ラインナップ比較:MSRのスノーシューを履き比べてみたのでおすすめモデルを紹介するよ

雪山は確かに寒くて危険で、その上えらく割高なアクティビティです。しかし雪と静寂に包まれた銀世界の魅力は夏山では決して味わえないものであることも同じくらい確かで、なぜそうまでして雪山に行くのか、こればかりは体験した人でないと分かりません。

そんな雪に閉ざされた冬山の世界を最も気軽に体験できるギアであるスノーシューは、最近のスノーハイク人気とともに参入メーカーも増え、各ブランドのラインナップもますます多様化してきているのが現状です。そこで本格的なスノーシーズンがはじまるこの時期、Outdoor Gearzineでは主要ブランドの代表モデルを実際に試し履きしてみることで、それぞれの特徴の違いや最適な選び方について、ブランド別に何回かに分けて紹介していきたいと思います。

第1回目はMSRのスノーシュー。12月3週目、大雪が降った後の谷川岳天神平でそれぞれのモデルを試し履きしてきました。またスノーシューの一部は各ブランドにお願いしてサンプルをお借りしています。

なお、ここからの話しは多少スノーシューについての知識があることを前提としています。もし読んでいて分かりにくい部分がある場合には、以前スノーシューの選び方について解説・レビューした以下の記事を合わせて読んでいただくと良いかと思います。

目次

MSRスノーシューのラインナップについて

MSRスノーシューの各モデルは「シリーズ種別+プレイエリア種別」というネーミング規則によってある程度の特徴が判別できます。このため自分に適したモデルを検討する際、他ブランドと比べても比較的分かりやすいかもしれません。そこでまずそれぞれの種別が何を表しているのかを説明します。

ひとまずメーカー側の説明を確認してみます。カタログやWEB情報によると主な「シリーズ種別」は、

  • 急斜面に適した「ライトニング
  • 急斜面と平地のバランスを重視した「REVO
  • 平地歩きに適した「EVO

そして「プレイエリア種別」は、

  • 登攀に最適な「アッセント
  • 緩やかな斜面に適した「エクスプローラー
  • 平地に適した「トレイル」※ここだけ特にネーミングには表われません。

となり、これらを組み合わせて、例えば「ライトニング アッセント」や「REVO エクスプローラー」のような形で各モデルのネーミングがなされているようです。参考までにラインナップ全体を種別ごとのマトリックスにマッピングしてみます。

各種別 アッセント エクスプローラー (トレイル)
ライトニング
ライトニング アッセント

ライトニング エクスプローラー
 
REVO
REVO アッセント

REVO エクスプローラー
 
EVO
EVO アッセント
 
EVO
その他
デナリ クラシック アッセント
(過去モデルの復刻版)
   

詳細パーツでの具体的な比較 ~グレードではなく、用途の違いを知ろう~

さて、上記の「シリーズ×プレイエリア」という分け方は一見綺麗に分かれているようですが、よくよく見てみるとぶっちゃけ同じこと言っているような気がしないでもありません。いいたいことは何となく分かるのですがまぁ実際のところ何が違うのか分かり難い、ということで、次からは具体的な違いについて詳しく見ていきましょう。

「シリーズ」による違い = フレーム(デッキ)・ブレードの違い

ライトニング・REVO・EVOといったシリーズによって表われる具体的な違いは全体のフレーム(デッキ)部分と、爪や歯といったブレードの構成です(下写真)。

フレームとブレードの比較。左からEVO アッセント、REVO エクスプローラー、ライトニングエクスプローラー。

写真左の「EVO」シリーズは耐久性と柔軟性をもったプラスチックフレーム、真ん中「REVO」シリーズはプラスチックのフレームに強靱さとグリップに優れたスチール刃を合体させたハイブリッドデッキ、右「ライトニング」シリーズは高いグリップ力と軽さを備えた板状のアルミフレーム製のデッキです。

あらゆる地形で信頼性抜群のライトニングシリーズ

これらを履き比べてみてまず感じるのはどんな地形においても安全に確実に歩くという性能だけを見ればライトニングシリーズのグリップ力は素晴らしいということ。360°の外周すべてがブレードとなり、雪質にかかわらずトラバースや起伏のある斜面でもフレームがねじれることによって斜面に食いつきます。また横二列配置されたブレードによって急斜面でもしっかりとトラクションが効いてくれるため、他のシリーズと比較してもライトニングは明らかに滑りにくいといえます。特に横向きのブレードが少ない(弱い)EVOシリーズの場合、新雪急斜面のハイクアップ時にはなかなか苦労しました。

ブレードを横から見た図。フレームの外周と内側横二列のスチール刃で構成されたライトニング(右)のグリップはどんな足の置き方でもしっかりとグリップが効いてくれる。

REVO・EVOシリーズにしか出せない魅力もある

厳しい環境での安定感でいえばライトニングシリーズには適わないREVO・EVOシリーズですが、これらにしか出せない魅力もあります。それは楽しく下れるということ。それに気がついたのは、ブランドの担当者に各シリーズのグリップ力の差異について確認したところ、以下のような答えが返ってきたことがきっかけです。

(斜面でのグリップが相対的に弱い)REVOシリーズでは少し流しながら下ることができます。ライトニングはテール部もフレームで囲われているためそこが引っかかり、流れるようには下れません。プラスチックデッキは下りの雪のとらえ方が極端に表すとショートスキー的な感覚(私の感覚ですが)もあります。

確かにしっかりと止まれることは大切ですが、雪の斜面を少し滑りながら下りることができればスピードアップにもなるし、行動がちょっとだけ楽しくなる。雪という自然の楽しさを味わうのがスノーハイキングであるとすれば、斜面にガッツリと爪を食い込ませゴリゴリと登下降するだけがよいスノーシューなわけではないのだよ、と、頭をガツーンとやられた気分。そういえば昔からシリセードやグリセードといった雪面を滑り降りるテクニックも登山スキルとしてしっかりと存在していました。ここ2年ライトニング アッセントを愛用し、正直他のモデルは必要ないとすら思っていた自分にとっては目から鱗、大事なものを忘れるところでした。

なお、各モデルの浮力についてはそこまで明らかな差は見られず、どれも北米系の新雪・深雪に対応した十分なものだと感じられました。足が沈みやすいかどうかはモデルの違いよりも雪質や自重の違いの方が大きく影響してくるだろうと思われます。

「プレイエリア」による違い = バインディング・テイルの違い

次に、プレイエリアが違うことで具体的に何が変わってくるのか。大きくいってそれは2点あります。ひとつめはブーツを装着するパーツであるバインディングです。

バインディングは装着の素早さをとるか、さまざまなブーツへの柔軟性をとるか

バインディングの違い。左からEVO、エクスプローラー系×2、アッセント系×2

アッセント系のバインディングは(厳密には微妙に異なりますが)踵と甲の2カ所を計4本の樹脂製バンドによって固定するタイプで、着脱に多少手間がかかるもののブーツの種類を選ばず柔軟にフィットし、安全に固定することができます。これはハイキング用のスノーブーツからバックカントリー(BC)のスキーブーツまで、多様な靴にしっかりと固定するためには当然の仕様でしょう。

一方エクスプローラー系のバインディングは踵と甲の2カ所をバックルによって固定するだけの「ハイパーリンクバインディング」を採用。装着は見た目通り非常に簡単ですが、足を正しい位置に置いたうえで固定しないと、歩きながらズレやすいという点には注意が必要です。自分は慣れていなかったからというのも大きいですが、靴を包み込むウレタン製シェル部分と靴の形状がどうしてもピッタリと合わず若干不安でした。全体的にアッセント系と比べると靴のサイズや形状に合わせてフィットを微調整することが難しく、このためエクスプローラー系は実際に履く靴と合わせてみて確認した上で購入すると安心です。

クライミングサポートの有無

もうひとつ注意したい相違点は、トレイルシリーズ(=EVO)のみ、クライミングサポートがついていないという点です。クライミングサポートとは登攀時に踵部分を持ち上げることで、急斜面でも足を水平に近い形で置くことができる機構。

クライミングサポートを使うと踵が持ち上がり、角度のきつい斜面でも雪面に一定の圧力をかけやすくなり、滑り難くなる。

緩斜面しか対象としていないトレイルシリーズではこの機構がついていないため、その意味ではEVOを急斜面が予想される登山などで使用するならば、かなりの不便を覚悟する必要があると考えた方がよいでしょう。

MSRスノーシューのシーン別おすすめモデル紹介

以上の違いを踏まえた上で、MSRシリーズのスノーシューを選ぶ上でのおすすめモデルを整理してみます。

起伏の少ない地形でのスノーハイキングを楽しむなら:EVO

初心者向けとかそういう分け方ではなく、特に厳しい斜面を登ったり、エッジを効かせなければならないようなカチカチ・ツルツルの斜面を通過するのでなければ、軽さと柔軟性、適度なトラクションを備えたEVOが十分過ぎるだけでなく、楽しい下りにももってこいです。バックルも簡易的、クライミングサポートも付いていない点は注意しなければなりませんが、その代わり着脱もシンプル、何より価格も手頃。その意味でまずは冬山の雰囲気を味わいたいという冬山ビギナーにもピッタリです。

冬登山やBCに使える安心の一足を選ぶなら:ライトニング アッセント

厳しく多様な地形、激しい登下降を想定するようなアクティビティ志向の人、また初心者であってもより安定した着地で極力安全に歩きたいという方には迷わずこちらをおすすめ。これまで使用したスノーシューの中でもピカ一のグリップ力や足抜けのよさを実感できる軽さは、深雪でのラッセルや急斜面での登攀、クラスト斜面でのトラバースなどいくつもの困難を助けてくれました。エクスプローラー系にするかどうか迷いましたが、冬用アルパインブーツ、スキーブーツなど複数の用途で使用することが多いため、より汎用性の高いバインディングを選びました。またサイズについては個人的に体重が重い方ではないこと、いざとなればフローテーションテイルを追加することができるためより軽い22インチを選択。こちらのページなどを参考に、各々の重量や使用する地域と相談して決めるとよいでしょう。

オールラウンドに使える欲張りモデルなら:REVO アッセント

スノーシューの楽しさも、本格冬山の信頼性も両方欲張りたいならこちらのモデルがおすすめ。浮力もグリップもそこそこ、下りの楽しさも合わせもっているので、どんなアクティビティでもきっと楽しめます。オールラウンドに使用するという想定なのでこちらもアッセント系のバインディングを選択しましたが、予めしっかりブーツを合わせられるのであればより軽量なエクスプローラー系のバインディングの方が得かもしれない。ただ、REVOシリーズをチョイスする上で注意したいのは、どちらも中途半端になりかねないということ。それさえ注意して、万遍なくいろいろなアクティビティを楽しむという人にとっては間違いなく満足できるバランスのとれたモデルといえます。

スノーシューについてはこちらの記事もおすすめ

(参考)MSRスノーシュー ラインナップ比較表

項目 ライトニング アッセント(男性用22インチ) ライトニング エクスプローラー(男性用22インチ) REVO アッセント(男性用22インチ) REVO エクスプローラー(男性用22インチ) EVO アッセント EVO
グリップ
浮力
着脱のしやすさ
固定力
下りの楽しさ
デッキ素材

アルミフレーム

アルミフレーム

プラスチック+スチール刃

プラスチック+スチール刃

プラスチック

プラスチック

サイズ(cm) 20×56 20×56 20.5×56 20.5×56 21×56 21×56
重量 1760g 1800g 1840g 1760g 1840g 1630g
バインディング

ポジロックATバインディング

ハイパーリンクバインディング

ポジロックATバインディング ハイパーリンクバインディング トライフィットバインディング デュオフィットバインディング
クライミングサポート ×
別売り追加テイル
サイズバリエーション
  • 男性用22インチ
  • 男性用25インチ
  • 女性用22インチ
  • 女性用25インチ
  • 男性用22インチ
  • 男性用25インチ
  • 女性用22インチ
  • 女性用25インチ
  • 男性用22インチ
  • 男性用25インチ
  • 女性用22インチ
  • 男性用22インチ
  • 男性用25インチ
  • 女性用22インチ
  • 22インチ
  • 22インチ

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