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私にとって吸汗速乾アンダーウェアは「マストレイヤー」
「ゼロから登山を始める場合、ウェアは何から揃えればいいですか?」と聞かれることがあります。
レインウェア(アウターレイヤー)は必須。季節や場所に応じた速乾性・保温性のある衣類(Tシャツ・長袖シャツ・ダウン・フリース・ベストetc.)とパンツももちろん必要です。最近は比較的安価で高性能な商品がワークマンや大型アウトドアショップなどで手に入ります。
以上を揃えればOKと思われがちですが、ここでぜひ声を大にして言いたい、プラスしてほしいアイテムが吸汗速乾性の高いドライ系のアンダーウェアです(以下アンダーウェアと書きます)。
以前、このサイトでもその必要性を語りましたが、アンダーウェアとは簡単に言うと「肌をドライに保つことに注力した肌着」のことです。天候や発汗など環境変化が激しい登山では、アンダーウェアが行動中の快適さを左右すると言っても良いくらい重要な装備です。余談ですが、アンダーウェアは普段着のインナーとしても使える万能選手でもあります。
さてなぜ私がアンダーウェアにこだわるのかというと「かなりの汗かきで、季節問わず強烈な汗冷えを経験したこと」がまずひとつ。
次に紫外線対策。今回取り上げるアンダーウェアは長袖です。冬場はともかく、夏場でも長袖を着ることで紫外線対策になります。日焼けをしたくないのと日焼けで体力が奪われることもあり、自身は長袖アンダーウェアを着用しています。長袖であることで鋭い岩や枝などに触れた時のすり傷を防ぐことができますし、ガシガシ行動する自身にとっては長袖が欠かせません。
そこで今回は、通年着用を想定したドライ系アンダーウェア4点を着比べて「結局どれが私にとって一番なのか?」調べてみました。
目次
吸汗速乾性に優れた長袖ドライアンダーウェアBEST候補4アイテム
発売日の新旧問わず主に次の条件と個人的な好みで候補を選びました。
- 快適性(肌当たり・体にフィットしながらも締め付け感がない)が高い
- 速乾性がある
- 動きやすい
なお防臭性については今回あまり考慮していません。着用日数に関わらずニオイは必ず発生します。ハッカスプレー(自作)をかければ自身の場合大抵はしのげるので気にしておらず、条件から外しました。
こうして検討した結果、以下が候補の4点です。
- finetrack ドライレイヤーベーシックロングスリーブ(レディースMサイズ)
- mont-bell ジオライン L.W.Uネックシャツ(レディースMサイズ)
- THE NORTH FACE ロングスリーブドライクルー(レディースLサイズ)
- ONYONE ハイグレーターストレッチメッシュフリーネックロングスリーブ(ユニセックスSサイズ)
テスト環境とフィールドテスト結果
テスト環境
【期間】11月〜12月
【山域】天狗岳(長野県)・アップダウンが多い神奈川県南部の低山
【天気】晴、曇、小雨
【レイヤリング】アンダーウェア+メリノウールのベースレイヤー+ウィンドブレーカーorレインウェア
【テスターの体型】身長:160センチ、体重:53キロ
低山と高山、急登、稜線歩きなどがありテストするにはベストな環境でした。
フィールドテスト結果
各アイテムを実際に着てみてのインプレッション
マイ・ベスト:mont-bell ジオライン L.W.Uネックシャツ Women’s
今回試着するまでファイントラック一択(前のモデルでたぶんスキンメッシュかと)で登山してきましたが、ジオラインの柔らかい着心地を経験すると、こちらに軍配が上がります。一日中肌へ直に触れているものなので肌あたりの良さは自身にとって重要です。生地が十分伸縮するので動きやすさは問題なし。
カラーバリエーションはブルー・パープル・ブラックがあり、ブヨ・蚊などが近寄りやすいカラー(ブラック)以外を揃えてあるのは高ポイント。上に着るウェアと干渉しないように襟回りが広いのも好きな部分です。
一番汗をかく背中が少し乾き辛く冷えを感じたので、汗の放出がもう少し早ければ良いのに…といったところでしょうか。
THE NORTH FACE ロングスリーブドライクルー
生地の裏面が凸凹のグリッド状になっているので通気性の良さを期待しましたが、汗をかくと背中や腋、胸周辺に生地が密着している感じがありました。汗がなかなか乾かず背中が冷えて風が吹く稜線では寒い思いも。
色展開がブラックだけなのが残念です。発汗時以外はゆるっと体にフィットし、化繊あるあるのゴワつきや硬い肌触りを感じさせずソフトでサラッとした着心地は好きなところ。生地と肌との間に余裕がありかつ生地の伸びが良く動きやすかったです。ゆるっと着られるものの生地が薄いのでベースレイヤーとの干渉は気にならず。
finetrack ドライレイヤーベーシックロングスリーブ
今回試着したどのアンダーウェアよりも速乾性はズバ抜けて早かったです。汗かきにとって汗冷えをほとんど感じさせない仕様はかなり重要なポイントですし、これはファイントラックのお家芸とも言える貴重な性能です。
以前自身はブラックを着用していて、薄い生地に並ぶ丸い穴からアブやブヨに刺された辛い経験があるので、色がブラック以外もあるのがありがたい。保温性を感じないことや生地がゴワつく感じは変わらず。
ファイントラックオンラインショップのSize Finderでぴったりのサイズを選びましたが、「トルネードスリーブ」という新しいカッティングは、袖を通す時からどうも着づらく自身には 合わなかったようです。他のウェアと比べると行動時の生地の伸びが甘く、若干の動きづらさを感じたのは残念でした。
ONYONE ハイグレーターストレッチメッシュフリーネックロングスリーブ
今回の試着のダークホース的存在として期待していましたが、ウェアが謳う「エアコン効果」の良さは残念ながらあまり実感できませんでした。
野球?向けの製品だったからなのか、冬に大汗をかくアウトドアにはイマイチマッチしなかった感じです。野球は夏以外大量の発汗が無いはずのスポーツなので、そりゃ用途が違います。
「運動初期は汗の湿気を吸い取って発熱、発汗量が増えると積極的に放出して冷却する」という機能が過剰に働いたのか、汗をかき始めたら暑すぎ、行動を止めたら一気に寒くなってしまいました。サイズ展開がおそらくメンズ仕様なのでSサイズを選びましたが、終始着圧がかかっているようなタイトさで早く脱ぎたいと思ってしまうほどの着心地はちょっと辛かったです。先に「エアコン効果」に興味を持ってしまったので、ラインナップから見逃していた同社の「ブレステックPP」を選べばよかったと後悔しています。野球向けとだけあって動きやすさは問題なしでした。もし登山でハイグレーターを使うとしたら、ワンサイズ上げたうえで休息・停滞時のアンダーウェアとして使用するにはおすすめだと思います。
まとめ
上記のウェアをおすすめの方別に分けると、コースタイム位のスピードで歩く方の登山、ほどほどに汗かきの方、アンダーウェアの着心地を気にする方向けのモンベル。トレイルランニング、早いスピードで歩く方の登山、強度の高い登山、とにかく汗を早く乾かしたい方向けのファイントラック。強度の低い登山や縦走、軽ハイキング、あまり汗かきではない方向けのノースフェイスとなるでしょうか。
製品説明を読んで着てみると、良くも悪くも「あれ?」なんてことありますよね。実際に使ってみるまでわからないものです。
アンダーウェアはよく言われる「低体温症」の予防にもなる大事なウェアです。これを機会に興味をもって手に取ってもらい、あなたにピッタリの一枚に出会う助けになれればありがたいこと。みなさんそれでは楽しい山旅を!
松原 充生子