当たり前だが、できることならパフォーマンスはいい状態で山を走りたい、登りたい。皆さん、同じ思いだろう。
特に足の怪我やクセによるトラブルは回避したいところ。今回レビューするのは、案外と見落としがちのインソール。標準で付属しているものと交換するだけで、人によっては足や腰への負担を軽減したり、パフォーマンスをよりいいものにしてくれたりする代物だ。
もちろん、人によって足の形、走り方のクセ等にはバラツキがあるため、効果や好みは分かれるところだ。それを踏まえたうえで、今回はメーカーやモデルによってどんな違いがあるのか、どれが好みだったかなどをお伝えすべく、自分が日ごろから気になっていた注目のインソールを試してみた。
目次
今回比較したインソールについて
基本的に各メーカーのランニング向けモデルをチョイス。丹沢山塊(塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳、鍋割山など)で繰り返し履いてみた。評価するポイントは以下の3つ。
- 快適性・・・当たり前だが、インソールとして心地よいか否かを評価している。快適なアーチサポート、着地した時、蹴り出しの時の感覚が主なジャッジポイント。インソールが足裏に対し、適度な硬さ、長時間使用してみての、通気性等も考慮して判断してみた。
- 疲労感軽減度・・・インソールを単純に使用してみて、疲れにくいか、どうか。ふくらはぎ、膝、腰などの負担が抑制されていると感じられるかを判断。(体調や個人差、使用時間やフィールドなどによって異なるので、一概には言い難いが……。)
- フィット感・・・足入れしてみたフィット感をジャッジ。アーチサポートの適度な感覚、かかと部やアッパーなどは適切なホールド加減になっているかが主な判断材料。また、足裏全体がグリップなど、アクティビティ時のフィット感も見極めてみた。
テスト結果&スペック比較表
評価 |
AAA |
AAA |
AA |
A |
アイテム |
バネインソール ベーシック |
SIDAS ラン3D |
SUPERfeet グリーン |
SofSole エアープラス |
参考価格 |
8,640円 |
5,400円 |
7,560円 |
7,560円 |
ここが◎ |
- 足裏全体の骨格を整えてくれる優れた快適性
- 蹴り出しの安定性
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- 足裏全体に行き渡るクッションサポート
- 蹴り出しの安定性
- シューズ内でのホールド力
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- 優れたサポート力と衝撃吸収性能
- 膝、腰への負担が軽減
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快適性 |
★★★★★ |
★★★★☆ |
★★★☆☆ |
★★★☆☆ |
疲労感軽減度 |
★★★★☆ |
★★★★★ |
★★★★☆ |
★★★★☆ |
フィット感 |
★★★★☆ |
★★★★☆ |
★★★★☆ |
★★★☆☆ |
各モデルインプレッション
SUPERfeet グリーン
100万人の足のデータから開発され、リハビリ、アウトドア、スキー、ランニングなど様々なアクティビティーに愛用されてきたSUPERfeet。今回、トレラン用にセレクトしたのはベーシックなモデルである「グリーン」。バイオメカニクスに基づいたヒールカップを採用しており、ラインナップ中、最もサポート力と衝撃吸収性能に優れたモデルだ。足入れしてみたは、やや硬めだが、内くるぶしの下あたりをしっかりと持ち上げてくれ、かかとの脂肪層を包み込みでくれる。かかと着地の方には、なんとも心強いサポート力だ。自身の脂肪層で、サポート力を高めているためか、膝、腰への負担が、自然な感じで軽減されている。走ってみると、やはり、若干の硬さは否めない(とりわけ、つま先部分)が、サポート力は光るものがある。天然コーティング剤により、臭気の元となるバクテリア繁殖を抑制してくれるのは、嬉しいポイントだ。
バネインソール ベーシック
母指球、かかと、小指の付け根、この3点を軸に、足の骨格を整え、全身のゆがみを整える。それがバネインソールの大まかなコンセプトだと、私は認識している。足入れしてみた感じは、アーチ部分を軽く持ち上げてくれて、足裏全体の骨格を整えてくれるイメージだ。メーカーウェブサイトによると、かかと部にある黄色いコントロールカップが、着地時の衝撃を分散しつつも、その反発力により、蹴り出しやすくなるそうだ。なかなか実感はしにくいが、そう感じなくはない。日本人の足型を研究開発し、作られたインソールだけあって、確かに一番しっくりきた(あくまで、個人の感想だが)。表面素材には、防臭抗菌に優れており、冷感・発熱の温度調整機能を備えた「QUANTEX(コンテックス)」を採用。山だけではなく、日頃から使用してみたい一品だ。
SIDAS ラン3D
硬い素材を使用しているものの、かかと、アーチのみならず、クッションサポートが足裏全体に行き渡るようなインソールだ。クッション性、グリップ性に加え、蹴りだしをサポートしてくれる“しなり”にも工夫されており、他のインソールよりもランニングに特化したモデルと言えよう。硬さの印象は、先述のsuperfeetグリーンに近い。体軸バランスをほどよく保ち、足裏全体にピタッと密着しているものの、若干蒸れにくい傾向にある(状況や個人差にもよるが)。ロードよりもトレイルを走ると、シューズ内での足があまり動かないことがより実感できる。また着地時に、足裏で受ける負担が程よく分散されているのは、特筆すべき点だろう。
SofSole エアープラス
今回、試してみた中で、1番のソフトなインソールである。それゆえ、着地時の衝撃吸収は気持ちいいが、不安定さに感じる人もいなくはないだろう。また、ほかのインソールに比べて、厚みがややあって、シューズによっては、アッパー部分が狭まってしまうものもあるかもしれない。温度を制御する素材を採用されているとのことだが、通気性には少々疑問が残る(当初はさらっとした感じではあるが……。)。とはいえ、かかと部のヒールバンプは着地時の衝撃を格段に吸収してくる感じだ。走ってみると、膝や腰への衝撃が和らいでいることに気がつく。IMPLUSR衝撃吸収材とエアー構造SKYDEXRとで、ソフトな着地を実現しているものの、個人によっては、好き嫌いがわかれるところ。相性次第だろう。
総評
本命はシダスとバネ。骨格、軸、グリップ、衝撃分散など、近しいものがある。どちらも同じくらい、トップクラスの快適性を感じることができた。ヒールカップに特化した快適性はバネ、足裏全体を捉えた快適性はシダスというところだが、最終的にどちらがよりしっくりくるかは個人的な相性もあるだろう。
ヒール部分の機能性、防臭抗菌素材の採用等で、バネを高く評価した。スーパーフィートは、確かに衝撃吸収や蹴りだしなど、しっかりと足元をサポートしてくれるものの、つま先部分の衝撃吸収があまり感じられない(個人差あり)。長時間走ると、まれに硬さゆえか、違和感を感じる時もなくはない。ソフソールは(好みによるが)負担を抑えた柔らかめの着地を好む方なら、ぜひ使ってみて欲しい。ヒールバンプが自分のかかとに合わせて調整されていくのは、なんとも心地よい瞬間だ。
とはいえ、着地時の衝撃吸収、ねじれ防止、蹴りだしサポート、アーチサポートなどなど、インソールの機能性は様々。生かすも殺すも、個人のフォーム次第な点は否めない。ぜひとも、色々試してみて、自分の足に合うものを選択してみることをおすすめする。
奥山賢治
Trailist (トレイルフォトライター・大会運営スタッフ・きこり見習い・山小屋サポーターなど)。フリーのトレイルライターとして、トレイルラン関連の媒体で、記事執筆をしています。大会運営スタッフとしての所属は北丹沢山岳センター→パワースポーツ(今ここ)。コース整備がきっかけで、修了したのは森林整備基本研修及び演習林実習コース(つまりは、きこり見習い)。時折、丹沢最高峰の蛭ヶ岳山荘でお手伝いをしています。
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