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怪我、疲労、ムレ、日焼け、何でもこなせる一本はどのブランド?
登山時に下半身のレイアリングを考えるときの一要素として「タイツ」は多く登場することかと思います。レイアリングとして重要視される要素が複数機能することに加えてコンプレッションの「回復」が追加されたコンプレッションタイツ。登山女子としてはそこにハーフパンツ・スカートを着用した際の怪我防止、日焼け防止、見た目の色柄などのファッション性が加わりオールシーズン手放せないアイテムとなっています。
前回のおすすめでお伝えしたとおり、コンプレッションタイツの効果は「コンプレッション(着圧・段階着圧)」と「関節サポート(テーピング効果)」という大きく2つの機能があります。
この機能だけを見るとプラスの効果しかないように思われがちですが、一方でコンプレッションウェアの効果が人によって大きく差が出てくることも事実です。今回のテストで筆者が実際に履いて歩いた時にどうだったのか?ということをしっかりとレビューしていきたいと思います。筆者は基本的に週末限定の日帰り登山女子で、平日はほぼ運動ができていません。この記事を読んでいただく際にはそこを前提とした紹介であることを念頭に置いていただき、ご自身にマッチするコンプレッションタイツを探していただければと思います。
前回のおすすめに引き続きこのレビューでは足首まであるコンプレッションタイツに限定して5種類のメーカー、モデルをさらに細かくそれぞれのモデルを見ていきたいと思います。
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評価&スペック比較一覧
個別インプレッション
ワコール CW-X STABILYXモデル(レボリューション)
膝、腰に不安がある方や体力に自信がない登山初心者におすすめ
ここがお気に入り
登山系のコンプレッションタイツの中では抜群の知名度を誇るCW-X。テーピング手法を用いた膝のサポートは特に秀逸で、長時間の歩行でも痛みや疲れを感じさせないだけではなく、跳ねるような瞬発力が体感できます。テーピングというと怪我の時のサポートを思い浮かべることが多いですが、可動範囲を制限するという観点で正しい姿勢への矯正という意味合いもあります。膝の半月板を下から引き上げるように左右に伸びるラインは、特に下りの際に膝を支えるサポートが効くので、膝の崩れを防止し、踏ん張りがききます。
この姿勢矯正は同じ動作を繰り返す登山には特に効果的。顕著に効果が表れる人は普段の歩くときの姿勢を見直してみるいい機会かも。もちろんテーピングには怪我の防止やリハビリ、再発防止にも効果を発揮するので、長時間の運動で膝に不安を抱える方は特におすすめします。
ここが気になる
柄にもよりますが、今回購入したようなテーピングのようにラインがあるものは洗濯やこすれを重ねることでプリント柄が消えていきやすいです。また、伸縮性のある生地で着圧をしながら、同時に関節のサポートをきかせるといういいとこ取りの結果、生地がやや分厚い。アクティビティの際の足の動きを制限するようなことはないですが、通気性には欠ける部分あり。夏や雨の時の着用では履いていることで若干の蒸れを感じました。
こんなタイプ・シーンにおすすめ
季節に関係なく、ハイキングから数日行程の登山までをオールラウンドで支えてくれるモデルです。
2XU W’s Elite MCS Compression Tights
複数日行程の登山などタフな運動をこなしたい人におすすめ
ここがお気に入り
コンプレッションタイツでは言わずと知れたメジャーブランド2XU(ツータイムズユー)。オーストラリア・メルボルンで2005年に創設したブランドです。このモデルで特徴的だったのは段階着圧による疲労軽減効果。実際にこれを着て身体を動かすと、足首からふくらはぎ、ふくらはぎから膝へ、下から上へ締め上がるような着圧をハッキリと感じられます。
足全体を均等に圧迫するような圧と違うこのような段階的な着圧(段階着圧)は、メーカーによると血液循環を促進し、乳酸の排出を促し、筋肉痛を軽減するといわれています。あくまでもわたしの実感ですが、これまでであれば「次の日には確実に筋肉痛だな」というくらいの運動量をこなした後でも、疲労感は多少あれども筋肉痛はなし。下から上への圧の流れが疲労感を押し流してくれたかのよう。個人的には着たときの着圧感では締めつけすぎず、緩すぎずと、今回の中では一番ちょうどよかったです。
ここが気になる
おしり、太もも周りはほかのブランドに比べてゆったりめで、少し緩めになってしまったのが残念でした。今回実際にモデルで比較してもこの太もも周りのゆったり差は顕著にわかります。実際の生地の伸縮性が各モデルで違いはするものの、履いていない段階で明らかに2XUのモデルはふともも周りがゆったりしています。2XUのコンプレッションウェアは「すべてのアスリートのパフォーマンスを向上させるウェア」として謳っているので、アスリートで太ももにしっかり筋肉がついた人を想定して開発したというところが表れているのかもしれません。
こんなタイプ・シーンにおすすめ
腰・膝のサポートに関しては重点を置いていないので、段階着圧でのサポート以外にしっかりとした関節のサポートを求めている人には不向きなモデルとなります。着圧感がきつすぎず、疲労感を引きずりにくいことから複数日の登山などタフな運動に使いたい、長期間身に着けていたいという人におすすめできるモデルです。
C3fit インパクトエアーロングタイツ
軽さと動きやすさ、膝のサポートをバランスよく押さえたい人におすすめ
ここがお気に入り
C3fitはからは膝・腰・ふともものフルサポートモデルかつ軽量といういいとこどりの、こちらのモデルを選びました。腰とひざのサポートをする、縫い目ありの製品は重くなりがちの中、関節のサポートをと軽量を双方の効果がはっきできることがポイントのモデルです。
3D設計で生地自体があまり伸びなくても身体に沿ってくれるため、関節サポートを重視しているモデル特有の可動域を減らしたり圧迫したりして足を矯正する、という感覚が薄いです。他のモデルのコンプレッションタイツが一部可動域を減らすことで動きを矯正やサポートを行い、理想の動き方に近づけることで普段以上の動きやすさを実現している一方、このモデルは矯正して勝手に動かされている感覚が特に薄く、まるでタイツを身に着けていないような自然な履き心地の良さが感じられ、他のモデルとはまた違った動きやすさの感覚が実感できます。
コンプレッションタイツは生地自体が伸びて身体を覆うことで着圧を実現しているので、伸縮が弱まるとその効果は薄くなる、つまりは一般的に言って消耗品なのです。ただ、伸縮が抑えめでも効果を感じられるというこのモデルは、その意味でより長く使える素質を備えており、その点も評価できます。その他、生地自体がドライメッシュの生地を採用しているので、汗や雨でぬれた時にもさらっとした感覚がずっと継続します。
ここが気になる
一方で気になる部分といえば、伸縮が少ないがゆえに生地自体の感触がやや硬めでシャカシャカしていること。人によってはこの履いた時の肌触りが気になることもあるかもしれません。もうひとつ伸縮が少ないことに起因する難点としては、着圧が弱く、コンプレッション効果による疲れにくさやバネのような瞬発力が得られないことが挙げられます。
こんなタイプ・シーンにおすすめ
ドライメッシュ機能があるので夏場のハイキングにはおすすめできます。コンプレッションタイツの疲れにくさや関節サポートに頼りきってハイパフォーマンスを出していくのではなく、怪我を防止しながらも、ステップアップのために更に自身の体力や筋力をつけていきたいという方にはおすすめ。さらに、今回のモデルの中で唯一破れた時の補償が明記されているので、長く使っていける一本です。
skins DNAMIC ウィメンズ ロングタイツ
登山だけではなく、日常やヨガなどいつでも履いていたい方におすすめ
ここがお気に入り
スキンズというブランド名の通り、肌に何もつけてないような生地のやわらかさ、触りごこちの良さが群を抜いています。どんな動きをしても隙間が空いたりシワがよったりすることはなくピッタリと動きを追いかけてきてくれます。また、汗をかいても生地の心地のよさは損なわれず、いつまでも快適です。
今回比較を行ったコンプレッションタイツの中で「就寝中に使用して回復効果が期待できる」と記載があるのは本モデルと2XUの2モデル。他のモデルは運動中のみの着用で「就寝中の着用は避けてください」と明記がされています。実際にこの2モデルは長時間の使用でも確かに窮屈さは感じられにくかったのですが、その中でも特に「脱ぎたい!」という衝動がほとんど感じられなかったのがSKINSです。このため日常を含めて比較的穏やかな1日で着用するのであれば、生地が柔らかいSKINSを、激しい運動を含めた1日を連続して過ごすなどタフさが必要となる場合には、パフォーマンスアップと段階着圧の確かな2XUというように使い分けるのをおすすめします。
ここが気になる
このDYNAMICシリーズは大きくストレッチメッシュパネルがふくらはぎから膝まで使われており、登山時の日焼けや怪我を防止する効果は薄くなりそう。できればハーフパンツやスカートと合わせるのには避けて、ロングパンツの下に履くことをおすすめします。また、生地が着心地よく柔らかいので、他のモデルよりも伸びて着圧が弱めになることが予想されます。特にウエスト部分のゴムは伸ばす回数が多い分、他よりも早くへたってきました。また関節のサポートに関しては生地が柔らかいのでサポートによる膝の持ち上げのサポートや関節のブレの防止効果はあまり期待できないように感じました。
こんなタイプ・シーンにおすすめ
生地が柔らかく着心地がいいので、日常をメインに、軽く運動するときにもずっと履いてむくみや疲れを防止したいという方におすすめできるモデルです。
ミズノ バイオギア BG9000
運動の時にも「見た目」「ファッション」を気にしていたい方におすすめ
ここがお気に入り
ミズノのバイオギアの中から、トレッキング用のモデルのBG9000をチョイス。個人的に気に入ったのは縫い目なしのフラットな切り口。靴下に登山靴を重ねて履くと足首のちょっとした段差でも気にかかったり、こすれて傷になったりするところだと思いますが、このモデルでは裾がフラットになっているため段差を気にすることなく履くことができます。
また、登山のファッションはバリエーションが出しづらいので裏表どちらも使えるリバーシブルであることどちらも使えるのはうれしいところです。写真はリバーシブルをわかりやすくするために片足が黒、片足は青で撮影してあります(左右で色柄が違うわけではありません)。1つのモデルで2種類の柄を楽しめるのでコーディネートがいつも同じという悩みからは脱出ができます。
ここが気になる
難点としてはまず、股から腰の切りかえしまでが極端に浅く股のところにフィット感がないため、股関節の動きを狭め動きやすさを妨げるときがあります。この股部分の収まりの悪さは不快と言ってしまってもよいレベル。さらにミズノ独自の接着方法は生地の伸縮性が阻害され個人的には履きにくく、骨盤サポートが含まれていることによる他よりもやや高め位置(腹部)への圧迫感も好きになれませんでした。
こんなタイプ・シーンにおすすめ
山にのぼる際にも見た目、ファッションにこだわりたい方にはおすすめの一本。表と裏2種類のバリエーションがあることは大きなメリットになると思います。「骨盤」のサポートでは全モデルのなかでもこのモデルが一番。体の中心にあり、歪の矯正や歩くときに使い方を覚えるとダイエット効果まで期待できると言われているのが「骨盤」です。骨盤のサポートを行いつつ腹部まで覆い隠してくれるので履くとまず背筋が伸びて姿勢を正してくれるのが体感できます。
インプレッションまとめ(総評)
今回5種類のモデルをはき比べてみてわかったのは試着が最重要だということ。今回試したモデルの中には正直著者の身体にあっていないと感じるモデルもありました。ぴったりと体を覆うのがコンプレッション機能を最大限に引き出すということから、サイズ選びから要注意。できれば店舗などを訪ねて試着して動くうえでサイズを選びたいところです。どのモデルも「膝下、膝裏がフィットすること(動いても下がってこない、しわが寄りすぎないこと)」「股下に隙間ができないこと」を基本に着圧感、サポート、着心地など総合的な部分を確認していきましょう。
飛行機のエコノミー症候群対策として出てきたといわれるコンプレッションウェアが登山者やランナーでみかけるようになってから数年がたちました。根管のコンプレッションの機能は大きく発展や進歩が見られない気がする一方、ダイエットや日常生活での利用、むくみ軽減など様々な分野でコンプレッションウェアに期待する「目的」が増えてきたように思います。目的が増えるにつれて変わっていくであろう、コンプレッション技術の解析や進歩に期待したいと思っています。また、夏はハーフパンツをはきたい登山女子としてはカラーや柄の「見た目」の部分の進化にも多いに期待したいところです。