寧なものづくりと、ラボ・フィールド双方での厳しい独自基準による高い信頼性は創業当時から不変。軽量で保温性抜群の800FPホワイトグースダウンを使用し、保温効率の高い立体構造、軽量化と保温性を両立させたショルダーウォーマー等、細部にまで軽量・保温・コンパクトに対するこだわりが見られます。

NANGA UDD BAG 630DX

徹底して高いダウン品質へのこだわりに定評があるシュラフ専門メーカーの超撥水ダウン UDD を採用したモデル。「湿気を通すが水を吸わない」独自撥水加工を施したダウンはうっかり雨や結露の水滴に濡らしてしまうということが無くなります。その他、国内精製羽毛の安心したダウン品質による驚くほど高いロフト(嵩高)、保温効率とフィット感が両立した立体構造、修理費用無料の永久保証など、隙のない高い品質へのこだわりと自信が素晴らしい。

NANGA AURORA light 600DX

こちらはダウンを包む表生地に防水透湿素材のオーロラテックスを使用した、「シュラフカバー不要」の高機能コンパクトシュラフ。これで通常のシュラフよりもかさばるのであれば考えてしまいますが、まったくボリュームを増やすことなく相変わらずの軽量・コンパクト設計。シュラフカバーが不要な分、かなりの軽量・コンパクトが実現します。余裕があればさらに高品質ダウンの「SPDXモデル」もおすすめ。

mont-bell アルパイン ダウンハガー 800 #0

元々ダウンジャケットなど含めて幅広いダウン製品で定評のあるモンベルなだけに、800FPの高品質グースダウンによる保温性の高さ・快適さは間違いなし。そして何といっても超軽量・コンパクトながら高いフィット感と快適さを実現するスパイラルストレッチシステム。寝ている間にシュラフの中で動いてもしっかりフィットするので、空気の隙間をつくらないこの仕組みが保温効率を高めてくれます。あぐらをかきながらシュラフを”穿ける”のもいい感じです。

Western Mountaineering アンテロープMF

カリフォルニア発、世界有数のダウン専門メーカーとして知られるウェスタンマウンテニアリングは45年以上たった現在でもサンノゼにある自社工場での手作り生産を続け、その品質への信頼性は世界のアウトドア愛好家によって証明され続けています。この上ない品質のホワイトグースダウンを使用した超快適な寝心地でありながら、軽量で撥水性に優れた表生地を使用した使い勝手の良さを実現。

Valandre Bloody Mary

フランスのみならず欧州を代表するダウン専門メーカーとして定評のあるヴァランドレは、南フランスで育ったグレーグースの、生まれてから21週目という最も良い状態のダウンのみを使用するという抜群のクオリティがまず眼を惹きます。この最高品質のダウンを83のアナトミカル(解剖学的)形状にかたどられたバッフルに閉じ込め、着脱交換可能なカラーなどアイデアに富んだ工夫により、軽くて暖かく、汎用性の高いモデルを実現しました。

Feathered Friends Snowbunting EX 0

ここからは日本からの入手が非常に困難なモデルになりますが、それでもおすすめしたくなるくらいに魅力的なのが、ダウン専門メーカーフェザーフレンズの冬用シュラフ。高品質なグースダウンによる軽くて暖かい保温効率の高さと、表地の防水透湿素材 PertexⓇ Shield EX による防水性の高さをはじめとした確かな品質は、信頼性の高い海外レビューサイトでも一位を獲得するほど。

Rab NEUTRINO ENDURANCE 600

今でこそイギリスを代表する総合アウトドア・アパレルメーカーとして多くの製品を手がけている Rab ですが、実は「世界で最も過酷な場所にも耐えうる」ダウンシュラフづくりからスタートしたメーカーとして知られています。そんな同社の看板アイテムであるシュラフの品質に妥協がある訳がありません。「超撥水ダウン」と「防水透湿素材の表生地」の合わせ技で、濡れに対するプロテクションは万全。高品質ダウンの効果的な配置を可能にするバッフル構造と、首周りにピッタリフィットするクローズ・フィッティング・ネックバッフルと随所にわたる快適性を高める仕組みは長年培われてきた経験と技術が活きています。