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50本以上突き比べてきた山好きが選んだおすすめトレッキングポールと賢い選び方【徹底ガイド】

意外とクセモノ!?買ってみてはじめて分かるトレッキングポール選びの難しさ

ハイキングやトレイルランで使う「杖」として知られるトレッキングポールといえば、タフな道のりを歩いたことがあるハイカーなら誰しもそのありがたさを知っているはず。もしまだ使ったことがないという人がいれば、真っ先におすすめしたい山道具のひとつです。

重い荷物で滑りやすい地面や危険な岩場などの地形を歩く際に致命的な転倒を防いでくれるだけでなく、足腰や膝・足首といった関節への負荷と衝撃を和らげケガを予防してくれる、リズミカルな歩行によって疲労軽減にも役立ってくれると、トレッキングポールは良いことずくめ。かくいう自分も10年ほど前からはハイキングやトレイルランで必ずといっていいほど携行するようになり、このサイトでもさまざまな新作・名作を追い続けています。

そんなトレッキングポールは一見するとシンプルな道具ですから「どれを選んでもそんなに大して変わらないんじゃね?」って思うかもしれません。ただ細部に眼をやってみると、用途や目的、利用シーンなどによって細かなパーツや作りに多くの違いがあることが分かるはずです。たかが杖とはいえ、そこにはやはり奥の深い山道具の世界が広がっています。

そこで今回はさまざまな人気・定番・注目トレッキングポールをこのサイトならではの多角的な視点から評価し、用途やタイプ別にベストモデルとして選定しました。また後半では皆さんが自分にピッタリのトレッキングポールを選ぶために知っておくと役に立つポイントについてもまとめています。

目次

【部門別】今シーズンのベスト・トレッキングポール

ベスト・ハイキング(総合)部門:Black Diamond ディスタンスカーボンFLZ(メンズ)/LEKI クレシダ FX カーボン AS(ウィメンズ)

Black Diamond ディスタンスカーボンFLZ

お気に入りポイント

軽さは最軽量ではないにしてもトップクラス。一つひとつのパーツがただ軽くしてあるのではなく、ちゃんと耐久性や使い心地を損なわないよう細部まで丁寧に軽量化されているから、ハイキング・登山にも、ランにも分け隔てなく使いやすい。この使い勝手の良さをここまでの軽さで実現したという意味では文句なしに総合1位。2022シーズンにはシャフト径がさらに細くなり(その分ジョイント部などは補強)スイングの抵抗感が一段と軽減、しかもスノーハイク用のバスケットに交換もできてますます隙がなくなりました。

LEKI クレシダ FX カーボン AS

お気に入りポイント

女性にとっての最良モデルを考えたとき、ディスタンスカーボンFLZももちろん素晴らしいですが、ポール業界のトップランナーLEKIの最新カーボンモデルも捨てがたい。向こうのウリが軽さだとしたら、こちらは唯一無二の快適性。パーツの作りが細部までしっかりしていて、使い心地がいいし操作がしやすい、そして丈夫で安心。女性向けに径の細いグリップや手首の衝撃を軽減するアンチショック機構など、きめ細やかな優しさにあふれています。軽さはないけれど、そんなハンデは忘れてしまうくらいの完成度の高さが魅力。もちろん無雪期から冬山まで対応。

ベスト・オールシーズン部門:Black Diamond アルパインFLZ/MSR ダイナロック アッセント ポール

Black Diamond アルパインFLZ

お気に入りポイント

雪山登山ではやはりアルミシャフトが頼もしい。そして握りやすくナチュラルな温もりを備えたコルクグリップの快適さ。そのうえで、収納に便利で春夏にも使いやすい折りたたみ式を採用しているところが、冬だけでなく年間を通じての使い勝手が考えられているて、そうした雪山利用を前提とした汎用性の高さで選びました。コンパクトかつ固定力抜群のフリックロックプロも素晴らしい使い心地。

MSR ダイナロック アッセント ポール

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お気に入りポイント

信頼性の高いスノーギアを数多く生み出しているMSRが手掛ける、冬山から無雪期まで対応するハイエンドモデル。強度の高いカーボンを採用し、軽さと耐久性を両立。春夏で使っても決して大げさにならない軽量・コンパクトさを実現しています。レバーロック部分もグローブをしながら調節しやすい設計。スノーシューのクライミングサポートを操作しやすいバスケット形状など冬での使い心地は間違いなし。

ベスト・ウルトラライト部門:MOUNTAIN KING Trail Blaze Skyrunner ULTRA

マウンテンキング(Mountain King)トレイルブレイズスカイランナーウルトラ(カーボン)(Trail Blaze Skyrunner ULTRA (carbon))010-946
お気に入りポイント

トレッキングポールとしてのコアな機能は残しつつ、それ以外は思い切った軽量化を行うことで異次元の軽さとシンプルさを実現した1本。ジョイント部分も含めたフルカーボンで、折りたたみ式ながら一本当たり100グラムちょっとという軽さは見事としか言いようがありません。長さ調節不可、ややクセのある(でも単純な)固定方法は慣れてしまえば問題なく、トレイルランニングをはじめあらゆる軽快なアクティビティにマッチします。当然ながら耐久性はギリギリのラインですので、ハードな登山で使う際には注意が必要です。

ベスト・スルーハイク部門:FIZAN TREKKING COMPACT/Black Diamond ディスタンスカーボンFLZ

FIZAN TREKKING COMPACT

お気に入りポイント

FIZANはイタリアの職人家族によって営まれている老舗ポール専門メーカー。決して目立った存在とはいえないかもしれませんが、四半世紀以上続く丁寧かつ確かなモノづくりの姿勢は健在。極薄・超軽量アルミ製シャフトを採用し軽さと強度を両立しながら、さらに長さ調節も可能なので、トレッキングポールを支柱として利用する軽量シェルターとの相性もばっちり。この「ただ軽いだけじゃない」という特徴が、何日にも及ぶトレイルを移動するスルーハイク部門受賞の決め手です。唯一の難点は固定方法がスクリューロック式であることですが、そこが気になる人には次点としてBlack Diamond ディスタンスカーボンFLZもおすすめです。

ベスト・ファストパッキング部門:LEKI クロストレイル FX スーパーライト コンパクト

メンズ レディース クロストレイル FX スーパーライト コンパクト レキ LEKI クロストレイル トレッキングポール ストック 折りたたみ式 キャラバン CARAVAN 1300451
お気に入りポイント

ファストパッキング用途のポールには、登山向けの基本的な特徴に加えて素早くポールを振ったときのスイングしやすさも求められます。その点このモデルはランニングと登山のちょうど間をいくような絶妙な重量・耐久性はもちろんですが、ストラップの着脱と快適で疲れにくい握りを可能にしたLEKI独自の「クロスシャークグリップ」が何より秀逸。ポール業界のトップブランドとしての全体的な品質の高さも文句なしです。

ベスト・トレイルランニング部門:Black Diamond ディスタンスカーボン/LEKI ウルトラトレイル FX.ONE スーパーライト

Black Diamond ディスタンスカーボン

ブラックダイヤモンド BD82384・ディスタンスカーボン【登山】【トレッキング】【ポール】【ストック】
お気に入りポイント

トレイルランのレースで使うことのみにフォーカスすれば、折りたたんでザックにしまうという機能すら不要になります。そこでとことん無駄を省いた結果実現したのが驚異の190グラム。持っていることを忘れてしまうほどの軽さは、一度体験するともう昔には戻れないかも。極細シャフトは風の抵抗も受けにくく、スイングバランスも抜群で山の中を空身で駆け抜けるには最適です。

LEKI ウルトラトレイル FX.ONE スーパーライト

お気に入りポイント

もちろんこちらのモデルもめちゃくちゃ軽いのですが、とびぬけて最軽量というほどではありません。このモデルで評価すべきはやはりLEKIらしく「超軽量と優れた使い勝手を両立」しているところです。しっかりと握る必要がないため限りなく走りを邪魔しない独自のグリップ構造「トレイルシャークグリップ」が相変わらずイイ。

ベスト・ビギナー向けコスパ部門:LEKI ジャーニーライト

お気に入りポイント

Amazonや楽天をのぞけば千円台前半のポールはごろごろと出てくるわけですが、自分の経験でははっきり言って「1~2回使えればラッキー」程度のものがほとんどでした。見た目はもっともらしくあるのですが、いざ本番で使うとちょっとしたことですぐ壊れる、または数回使うとすぐにヘタります。もちろん中には安くてもきちんと作っている製品もあるでしょうが、そんな博打をするくらいなら信頼のおける専門メーカーのエントリーモデルを選択するのが結果的には賢い選択だと自分は思います。そこでこのLEKI ジャーニーライトは、今でこそ一つひとつのパーツはベーシックですが、進化のスピードがあまりにも早いおかげで数年ほど前には最先端であったものばかり。限られた予算のなかで間違いないモデルを選ぶならば、まずはこちらがおすすめです。

ベスト・超軽量&コスパ部門:ヘリテイジ ULトレイルポール

お気に入りポイント

こちらも長さ調節不可でシンプルな細引きによるジョイントという無駄を極端に省いた超軽量設計ですが、アルミ合金を採用するなどさまざまな努力(?)によって手ごろな価格を実現しています。耐久性に関して不安がある超軽量ポールの場合、うっかり折ってしまうことは他のモデルよりも十分にあり得ますので、最軽量レベルの尖ったアイテムなのにここまで価格が抑えられていることは非常にありがたいことです。

ベスト・快適&安全部門:LEKI ブラックシリーズ FX カーボン

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お気に入りポイント

トレッキングポール界で快適さと使いやすさを大切にした全体の作りの確かさでは右に出る者はいないLEKI。その押しも押されぬフラッグシップモデルは、全体的な使い心地の良さではやはり頭一つ抜きん出ており、完成度から言えば「裏総合1位」といっても決して言い過ぎではないでしょう。ビギナーからベテランまで幅広く、文句なしにおすすめできます。

全体構造から継ぎ目の端にまで行き届いた精度の高い組み立て、今回からコルクになって快適さを増したグリップ、どこからでも漂ってくる上質さにはやはり惚れ惚れします。決して軽さだけではない、どのブランドもマネできない極上の使い心地を体感したいならば間違いなくこちらです。

ベスト・伸縮式部門:Black Diamond トレイルプロショック/SINANO FAST-130 カーボンW

Black Diamond トレイルプロショック

お気に入りポイント

バックパックへの取り付けや・登山での安心感などを考えて、どうしても伸縮式のモデルがいい、という人におすすめな2本を選出。まずはトレッキングポール界の2大ブランドのひとつ、Black Diamondのスタンダードモデル。ベーシックな機能をまんべんなく備えつつ、むやみに軽くし過ぎない安心感の高い丈夫な作りは万人にフィットします。そのうえで、BD独自のロック・長さ調節機構「スマッシュロック」は大のお気に入り。通常であれば繋ぎ目2か所それぞれを操作しなければならないところを、手元部分の操作だけでセットも収納も可能と、まさに次世代型の伸縮式ポールといえます。

SINANO FAST-130 カーボンW

お気に入りポイント

海外製のハイエンドモデルに負けない優れた品質のポールを届けてくれる国内のポール専門ブランド、SINANOの伸縮式モデル。こちらは伸縮式としての丁寧で上質な作りの良さと使いやすさに加え、カーボンとアルミをハイブリッドで組み合わせたことによるより快適なスイングバランスが魅力。ここ最近のファスト&ライトのニーズをとらえた秀作といえます。特に一般的な登山はもちろん、ファストパッキングなどにも最適です。

ベスト・アルミシャフト部門:Black Diamond ディスタンスFLZ

お気に入りポイント

アルミポールではどうしてもかさんでしまう重量を極力抑えながら、耐久性と使い勝手、コストパフォーマンスを高いレベルでバランスよく兼ね備えた「ベスト・オブ・アルミ」モデルといえばこちら。総合1位はディスタンスカーボンFLZですが、こちらのモデルはアルミ製というだけで使い勝手はほとんど同じ、なおかつ数千円も節約できる。そんなコストパフォーマンスの高さも魅力。少しでも重量を省きたければカーボンを、価格や汎用性を重視するならばこちらも十分おすすめです。

選び方:賢くトレッキングポールを選ぶ7つのポイント

一見シンプルでいて、その実比べるところが多いトレッキングポールですが、購入する際に押さえておくべきポイントは、価格以外で大きく7つ。以下順に説明していきます。

ポイント1:シャフトの材質 ~カーボン・アルミそれぞれの特性をつかむ~

高価だけど軽くて強いカーボン(左)と、価格と総合的な耐久性に優れたアルミ(右)

トレッキングポールのシャフト(棒の部分)材質は大まかに「カーボン」か「アルミニウム」の2種類になります。そのうちカーボン製モデルは一般的に高価なハイエンド製品に多いため何となくカーボンの方が良いと思いがちですが、厳密にいうと実際そう単純なものではありません。シーンによってはアルミの方が適している場面も無くはない。このためカーボン・アルミ製ポールそれぞれの長所・短所を知っておくと、より確かな選択が可能になるはずです。

まずカーボンの利点はなんといっても軽くて強い。つまり同程度の強度ならより軽いポールが作れるということです。また衝撃吸収性にも優れ、地面に突いたときの振動が収まりやすい、そして錆びないなどがあります。

一方でどうしても高価になりがち、そしてアルミに比べて一点に加わる衝撃に弱く、尖った硬い岩等で折れやすいのが弱点です。過去、岩の隙間に刺さってしまったカーボンポールがいとも簡単に折れたことが1度あり、折れる一歩手前で回避した経験ならば数知れずです。カーボンにはそれほどデリケートな一面があります。

かたや、アルミ製のポールを選ぶ主な理由があるとすれば、それは価格とバランスのとれた全体的な耐久性の高さでしょう。アルミはカーボンと違って過度の衝撃で真っ二つに折れるのではなく曲がることが多いため、致命傷になる前に曲げなおして修復するチャンスがあります。カーボンに比べて重いというデメリットがあったとしても、この安心感によって長いトレッキングや大きな荷重がかかるアクティビティではアルミの方が幸せになれるかもしれません。

以上のことをまとめたのが下の表です。

素材 アルミ カーボン
長所
  • 比較的安価に作れる
  • 強い衝撃に対して曲がることはあっても真っ二つに折れることは少ないため、致命傷になる前に修復が可能
  • 軽量
  • 衝撃吸収性に優れる(振動を素早く吸収する)
  • 錆びない
短所
  • カーボンよりも重い
  • 錆びる
  • 価格が高い
  • 一点に加わる衝撃に弱く、岩などにぶつけてくぼみや裂け目ができるとそこから簡単に折れて使用不能になる

ただ、一言でカーボンといっても今ではさまざまなグレードが存在し、より強いカーボンが生まれつつあります。またアルミに関しても、ジュラルミンをはじめより軽くて強いアルミ合金が開発され、進化を続けているのが実際。またポールの強度はジョイント部分の作りによっても大きく変わってきます。このため「カーボンだからこう、アルミだからこう」と素材の違いだけで製品自体の丈夫さを断言できるわけではありません。上記の特徴はあくまでも強度を決める一要素に関しての話であり、それぞれのモデルが全体としてどのような作りになっているかを考えることが毎度のことながら重要です。

ポイント2:ポールの構造と収納タイプ ~3分割以上で折りたたみ式がベスト~

ポールの構造

伸縮式ポール(上)と折りたたみ式ポール(下)

玄関のドアを開けてからいきなりトレッキングポールを突いて歩くハイカーはさすがにいません。山に行く前と行った後にはトレッキングポールは畳んで持ち歩く必要があり、このためほとんどのトレッキングポールは複数のシャフトに分かれた分割構造をしています。

ただし細かく分割すればするほど小さく収納できる一方、連結部分が多くなるため構造的に強度が落ち重量も増してしまうため、そのバランスは考えなければなりません。標準的には3~5ピースのモデルがちょうどよく、日帰りハイキングからバックパッカー、登山家にまで幅広く愛用されています。軽量化や強度維持のため1ピースや2ピースも存在していますが、ハイキング用には収納面で適しているとは言えません。

上からレース向けの1ピース、バックカントリー向けの2ピース、登山向けの3、4ピース。当然分割数が多ければ多いほど短く収納が可能。

次に、分割したポールをどのような仕組みでたたむのかという収納タイプ(連結方法)の違いに注目します。

収納タイプは大きく2パターンあり、タイプの違いによっては収納サイズやポールの使い勝手が大きく違ってきます。それぞれの長所・短所があり、それを理解して自分なりに優先したい要素によってどちらかを選択すると間違いはないでしょう。

伸縮式(テレスコーピング式)

まずは初期のトレッキングポールから採用されてきた「伸縮式(テレスコーピング式)」デザイン。これは直径の異なる複数のシャフトを望遠鏡の筒のように重ねて収納するタイプで、使用時にはそれらをスライドさせて伸ばし、固定するタイプです。最も一般的なタイプで、連結数が少ないため耐久性が高く、長さ調節幅が広く、価格的な手ごろ感が魅力。ただし短くたたむことができず、収納性は劣ります。

折り畳み式

次に比較的新しいタイプとして、3段以上のシャフトで構成された「折り畳み式」デザインがあります。テントポールのように分割されたポールの中にコードを通し、セットする際にはコードにテンションをかけ、収納時には緩めて折りたたむようにしてまとめます。

折りたたみ式ポールのメリットはなんといってもその収納性の高さ。また伸縮式のようにシャフトを重ねる必要がないため全体を細く、結果としてさらに軽量コンパクトにできることです。ただ構造的には長さ調節が不可能なため、最上段のシャフトだけを伸縮式にして長さ調節できるようにしているモデルが多く、このため伸縮式に比べると長さの調節範囲は狭くなってしまいます。トレイルランナーや軽快さや軽装備を好むハイカー、旅行者などに好まれています。

収納タイプ 伸縮式(テレスコーピング式) 折りたたみ式
長所
  • 相対的に強度が高い
  • 長さ調節範囲が広い
  • 昔からあるタイプなので信頼性が高い
  • 比較的安価
  • 収納性が高い
  • 軽量
  • ポールが比較的細い(=軽量コンパクト)
短所
  • 収納性が低い
  • (長さ調節範囲が広いため)重量がかさみがち
  • 相対的に強度は低い
  • 長さ調節範囲が狭い
  • 比較的高価

伸縮式か?折りたたみ式か?実際にバックパックに収納する方法をイメージする

パッキング時にコンパクトにできるかどうかといった収納性の高さはユーザーによってはとても重要な要素です。30リットル以上のバックパックを背負うハイカーであれば、60cm前後ある伸縮式のポールであってもバックパックの側面に自然に括り付けられますが、トレイルランのように小さなバックパックを背負うランナーにとってこの長さは致命的です。その場合選択肢は必然的に折りたたみ式に限られてきます。

逆に大き目のバックパックの場合、外側に折りたたみ式のポールが意外としっくりセットしにくいことも経験的には感じています。もちろん大き目のバックパックであればザックの中に収納してしまえばよいので大きな問題にはなりませんが、この辺りは好みの問題にもなってきます。とはいえよりコンパクトで柔軟な収納が可能な折りたたみ式ポールの方が一般的に使い勝手が良いことには変わりありません。

伸縮式ポールは30リットル以上のバックパックの側面にフィットしやすい(左)。折りたたみ式ポールもだいたい外側に括り付けられる(右)が、大き目のバックパックには取り付けにくい場合もあり、そんな時はザックの中に収納するのが賢明。

ポイント3:長さ調節(ロック)方式 ~迷わずレバーロックタイプを選ぶ~

シャフトをひねって留めるスクリューロック(最左)やレバーロック(右側)など、ロック方式によって使いやすさや耐久性がはさまざま。

連結されたシャフト同士を固定する方法も、年々新しい機構が開発されてきて、今では複数のタイプが選べるようになりました。

クリューロックタイプ

まずは最も古くからあるシンプルなロック方式が、連結されたシャフト同士をひねることでロックしたり解除したりする「スクリューロック」タイプです。単純で分かりやすい操作性ではありますが、締めつけに握力が必要で、時には締め付けすぎたり緩みすぎたりとムラが多く、また年々使うにつれて故障しやすくなったりと、多くのハイカーの悩みの種であったことは否めません。価格面以外では、この方式を選ぶメリットは正直なくなってきています。

レバーロックタイプ

そこで近年主流となりつつある新しいロック方式が「レバーロック(フリックロック)」タイプです。

連結部分のレバーを開閉してロック・解除する方法で、操作性の高さに加えて固定の確実性も高く、より安心して使うことができます。まれに固定力が緩んでいるときにはドライバー等で締めなければならないこともありますが、気になるほどではありません。どう考えてもこちらの方が優れており、どうしてもこだわりがある人や予算が限られているといった事情がない限り、現在は迷わずレバーロック式を選ぶことをおすすめします。

ポイント4:グリップ ~使いやすさと疲れにくさ、アイテムへの愛着に大きく影響する握り心地~

さまざまなメーカーのトレッキングポールを使い比べていて、意外なほどメーカー毎の個性と性能差を感じるのがこのグリップ部分です。個人的にはここほど過小評価されている要素はないと思っています。長時間の移動で手に蓄積された心地良さ(悪さ)は後々まで忘れにくいものです。振り返ってみると最終的に自分のお気に入りとなったポールにはもれなくいい塩梅のグリップが備わっていました。

グリップの素材

優れたグリップを決める要素は主に「グリップの素材」と「形状」の2点に分解されます。このうち素材については「EVAフォーム」か「コルク」がほとんどです。かつてはゴム製のグリップも存在していましたが、安価で凍結しないということ以外は重かったり肌触りも悪かったりと、春夏ハイキング向けには適さないうことで今では冬向けのモデル以外ではほとんど見かけなくなりました。

軽さと吸汗速乾性に優れたEVAフォーム(左)、ナチュラルな快適さに優れたコルク(右)どちらもそれぞれ替えの効かない魅力を備えている。

EVAフォームのグリップ(上写真左)は肌触りがよく、適度な弾力性、汗をよく吸い速乾性があり、軽くて比較的安価な素材であることから多くのモデルで採用されている素材です。ハイキングやランニングを楽しむための軽量ポールに多く使用されています。

一方でコルク製のグリップ(上写真右)は、吸汗性などは劣るものの、滑らかで自然な肌触りと、時間が経つにつれて手の形になじんでくるという天然素材ならではの心地良さで根強い人気があります。もちろんどうしてもコルクでなければダメ、というケースはほぼありません。ただもしコルクグリップを実際に握ったときに譲れない何かを感じたならば、その人は迷わずコルクグリップを選択して後悔することはないでしょう。 

グリップの形状

グリップの素材・形状はポールの使い勝手を大きく左右する。

素材の次は形。こればかりは実際に握ってみないと分かりません。ぜひとも実際にポールを握り、振った際にキチンと手のひらに心地よく収まってくれるかどうか、振りやすいかどうかなど、実際の利用シーンを想定してチェックしてみましょう。

ただ、実際に握らなくても、人間工学(エルゴノミクス)に基づいたフォルム設計をしているとあれば、それが嘘でない限りはある程度握り心地の良さが想像できます。自分の場合お気に入りといえば、LEKIの「エルゴングリップ(上写真右)」。人間工学に基づいた無理なく自然に握りやすい形状は、すっぽ抜けにくく下り時には少ない握力でポールをキープできて疲れにくいなど、見事な作りに握った瞬間から心を奪われ、以来大のお気に入りです。

エルゴングリップは普通に握ってしっくりくるだけでなく、卵型のグリップエンドが下りなどで握り込むのにとても便利。

他メーカーも軽量性と握りやすさのバランスを考慮しながら、独自の形状を工夫しています。これらはある人にとって「心地よい」と感じられるものが、他の人にとってはそうでない場合もあり、最終的にはどうしても主観的な感覚の世界になってきます。その意味でもグリップ形状が自分にフィットするかどうかはぜひとも実際にチェックすることをおすすめします。

延長グリップ

トレッキングポールの中には、グリップ部分が下方にさらに延長されているモデルがあります(上写真)。これは、延長グリップ(あるいはエクステンショングリップ)などと呼ばれており、急な坂道を登るときや急斜面を横切る(トラバースする)際にいちいち長さを短く調節したりしなくとも、直ぐにホールドすることができるための仕様です。急勾配やアップダウンの激しいテクニカルな地形ではあると非常に便利なパーツといえます。

自分の場合、グリップの下にガムテープを巻くなどしてさらに引っ掛かりを作ると、より確実なホールドが得られるだけでなく万が一の補修テープを備えておくことができるのでおすすめです(上写真下)。

ポイント5:長さと重さ ~長すぎても短すぎても、重すぎても軽すぎても上手くは機能しない~

適正な長さを選ぶ

当然のことながら、ポールが自分の身長に合った長さでなければ、機能を最大限に発揮することはできません。購入に際しては必ずそのポールが自分にとって適性の長さ(サイズ)かどうか、またはちょうどよいサイズに調整できるかどうかを確認します。

自分に合ったポールの長さを測る方法ですが、まずポールの先端をつま先の少し前あたりに置き、グリップを握って自然にポールを立てたとき、腕が90度の角度になっていれば、それが腕を自然に動かせて疲れにく体勢のちょうどいい長さであるといわれています(多少個人差はあると思います)。

ただここで注意したいのは、この状態は平坦か緩やかなトレイルを想定したときの適正サイズであるということ。急な登りではより短く持った方が使いやすく、急な下りではもっと長い方がちょうどよくなります。つまりどんな場所でもこの設定が正しいわけではなく、斜面に合わせて長さが調節できるのが理想です。長さ調節が可能なポールであればさまざまな地形にも対応でき、身長の異なるユーザー間でも共有することができるので便利なことは間違いありません。

ただ、そうはいっても長さ調整が可能なポールはそれだけ余計なパーツが増え、確実に重量がかさんできます。悩ましい選択ですが、どちらを選ぶかは最終的には個々人の好みとアクティビティによります。トレイルランをするのであれば、収納性と軽さを優先し、ハイキングであれば快適性の方を重視するなど、明確な用途が決まっていればそのアクティビティに必要な要素を優先すべきです。そしてどちらも楽しみたいという場合には、調整可能な方を選ぶことをおすすめします。

ちなみに自分の場合(だけかもしれませんが)、長さ調節ができないポールを選ぶ際は90度になる長さよりも若干短いサイズを選びます(下写真)。こうすると、初めは登りを前提に90度よりもやや短いくらいにセットしておくとちょうどいい長さで、下りではそのままでグリップエンドをつかんで長めに持つことで1日中長さ調節しないで持ち続けられるからです。

テントのポールにトレッキングポールを使う人は注意

また、ポールの長さを考えるうえでもうひとつ忘れてならないのは、そのトレッキングポールを軽量テント(シェルター)テントポールとしても使用する計画がある場合です。

いくら超軽量装備で行きたいからといって、固定長の短いポールを選んだばかりに、テントポールとしては長さが足りないということになってしまったら、これ以上悲しいことはありません。その場合、トレッキングポールは自分の身長に加えてテントの高さにも適した長さである必要があるため、どちらの長さにも調節できる可変長型のポールを選ぶのが適しています。

軽さは重要だけど、耐久性や使い勝手の限度を超えない範囲で

トレッキングポールの重量は、快適性とともに最も重視すべき要素のひとつです。軽いポールは腕の疲労を軽減し、長期のトレッキングには大きな利点となります。

たかが10グラム、されど10グラム。市場に販売されているポールは重い方では500数十グラム、最軽量クラスでは200グラム前後。例えるならば歩くとき手にペットボトルを持っているか、缶コーヒーを持っているかの違いです。ここまで極端な差がなかったとしても、丸1日中腕を振り続けていれば数十グラムの微妙な差が想像以上に大きな影響につながっていきます。

もちろん軽さばかりを優先してしまうと、十分な耐久性が保てなくなります。もしあなたがハイキングの初心者で、ポールを日帰り登山や比較的簡単な一泊二日のバックパッキングに使うつもりなら、間違いなく重量よりも快適さや丈夫さ、そしてより手頃な価格を優先した方がいいです。そして少し足慣れてきたり、軽い荷物でマウンテンランニングやファストパッキングを行うのであれば、ポールの軽さを重視していくことで旅はより快適になってくることでしょう。

ポイント6:バスケット・石突きの作り ~将来雪山でも使いたいかどうか?を考えて~

トレッキングポールの先端に注目してみるといくつかの特徴的なパーツが見えますが、中でも購入時に注目しておきたいポイントは先端に取り付けられた円盤型のプラスチックパーツ(バスケットと呼んでいます)の作りです。ほとんどのポールに付属しているこのパーツは、雪や砂、泥などの緩い地形でポールが深く入り込まないようにするストッパー的役割を担っています。

雪山で使うためには専用のバスケットが必要

春~秋の無雪期であれば、このバスケットの大きさはあまり気にする必要はないのですが(むしろ邪魔になるので大きすぎない方がいい)、スノーシューイングや冬山登山、バックカントリースキーで使おうという予定があるならば、このバスケットは大きなサイズに交換できるようなオプションを備えている必要があります。その昔、とても気に入っていたポール(旧モデルのBlack Diamond ディスタンスカーボンFLZ)がスノーバスケットに対応していないことを後から知り、とても後悔した思い出があります。

そもそも冬期の使用を想定すると、ある程度の耐久性が必要となり、超軽量モデルは対応していない場合が多いため、こうしたオプションが用意されていない場合などがあるので注意が必要です。一方ではじめからオールシーズンを想定して雪用のバスケットが標準で付属しているモデルもありますので、1年を通して使える1本を選ぶ際にはそうした標準パーツの存在やオプションの有無を確認しておくと間違いがないでしょう。

ポイント7:その他の機能やオプションパーツ ~盛れるだけ盛ればいいってわけでもない~

アンチショック機構

長い下り坂などでは、地面にポールを突くときの衝撃はそれなりの強さになります。この時の膝や手首にかかる負担を和らげる「アンチショック」機能が、一部のトレッキングポールに搭載されています。

このクッション自体、悪いものではないのですが、それによって多少なりとも重量が加算され、この機構のために作りが込み入ったものになることによる故障や破損のリスクなどを考えると、個人的にはそこまで必須の機能だとは思えません。この衝撃吸収パーツは各メーカー毎で異なる仕組みのため、すべてがそのようなデメリットを持っているとは言いきれませんが、選択するにあたっては、そうしたデメリットを考慮し、それでもあえて手に入れる価値があるのかは一度検討してからチョイスしてみることをおすすめします。

女性モデル

基本的にトレッキングポールは性別を問わず使えるものです。ただ最近では女性が使用するのにより適した「女性モデル」を展開しているメーカーが増えてきました。

女性用トレッキングポールの特徴は、

の3点が挙げられます。

その意味では、実質的には小柄であったりあえて短く小さく軽いポールを好む男性が、女性用モデルを選んだとしてもまったく問題ありません。自分に合ったものを購入してください。

まとめ

以上、数あるトレッキングポールのなかから要注目のおすすめモデルの紹介と、自分にとって最適な1本を選ぶために押さえておくべき要点を整理してみました。一般的な登山・ハイキング用途で個人的なおすすめを選ぶとすれば「極端にならない程度に軽いカーボン製の折りたたみ式、レバーロック」ということになるでしょうか。トレッキングポールに関しては価格と品質は比較的素直に比例するので、上記のタイプで予算の許す範囲内のモデルを選べばまず後悔することは少ないのではないかと思っています。

最後にトレッキング・ポールの先端は、土壌や木道、植物などに損傷を与える可能性があります。トレッキングポールを使用する際は使用する場所に注意し、Leave No Trace(リーブノートレイス)で環境に与えるインパクトを最小限にするように心掛けるようにしましょう。

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