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First Look:軽量・快適・機能的。多彩な顔ぶれのMILLET新作ライトウェイト・バックパックから目が離せない

新しいバックパックは、軽量化のその先へ

必要以上の重荷で身を固めるのではなく、そぎ落とされた最小限の装備で、自然とより深く向き合う──。90年代末、北アメリカの4,000kmを超える超ロングトレイルを歩くために体系化された新しい登山スタイルである「ウルトラ・ライト(UL)」の思想は瞬く間に世界へと広まり、今や多くの熱狂的な愛好家たちを生み出すに至りました。

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色々な功罪はあるものの、近年のアウトドアではそんなUL思想に影響された、できるだけ軽い荷物で軽快に山を駆け抜けるスタイルが人気。歩くだけならば単純に荷物は軽いに越したことはないわけですから、こうしたスタイルに対応するギアが数多く生まれることは1ユーザーとしては大いに歓迎すべきです。

ただ、バックパックに限った話でいうと、純粋なUL系のバックパックはとにかく驚くほど軽い一方で、背中のフレームやウエストベルト、ポケットやアタッチメント類といった、快適・便利な機能を根こそぎ切り詰めるというストイックさがありました。

もちろんそうしたUL系のパックには、それが活躍できるスタイルがあり、その条件下で合理的なのは確かです。そうしたユーザー自体を否定するわけでは決してありませんが、大部分の一般的なハイカーがそうした先鋭的なパックに対して「軽さは大歓迎だけど、軽さの奴隷にはなりたくない」と感じていたことも間違いありません。

ある程度の軽量性は追求しながらも、最先端の快適さと機能性をきちんと盛り込んだ、ちょうどいい(道具としての完成度が高い)バックパックはできないものか。多くの人々も同じようにそんな思いを抱いていたのか、2016年、そうした気配を裏付けるような期待の新作が続々と登場するという、非常に興味深い流れがきているようです。

前置きが長くなりましたが、そんなわけで Outdoor Gearzine では今年、軽さと快適性・機能性が絶妙なバランスで昇華した「ライトウェイト」と呼ばれる分類のバックパックたちに注目していきたいと思います。具体的な分類でいうと、500gを切るような「ウルトラ・ライト」でもなく、1,500gを超えるような従来水準のボリュームでもない、主に容量30~50Lに対して約1,000g前後の重量にあたるカテゴリ。さまざまなメーカーの「これは」と思える新作をこれからできる限り紹介しながら、夏あたりを目標に比較テストをしていきたいと思っています。

それでは記念すべき第1回目、フランスの老舗総合アウトドア・メーカーであるミレーの新ラインナップを紹介します。

MILLET のライトウェイト・バックパックは個性の違う優等生3兄弟

今でこそ取り扱いアイテムは多岐にわたる総合アウトドアメーカーのミレーですが、なかでもお家芸といえるのは何といってもバックパック。古くは1950年、現在でも”最も危険な8,000m峰”といわれるアンナプルナを初登攀したフランス隊が使用したことによって世界にその名を知らしめた伝説のバックパックをはじめ、60年代には欧州初の全ナイロン製バックパックを世に送り出すなど、経験に裏打ちされた信頼と革新の精神は、今でも脈々と受け継がれています。そんなヨーロッパのアルピニズムの雄でもあるミレーが導き出した答えは、どれも「これぞミレー」でありながらも、継承されてきたDNAの配分がそれぞれ微妙に異なる優等生3兄弟でした。

各アイテムの主な特徴

“正当派快速”ライトウェイト:VENOM(ベノム)30

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昨年のモデルから継続して展開されるベノムシリーズは、今回の中では最も”ファストパッキング向け”なモデル。今年は細かい部分での見直しが入ったことによってその個性により磨きがかかりました。

ファストパッキングやウルトラライト系のバックパックでは大前提ともいえる重量については、実測で約920gですから十分及第点。ミレーのパックに特徴的なのはそれにもかかわらずファストパッキングに適した先進的な機能がふんだんに採り入れられている点にあります。

例えば背面側から素早く天蓋を開閉できるオポジットオープニング™や、行動中にパックを下ろさずポールを取付けられるスピードポールループ™、アックスやポールを上から簡単に差し込むように取付けられるクイックアックス™など、都度ザックを下ろすことなくスピーディに行動できる工夫の数々。

そしてバックパネルには人間工学に基づいて開発されたフォーム構造、清潔で環境に優しいアリアプレンⓇフォームを透湿性の高い3Dメッシュで覆うなど、軽量性・機能性と快適性を兼ね備えた仕様になっており、高い運動量にも快適さを失わないような工夫がなされています。

シルエットも一般的なウルトラライト系に近く、3つのなかで最もスリム。これが上半身の大きく自由な動きに対応し、テクニカルな地形にも柔軟に対応します。

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背面からのアクセスを可能にするオポジットオープニング™(左)と素早いポール収納を可能にするスピードポールループ™

“快適・便利”ライトウェイト:ELIUM(エリウム)30

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ウルトラライトという文脈からすると1,150gという数字は決して誇れる数字ではありませんが、それも納得してしまうほどの使いやすさと快適さを備えているのがエリウムシリーズ。一般的な縦走用バックパックで「1,500g超」は当たり前という状況ですから、驚くほど軽快な週末ハイキングパックとして考えるとその魅力が分かりやすいのではないでしょうか。

特徴は何といってもメッシュのバックパネルと背面の通気性を促進するエアフロー・サスペンデッド・バックシステム構造。いくつかのバックパックメーカーで既に採用され、真夏の行動時における快適さは実証済みです。ただ、そのためには背面フレームとメッシュパネルの二重構造にする必要があるわけで、通常この手の軽量パックにとっては真っ先に削られて然るべきところのはず。あえてそこで快適性追求してくるところにこのパックの個性があるといえるでしょう。同じように、メインコンパートメントに直接アクセスできるフロントジッパーやパック底部のロードストラップの存在も、あえて軽さではなく快適・便利さに重きを置いていると思わせるもうひとつの大きな特徴です。

それでいて、快適な行動にとってありがたい機能も忘れてはいないところがこのパックのバランスのよさ。ベノムシリーズにあったスピードポールループ™、クイックアックス™など、一段と軽快な歩行をサポートしてくれます。

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左から、快適な背中の通気を可能にするエアフローサスペンデッドバック™、フロントアクセスジップ、スピードポール™システム

“最軽量・シンプル”ライトウェイト:ZENITH(ゼニス)30

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ミレーのバックパックのなかでもとにかく桁違いに軽いのがゼニスシリーズ。これまでの2つは軽さのなかにもある程度機能性を盛り込んでいましたが、このモデルに至っては清々しいくらいに機能がそぎ落とされています。奇妙なことに、もしこのパックを20年前に見たとしても違和感はなかったかもしれない。そんなある種の懐かしさを感じさせるくらいにシンプル。だが、そこがいい。ある意味それこそがこのバックパックの魅力ともいえます。

基本的にはスリムなシルエットですが、それでも他の2つに比べると、底部はワイドで安定感に優れ楽に自立します。そして何より荷物をたくさん入れやすく、その意味で収納性の高さが感じられるパックです。

背面のエアコネクトバック構造は、柔らかいクッションを備えたバックパネルを高い通気性と肌触りのメッシュで覆う二重構造。フォームパッド入りショルダーストラップとヒップベルトは極限まで肉抜きされつつもクッション性を失わずに通気性抜群。軽量化の中でも十分な快適性は失っていません。

シンプルであることは物理的にもパーツが少ないという意味で、耐久性の高さも十分期待させてくれます。ここまでシンプルな構造ですと当然、評価が分かれる部分もあるかもしれませんが、とことん軽量かつ堅牢、大容量という道具としてのベーシックな価値に特化したこのモデルこそが、ストイックで硬派な真のスピードハイカーに適していると考えるのは僕だけではないはず。

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その他の主なパーツ比較

メイン開口部とリッド(天蓋)

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背面側から開閉するベノムの「OPPOSITE OPENING™」がひときわ印象的なメインコンパートメントへのアクセス。さらにベノムだけは天蓋の裏側にもジッパーポケットが付いており便利。

フロントポケット・アタッチメント

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ベノムには伸縮性のある大きめのストレッチメッシュポケットと、ヘルメットも着脱可能なコードが付いています。エリウムのポケットはゼニスに比べればやや膨らみがあり、より使いやすい仕様です。

バックパネル

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3つともアプローチの方法は違いますが、基本的にどれもある程度しっかりとしたフレームが配置され、軽量バックパックとしては十分に快適な背負い心地と高い通気性を提供しています。まだ使い込んで比べたわけではないものの、このなかではベノムの軽量かつシンプル、それでいて快適なフィット感が個人的にはお気に入り。

サイドポケット・アタッチメント

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両サイドのネットポケットは材質は異なるものの3つとも共通して配置されています。一方、ベノムのサイドコンプレッションストラップは今年から下部のみとなり、重いギアにはやや不安が。ただ一方で、2方向のテープを1つのバックルで調節可能な仕様や、ストレッチの効いたメッシュポケットなど、他にない機能性の高さが見られます。

まとめ:どんな人におすすめ?

以上見てきた3つのバックパックの特徴とスペックを以下の表にまとめますどれも基本的な作りはしっかりしているので、アクティビティの種類を選ばず、ハイキング初心者が安心して使えます。その上で、好みや目的によって微妙な向き不向きがあるので、以下の表が参考になれば幸いです。ただ、メリット・デメリットというのも人によっては逆転しうる可能性もあり、あくまでもひとつの目安として、最後には必ず実際に自分で背負った感覚を大事にしてくださいね。

バックパックについてはこちらの記事もおすすめ

項目VENOM 30ELIUM 30ZENITH 30
ここが◎軽量性、スピーディな行動を可能にする機能性通気性良く快適な背面、パッキング・ハイキングに便利な機能性最軽量、重心の安定性、大容量
ここが△パッキング性能重量、パッキング性能シンプル過ぎる機能性
おすすめアクティビティスピードハイク、ファストパッキング夏のハイキング、トレッキングファスト&ライトスタイルのクライミング、沢登り
Fabric
  • リップストップナイロン 210D HT
  • オックスフォードナイロン 420D HD
  • ナイロン 200D
  • リップストップナイロン 200D
  • オックスフォードポリエステル 600D
  • ナイロン 200D
  • リップストップナイロン 200D
  • オックスフォードポリエステル 600D
sizeワンサイズワンサイズワンサイズ
容量30L30L30L
重量約920g(実測)約1,150g(実測)約840g(実測)
重量/容量30.67g/L38.33g/L28g/L
アタッチメント
  • クイックアックス™ ポール+アイスアックスホルダー
  • SPEED POLES™ システム
  • 2サイドコンプレッションストラップ
  • クイックアックス™ ポール+アイスアックスホルダー
  • SPEED POLES™ システム
  • 2サイドコンプレッションストラップ
  • クイックアックス™ ポール+アイスアックスホルダー
  • 2サイドコンプレッションストラップ
ポケット
  • 3ストレッチポケット(フロント・サイド)
  • 2ジップポケット(天蓋)
  • 1ウェストベルトジップポケット
  • 1フロントジップポケット
  • 2メッシュポケット(サイド)
  • 1ジップポケット(天蓋)
  • 1ウェストベルトジップポケット
  • 1フロントジップポケット
  • 2メッシュポケット(サイド)
  • 1ジップポケット(天蓋)
  • 1ウェストベルトジップポケット
ハイドレーション対応
付属レインカバー
バリエーション
  • VENOM 40
  • VENOM 30
  • VENOM 30 LD(女性向けモデル)
  • VENOM 20
  • VENOM 15
  • VENOM 10
  • ELIUM 35
  • ELIUM 30
  • ELIUM 30 LD(女性向けモデル)
  • ELIUM 25
  • ELIUM 25 LD(女性向けモデル)
  • ELIUM 20
  • ELIUM 20 LD(女性向けモデル)
  • ZENITH 30
  • ZENITH 20
  • ZENITH 15

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