Outdoor Gearzine "アウトドアギアジン"

カメラバッグと富山とJMTパンと ~村上宣寛さんに会いに行ってきた話~

富山に来ています。

すべては数日前に公開したカメラバッグについての記事に飛んできた Facebook 上でのコメント、そこで紹介している RIBZ のフロントパックについての指摘から始まりました。

カメラは防滴でないと、不都合が多い。レンズが防滴でないと雨の時に曇って撮せない。防滴だと曇らない。LIbzにはプラティパスの保冷カバーを少し解いて中に入れて縫い付けると、簡単にパッドにできる。ここだった。http://completewalker.blogspot.jp/2014/10/ribz-front-pack-s-size.html

指摘はその通り。SONY α7 に防滴性能はないため、実際雨の中レンズを曇らせてしまったことが何度かありました。ただ、それでもこの軽さと画質は手放したくなかったため防滴に関しては諦めていた。文字通り失念していたのです。

それより何よりコメント後半。決して簡単とはいえないレベルの道具のカスタマイズ(というよりも改造)をわけもなくサラリと言い放つあたり、補足にしてはやり過ぎなほど熱量がやけに気になります。というよりもこの凝り方、どこか見覚えが……。

リンク先を覗いて、その人があの「ハイキング・ハンドブック」の著者であり、ぼくが日本で最も信頼し尊敬しているハイカーの一人である村上宣寛さんであることが分かるのに時間はかかりませんでした。

書籍を読んだ人なら分かると思いますが、個人の経験だけに頼らず科学的な事実と根拠に裏打ちされ、その上メーカーその他の利害関係から独立した公平な批評の切り口は今の日本のみならず世界でも希有の存在といえます。そして密かに Outdoor Gearzine にとってこれ以上フィットする書き手は他にいないんじゃないかと勝手に妄想していました。ただ一方でダメなものはダメと舌鋒鋭く物事を切っていくスタイルは痛快で物騒(もちろん良い意味で)。自分がいくら確信をもってこのサイトを運営していたとしても、明らかに経験豊富な氏から何を言われてもおかしくはない。その不安がまったくなかったわけではありません。

ただ、そんな誰にも分からない未来を先回りして考えても、何も生まれない。とにかく願ってもないこの出会いをムダにするわけにはいきません。とにもかくにも勢いでコンタクトをとると意外なほどあっけなく出会いの日は決まり、そして一路20年ぶりの富山へ。

バス停で待ち構えてくださった村上さんの初対面であることをまったく感じさせないような馴染み深いほほえみは、これまで抱いていた不安を一瞬でかき消してくれました。

日焼けした肌と活きた筋肉で覆われた体躯は、大学を退官してしばらく経つ人のそれではありません。1ヶ月後にアメリカで1.5ヶ月に及ぶロングトレイル・ハイキングを控え、数日前には箕面から京都までの自然歩道を4日間歩いて来たばかりのトンデモない体力の塊。玄関に置かれた30Kgの砂袋入りバックパックで日々の実践的なトレーニングも欠かさないとか。

現在村上さんはアメリカ遠征に向けた準備の真っ最中。段ボールに詰め込まれた多くの乾燥食糧が想像を絶する旅のボリュームを伺わせています。

時間を忘れてひたすら山道具について語り合うこと数時間。バックパックのカスタマイズから手入れの仕方にはじまり、カメラや衛星通信などの電子ガジェットについての(お互いの)自慢話、アメリカの最新ロングトレイル事情、さらにはよい道具について、よい食事について、よい旅について。

とりとめのない話題ばかりでしたが、どの話にも通じるのは常人には真似できないほどの道具に対する徹底したこだわり、そして、それなしでは生きられないというほど身体に染みついた旅への情熱。この探究心、この熱量。Outdoor Gearzine チームにとってこれ以上ない人であることを確信しました。

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非常に濃密な時間はあっという間に過ぎていき、村上さんとはこのままの独立した関係は変わらずですが、現在他で研究していることや既に公表している情報を基に Outdoor Gearzine 向けのコンテンツとして活用させてもらえることなど、緩やかに協力してもらえることに(時期はまったくの未定です)。このサイトでは5月からまさにレビュアー・ライターを新たに募集しはじめたところでしたが、1ヶ月前にこんな展開を誰が予想していたでしょうか、これだから世界はなかなか捨てたもんじゃありません。

そんな村上さんの アウトドア・ギア・ノウハウのなかで、実は今このサイトでも検討真っ最中なのが「食」。Outdoor Gearzine ではこれからアウトドア食について考えていきます。

栄養学的知見に基づき、ハイキングで失うエネルギーと効率的な補給のために必要な食糧の質・量を完璧に計算し、食糧計画を実践するなかで村上さんによって考案されたのがJMTパン(「ハイキング・ハンドブック」P201参照)。全粒粉と ライ麦に牛乳、カシューナッツ、クルミ、カレンズを混ぜ合わせ、日本の蜂蜜と発酵用に砂糖を加えて焼いただけ※の、シンプルかつ率的に必要な栄養素が補給できるハイキング御用達オリジナル・ブレッドです。しっかり試食させていただきました。素朴で、ただただ旨い。

※村上さんより最新の「JMTパン」レシピを教えていただきました。それによると一本(約1.8kg)当たり、牛乳1L、全粒粉1kg, ライ麦500gくらい。具はカシューナッツ、クルミ、カレンズ。日本の蜂蜜大さじ数杯、砂糖数杯(発酵用)、イースト、オリーブオイル適当にたらたら。焼き上がりの写真は村上さんのFBページに

これまでいろいろな既製品の食糧を試してきましたが、なぜか大量生産の食品になると「これ」というものが存在しないのがアウトドア食の悩ましいところ。村上さんのように栄養学的根拠に基づいた確かな栄養価で、なおかつ手軽に、美味しいという究極のアウトドア食について Outdoor Gearzine でも少しずつ研究していきたい。そんなプロジェクトを村上さん監修の下コツコツつくっていきたいと思いますのでご期待ください!

公開まで待てないという方、もっと具体的に村上さんの道具についての解説が知りたいという方は、食に限らずアウトドア道具について目から鱗の情報が盛りだくさんの「ハイキング・ハンドブック」を読んでみることをおすすめします。

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