山道やオフロードを走るためのトレイルランニングシューズの中には、100m以上の長距離を走るためにチューニングされたモデルが多くあります。
そうしたモデルはゴリゴリのウルトラレースに出場するアスリートにはもちろん最適なのですが、モノによっては少しでも疲れにくい、足に負荷のかかりにくい(走りやすい)シューズを探しているビギナーにとってもおすすめできたりします。
今回はそんな長時間のランニングでかかる負担を効果的に吸収して、ランナーが野山を快適に走り続けることを得意とした、長距離向けトレイルランニングシューズをさまざまな視点から履き比べ、それぞれが適したおすすめの使い方などを考えてみました。
目次
比較候補を選ぶ
長距離ともなれば、靴と付き合う時間も比較にならないほど長くなります。ときには数十時間と履き続けることも珍しくありません。今回候補を選ぶにあたっては、長時間・長距離を耐えられるクッション性や快適性、そして安定性の高さを重視するシューズを、ウルトラランナー御用達メーカーの定番から新たにこのカテゴリに参戦してきた話題のメーカーのモデルまで、幅広く偏らないように選びました。ベスト候補の5足はこちらです(下写真)。
ALTRA LONE PEAK 5
アメリカではトレイルランニングシューズとしてHOKA と人気を二分するAltra。そんなAltraのローンピークは約10年前に発売され、メジャー・マイナーチェンジを繰り返しついにバージョン5.0となった不動の超ロングセラーモデル。
inov-8 TERRAULTRA G 270
夢の素材グラファイト。そんな素材をアウトソール活用し、グリップ・耐久性・軽量性を高いレベルで実現したこのシューズも、バージョンアップしてG270となりました。日進月歩で技術が向上するギア界で、このグラファイト搭載シューズはまだ輝けるのか。
LA SPORTIVA CYKLON
シューレースにダイヤル式のBOAシステムを搭載した画期的なトレイルランニングシューズ。ここ数年で注目と実績を増してきた最新技術と、マウンテンシューズ大国イタリアの名門が長く培ってきたノウハウによって、厳しい山岳地帯も抜群の安定感で走れるサポート力の高いシューズです。
On Cloudultra
奇をてらったかのようなミッドソール形状のon。トレイルシューズにはそれほど力を入れていませんでしたが、UTMB・UTMF優勝経験を持つグザビエ・ベルナールを迎え入れ、トレイル界に本腰を入れてきた、そんなonの本気の一足。
THE NORTH FACE ベクティブ インフィニティ
同社のカーボンプレート搭載シューズフライトベクティブ。その陰に隠れがちなこのシューズ、カーボンプレートこそ非搭載ですが、ベクティブテクノロジーをそのまま受け継いだ高性能シューズ。
テスト結果&スペック比較表
スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方はこちら
各モデルのインプレッション
ALTRA LONE PEAK 5
不整地を走る楽しさを感じられる、不動の超ロングセラーシューズ
ここが◎
- 窮屈感なくフィット感バッチリの履き心地
- 高いクッション性と足裏のフレキシビリティを両立
- アッパー・ミッドソールの耐久性
ここが△
- 下りでの安定性
Altra ローンピークの良さは、なんといっても長時間履いていても続く快適性と、足裏のフレキシビリティ。Hoka one oneのようにクッションが特別厚いわけでもなく、ベアフットシューズのようにミッドソールがほとんど削られているわけではないのですが、この靴を履いていることを忘れるかのような柔らかいフィーリングは何ごとにも代えられません。
スタックハイトは25mmありミッドソールによるクッションも十分ありながら、地面の感覚をしっかり捉え、悪路でもすぐさま反応できる安定感の高さも備えています。これまでのローンピークのミッドソールにはEVAフォームを使用していましたが、5.0からはウレタン系のALTRA EGOを採用し、長時間走っていてもヘタレにくなり、より長時間に向いたチューニングが加算されています。
アウトソールはアルトラ独自のMAX Trackという素材を、Trail Crawsというラグパターンで仕上げ、岩も木でもしっかり粘るようなグリップをみせてくれます。通常のトレイルでは、ほとんど心配する必要はないでしょう。しかし、急カーブや角度のついた岩では、ややグリップが弱く感じることもありました。しかし足裏で路面の状況を一早く察知できるため、滑っても他のシューズよりすぐ体勢を立て直せます。
アッパーは前面に非常に細かいメッシュ生地を採用しています。この生地は水分を吸収しずらいので、しっかりと通気性を確保してくれます。つま先・サイド・ヒール部分は厚めの生地で補強されているため、通気性は低くやや重量増ですが、圧着ではなくしっかりと縫い付けてあるため剝がれにくく、耐久性・プロテクション性に性能を振っています。
しかし生地は非常に柔らかいので、フィット感・快適性は高く保たれています。つま先はこれぞアルトラの特徴である広めのボックス構造で、足の指が動かせるため、長距離を走っても快適に過ごせます。しかしこの自由さは、下りでは前後に足が滑りがちで安定性が低くスピードを出して走ることはできませんでした。
最初の一歩目から非常に快適性が高く、長時間履いていてもその快適性は保たれたまま。それも、アッパーからミッドソールまで全体的に非常にやわらかな作りで、適度なクッション、粘りのあるグリップ、足指を自由に動かせるほど広いつま先部分、そしてゼロドロップ。この感覚のためだけでローンピークを選ぶ価値は十分あります!
長時間・長距離トレイルを走るために作られているので、スピードを出して走るような工夫はありませんが、足とシューズが一体化したかのようなライド感は、一度知ると病みつきになるシューズ。これまでゼロドロップだからという理由で手を出さなかったウルトラランナーにはぜひ一度でも試してみて欲しいし、トレイルを走る楽しさそのものを感じたいという人にはもちろんおすすめのオールラウンダーです。カラーリングが非常に多いのも魅力。
inov-8 TERRAULTRA G 270
グリップ力と安定性を兼ね備えた安心のグラフェンソールに、優れた軽量性と柔軟性で疲れにくさも◎
ここが◎
- 優れたグリップ力
- 安定性とクッション性を両立したミッドソール
- 軽さ
ここが△
- プロテクションが弱め
inov-8は、2019年にグラフェンという素材を使い、柔らで粘りのある抜群なグリップながら高い耐久性を誇るという矛盾するGグリップアウトソールを開発しました。当時の僕も感動したのを覚えています。最新技術を搭載したシューズは、発売から数年の時を経てより実践的に円熟味を増してきています。
スタックハイトは12mm-12mmと薄めのゼロドロップ。今回の比較シューズの中では一番薄いミッドソールのお陰で、一歩一歩着地の度に足裏にトレイルの状況が伝わるので、どんな不整地でも瞬時に対応できます。このPOWERFLOW MAXと呼ばれるミッドソール、クッショニングは弱めでやや反発力を強めたチューニングが保護こされています。特徴的なのはインソール。やや厚めの作りになっていて、裏側は米粒を敷き詰めたような滑り止めが施されているので、シューズ内でインソールが滑るのを防いでくれます。この厚めのインソールが、ミッドソールの弱めのクッション性を補う形になっています。
湿った岩や木でも、縦方向・横方向ともに滑ることはなく、グリップには何の心配はありません。雨の中も走りましたが、他の靴では「あ、滑るかも!」という心配を何度かしましたが、走ってる最中滑るという心配は一切ありませんでした。そのグリッピングは、まさにこのシューズの真骨頂であるGグリップと呼ばれるアウトソールのおかげ。ここまで粘着性のあるグリップだとコンパウンドが柔らかく削れやすいので、どうしても耐久性は低くなってしまいますが、Gグリップはグラフェンの恩恵で二兎を負い二兎を得た稀有なアウトソールです。削れやすいロードも多めに走ってみましたが、この程度の距離ではほとんど削れは見られませんでした。テストコース上に粘土質の路面もありましたが、そこでも滑らなかったので、深い泥の中などを走らない限り心配する必要はないかもしれません。
アッパーはメッシュ生地を2重にしたものをで、通気性はすごく良いわけではないですが、必要十分な程度は確保されています。サイドにはTPUと思われる生地を圧着し横方向への耐久性を高め、つま先部分はもう少し厚めのプロテクションが施されています。岩などからの擦れ対策には十分かもしれませんが、足指のプロテクションとしては少し弱めかもしれません。
フィットに関しては可もなく不可もなくといった感じですが、足の甲はシューレースでブレないようにフィットさせれますし、トゥーボックスは割と余裕があるので、長時間履いても苦しさはなく、比較的快適に履いていられます。
やはりアウトソールのグリッピングは最高で、油の上を走らない限り滑らないんじゃないかという程しっかり地面に噛みついてくれます。それでいて丈夫なので、現在のトレイルランニングシューズの中でも、トップレベルのアウトソールでしょう。高グリップかつ軽量なのでそれが活かせる路面、岩が木の根が多いテクニカルなコースで特に活躍してくれます。一方でやや反発性のあるミッドソールと適度なクッショニングを提供してくれるインソールでもあるので、ロードでも硬めのトレイルでも気持ちよく走れるという、路面を気にせず使える万能なシューズでもあります。
オフロードを安全に走りたいというビギナーから、タフな地形を長距離走っても疲労が溜まりにくく安全なグリップと軽量性でレースなどタイムを上げたい人まで、比較的幅広いランナーにとって強力なサポートをしてくれるでしょう。
On Cloudultra
計算されたエンジニアリングで生み出されたISOP Award受賞シューズは初心者にもおすすめできる良バランス
ここが◎
- クッション性とたわみにくさを両立されたミッドソール
- フィッティング(とその調整機構)
- プロテクション
ここが△
- 雨天時のグリップ力
onというと、ランナーやトライアスロン選手、そしておしゃれさんの普段履きに人気のシューズというイメージが先行し、正直なめていた節は否めません。しかし今回新たなトレイルランニングシューズを発売するにあたり、グザビエ・ベルナールとスポンサーシップを結びました(以前彼はアシックスを履いていたので、日本人としてはちょっと残念…)。過去に何度もUTMBを制覇たフランス人ランナーで、UTMFも勝ったことがあるので知っている人も多いかと思います。そんな経緯もみてると、onがこのシューズにかける情熱はかなり高めでしょう。そんなウルトラディスタンス界のトップアスリートが履くシューズは、以外にもゴリゴリのレース仕様というよりも、まんべんなく高いレベルで弱点が少ない、いわば初心者に最もおすすめできる良バランスシューズでした。
横から見ると一目でわかるon のミッドソール構造ですが、onの他のシューズとは異なり小さ目の穴を2層に折り重ねています。そもそも通常のシューズはミッドソールの素材によってクッションの質を調整をしていますが、onは穴の開いたCloudTecの構造によってクッション性を出しているため、穴の大きさや配置によって調整しています。このCloudultraは長距離用モデルということで、穴を小さくすることでたわみを減らし耐久性を高め、2層にすることによりクッション性を出すような設計になっているのでしょう。
そのクッションはいつものonにしてはやや固めのチューニングで、ロードを走ると硬さを感じますが、トレイルでは適度に柔らかいしっかりとしたクッションを感じることができます。ロードでは、インソールの真下に配置されたスピードボードと呼ばれるプレートをダイレクトに感じるので硬めな印象になります。ちなみにこのプレートは、反発力によってスピードを出すためとロックガード機能も兼ねています。
アウトソールのラバーは他のシューズと異なり、全体にでなはく部分的に配置されています。全部で4つのセクションに分かれ、かかとのラグは浅く、土踏まずには大き目のラグなどと、異なる大きさ・深さのラグを配置し、それぞれが機能的に働くように計算されています。そのおかげか、岩・木根、砂利道など走りましたが心配するようなことはありませんでした。
しかし、雨天時はやや滑りやすくなるようで、木道では何度か横滑りし、下りセクションでは力が入ると耐えれず滑ることがありました。ソールが固めで柔軟性がないため、足元のコントロールがしにくく感じたので、雨天時やテクニカルな路面では注意が必要です。
アッパーは疎水性のある細かいメッシュ地と、クッション性のあるドット状に穴が開いた生地が重なっており、通気性とフィット性を両立させています。かかとからサイド~つま先にかけてはPTU素材が圧着されており、つま先部分には少々厚めのプロテクションが配置されています。
シュータンとシューズは一体化しているので、シームレスでフィット感は非常に良好です。入り口はややキツメですが履いてしまえば気にならないのと、そのおかげでローカットながら小石などは入ってきません。しかしタイト気味なので、足の幅がある人にとって履きづらいでしょう。
フォア側にはFlipReleaseという機構が設けられており、この小さなパーツを回転させることで、先端のフィッティングの締緩を瞬時にできます。長時間走って足がむくんできたときは緩める、下りで足を固定したいから締める。という細かい調節がワンタッチで可能です。
快適なアッパー、安定感とクッション性を両立したミッドソール、幅広い路面を相手にできるアウトソールと、全体的に穴のないバランスの取れたシューズで、特に足の筋力やトレイルでの経験値に関係なく、比較的安全・快適に長距離・長時間を走れる工夫が随所に見られました。作りもしっかりしているので、早く移動するけどトレイルランより荷物が多くなるファストハイクのようなハード目のアクティビティにも相性は良さそうです。
THE NORTH FACE ベクティブ インフィニティ
カーボンなしモデルと言わないで!長距離用にチューニングされた高バランスシューズ
ここが◎
- テンポのよい軽快な走り
- 下りのグリップ力と安定性の高さ
ここが△
- 雨天時が苦手
2021年のトレイルランニングシューズ界の話題をかっさらった、カーボンプレート搭載のフライト ベクティブ。そんなフライト ベクティブの兄弟分にあたるのがこのベクティブ インフィニティ。こちらはカーボンプレートこそ非搭載ですが、同じコンセプトのもと本格的なロングディスタンスの山岳トレイルレース向けに設計された、二番手では収まらないシューズです。
適度な反発力とクッション、そしてロッカー構造も相まってスイスイ進める気持ちよさがファーストインプレッション。それもそのはず、シューズ本体とミッドソールの間には3D成型されたプレートが挟まれているので、蹴りだしがキビキビとして軽快です。カーボンプレートモデルほどの鋭すぎる反発力はないので、個人的にはこちらの方がより万人向けで、走りやすく感じられました。
フィッティングはタイト目で、ピッタリフィット。つま先は遊びがないので指が自由に動かせず、アルトラのようなフットボックスを期待している人には特にタイトに感じます。レーシングカーのシートのようなフィット感です。
アッパーには、ケブラー糸とポリアミドで作られたMatryx®をかかと以外全面に使用しているので、伸縮性はほとんどありません。長時間履き足がむくんでくると、このぴったりフィットは快適性を損なうことになってきます。しかし生地自体はほとんど吸水しないので通気性は高く、それに加えサイドにも補強が入っているので耐久性もかなり高いですが、水の抜け場所がないためシューズに浸水すると抜けは悪い。実際水をかけて走ってみたのですが、インソールが吸水するのと相まって靴内の環境は悪い状況が続きました。
多少濡れていても木の根や岩では全く滑らないグリップ力のおかげで下りの安定感は非常に高く、何の不安なく下りを攻められます。しかし、アウトソールのラグは浅めなので、雨量が多くなりぬかるみが多いような場面ではグリップに不安が残ります。アッパーの排水性のこともあるので、小雨なら問題はありませんが、雨量が多い状況下ではでストレスを感じることが多くなります。
全体的にすべての要素が高いバランスで、足型が合う人ならばかなり気にいるはず。カーボン搭載モデルのフライトベクティブに興味はあるけどちょっと価格が….という人は試してみる価値は大いにあります。
しかし、タイトなフィッティングやほかのシューズと比べると高い反発力は、ロングディスタンスでも100mileのような超ロングではいつもより早めに足を使い切ってしまうかも。ロングディスタンスにおいては、完走を目指して練習している人ではなく、より早く長距離を走りたいアスリート志向の人におすすめしたい。そこまで長距離を走らないという人も、気持ちよくスピードを出せるシューズなので、これまでよりかなり心地よく走れるでしょう。
LA SPORTIVA CYKLON
ハードな地形の長距離ならばNo.1 フィット感と安定性が光るマウンテンランニングシューズ
ここが◎
- BOAシステムによるフィット感
- 下りの安定感
- プロテクション
ここが△
- 重量
やはり目を引くのは、BOAシステムを採用したシューレースシステム。足を入れてからダイヤルを回すだけで、シューズのフィット感を一瞬で調整できます。
通常のシューレースではよりきつく締めようと思ったら、一度結び目を解いてから結び直さなければなりませんが、このシステムならばダイヤルを回すだけ。グローブをしていても簡単に調整でき、締め具合はつま先から足の甲の部分まで全体的にまんべんなくフィットしてくれます。下りに入る前にきつく締め直したり、登りの前に少し緩めたりがいとも簡単に行えるため、間違いなく靴紐よりも便利です。
また使って見る前まではこの細くて硬そうなシューレースが履き心地的に大丈夫かどうか不安でしたが、そんなことよりも足首から甲にかけてまるで靴下のように足を包み込んでくれる伸縮生地によってむしろフィット感は他モデルと比べても非常によい方の部類でした。
肌触りのよい伸縮素材と全体をしっかり締め上げるBOAシステムによって足の甲全体が面で包まれ、指先に少々遊びがあっても、登り・下りどちらも無理なくシューズ内で足がブレることなく、快適さ・安定感ともに満足でした。
走っているとき枝が挟まることがあったので、走ってる途中切れたらどうするのか…と心配になりましたが、この紐はダイニーマ繊維を使用しているため相当高強度で、早々切れることはないようです。その証に、通常の使用で切れた場合無償で交換品を送ってくれるので、そのあたりの心配しなくても良さそう。
ただひとつ注意したいのは、通常のシューレースよりも強く締めすぎてしまうことがしばしばあり得るということ。強く締めすぎた状態で長時間履いていると血流も悪くなるので、このあたりは実際使う前に何度か試して、感覚をつかんでおく必要はあるでしょう。
La Sportivaのシューズはどちらかというと、岩場が多いヨーロッパのアルプスを走るように作られたマウンテンシューズなので、硬めのアウトソールと、ごついプロテクションで下からの突き上げ・前後左右からの辺りからの保護をしっかりしてくれる日本のトレイルには少々過プロテクション気味というイメージでしたが、このシューズは確かに重量こそあれど、ミッドソールは思った以上に柔らかく、かなりしなるので走行感は実重量より軽くで足取りも軽やか。そのおかげかロードでもまずまず走りやすかったです。
足首が固定され動きにくそうですが、足首回りは柔らかな伸縮性のある素材になっているので、足首の動きは柔軟で動きやすいです。小石などの侵入も防げるので、ゲイターが必要なトレイルでゲイターをつけるより、一体化したこの靴の方が走りやすいです。しかし、このせいなのかわかりませんが、通気性のあるメッシュ生地をアッパーに使っているにも拘らず、涼しい日にトレッキングをしただけでシューズ内が蒸れてしまうほど通気性が悪かったので、夏場はかなり蒸れるのでは…
アウトソールのグリップはよく、しっかりと地面を捉えてくれます。特に岩場でのグリップは見事。整ったいわゆる走りやすいトレイルよりも、悪路でかなり活躍してくれるシューズです。雨の日の下りはこの靴の独壇場でしょう。高いフィット感も後押しし、下りセクションではかなり攻めた走りができます。
しかし、軽く感じるとはいえ靴自体は重いので、長く履いているとどうしても足運びが悪り、特にかかと周りに重量を感じます。高いフィット感、柔軟なミッドソールで路面に対応できる安定感はあるので、岩がゴロゴロしていたり、ドロドロの足場が悪いセクションを多く走るような場面で活躍しそうです。しっかり足首まで保護してくれるので、同様の路面のハイキングなんかにもばっちりでしょう。下りが怖くてどうしても後ずさりしてしまう人は、このシューズを履いて思いっきり前のめりで走ってみれば、今まで見れなかった新しいトレイルの面白さを知ることができるはずです。
まとめ
今回はロングディスタンスと呼ばれる、長距離のトレイルランニングに適したシューズを集め比較レビューしてみました。今回はこれまで以上にすべてのモデルが甲乙つけがたいくらいにレベルが高く、そしてどれもが何かしら個性をもった、魅力的なシューズが多かった印象でした。
全モデル基本的に満足のいく性能を備えているとした上でまとめると、まずバランスの良さ、クセの無さという点から初心者に最もおすすめできるのはOn Cloudultra。履いていて最も不満が出にくいモデルです。デザインもいいし。
不整地を走る楽しさ、醍醐味を追求できるのがALTRA LONE PEAK 5とinov-8 TERRAULTRA G 270。快適性・クッション性が高く、ソールの柔軟性もあるので、長距離向きでありなおかつ路面との対話が楽しい一足です。
最後に、よりレース向きなのがTHE NORTH FACE ベクティブ インフィニティ、レースはもちろん、より険しい地形でのハードな使用に耐えるならLA SPORTIVA CYKLON。どちらもやや硬めですがしっかりとしたクッションと安定性・プロテクションを備え、奥深い山の中でのよりスピーディで安全な行動をサポートしてくれます。
あらゆる用途やレベルでベストのシューズというものはもちろん存在しないので、それぞれのモデルの特徴や魅力によって、自分にピッタリのシューズを見つけてもらいたいと思います。今回の比較を参考に、ぜひ自分の足に合った1足にめぐりあい、楽しく苦しくロングランを楽しみんでいきましょう!
補足:長距離向けトレイルランニングシューズ比較レビューについて
評価ポイント
今回は以下の8つの評価基準で各シューズを評価しました。
- 快適性・・・足を入れたときの肌触りから圧迫感など、履き心地のよさはもちろん、何時間走っても蒸れにくく、擦れたり、痛めたり、疲れたりしにくいかどうかを評価。
- 安定性・・・常に不整地を地面を走るトレイルランニングでは、着地時に微妙にブレたり、ふとした時に足を捻ったりしないかどうかという意味での安定性が、安全で疲れにくいランニングに影響します。
- クッション・・・着地時に身体が受ける衝撃をいかに和らげて、次の一歩に繋げてくれるかどうか。ただ材質が柔らかいだけでなく、衝撃を受け切れるだけのボリュームがしっかりとあることも大切です。
- グリップ・・・さまざまなコンディションの地面で着地したときに滑りにくいかどうか。さらに着地した後にしっかりと地面を噛んで踏み込めるかといった牽引力(トラクション)もこの項目で評価しています。
- プロテクション・・・アッパーは枝や鋭利な岩などの障害から防げるか、ソールは凸凹地面からの突き上げの衝撃をガードしてくれるかといった保護力の強さを評価。
- フレキシビリティ・・・トレイルランニングでは地面の微細な感覚を足の裏から感じ取ることで、過酷な地形を高速で走っている最中でもトレイルの状況に素早く対応することができます。ある意味プロテクションとトレード・オフの関係にある要素ですが、そうした足裏感覚の繊細さ・柔軟性(フレキシブル)を評価。
- 重量・・・実際の重量は大事ですが、走った時の重量感も必要な判断要素です。
オンロード・・・トレイルだけではなく、時にはアスファルトやコンクリートを走ることも。そんなロードの走りやすさも評価基準にしてみました。
テスト環境
適度にアップダウンがあり、途中岩場・泥地を含むトレイルで何度か走り、以下の8点の評価基準に基づきテストしました。ロードでの走りやすさも計るため、アスファルトの道でも走っています。