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比較レビュー:ビギナーもベテランも、夏山でガシガシ走れるトレランシューズ【ショート(20~50km)】

長かった梅雨が明けて、夏本番。標高2000m以上の涼しげな高山もいいけど、個人的に夏の低山だって緑は青々としているし、ウェアも少なくてすむので、夏でも汗だくになりながら走るのは嫌いではない(温泉後のビールは最高だし)。

そんな夏の低山はビギナーからベテランまでが遊べて、アクセスよく、休憩しやすい山小屋が多めのフィールド(関東圏なら丹沢や陣場山、箱根方面など)をオススメしたい。特に、山小屋で食べるカキ氷は格別。給水、補給をしっかりとって、熱中症には気をつけよう。今回、比較レビューのトレランシューズは、20~50km(いわゆるショートコース)を想定し、ちょっと話題性の高めのトレランシューズを選んでみた。もちろん、脚力や経験にも異なり、個人差はあると思うので、ごく普通のトレラン愛好家によるレビューとして、ご了承いただければと思う。

目次

今回比較テストしたショートディスタンス向けトレランシューズについて

 

選んだのが、こちらの4足

テスト環境

梅雨明けの8月上旬。共通して、普通のラウンド型ソックスでテストした。テストフィールドは千葉県船橋市。千葉の都心部でもトレランやダートランができるフィールドがないかリサーチしてみたところ、ヒット。運動公園がスタートゴールで、緑地や農道、ロードと、ダートランやトレランの要素が散りばめられたコースレイアウトだった。

参考サイト:ルートラボ https://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=ab0ae329c14b9b161ae6e4eb7c34cbe6

評価ポイント

テスト結果&スペック比較表

スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方は こちら

総合評価 AAAAA AAAA AAA AAA
アイテム

The North Face Ampezzo

La Sportiva BUSHIDO2

inov-8 TERRAULTRA G 260 UNI

HokaONEONE STINSON ATR 5

ここが◎
  • 足全体を包み込むようなホールド感
  • 足の動きに対し、滑らかなレスポンスとグリップ
  • リラックスできるアーチサポート
  • 動きに応えてくれるグリップ力
  • 悪路でも頼れる柔軟なグリップ力
  • トレランでもロードランでも対応できる軽さ
  • 衝撃吸収性に優れたアウトソール
  • しっかりと着地できる安定性
ここが△
  • 軽量化
  • 突き上げの衝撃吸収力
  • アッパー部分の耐久性としなやかさ
  • シューズ自体の重さと大きさ
  • アウトソールの耐久性
快適性 ★★★★★ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆
耐久性 ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★☆☆☆
クッション性 ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★★★★
グリップ ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★★ ★★★☆☆
重量 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★★☆ ★★☆☆☆
スペック
実測重量(g/片足) 309(27cm) 320(27.3cm) 273(27cm) 350(27cm)
ドロップ(mm) 6 6 0 5
ミッドソール XTRAFOAM™&EVA2層圧縮成型ミッドソール スタンダードコンプレッションモデル(EVAミッドソール) EXTEROFLOW マキシマムクッション
アウトソール EXTS™アウトソール FriXion Red+ インパクトブレーキシステム GRAPHENE GRIP all-terrain(全路面対応)

各モデルのインプレッション

The North Face Ampezzo

ここが◎

ここが△

北米に端を発し、日本では幅広いアウトドアスポーツ・カルチャーに信頼の厚いTHE NORTH FACEからは今シーズン最新モデルAmpezzo(アンペッツォ)をチョイス。

実測重量は309g(27cm/片足)で、ごく普通の重さと言えよう。足を通してみると……。ん!なんとも厚手なシュータンの優しいアタリに気がつく。ヒールカップの納まりもジャストフィットで心地よい。

アッパーが広めでいい感じ。メーカーサイトによると、軽く、高い通気性と耐久性を備えたシームレス仕上げの「高通気ダブルラッセルメッシュアッパー」を採用しているとのこと。その上、評価するところは、シームレス仕上げな点だ。屈曲時、ストレスなく、かなり滑らかな動きをしてくれる。

ミッドソールには、着地時の衝撃吸収性に優れる「エクストラフォーム」を装備。実際、ヒールストライク(かかと着地)すると、その弾力性を実感することとなる。これまた、足への負担を大いに軽減してくれそうだ。また、着地時のヨコぶれを軽減し、安定感を持たせるため、ミッドフット構造を台形に仕上げている点も評価できる。

アウトソールは、生体力学に基づき、加速と減速、屈曲性のパフォーマンスを高めた「EXTS(Exploration Trax System)システム」(独自開発)で設計。2種類のラバーを採用しており、グリップ力を高めたラバーと耐久性を高めたラバーを、バランスよくレイアウトしている。そのためか、トレイルの上りや下り、コンディションを問わず、着地時、蹴り出し時のパフォーマンスはかなりいいと思う。ここまで、ショートからロングレースまで、イケそうなシューズだとは……。正直、ビックリしました。

シームレスなアッパー。耐久性、通気性、しなやかさ、すべてハイレベルな仕上がり。シュータンのホールドもバッチリ。

衝撃吸収性と弾力性に優れたミッドソールのエクストラフォーム。見た目以上の感触に驚く。

グリップ力を高めたラバーと耐久性を高めたラバーを組み合わせたアウトソール。

La Sportiva BUSHIDO2

LA SPORTIVA(ラスポルティバ) Bushido2 ブシドー2 36S Black/Tropic Blue 42(26.7cm)
LA SPORTIVA(スポルティバ)

ここが◎

ここが△

スピード重視のトレイルランナーに評価が高かったBUSHIDOを大幅にアップデートした、BUSHIDO2。シューズの前足部は普通幅で、甲の高さは低め。人によってはタイトなアッパーかもしれない。ソックスの厚さで調節した方が良さそうだ。シュータンは薄手なタイプだが、タイト気味に締めても、柔らかホールド感が得られる。ヒールカップはかかとがしっかりと捉えており、安定性は高いと言えよう。アッパーは通気性に優れたブレサブルメッシュと耐摩耗性に特化したサーモプラスティックフィルムで構成され、ガレ場や木の根っこなど、障害物があるパートでも耐久性は大丈夫そうなフォルムだ。

シューレースを締め上げると、アッパーにも適度なテンションがかかり、ジャストフィット。アーチ部分にはサーモプラスチック製フレームを搭載しており、足底の土踏まずにかかるサポート力は快適。アウトソールはロード、ガレ場、トレイルなど様々なコンディションに対応するオールラウンド型で、ラバーには衝撃吸収性とグリップ力に優れたスポルティバ独自の「デュアルミックスコンパウンド」を採用している。グリップ力は文句のつけようがない仕上がりで、ユーザーの走りにしっかり応えてくれる感じだ。

実測重量は320g(27.3cm/片足)だが、履いてみた感じは、そこまで重さを感じさせない。ただ、かかと着地での衝撃吸収性はかなり優秀なのだが、駆け下りる祭などの突き上げ(地面からの衝撃)には、ユーザーの脚力が問われると思う。

耐久性に優れたサーモプラスティック素材をふんだんに採用されている、アッパーとミッドソール。

「BUSHIDO」よりもホールド感が向上したヒールカップ。

長期の耐久性とグリップ力を誇るコンパウンド型のアウトソール。

inov-8 TERRAULTRA G 260 UNI

ここが◎

ここが△

強靭なグリップ力に定評があるinov-8からは、TERRAULTRA G 260 UNIがエントリー。アウトソールラバーには、鉄の200倍の強度を持ち、軽くて薄い素材グラフェン(2010年ノーベル物理学賞受賞素材)を、ヒール部分には防弾チョッキにも使用されている高強度素材ケブラーを採用した、話題の一足。なおかつ、イノヴェイトのコンセプト「ナチュラルランニング(中足~前足部分から着地する走り方)」を実現した、かかととつま先の高低差が0mmのゼロドロップシューズだ。手にとってみて、驚くのはその軽さ。実測重量は273g(27cm/片足)。

足を入れてみると、トューボックスは気持ち広く、ヒールカップは浅いタイプだが、ちょうどいいホールド感。アッパーは通気性を重視したメッシュ素材を採用。強度は増されているものの、前足部の耐久性はあまり期待できなそうだ。アウトソールには前述のグラフェンが配合されたラバーが配置されている。正直、グリップの効きはいい。硬いと思いきや、粘り気というか、柔軟なグリップ力を備えている。ガレ場や雨天時でも、頼れるグリップ力と言えよう。もちろん、アスファルトのロードでも十分イケる。

ミッドソールには衝撃吸収性と反発性が強い「EXTEROFLOW」や、足底筋膜の構造と合わせるように設計された「Dynamic Fascia Band テクノロジー(特許取得済み)」が採用されており、ソール部分の蹴り出しやすさは、かなりいい。だが、その同タイミングで、屈曲するアッパー部分のスムーズさが欠ける気がする(メッシュなのに、硬く、つまる印象)。動きに対して、柔軟に応じるしなやかさがほしいところだ。別売のALL TERRAIN GAITERを取り付けることができるゲイターポケットも搭載。(相性次第だが、)悪路でもガンガン走れそうだ。

鉄の200倍の強度を持つという、グラフェンを使ったアウトソール。耐久性が強く、地面をとらえるようなグリップだ。

前足部の動きが、滑らかとは言い難い。

HOKA ONE ONE STINSON ATR 5

HOKA ONE ONE [ホカオネオネ] Ms STINSON ATR 5 / メンズ スティンソン エーティーアール 5[1099729] ウルトラトレイル、ウルトラマラソン、100マイル、フルマラソン、ロードランニング ふわふわソールMEN’S

ここが◎

ここが△

走るマシュマロを謳い文句にするHOKA ONE ONEからは、レガシーシューズと題されるSTINSON ATRで、5回目のアップグレードとなるSTINSON ATR 5をチョイス。まず、足を入れてみた感じ、つま先部分はやや幅広目で、一般的な日本人向けと言える。

ヒールカップは深く、かかとをしっかりとホールドしてくれ、安定感がある。アッパーの強度もそこそこある。アーチサポートはあまり感じられないものの、HOKA ONE ONEならではの衝撃吸収力に優れたミッドソール「軽量マキシマムクッション」を取り入れているため、足裏全体が、快適そのもの。下りでも着地時のつけ上げはソフトな印象だ。

ドロップは5ミリで、着地から蹴り出しまで、足運びがしやすく、前へ進む推進力はかなり強め。実測重量は350 g (27cm/片足)とやや重め。アウトソールについて。ベースとなっている青い部分は厚く、かなり柔らかめ。それ比べ、前足部を中心に配置されている赤い部分はかなり硬めな素材だ。アウトソールに施された溝は深く、着地時に、トレイルをしっかり捉えてくれる。ただ、着地時に若干沈む感じが気になる(不安定とまでは言わないまでも)。とりわけ、青い部分。実際に親指で押してみるとかなり柔らかく、沈む。ロードはとにかく、岩がゴツゴツしたガレ場とかでも、耐久性は大丈夫?と疑問を抱かざるを得ない(メーカーサイトにはクッション性と耐久性も備えた全路面対応シューズと記載されているが……)。とはいえ、ビギナーからベテランまで、足腰への負担を軽く、トレランを楽しみたい方にはぴったりだろう。

まるでリカバリーサンダルのような、軽量マキシマムクッション。安定性の高い衝撃吸収力がポイント。

2種類のラバーをしているアウトソール。青い部分は、指で押すと沈むくらい柔らかい。地面をしっかりと捉える気はするが、耐久性はなさそう。

まとめ

トレランシューズ選びは、各々で経験も脚力も違うので、難しいと思う。ましてや、走り方のクセはあるし、どのようなフィールドを、どれだけ走るのか……。脚力に自信がないというランナーには、衝撃吸収性が特化している方が嬉しいはずだ。また、ロードランと違って、トレイルランは、ブレーキングはもとより動きに応えてくれる、アウトソールのグリップ性能がとても重要。とはいえ、実際に足を入れてみないと、木型や足幅などはわかりにくい点がある。まず、足入れしてみて、トューボックス、アーチサポートやヒールカップなどがしっくりくるか。自分の足に合っているのか。それから、ソールのクッショニングやグリップ。さらにその上で、耐久性などに着目すると、いいのかもしれない。

今回試してみて、頭一つ抜けていたたのがThe North Face Ampezzo(その昔、白と黒でカラーリングされたトレランシューズ「SINGLE TRACK」を履いて以来、The North Faceを履きました汗)。シームレスで快適なアッパーと衝撃吸収性が高いクッショニング、動きに応えてくれるグリップ……。なんとも言い難く、完成度の高さに驚いた。La Sportiva BUSHIDO2inov-8 TERRAULTRA G 260 UNIは、ロードランでもそこそこ脚力に自信があるランナー向けだが、ショートコースのトレランならガンガン履けるモデル。HOKA ONE ONE STINSON ATR 5はクッショニングの快適さが、評価できるものの、ネックはやはり重量。蹴り出しやすい構造となっているようだけど、なかなか難しいものがある。

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