比較レビュー:最新高機能レインウェアを着比べてみた

山に登るときに揃える装備で、おそらく誰もが言われたことのあるアドバイスのひとつに「レインウェアだけは忘れずにきちっと持っておくべし」というのがあると思います。それくらい山の中で雨に降られたときの備えというのは重要で、下手をすれば死に繋がるわけですからそれはそれはえらい大切な装備なわけす。

でもこのレインウェア、山のお店に行けば分るのですが、とにかく種類が多い。値段から素材から形・重さ・生地の厚みと多種多様なので、結局どれを選んでいいのか分らなくなってしまい、さんざんいろんな店を歩き回ったあげく、店員さんの誘導されるがままになっていること、みなさんの記憶にあるんじゃないでしょうか。レインウェアって結構いい値段するし、普通に使っても5年くらい長持ちしますから、その時の選択は実はとても重要なんですけどね。というわけで今回はぼくが独断と偏見で選んだ、最新の気になるレインウェアを実際の山行でいろいろな角度から評価するテストレビューをお届けします。

今までなかなかやってみた人はいなかったと思いますが、こうやってほぼ同じ条件で着比べてみることで、カタログ記事では気づけない、ウェア毎の特徴が明確に分ってきます。ではレビューをどうぞ。

※レビュー・価格は2014年10月時点での情報に基づいています。より軽量・快適性重視した超軽量レインウェアの比較レポートをこちらのページで紹介していますので是非こちらもご参考ください。

比較テスト:登山にランに大活躍の超軽量レインウェアを着比べてみた【2016年版】

今回比較したレインウェア

  • Arc’teryx Alpha SL Jacket(参考価格:36,000円)
  • THE NORTH FACE RAINTEX Plasma (参考価格:31,900円)
  • HAGLOFS L.I.M PROOF JACKET (参考価格:19,000円)
  • OUTDOOR RESEARCH HELIUM HD JACKET (参考価格:22,800円)
左から HELIUM HD、RAINTEX Plasma、Alpha SL 、L.I.M PROOF

左から HELIUM HD、RAINTEX Plasma、Alpha SL 、L.I.M PROOF

レインウェアのタイプと選び方: 何に使いたいのか、それが問題

山慣れた人には当たり前の話しかもしれませんが、登山におけるレインウェアとは単に「雨を防ぐ機能が付いているジャケット」ではありません。現在の最新雨具は単に「風雨を防ぐ」だけのものではなく、用途に応じてさまざまな機能や特性が強化されたり追加されたりしています。しかも最近の製品を見ていると、「雨風を防ぐ」というメインの機能よりもそれらサブの機能に力を入れるあまり、雨風を防ぐ機能そのものがしょぼいなんてのもあるんではないでしょうか。

ちなみに私がはじめて購入したレインウェアは忘れもしない大学1年の春に先輩に連れられて「とりあえずゴアテックスなら何でもいいよ」という一言により、第六感で選んだ石井オリジナルのパイネというやつでした。しかしこれがまた雨を防ぐだけでなくちょっとした防寒着にもなり、冬山にも使えてしまうくらいしっかりした生地だったので、ほぼオールシーズンスタメンで活躍してくれました。当時の経済力から考えると、そのチョイスは奇跡的に間違っていなかったと思います。まぁ、とはいえその代わり、畳んでも大きいし、重いしで、今またこれを選ぶかと言えば疑問ですが。

脱線してしまいましたが何を言いたいかというと、レインウェアを選ぶ上でぼくが忘れないようにしていることは、「雨を防ぐ(=防水透湿)」ことがもはや多くの機能のうちの1つでしかないということ(最も重要であることはもちろんですが)なのです。そのレインウェアが雨を防ぐ以外に何が特徴なのかをよく見極めることが、理想のレインウェアに出会うための秘訣ではないかと思っています。今回は防水機能はもちろんのこと、そういった別の視点からもレインウェアを比較します。それぞれのレインウェアの優劣を決めるポイントであり、個性でもあると言えるでしょう。

レインウェアの選び方について、こちらのページにも詳しく書きましたのでよかったら参考にしてください!

テストでの評価基準

防水性

言わずと知れた、レインウェアで最も重要なポイントです。防水機能でまず思い浮かぶのが、どんな生地を使っているかということですが、今回比較した4製品のうち、アークテリクスと THE NORTH FACE の2つが GORE-TEX、HAGLOFS がオリジナルのPROOF 生地、そしてOUTDOOR RESEARCHが Pertex Shield+です。GORE-TEX は今やアウトドアギアでは定番の素材ですが、その他も高い防水透湿性をもった興味深い素材であり、この生地だけで比較特集を組みたいくらいです。今回はスペックよりも実際に着て、動いてみてどうだっかのか評価で比較します。

透湿性(通気性)

雨の中、レインウェアを着て行動すれば、大量の汗で服の内側が蒸れてきます。そして、最終的には身体が濡れてしまい、気化熱とともに体温を奪っていき、危険な状態にさらされてしまいます。それを防ぐのが、雨を中に入れず、水蒸気(蒸れ)を外に出すこの機能ですが、今やほぼすべてのレインウェアが何かしら同様の機能を備えています。今回のテストでは、実際に汗だくになりながらすべてを着比べ、製品毎、生地や縫製によって、これらがどのように違うのかを見ていきました。

快適性(機動性)

レインウェアが実際に着て、動いてみたときにどれくらい着心地がよかったり、動きやすいのか。ある程度素材や機能の違いで想像はつくのですが、いくら性能がよくても実際に着て動いたときの動きやすさ、汗をかいたり雨を受けた時の肌触りなどが思ったほどではない、ということはよくあることです。そしてさらにそれらの違いは同じ条件で着比べてみることでもっとハッキリと性能の差として現れてきます。

機能性(便利さ)

フードの形状からジッパーの位置、全体の重量など、着る以外の部分でどれくらい優れているのかなど、基本的な機能の他に見落とせないポイントについて評価します。

実地テストレビューによる総評

第1位 Arc’teryx Alpha SL Jacket

ARC\'TERYX ALPHA SL JACKET MEN\'S メンズ アークテリクス アルファSL ゴアテックス ジャケット [並行輸入品]

  • 防水性: ★★★★★
  • 透湿性: ★★★★☆
  • 快適性: ★★★☆☆
  • 機能性: ★★★★☆
  • デザイン:★★★★★

まず文句なしに1位に上げたいのがアークテリクスの Alpha SL 。まずやっぱり第一印象で感じるのは、アークテリクスらしい、スタイリッシュなそのフォルム。しかもそのデザインの良さにあぐらをかくことなく、機能性をとことんまで追求した、まさに妥協しない精神は本当に素晴らしい。その証拠にこのジャケットに使用されているゴアテックス、最も防水性・透湿性・耐久性・防風性を備えたプロシェル相当の生地が使われています(現在ではもうその区別はしなくなっているようですが)。というだけあって、ある程度の雨に晒されても弾くこと弾くこと、気持ちいいくらい。ただしそれだけに、値段についても全然妥協してない・・・そこは覚悟するべき製品です。

機能性については、ポケットはヒップベルトやハーネスを付けても出し入れしやすい胸部分に十分な大きさが確保され、ヘルメットやキャップの上から被れる、調節可能なフードと不満となる要素は無いものの、ベンチレーションのような、中の蒸れを調節する機能は省かれています(以前のモデルにはあったそうですが)。着心地で唯一気になったのは、最強の生地であるが故に(?)肌触りが硬く、身体を動かしたときに他と比較してほんの少しごわごわ感がありました。同率1位のアウトドアリサーチが不意の雨もものともしない行動着として最強であるならば、こちらは雨・風・雪といった天候による危険から身を守る鎧として最強のジャケットではないでしょうか。

【2014年11月4日 追記】
先日、強い西高東低で北西からの暴風雪の八ヶ岳(赤岳~横岳)で運良く(?)このジャケットを試すことができたのですが、氷点下の風も気にならないほど外気を完全にシャットアウトし、思っていたとおりの性能を発揮してくれました。また中にいろいろ着込んで行動すると、夏に感じたジャケットのごわごわした感じもそれほど気にならず(単に個人的なサイズの問題であったかもしれない)、最強レインウェアの評価をあらためて確信しました。

まったく撥水力も落ちず長時間でもしみ込みません。

同様の雨中防水テストでの様子。今のところまったく撥水力も落ちず長時間でも染み込みません。

第1位 OUTDOOR RESEARCH HELIUM HD JACKET

アウトドアリサーチ Ms ヘリウム HD ジャケット ハイドロ/レモングラス Mサイズ (日本S) 19841215002005

  • 防水性: ★★★☆☆
  • 透湿性: ★★★★★
  • 快適性: ★★★★★
  • 機能性: ★★★☆☆
  • デザイン:★★★★☆

アークに劣らず、今回比較した中で意外にも同率第1位を獲得したのはアメリカで人気急上昇ブランドの超軽量ジャケット、HELIUM HD。初秋のまだ暑いなか、雨も少し降られた程度という条件もあったと思うが、4つのなかでは着心地が抜群に優れていた。何よりも軽い生地、そして多少蒸れたとしてもサラサラ感を失わない裏地。極めつけは脇下のベンチレーションでどれだけ汗をかいても全然脱ぐ気が起きませんでした。

気になったのはポケットが小さくて正直使い物にならないことと、大雨が降ったりしたときにはさすがにこの防水性能では厳しいだろうということ。そういう意味では、軽い雨まで防げる行動着としては単独第1位ですが、長時間の降雨に耐え、防寒にもと考えると先ほどのアークテリクスよりは劣るかと。

20141005_225312_Android

テストと同時期に、雨中での防水性能チェック。PERTEX の撥水性は素晴らしいですが、生地も薄いので性能が落ちるのは早いと思われます。

第3位 THE NORTH FACE RAINTEX Plasma

【2014-2015FW】THE NORTH FACE レインテックスプラズマ ドラマーブルー(DB) NP11402

  • 防水性: ★★★★★
  • 透湿性: ★★★★☆
  • 快適性: ★★★★☆
  • 機能性: ★★★☆☆
  • デザイン:★★☆☆☆

10年以上前からノースフェイスのこの雨具は日本でバカ売れしてた気がしますが、現在でもその安定感は全然変わらず、今回もまったく隙が無い、非常に優秀な製品だと思いました。安定の生地、安定の価格、そして上下セットで初心者が最初に買うにはうってつけ。今回久々に試して驚いたのはその生地の着心地、滑らかさ。秘密は20デニール(デニールは糸の太さの単位)のナイロンで作られた生地にあり、アークテリクスやホグロフスが40デニールですから、単純に1/2の細さで作られていることになります。これらのメーカーによる生地の違いによって、アークテリクスと同じゴアテックスなのに、こちらは本当にしなやかでさらさらで、快適そのものでした。

ポケットの位置と大きさ・数、ジッパーの周りの防水処理など、実用的に考えられた機能が非常に好感持てます。また、フードが襟のなかに収納できる機能は人によっては嬉しい機能でしょう。ただそうした細かい部分を含めて、何よりこのレインウェアはそうした間違いの無い製品を上下セット手頃な価格で揃えられるというのが、特に登山がはじめての方にとっては大きなメリットなのではないでしょうか。

袖口が若干染み込んできているものの、こちらのGORE-TEXも撥水力・防水性ともに群を抜いています。

袖口が若干染み込んできているものの、こちらのGORE-TEXも撥水力・防水性ともに群を抜いています。

第4位 HAGLOFS L.I.M PROOF JACKET

(ホグロフス)HAGLOFS L.I.M PROOF JACKET MEN

  • 防水性: ★★★☆☆
  • 透湿性: ★★★☆☆
  • 快適性: ★★☆☆☆
  • 機能性: ★★☆☆☆
  • デザイン:★★★★★

今回期待した割に残念な印象に終わってしまったのが、最近人気の北欧系オサレギアの筆頭、HAGLOFS。とりあえずいいところ、とにかくかっこいい。色遣いもパステルカラー・ちょっとマットな質感など、それだけで着たくなる、着て山に行きたくなる!これは本当にモンベルにも見習ってほしい笑。

でも残念なところが多々。まずは裏地なんですが、汗かいてジャケットの中が蒸れてきたとき、やっぱりぼくの嫌いなペタペタひっつく感じなんですよね。それが他のウェアと比較してしまうとどうしても受け付けない。防水・透湿性のある超軽量レインウェアということですごく行動着として使いたい気持ちがあるものの、着心地がここまで違うと行動中には着たくないですね。一方で普段は着ないけど、ちょっと寒くなったときに着られるのかというと、ここまで薄手のジャケットならあまり風よけ・保温にもならず。結果としてぼくの使い方のなかでは、結局中途半端なポジションになってしまいます。

なお、後日あらためてレインウェアとして考えた場合の防水性能についてもテスト。結果はちょっと強めの雨が降ったらすぐに撥水性能がへたってしまい、水滴がべっとり生地にしみこんできてしまいました。袖口もどんどん水が染みてきて不快になってくるし、あまり本気で雨対策を考えているとは思えません。
※以下の写真は、比較テストの1週間後、雨の街中で着続けてみた様子。

ほぼこれが初めての降雨使用だというのに、すぐにゴアがへたってしまいました。

ほぼこれが初めての降雨使用だというのに、すぐにゴアがへたってしまいました。

袖口は水がしみこみやすいく、雨の中行動しているとどんどん中に入ってきてしまいます。

袖口は水がしみこみやすいく、雨の中行動しているとどんどん中に入ってきてしまいます。

 

まとめ

今回の比較テストによって、価格とスペック、デザイン、ブランドイメージだけで選ぶと思わぬ落とし穴があるかもしれないことが分ったレインウェア。これはあくまでも今回のテストからの結果にすぎませんが、用途や目的に応じて最強のレインウェアが違うと言うことがよく分ったかと思います。もしよろしければ皆さんのこれからのレインウェア選びに、こちらの記事を参考にしてくださいね。

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