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登山や旅行に最適な一眼レフカメラ携行方法まとめ【シーン別おすすめ】

誰もが悩む”山で一眼レフをどう持ち運ぶか”問題

その魅力にとりつかれたが最後、野外行動において片時も手放せなくなっているのが一眼レフカメラというヤツ。もたない人間からすると何であんなに重くてかさばるものをわざわざ?となるかもしれない。確かに、たかが日帰りでも荷物は呆れるほど重くなり、高価で扱いも面倒な一眼レフは、毎回パッキングするたびに一瞬だけ憂鬱な気持ちになります。

しかし高い表現力が可能な一眼レフカメラは、ごくまれに、心が動いたその一瞬を真空パックのように新鮮なまま閉じ込めてくれることがあります。その魔力を知ってしまった人間からすればもう iPhone のような、綺麗だけど平面的な画には戻れない身体になっているわけで、そうなると「重いからもたない」という選択肢はもはや考えられません。

こうして一眼レフを山に持ち込むようになると間違いなく悩まされるのが、重くてかさばる一眼レフをどうやって持ち運ぶかという問題でしょう。

もちろん単純にバックパックに入れて持ち運ぶことはできますが、歩きながらいいなと思った瞬間にいちいち出し入れするのは現実的ではありません。一方標準的なネックストラップを首からぶら下げて歩くのは重くて首がこるだけでなく、ブラブラして危険なことは目に見えています。

ネットで評判のギアは確かに便利だが、完璧とも言いがたい

そんなわけで、編集部ではここ数年オススメと聞けば片っ端から自分の眼で見て、良さそうと思えば実際に試し、最高に使いやすい携行ギアを求めて徹底的に探しまわりました。

その結果分かったのは、どれもある面では評判通り優れているものの、あらゆる状況でベストな携行方法は未だ存在しないということです。やはり道具である以上、どの方法もどこかしらに弱点があるもの。要はそれぞれの長所と短所を知っておくことで、自分にとって最適な携行方法を見つければよいのです。

そこで今回はそんな山でのカメラ携行方法について、主なスタイルとそれぞれのメリット・デメリットを整理してみました。そして後半では実際に使ってみた評価と共に、目的・スタイルに合わせた編集部おすすめの携行方法をご紹介します。

目次

1.検証あたっての前提

2.各携行方法の特徴比較まとめ

3.シーン別おすすめ携行ギア

検証にあたっての前提

まずはじめに今回の検証を行うにあたって使用していた機材などを以下にご紹介します。見ての通り、いわゆるプロ写真家レベルの機材ではないということは分かっていただけるかと思いますが「いや十分沼に両足突っ込んでいるレベルだろ」というツッコミはまったく否定しません。そこはあくまで歩くことがメインの一般登山と同じ感覚でカメラを使用するシチュエーションを想定しています。

だからというわけでもないですが、今回は通常の行動時間を超えてしまうほどの重装備や、カメラを持ち運ぶために作られたバックパック、カメラを持ち運ぶために着るベストなど、超高価なプロ写真家向けの本格装備は候補から外しました。

各携行方法の特徴比較まとめ

シビアな環境に長時間滞在する登山では、カメラの携行にあたっては普段以上に多くの点を考慮する必要があり、重くて取り回しの複雑な一眼レフであればなおのこと、以下のようなさまざまな点での配慮が求められます。それらを考慮した評価結果を以下にまとめました。

項目 チェストストラップ型 速写ストラップ型 ホルダー型 ホルダー型 チェストバッグ型 フロントパック型
アイテム UN UNX-5802 JOBY Pro Sling Strap Peak Design CAPTURE PRO COTTON CARRIER STRAP SHOT EV1 PaagoWorks FOCUS RIBZ フロントパック スモール 8.2L
携帯性
バランス × × ×
快適性 ×
速写性
安全性 × ×
セットアップ
多機能性 × ×
価格 × × ×
ここが◎
  • 費用対効果
  • 軽量・コンパクト
  • 取り付けが簡単
  • すぐに撮影できる
  • 歩行時にブレない
  • すぐに撮影できる
  • ザックを下ろす際に邪魔にならない
  • アタッチメント類が豊富で拡張性が高い
  • 歩行時にブレない
  • すぐに撮影できる
  • ザックを下ろす際に邪魔にならない
  • 荷重バランスがよく疲れにくい
  • 雨埃衝撃に強い
  • 荷重バランスがよく疲れにくい
  • 全体的に使い勝手がよい
  • 収納性が高い
ここが△
  • 歩行時に揺れる
  • ショルダーストラップにD環が必要
  • ザックを下ろす度に取り外す必要がある
  • 歩行時に揺れる
  • 荷重バランス
  • ザックが邪魔で正しく装着できない
  • 雨埃衝撃に対し無防備
  • 高価
  • 雨埃衝撃に対し無防備
  • 価格
  • 荷重バランス
  • 重さでずり落ちてくることがある
  • ショルダーベルトによってはマジックテープで痛めてまうことも
  • 価格
  • 荷重バランス
  • セットアップに六角レンチが必要
  • 出し入れが面倒
  • ザックを下ろす度に取り外す必要がある
  • 取り付け位置が低く、歩行時にやや揺れる
  • 見た目がやや大げさ
  • 着替えの度に取り外す必要がある

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シーン別おすすめ携行ギア

荷物の少ない日帰りハイキングにおすすめ:ホルダー型

このタイプでは、カメラとバックパック(のショルダーハーネス)双方に装着用のアタッチメントを取り付け、拳銃を収めるホルスターのようにカメラを引っ掛けて固定させることができます。

今回試用した2タイプは固定方法においてボタン式(Peak Design)と回転式(COTTON CARRIER)という違いはあるものの、いずれも安定感に不安はありません。ややぐらつきがみられる COTTON CARRIER の方も、落下防止のストラップが付いているので安心です。

何よりも、ここぞと思った瞬間には素早く撮影姿勢になれる速写性は抜群。一眼レフにもかかわらずコンデジやスマホと同じかそれ以上の使い勝手はこれまでの撮影スタイルを劇的に変えてくれました。

バックパックを下ろしたりウェアを脱ぎ着する際、邪魔にならないところもスマート。おまけに Peak Design の方はこのアタッチメントに取り付け可能なオプション製品が豊富とあって、カメラライフ全体を考えた拡張性もピカイチです(ただ逆に自分の環境に合わせるために別途オプションを購入しなければならないという可能性もなきにしもあらずです)。

ただ、見ての通りむき出しになったカメラは雨・埃・衝撃に対しては無防備で、長時間の使用に不安がないわけではありません。また、長期山行では2日目以降どうしても取り付けている方の肩に疲労が溜まりだるくなり、まれに痛みが生じたことも(もちろんこの感想はその人の体力やカメラの重量によっても変わってきますが)。このように安定した環境では完璧と思われたホルダー型ですが、比較的重荷の長期山行では気になる点がないわけではありませんでした。

その意味でホルダー型は、長期・重荷ではない軽めの日帰り登山などに関して最も適しているといえ、このうち単純な使い勝手だけなら COTTON CARRIER が、拡張性も考えると Peak Design がおすすめです。

重荷・長期はもちろん、オールラウンドな登山におすすめ:フロントパック型

左右対称のポーチをベストのように着用するタイプのフロントパック型は、そもそもカメラのために設計されたものではありません。ただ、試しに使ってみた RIBZ フロントパック(スモール)は、これがまたカメラ携行という視点でみても十二分に使いやすい。

まず当然のことながら単なるバッグなので細かいセットアップは要りません。バックパックを選ぶということもなく、どんなスタイルにも合わせることができます。クッションが付いた肩当てなど細かい部分でも気を配られており、背負った感触も良好。胴回りを締めるストラップによってバッグは常に身体にフィットし、歩行時に大きく揺れることもありません。

なによりこのパックの大きな利点は荷重バランスの良さ。本来バックパックに詰める荷物を一部前に持ってくることによって、左右だけでなく前後の荷重バランスも向上し、明らかに疲れにくくなります。

もうひとつこのパックの大きなアドバンテージである収納力の素晴らしさについても、右(上)の写真を見れば一目瞭然。左のポーチにはカメラ(写真はNikon D5100)とスマートフォンがすっぽりと入り(さすがに大口径のレンズやハイスペック一眼レフは厳しいかもしれません)、右のポーチには交換レンズ(写真はFE 55mm)と行動食、地図、GPSを入れてもまだ余裕があります。複数のレンズやカメラを素早く使い分けたいというニーズにもピッタリです。

一方でお気づきだと思いますが、このタイプはカメラの携行を意識したパックではない以上、ホルダー型ほどの速写性もカメラ用のチェストバッグほどのプロテクションもないということには注意が必要です。

最終的にはジッパーを開け閉めする一手間と、衝撃吸収用インナークッション等の安全性について、個々人がどの程度重きを置くかによります。一番ではないものの素早く出し入れが可能で、なおかつ適度なプロテクションもある、さらに荷重バランスと収納性も素晴らしいという全体的な特徴を集約すると、重荷で長期にわたる登山には間違いなく使いやすいタイプであるといえます。

使い勝手はもちろん、安全性はもっと譲れない人におすすめ:チェストバッグ型

ホルダー型の安全性・快適性という欠点をカバーするのがチェストバッグ型。基本的な仕組みはフロントパック型と変わりませんが、このタイプは特に耐候性と耐衝撃に優れたカメラケースを、アクセスしやすく歩行時でもぶれにくい胸の位置に配置してあるのが特徴です。この型は登山に限らずカメラ用バッグとしては一般的で、アウトドア用からプロ向けまでさまざまなモデルが市場に出回っています。

そのなかで最も使いやすいモデルとしてピックアップしたのが PaagoWorks FOCUS(左または上写真)。雨に強い素材と衝撃に強い着脱式インナーケースによる高いプロテクションにもかかわらず軽量でコンパクト、カメラへのアクセスもまずまず、さらに止水ジッパーつきの前ポケットも2つついて使い勝手もよく、ベースとしては非常に完成度の高いバッグといえます。ただ、速写性や利便性では上の2タイプに劣ることから、日数や荷物の重さに関わらず何よりも安全に持ち運ぶことを優先する場合におすすめです。

そんな全体的に良くできた優等生ですが、唯一注意しなければならないのはバックパックによって取り付け位置が低すぎてしまうという点です(右または上写真)。指示通りにショルダーハーネスの末端に取り付けるとパックが下腹部あたりに来てしまう場合があり、歩きにくいことこの上ない。

確かに自分のバックパックのサイズが合っていないだけという可能性もなきにしもあらずですが、バックパックは別に全メーカー共通の構造であるわけではないため、こうしたケースが必ずしもその人に原因があるとも限りません。

そんなときはどうするか。バラで販売されている別途取り付け可能なD環を用意するか、カラビナで直接ショルダーハーネスに着けるなど工夫することで、ちょうどよい位置に持ってくることができます。

効果はそれなりでも費用対効果重視:チェストストラップ型

手ごろな価格で費用対効果が高いといえるのがこのタイプ。基本的に首ではなく両肩に荷重がかかるようストラップを追加(補完)する形で使用します。試したのは、ショルダーハーネスのD環に短いストラップを取り付け、胸元にカメラを据えるタイプの UN UNX-5802(左または上写真)。要はショルダーハーネスとカメラを短い長さで繋いでいるだけなので、自前のカラビナなどを駆使すれば同じような形にはできるのですが、それはさておき、これだけでもある程度揺れは抑えられ、カメラへのアクセスは向上しますので、安定的に携行しながら撮影するという目的はとりあえず達成することができ、実感としては価格以上の効果は感じられると思います

難点といえば、やはりすべてにおいて効果がそこそこという点。ブラつきがまったく気にならなくなるかというとそこまでではないし、下方の視界は遮られるし、撮影時やバックパックを下ろす度に毎回ストラップを外さなければならないのは決してスマートとはいえません。また最近ではショルダーハーネスにD環が付いているバックパックも少なく、無い場合は先ほどと同様、別途取り付け可能なD環を用意する等の工夫も必要です。

なお、写真ではカメラに直接ストラップを取り付けているためむき出しになっていますが、カメラバッグで包んでからバッグ自体を吊すこともでき、プロテクションはやり方次第で高められます。

山には不向きだが旅行には最適:速写ストラップ型

最後は一般的なカメラストラップの世界で評判の高い速写ストラップ型。カメラの底部にある三脚固定のネジ穴で固定するストラップで、撮影状態と携行状態に素早く切り替えられるのが特徴です。

世間ではニンジャストラップが最もメジャーかもしれませんが、今回試しているのは同じような仕組みの Pro Sling Strap(右または上写真)。こちらは奮発したにもかかわらず、残念ながらカメラを安定して持ち運ぶために身体の横から後ろに密着させる必要があり、バックパックが邪魔になるため登山では使いやすいとは言い難い代物でした。ただし、コンパクトで取り付けも簡単なこの手のタイプは普段使いであればかなりスマートな携行法であることは確かで、実際、身軽な旅行においては今でも重宝しています。

まとめ

今回試してみたギアについては、ネット上に多くの興味深いレビューが個人ブログなどで上がっているかと思います。それらを読んでも十分参考にはなるでしょう。ただ、撮影スタイルは十人十色、当然個々人によって使い方や環境も異なります。自分としては、実際のところ横並びで使ってみて本当に使いやすいのはどれなのか、単純に知りたかった。そして今回のようなより客観的な評価は、それなりに共有する価値があるのではないかと。その意味で今回の結果がみなさんにとっても参考になれば幸いです。

このジャンルのギアはまだまだ改善の余地があり、世界中に待ち焦がれているユーザーも多く、アメリカのキックスターターなどで次々と新しいアイデアが生まれているのが現状です。Outdoor Gearzine では今後も最新ギアに注目していきたいと思います。

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