Outdoor Gearzine "アウトドアギアジン"

Outdoor Retailer Summer Market 2015 レポート ~行ってみたらこんなところだった~

ついに行ってきました、全米最大級のアウトドア用品展示会「Outdoor Retailer Summer Market 2015」(以下OR)。

ユタ州ソルトレイクシティで毎年2回行われ、世界中のアウトドアメーカーから来シーズンの新作アウトドア・ギアが世界に先駆けてお披露目されるとあって、Outdoor Gearzine としては必ずこの眼で確かめてみたいと思い続けてきました。で、行ってみたらびっくりというか、やっぱりというか、まぁ一言では言い尽くせない想像を超えたスケールだったわけです。到底1回のレポートではそのすべてをお伝えすることはできないので、注目のギア情報については今後パートをいくつかに分けてお伝えするとして、まずはイベント全体の様子をたっぷりのビジュアルと共にお伝えしていきたいと思います!

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Open Air Demo のスロウな空気からスタート

まず本会場であるコンベンションセンターのオープン前日に、ダウンタウンからバスで1時間ほど離れた湖の畔にてカヤックやスタンドアップパドル(SUP)をはじめ、さまざまなギアの展示・試用ができる「Open Air Demo」が行われました。まずこの会場の空気が本当にユルくてオープン。公式から映像がUPされているのでよかったらご覧ください。

湖岸の砂浜にズラリと並んだSUPをはじめとしたパドル系ギアメーカーのブースはふらっと訪れた人が気軽に試すことができます。あいにく濡れてよい服でもなく(とはいえ周りの人はほとんど薄い普段着)、まったくのど素人であったぼくは遠慮してしまったけど。

パドル系のギアには疎いが、本当にいろんな乗り物が展開されていた。

面白いのはこの展示会全体が、基本的にはメーカー・流通・小売・メディア・デザイナーなど事前登録した関係者のみ参加可能なのですが、おそらく関係者の家族と思われるこどもたちを含めて、思ったよりも老若男女(あと犬)といった幅広い層の人々が参加しているってこと。参加者が思い思いに湖でカヌーやSUPを試乗してみるもよし、ゲームに参加するもよし、音楽聴きながらクラフトビール(1杯無料!)でくつろぐもよし。完全に求めていたこの開放的な雰囲気に「コレコレ・・・」とひとりニヤニヤが止まりませんでした。

「ヘッドスライディングでゴムのモヒョモヒョしたおもちゃすくい」ゲーム。

チルアウトスペース。音楽はジプシーキングスみたいで何だかちょっと違ったけど。

 

電動スケボーのデモをさせてくれる兄さん。

そして開幕、1,600社以上の出展に圧倒

前日までまさかの閑散とした街はウソのように人で賑わい、東京ドームを優に超える広さはあろうかという会場は、世界中からやってきたアウトドア人達で溢れかえっていましたーほっと一息。その広大な会場には1,600以上の出展者が所狭しとブースを構えています。

やや俯瞰からみた会場の様子。

個々のブースはメーカーがそれぞれ自由にブースを設計しており、特にメジャーなメーカー、なかでも米国のメーカーはさすがというべき豪華なセットでブランド世界観に合わせた作り込みをしています。

靴メーカーとしては新興企業のKEENですが、広大なスペースかつ立体的に組まれたブース。勢いを感じます。

日本でもおなじみ、OSPREYのブースはゆったりとした空間と、Anti Gravity Suspension のメッシュ地をイメージさせる壁面で構成されたブース。

日本では知る人ぞ知る?prAnaですが、大きなブースに絶えず人混みがあり、アメリカでのヨガ・カルチャーの定着ぶりを感じます。

そこかしこで出会う新しい製品に大興奮

とにかく広い会場をぐるりと一通り歩いてみると、ほぼすべてのアウトドアスポーツ(バックパック、キャンプ、ハイキング、クライミング、アルパインクライミング、ランニング、トレイルランニング、サイクリング、マウンテンバイク、トライアスロン、フィッシング、ヘルス&フィットネス、ミリタリー・サバイバル、高機能栄養食品、パドルスポーツ、サーフィン、ウォータースポーツ、ペット用品、スケート、ライフスタイル、エクササイズ、ヨガetc.)に関するありとあらゆる製品が、あまり脈絡もなく目に飛び込んでくるので、そのカオスっぷりにまず1回面食らいます(もちろん、貧しい英語力もありますが)。

そして1周回ってから徐々に頭の中で整理できてきて分かったのは、目新しいと思うギアには3種類あって、それは

  1. 日本でおなじみのメーカーの新製品で、今後日本で展開していくもの
  2. 日本でおなじみのメーカーの既存製品(・新製品)だが、日本未展開のカテゴリ
  3. 見たことのないメーカーの見たこともない製品(もちろん日本未発売)

の3つ。はじめはメジャーなメーカーの新製品にウキウキしていたのですが、ある程度落ち着いてくると、1.のようにいずれ日本でお目見えするものについては(誤解を恐れずいうと)単に人よりも早く知ることができたというミーハー心が満たされただけだということに気がつきます(もちろんアウトドアギア全体のトレンドを知り、ここに来ていない人々に伝えるという上では大事なことですが)。それを知ってくると、じわじわと面白くなってくるのはくるのはむしろ、決して日本で出会うことのできない2.と3.の方だったりします。

日本ではテントやカヌーでしか見られないベルガンスも、新製品のバックパックがものすごくイイ感じ。

イタリアの老舗サレワも日本で入手しにくいブランドになってしまっていますが、イイ感じのトレッキングシューズがたくさんありました。

実際に現地に行ってみて分かったのですが、さすがにグローバル化がここまで進むとアメリカでそこそこ流通しているものはたいてい日本でも手に入るようになってるように感じました。その意味では知らないメーカーがゴロゴロってほどではなかったとはいえますが、それでも掘れば意外なところに面白いギアがあるもんです(例えば下写真)。こうした面白ギアについても次回以降、まとめてご紹介していきますのでご期待ください。

自然由来のナチュラルソープ・シャンプーも意外と日本には未上陸。

漁網からリサイクルされたポリエステルによる環境にやさしいソックスのブランドも日本ではまだ見たことがありません。

メーカーによって全く違う対応に翻弄

はじめに回っていて戸惑ったのが、各メーカー毎のメディアに対する対応です。相手がぼくのような野良メディアの英語もままならないど素人だったからかも知れませんが、基本的にメーカーによって対応には温度差があり、アポがないと話しもしてくれないところから、紹介してくれるだけでなくカタログやサンプルをくれるところまで、対応は本当にメーカー次第。撮影も、たとえメディアとして入ったとしても安心できず、各メーカー毎に禁止だったり、逆にウェルカムだったりバラバラ。

そう、ここは華やかなプレゼンテーションの場である以前に、メーカーとリテイラーとのガチの商談・ビジネスの場。その証拠に、メジャーなメーカーになるほどブースには立派な商談用の椅子と机があるのが当たり前、ふらっと立ち寄ったぼくの横では商談が普通に行われており、人手がほぼそちらに割かれていたりします。そういう意味ではこの場所で自分が望んだ情報を思い通りに得るには慣れと度胸と戦略、高い英語力・コミュニケーション能力が必要だということを痛感しました・・・。もちろん、厳しいと思ったところも時間帯によっては暇な兄ちゃんが割と丁寧に対応してくれたりする場合もあり、その辺はこの国らしい「やってみなければ分からない」というパターンは健在のようですが。

ノースフェイスのブースは今回見たなかでも最大規模でしたが、ほとんど顧客対応に追われてなかなか話しを聞くことができなかったり。

ダウンで有名なウェスタンマウンテニアリングのブースは、もはや商談スペース以外には足の踏み場がない。

ベンチャー・ガレージメーカー達のウェルカムさに感涙

そんな感じでピリッとすることもありますが、一方で小さくて新しいガレージメーカーによるブースでは、こうしたオープンな展示会ならではの新しい発見の興奮とフレンドリーなふれあいを体験することができます。今回そうしたガレージメーカーが多数集まっているエリアが、メイン会場から通りをひとつ隔てたパビリオンテント。何日も回っていると、これこそがORの醍醐味だと分かります。もう写真はウェルカムだし、聞いてないことも色々説明してくれるし、実体験させようとするし、サンプルは持っていけってうるさいし。心底楽しいひとときです。

パビリオンの前の特設プールでは1日中「SUPヨガ」講座を行っていました。ここでのSUPブームはホンモノ!?

パビリオンの中にはさまざまなガレージメーカーがひしめき合っていました。

夜のパーティの雰囲気に癒やされる

すべて把握したわけではありませんが、開催期間中の夜には毎日何かしらのイベントが会場外のスペースやレストラン・バーで行われ、ここも日本の展示会との大きな違いです。時には下の写真のようなチャリティーを兼ねたパーティであったり、どこかのスポンサーが主催する音楽イベントであったり、特殊な映画のプレミアム上映会であったり。とにかく、アウトドアに関わるすべての人が、この機会で可能な限り深く交流し、とことん楽しんでもらえるような気遣いというか、仕掛けで1日が埋められています。アメリカでの音楽フェスエンタメ・Tech系フェスであるSXSW等に参加したことがある経験からいうと、こうしたやり方・雰囲気はアメリカではまったく自然なことで、むしろ今回は少しおとなしいと感じたくらいでした(あくまでもビジネスメインだからか)。

パーティはもちろん家族も参加でき、こうしたパーティではさまざまなアトラクション、展示、ゲームなどが所々で行われていました。なかにはぜんぜん人が集まっていないエリアもありますが、だからといってそれがウケてるとかスベってるとか、ぜんぜん気にする人はいません(そんなことを考えていたのはぼくだけかもしれない)。参加したい人はする。そんな当たり前の空気が当たり前のように流れています。

まとめ

とにかくアウトドア好きにとってはたまらない刺激的な出会いが満載の4日間。まだお伝えしきれなかった色々なことがありながらも最後に、ある程度予想していたとはいえ、実際に訪れてはっきりと分かったことがあります。それは、個々のメジャーなメーカーの新製品に心躍らされることではなく、何よりもここでしか味わえなかった「今年はどんなとんでもないコンセプトの新しいスポーツやメーカー、ギアが出てくるのか」という、新しい価値との遭遇を共有できる場としてのこのショウの計り知れない価値です。それが実感できたことは、これからの日本のアウトドアを考えていく上でも非常に意味がありました。

こちらに出展している日本のメーカーの方とお話ししたところによると、これでも数年前に比べると最近は新しいメーカーの出展も若干落ち着いているそうです。それでも(製品の良し悪しはともかく)こうして名前も実績もないメーカーが平等にスペースを与えられ、多くのリテイラー達にプレゼンテーションする場を与えられるということは、単に素晴らしいということではなく、産業と文化の発展を育むために大きな意味をもっています。常にイノベーションが生まれ、新陳代謝し続けるアメリカの強さの根源が、ここアウトドアという産業でもはっきり見てとれます。畑は違いますがIT産業の分野でも、音楽産業の分野でも、この構図はまったく同じ。日本はここからのおこぼれをもらっているだけで良いのでしょうか。そんな思いはここに来てあらためて強く感じずにはいられませんでした。

さて、次からは3日間足を棒にして歩き回った成果として、注目のギアをご紹介していきたいと思いますので、またしばらくお待ちください。ではまた!

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