登山をはじめとしたアウトドア向けの腕時計として古くから絶大な信頼性を誇るPRO TREKシリーズから、新モデルPRW-7000が発売されました。アウトドアウォッチとしての基本機能と、過酷な状況にも耐えうる堅牢性、電池残量を気にせず使える安心感はそのままに、新開発の方位計やウォーターアクティビティに役立つ新機能などを追加した”マルチフィールドライン”の新しいプロトレックは、その汎用性と完成度の高さから、アウトドアユーザーが求めるすべてがここにあるといっても許されるレベルでしょう。
そんなカシオの本格万能アウトドアウォッチですが、先日ありがたいことにレビュー依頼とともにサンプルを提供いただきました。学生時代に憧れ、現在では数年来のPRO TREKユーザーであるぼくにとっては願ってもない機会ということで早速レビューしてみたいと思います(もちろん記事内容はいつも通りガチでいくつもり)。ということで、今回はじっくり使い倒す前のファーストインプレッションをお伝えしていきます。
外観・装着感
まずぱっと見ですが、これまでのPRO TREKに比べてベゼル周辺から文字やインデックスが目立たなくなっているため非常にスッキリとシンプルな印象に。つや消しで、削り出したような質感の黒が何ともクール。G-SHOCKのような無骨さを求める人にとってはマイナスかもしれませんが、個人的には無駄を省いた機能美と上質感が増したこちらも悪くない、というかかなり好き。どうせならもっと思い切って秒針やその他インジケータもモノトーンな色合いにまとめてもらっても良かったくらい。
風防には傷が付きにくいサファイアガラス、文字盤には蓄光処理された大型のインデックス、カーボン製の大型時分針を採用。右サイドにあるねじ込み式のリューズは大きめで握りやすいものの、やや硬めで操作性はあまり良くはない気がしています。これは誤動作や壊れにくさとのトレードオフと考えるべきか。
液晶には視認性の高いSTN液晶を使用し、ライトは液晶部と文字板をそれぞれ照らすダブルLEDライトを採用。暗闇での視認性は今のところ特に問題はありません。ちなみに暗い場所では時計を傾けると自動的に点灯するオートライト機能が便利。
ステンレスの背面プレートは剛性も高く、ヘアライン加工されたエンブレムは高級感たっぷり。ベルト素材のカーボンファイバーインサートバンドは従来の樹脂製に比べ強度は高い一方で伸縮性が少ないため、着脱にははじめ多少苦労しましたが、強く引っ張っても大丈夫と気がついて慣れてくればさほど問題にはなりません。
装着した際の着け心地ですが、このサイズにしてはさほど気になる重量(95g)でもなく、肌触りも良好。またボディが大きくて手首に引っかかるということもなく、今のところごく自然な着け心地です。
やや気になったのは新モデルになる度に増していく厚み。最近のモデルは他のメーカーも大して変わらず分厚いので仕方がない部分もあるのかもしれませんが、14.5mmという厚さは服やバックパックの脱ぎ着で毎度引っかかる度にストレスなので、何とかスリムな頃に戻らないものかと毎度思ってしまいます。
機能・操作性
登山に最適な、高い水準の基本機能
そもそも“PRO TREK”は、センサー技術を駆使し、方位・気圧・高度・温度など自然界の様々な情報を計測することができるアウトドアウオッチですが、PRW-7000はなかでもより高精細に計測可能な最新のセンサーシステム「トリプルセンサー Ver.3」を搭載したモデル。さらに蛍光灯の光でも発電するソーラーパネルを内蔵し、電池切れの心配がほとんど無い「タフソーラー」や、正確な時刻を刻み続ける電波受信機能、耐低温仕様(-10℃)など、信頼性の高い基本性能が過酷な状況での安定性を求める登山者には相変わらず頼もしい限りです。
そして新たに開発された自動水平補正機能付き方位計によって、時計が水平でなくても1度単位の方位計測が可能となり、水平を保つことが少ないアウトドアでも姿勢を気にせず方位を測定することが可能となりました。
ウォータースポーツに適した機能の追加
機能面でもうひとつの大きな特徴としては、水辺での使用を想定した20気圧防水性能や、魚の活性に影響を与える月齢と月の位置(時角)の相関関係から1日のうちで釣りに適した時間帯を教えてくれるフィッシングタイム機能など、川や海などでのウォータースポーツで便利な機能が追加されたこと。登山だけでなく、海や川でのフィッシング、カヤッキング、ラフティングなど、アクティビティの垣根を越えてあらゆるアウトドアで役立つまさにオールラウンドなアウトドアウォッチに進化してます。
個人的にはまだここまでの全機能を積極的に使用する機会はないですが、仮にこれが渓流釣りでも使える機能であれば、沢登り愛好家にとってこれ以上強力な腕時計はないでしょうなんて妄想が膨らんでいます。
正確性と直感性を兼ね備えたデジタル/アナログハイブリッド表示
情報の基本的な表示方法としては、アナログの時分針で時刻を表示しつつ、センサーを使った計測情報はデジタル画面と秒針で正確な数値情報を報せるという棲み分けです。
機能としてはあまり関係ないのですが、各モードに切り替わる時の滑らかで小気味よい針の動きが最高にキモチイイ(画像をクリックで再生)。
それに加え、右下にあるレトログラードのインダイアルでは各モードでの補足であったりより複雑な情報を表示。例えば気圧の変化傾向や基準地点からの高度差、目標の方角(ベアリングメモリー)、そして現在の干満情報を示すタイドグラフのインジケーターとして機能します。デュアルコイルモーター搭載により、アウトドアシーンで必要な情報を情緒的にそして直感的に表示します。多数の計測情報はすべて扇型の運針で表示されるのですが、はじめは何が何を指しているのか分かりにくく、正直慣れが必要です。いきなりすべての機能を使うわけではないのですが、やはりこの小さな領域に多くの機能を詰め込もうとするとどうしても表示に無理が生じてくるのは否めないようです。
主なスペック
詳細はカシオ公式サイトまたはカシオお客様サポートまで。
モデル | PRW-7000 |
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防水性能 | 20気圧防水 |
耐環境性能 | 耐低温仕様(-10℃) |
受信電波 | JJY(日本):40 kHz(福島局)/60 kHz(九州局)、 WWVB(アメリカ):60 kHz、 MSF(イギリス):60 kHz、 DCF77(ドイツ):77.5kHz、 BPC(中国):68.5kHz |
電波受信方法 | 自動受信(最大6回/1日、中国のみ最大5回/1日)、手動受信 |
方位計測機能 | 16方位・方位の角度(0°~359°)を計測、方位連続計測(60秒)、北方位指針機能、ベアリングメモリー(方位の角度、記録した方向を1本メモリー)、自動水平補正機能、磁気偏角補正機能、方位補正機能 |
気圧計測機能 | 計測範囲:260hPa~1,100hPa、気圧傾向グラフ表示(2時間または30分毎の計測を表示)、気圧差インジケーター(±10hPa)、気圧傾向インフォメーション(特徴的な気圧変化が起こった場合に報音と表示で報知します) |
高度計測機能 | 相対高度計(計測範囲:-700m~10,000m)、高度メモリー(計測年月日・時刻・高度を最大30本マニュアルメモリー)、自動記録データ(最高/最低高度、積算(上昇/下降)メモリー)高度傾向グラフ、高度差インジケーター(±100m / ±1,000m)、計測間隔設定機能(5秒/2分、最初の3分間は1秒毎に計測) |
温度計測機能 | 計測範囲:-10℃~60℃、計測単位:0.1℃ |
ストップウオッチ | 1/100秒、24時間計、スプリット付き |
ワールドタイム | 世界48都市(31タイムゾーン、サマータイム設定機能)+UTC(協定世界時)の時刻表示、UTCダイレクト呼出機能、ホームタイムの都市入替機能 |
タイマー | セット単位:1分、最大セット:60分、1秒単位で計測 |
アラーム | 時刻アラーム5本、時報 |
タイドグラフ | 潮の干満表示 |
ムーンデータ | 月齢表示 |
その他の機能 | 日の出・日の入時刻表示、フィッシングタイム機能、バッテリーインジケーター表示、フルオートカレンダー、12/24時間表示切替機能、操作音ON/OFF切替機能、ダブルLED(文字板/ネオンイルミネーター、液晶部/スーパーイルミネーター、フルオートライト、残照機能、残照時間切替機能1.5秒/3秒)、針退避機能(手動、自動:高度、気圧、温度計測時) |
使用電源 | タフソーラー(ソーラー充電システム) |
連続駆動時間 | パワーセービング状態※で18ヵ月以上 ※ 暗所で一定時間が経過すると表示を消し、運針を止めて節電します。 |
大きさ | 58.7×52.3×14.5 mm |
重量 | 約95g |
まとめ:どんな人におすすめ?
最終的な結論はまだですが、スペックとファーストインプレッションからこの時計がピッタリとはまる人を想像してみます。
実際のところ、これだけさまざまなアウトドアが手軽に楽しめるようになった今日日、10年先まででも1種類のアクティビティしかやらないよ断言できる人は少なくなってきているわけで。ぼくをはじめそうしたアウトドアをクロスオーバー的に楽しむユーザーが欲しているのは、3つ星のイタリアンよりも和・中・仏・伊すべてにおいて1つ星クラスを食べさせてくれるような料理店だったりします。実際にはそんなところあるわけ無いのですが、フィールドを選ばずどんなアクティビティでも十分に活躍してくれそうなPRW-7000はまさにそんな滅多に会えないオールラウンダーのようなものといってもおかしくありません。価格の「8万2000円+税」が唯一ネックとなりますが、目的さえ間違っていなければこの1本で十年以上は使えるであろう完成度の高さはある意味価格に見合っていると言えるのではないでしょうか。
あえて苦手な面を挙げるとするならば、あくまでもこのギアは時計・計測器としての正統な進化であり、フィットネスにおける活動量計・アクティビティ記録デバイスではないということ。その辺り最近のいわゆる”スマートな”デバイスがもつ「モチベーター」としての便利さ、楽しさは、スマートウォッチやフィットネスバンドには到底適いません。だからもしあなたがアウトドアにアスリート的な志向を持ち込みたい人であれば、この時計ではまったく満足できませんのでそれだけは注意が必要です。
ちなみに両方とも捨てがたいぼくにとっては悩ましい限りで、当分は左右両方にはめようと本気で考えている今日この頃……。とにかく、次回は少し経ってから、実際にフィールドでじっくり試用してみたレビューをお届けしたいと思いますのでお楽しみに!