カシオ計算機のアウトドア向けスマートウォッチ、PRO TREK Smartシリーズの最新モデルWSD-F30を使い続けてはや3カ月。前2回のレビューでもお伝えしてきましたが、ボディの小型化やバッテリー消費の改善など、前モデルからさまざまな点で着実な進化を実感。細かい改善要望はありつつも、日常からスポーツや登山まで、カジュアルなアウトドア好きに寄り添うスマートウォッチという地位をますます確立しつつあると感じました。
今回は個人的に気になっている最後のチェックポイント、ゲレンデスキーやバックカントリースキーなど、ウィンタースポーツでの使い心地についてレビューしてみたいと思います。
目次
目次
- ウェアの上から装着可能なクロスバンドが前よりできる子になって帰ってきた
- -10℃の耐寒仕様と視認性の高い画面表示は雪山でこそ威力を発揮
- スノーアクティビティに便利なアプリはSki Tracksで決まり
- まとめ
ウェアの上から装着可能なクロスバンドが前よりできる子になって帰ってきた
WSD-F30(以下F30)はトレッキングやランニング・サイクリングだけでなく、スキーをはじめとしたウィンタースポーツにもフィットする様々な特徴・機能を備えています。
そのひとつは、手軽に取り外して付け替えが可能なバンド。オプションとして発売されるクロスバンド「WSA-BX1」に付け替えるすることで、スキーウェアなどの厚手のウェアの上から時計を装着することができます。
実際にスキーをしながら使ってみましたが、いちいち腕をまくることなく、あるいはスマホを取り出したりすることもせず、即座に時間や高度といったセンサーなどにアクセスできるため、想像以上にストレスが軽減されました。
付け替え自体はバンドのバネ棒を付属のバネ棒外しで引っ掛けてすぐ着け外しができます。実際には爪でも簡単に操作できるため、付け替えは思った以上に気軽です。
実は前モデルF20時代にも同じようにバンドを取り外し可能なモデル「F20X」が発売されていました。当サイトでもレビューしていますが、この時の付け替え用純正ナイロンバンドが何とも締めにくく、微妙な使い心地という印象であったため、今回も同じようになっていないことを願いながら恐る恐る試してみたのですが、その結果はというと……
あっという間、いとも簡単に装着完了です。
そのお手軽さは今までが何だったんだというくらいでしたが、その理由は明らかです。以前までのクロスバンドでは柔らかいバンドをバックルに通すだけでも難しく、さらに伸縮もしないためちょうどよい締め具合に調整するのも慣れが必要で、いちいちストレスが溜まっていました。それが今回のモデルでは、バンドがあらかじめバックルに通っていて、抜けないようになっています。さらにバンド自体にストレッチが利いているため、装着の仕方は、
- ループ状になったバンドを腕に通す(下写真左)
- ゴムバンドを締める(下写真右)
だけ。はじめてでもスムーズに装着が可能でした。小ぶりになったボディはスタイリッシュかつ引っ掛かりにくくなり、さらにバンドの伸縮によって緩みも少なくなり、装着感も上々。これならばもうわざわざ別のバンドをあらためて探す必要はなさそうです。
-10℃の耐寒仕様と視認性の高い画面表示は雪山でこそ威力を発揮
動作可能温度範囲が「-10℃~」であることも、この時計が冬のアウトドアにフィットする大きな特徴のひとつ。-10℃というと厳冬期の冬山登山では心もとないのではないかと思う人もいるかもしれませんが、実はプロトレックシリーズの他モデルと同程度の耐寒仕様であり、実際には-10℃よりも気温が低い環境でも特に動作に不具合はなく、バッテリーも激減することなどなく普通に使用できることは、前モデルのF20Xでも確認できていました。自分の実感では雪の降りしきる2月の2,000m級冬山でも無難に使用できていたので、よほどの厳しい環境で使い続けない限りは心配はないでしょう。
また新しい有機ELディスプレイの画質・発色・コントラストを含めた視認性の高さについては、快晴の雪山でこそ、その真価を発揮してくれたといえます。特に快晴のゲレンデでの「白背景・黒文字」モノクロ表示は極めてクリアで、この設定で時計から高度・気圧・コンパスが特に操作せず確認できるF30の使い心地は快適そのもの。ちなみにそれ以外、カラー表示中での黒背景の操作画面でも特に見難いというほどもなく(下写真右)、総じて表示周りは前モデルに比べると使い勝手は確実に向上したと感じられました。
スノーアクティビティに便利なアプリはSki Tracksで決まり
ウィンタースポーツでF30と一緒に使用するアプリについて、スノーハイクや雪山登山では無雪期と同じようにYAMAPアプリが便利ですが、ゲレンデスキーやバックカントリースキーでは、Ski Tracksがおすすめ。その理由は、GPSトラッキングはもちろん、スノースポーツに特有の動作を自動検出してくれたり、記録したデータをGPXファイル書き出したりといったきめ細かい機能を備え、シンプルながらやりたいことがほぼ網羅されているということに尽きます。ちなみに使用環境はAndroid 8.0端末ですので、それ以外の環境での動作については保証できません。
Ski Tracksをどう使うか
使い方はいたって簡単。スマホとF30にアプリをインストールし、スマホと時計がペアリングされた状態(機内モードではダメ)で、F30の「開始ボタン(▶)」をタップするだけ。これでトラッキングがスタートします。すると「記録中」という表示とともに画面が一時停止ボタンに変わり(下写真)、スマホ側ではほぼリアルタイムで記録された情報が蓄積され、表示されていきます。
アクティビティの種類を設定すると(下図)、それぞれのアクティビティに適した測定(表示)項目に調整されます。アクティビティは途中で変更してもそれに即した表示内容にすぐ変更されるため、最初にうっかり指定し忘れていても問題ありません。
トラッキング中はリフト乗車時とスキー滑走時を自動的に検出します。自動で各滑走が振り分けて記録されるので、個々のパフォーマンスを確認することもできます。自分がどれくらいのスピードで、どれくらいの距離を滑っているのか知るだけでもなかなか新鮮な気持ちですが、それぞれの滑りで「速度・距離・垂直降下・斜度」といった細かなデータで確認できるのが非常に便利(下図)。こうしたデータは取り続けて比較してみると「うまく滑れた・滑れなかった」といった、これまで感覚的に捉えていたイメージが意外と数字で出てくるから面白い。
ログの取得は電波が届かなくても問題なくできています。つまり機内モードにしてバッテリーを節約することも可能です。ただ、今回通常のバッテリーモードで6時間以上使用していましたが、バッテリーは50%以上残っていましたので、そこまで神経質になる必要はないでしょう。1日のすべりを終えた、トータルでのアクティビティ結果が下の図。仲間と比べてみる、過去の自分と比べて上達度合いを知るなどいろいろな楽しみ方が可能です。
さらにGPSでもトラッキングされていますので、自分の行動した軌跡をマップ上で確認することもできます(下図)。表示は等高線・衛星写真など数種類から選ぶことができ、表示された各滑走マークをタップすればそのパフォーマンスを確認することができます。バックカントリーやサイドカントリーでは滑る場所があまり定まっていないため、過去に滑った斜面について、どの辺からドロップしてどの辺に滑り込んでいったのかを記録しておけることはかなりありがたく、個人的には非常に重宝しています。くたくたになるまで滑った成果や、思い出に残る斜面を後で振り返ったりと、仲間同士で盛り上がること必至です。なおトラッキングデータは様々なフォーマットでの書き出しが可能です。自分はGPXで書き出し、STRAVAにアップロードして一元的に保存しています。
ちなみに、記録中は時計上でも簡易的にデータを確認することができます。スマホとペアリング状態である必要はあるものの、記録の開始・一時停止・終了を手元で操作できるため、事実上スマホを操作することなくトラッキングできてしまいます。この便利さは一度体験してしまうと手放すのが難しい。いやはや自分たちはとんでもない未来に生きています。
まとめ:WSD-F30はウィンタースポーツの楽しみを加速してくれる
プロトレックスマートシリーズを雪山で使用するのは、前モデルF20Xから2代引き続きとなりますが、今回のF30は、ボディ・機能面での正統進化に加え、前モデルで微妙だった最大のポイントであるクロスバンドの完成度が大幅に向上したことで、全体として非常に満足度の高い結果となりました。
メインアプリのSki Tracksも相変わらず使いやすく、スキーでもここまでデータを細かく取れると、こんなにも楽しみ方が広がり、新たなモチベーションが湧いてくるものかと驚いています。
ただ、以前から指摘している冬場でのタッチスクリーン操作の煩わしさは依然として解消されずにいます。それどころか画面サイズが小さくなったことで、手袋での操作はほぼ絶望的。地図の移動などタッチが必要な操作についてはまだ手袋を脱いで行う必要があるため、地図を頻繁に確認する場合ではかなり面倒です。タッチスクリーン操作に代替する、ボタンあるいは音声による操作が実現するといいな、などなど、新たな欲望は尽きません。
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