あなたは暑いのと寒いのと、どちらかに耐えろと言われたらどちらが得意ですか?
その質問に答えるとしたら、私は暑いのならまだ耐えられる!と答えると思います。と言うのも以前、人生で一度、汗で冷えた下着のせいで凍え死ぬかと思うような辛い思いを経験したことがあるからです。
あれは友人たちと樹氷を見にいこう!数名のパーティーを組み、雪山登山をした時のことでした。暑がりで寒がりの私。つまりは汗っかきってことなので、できるだけ汗吸性と速乾性、防水性や保温性に優れたウェアを取りそろえ、レイヤーをしっかり重ね合わせ、体温調整のために脱ぎ着もしやすいような万全の体制をとったつもりで山頂へ向かいました。途中、暑くなれば上着を脱ぎ、寒くなればまた上着を羽織る。でも、これがメンドクサイ・・・あぁメンドクサイ・・・脱ぎ着をする度に、仲間に声をかけ足を止めてしまう。あぁごめんなさい・・・申し訳ない・・・動いているうちは体も温まって大丈夫なのですが、立ち止まると汗で濡れた下着のせいで内側から体が冷えて、また凍える。
楽しいはずの登山もこの「暑い×寒い」を繰り返す戦いに私は少し参りました。そんな経験以来、雪山登山は残念ながら苦手です。話はまた別のシーンのウルトラランニングでは、長時間の上下運動による下着ズレで肌から血を流すといった痛い経験も。一番肌に密着し女性の体を守ってくれるはずの下着が、選び方を間違えれば凶器に変わる・・・というのは大げさですが、いかにスポーツのパフォーマンスに影響を及ぼすのか?私は下着選びの大切さを、こういった経験から悟ることになりました。
あなたも冬のマラソン大会で凍えた経験はありませんか?私と同じような苦い経験をしている女性は他にも結構いるんじゃないかなと思います。そこで今回は、こういった汗冷えや皮膚ずれなどを防ぎ、長時間の運動パフォーマンスを保ってくれる快適な下着(スポーツブラ、ショーツ)を探していきたいと思います。
目次
目次
比較テストしたスポーツブラについて
まず今回のレビューは下記の基準でアイテムを選抜しました。
- 締め付け過ぎずに揺れ胸を押さえ、ゆるすぎて皮膚ずれを起こさない適度なフィット感
- アウターに影響がでにくい、しっかりとした吸汗性
- 汗冷えを防ぐために濡れても落ちない保温力と高い速乾性
- 外観と耐久性
下着に外観?と思われるかもしれませんが見せブラというカテゴリーが存在していたり、逆に見えないオシャレにもこだわる女子にとっての大切なポイントなので、シルエットの維持としての耐久性も含め選抜にいれています。
実走と洗濯による吸水・速乾性テスト方法について
実走は12月中の午前中に数回にわけて、平均気温は5℃~10℃くらいの間で行いました。トップスの装備は各インナーの上からスポーツ用の長袖Tシャツの上に半袖Tシャツの重ね着とウィンドブレーカーで統一。吸水・速乾性テストは、洗濯ネットで通常仕上げで洗濯と脱水でやや湿っている程度の状態に重量を測ったのち、お天気の良い日の窓辺で陰干し。15分毎に全アイテムの乾き具合~全体が乾くまでを手触りでチェックして判断しています。
テスト結果&スペック比較表
評価結果 ~タイプ別おすすめ~
MILLET ドライナミック メッシュ タンクトップ
汗冷えを防ぎ保温効果も抜群。厳冬トレーニングの危険性を回避。
見た目に少し牽いてしまう女子もおられるでしょうか?私も最初はこの忍者みたいな網スタイルの下着に違和感を覚えていました。でも実際にエイやっ!と装着してしまえば・・・あなたの冬のスポーツシーンでは手放せない秀逸アイテムを実感できることでしょう。
従来の下着では激しい運動による大量の汗を吸い上げても発散が追いつかず、濡れた下着は肌にはりついたままになり、その結果汗をかく→肌が濡れる→冷える→疲れる→体力を消耗といった悪循環が往々にしてありました。
その負のスパイラルを断ち切るため、疎水性に優れ、熱伝導率の低いポリプロピレンをベースとした素材をかさ高で伸縮性に富んだメッシュ編み構造にし、体にフィットした吸汗速乾レイヤーの下に着用することで、肌から汗を素早く引きはがし、上のレイヤーに移行・拡散させる仕組みを提案しました。そのためにメッシュの網が大きくて少しカサ高くなっています。そのお陰で空気の層が生まれ、夏は通気性、冬は保温性が高まるのです。つまり汗をかく→肌は乾いたまま→冷えにくい→体力を温存してくれるという仕組み。
洗濯テストにおいては生地の面積から水分を含む量は多かったのですが、乾き方も一番早かったのでまさに汗冷えを防ぐには一番優秀なアイテムと言えるのではないでしょうか。ただ保温性が高いので私が実験したCityランでは少し暑いくらいでした。気温が5℃以上ある時や、ずっと動き続けることができて体温が維持できるような状況の時には必要ないかもしれません。
mont-bell ジオラインメッシュ フロントホック ソフトブラ
素早いトランジットが可能!フロントホックで着替えが断然楽に!
山屋さんご用達のモンベルが誇るジオラインシリーズは特殊な繊維加工技術が施され、極細繊維が驚きの吸水拡散性を実現しています。
汗を素早く吸い上げると同時にまた素早く拡散してくれるので、洗濯実験で脱水後はこれが最も水抜けが良く軽量、そして早く乾き始めました。ジオラインのアンダーウェアは種類も豊富でキャミソール・Tシャツ・ハイネック・ブラ・パンツと多彩なのも便利ですね。
名称通り布地全体がメッシュ素材で構成されており手触りも非常にソフトで軽く、通気性の良さが伺えます。こういった柔らかい生地特徴がある分だけ揺れに対するサポート力は少し弱いかもしれませんが、付け心地は締め付け感もなく快適です。
何より私が一番気に入ったポイントはフロントホックタイプということ。汗をかいたスポブラって非常に脱ぎ着しにくいのですが、これならサッと前のホックを外すだけ。色や見た目はいまひとつですが、シルエットも崩れることなく白いTシャツを重ねても良い感じです。
CW-X スポーツブラ 走る人のブラ HTY168
5方向テーピング構造でしっかり揺れを抑える高機能タイプ
日本屈指の女性用の下着といえば、海外でも買えるほど知名度が高いのがワコール。50年近くに渡って約4,000人という膨大な実測データーを元に科学的に分析した上で製作されていることで有名ですね。
この走る人のブラにおいてはランニング・トレイルラン・バスケットボール・フットサルなど、走ったり飛んだりする動きに向いています。独自の5方向サポート機能でバストの揺れを分散して、しっかり胸を守ります。走るときの肩甲骨の動きをさまたげにくいYバックスタイルのデザインは見た目にもオシャレで、チラ見せするのも可愛いかも。カップは挿入式で生地の間に入れるようになっています。
メーカー側の話によると、ワコールのこだわりとしてスポーツをする人においても胸を美しく見せることも重視しているとのこと。私の場合はアンダーとトップの差が少し合わなかったようで、カップに凹みが生じ、Tシャツの上から見ると少しいびつなシルエットなるのが残念なところですが、縫製や生地の質感は全アイテムでは一番だと思いました。サポート力はしっかりしているので、胸が大きく揺れるのが悩みの方には、おすすめかもしれません。
ただし挿入カップが災いしてか、その部分のみ乾きが少し遅め。それでも45分後にはほぼ乾燥していました。
finetrack スキンメッシュ ブラタンクトップ
日常使いもできそうな楽々フィットのブラタンク。
フランス製のMILLETに引き続いて、濡れを肌から引き離すドライレイヤーという同カテゴリーで知られているインナーがfinetrack。ウェアはファッションではなく無事に帰るためのギアであるというブランドストーリーから生み出されています。
レイヤリングという山屋さんがよく使う重ね着テクを私が知ったのも、ここのメーカーの教えがあったからかもしれません。こちらの素材は網というよりも特殊なメッシュ。適度な保温力と汗抜けスピードのバランスに優れ、季節を選ばず、見た目もさほど恥ずかしくない感じなので、初めてドライレイヤーを使ってみるには丁度いいかもしれません。ただ生地が少しデリケート。軽さと機能を両立させるために繊細で薄いニット生地を採用しているので繰り返しの摩擦やひっかけなどに弱く、生地が損傷しやすいので、洗濯も必ずネットに入れて洗う必要があります。
乾き度合いは胸パット部分のみ少し濡れ感が残りましたが他はMILLETと同等の速さ。皮膚ズレという観点においては、薄さ軽さが生地ズレを生じさせるようで、店員さん曰く長時間のランニングなど激しい動きでは痛みがでる人もいると正直に教えて貰いました。さほど動きの激しくない運動時の汗によるべたつきを防止したいなんていう時に活躍してくれるかもしれません。
adidas W M4Tトレーニング ミディアムサポート SBブラ
きついブラは苦手な人向け。ミディアムサポートで、快適に。
フィッティングで有名なワコールは店員さんが”ビューティーアドバイザー”と呼ばれ、しっかりとサイズを計ってくれるのですが、なんと最近ではadidasにも同様に”ブラコンシェルジェ”なるadidas独自の資格を有した店員さんにアドバイスを受ける事ができるようになっています。そして面白いことにスポーツブラを選ぶ基準が相反するようなアドバイスを受けました。
ワコールは胸を美しく見せるのを重視しており♪寄せて上げて~というCMや商品がありましたが、一方adidasのコンシェルジェによると「胸はできるだけ締め付けて。いつものサイズより2サイズダウンするくらいがおすすめです。運動する時は胸を大きく綺麗に見せるはなく、揺らさないことが必要なんです。」とのこと。ふむぅ~確かにそう言われたら頷けます。
私の用途はランニングが多く、その場合はハイサポートタイプがガイドラインとしてはおすすめなのですが、あまりにきつすぎてミディアムタイプに落ちつきました。これなら適度なフィット感でズレも痛みもなく快適です。ひとつだけちょっと気になったのがぽちっと乳首のシルエット・・・カップは縫い付け式となっており取り外しはできません。アウターに薄くてぴったりとフィットするような白いTシャツなどは避けた方が良いでしょう。
1時間たっても渇いておらず全アイテム中では乾きが2番目に遅いので雪山などには無理そうですが、通常の街中ランならさほど冷えることもありません。
CW-X スポーティーショーツ JSY376
ショーツにもこだわってみる。肌触り抜群で足さばきも快適。
最後に、ショーツ。私が汗冷えをひどく感じることで対策を練ってきたのはこれまで上半身のみでしたが、ショーツにもこだわったらどうなるか?を実験したくて、編集長にお願いして比較アイテムに入れて貰いました。
結果としては、これがあるが故に劇的に汗冷えが防げる!というものではありませんでしたが、劇的な履き心地の良さ!肌触りが滑らかで心地良い上質な生地と、縫製の質の良さが普通のパンティーとは各段に違うのがわかります。ゴムの伸縮もしっかりしているので永く履けそうなショーツだなと思います。安いショーツってすぐにゴムが伸びてダメになりますもんね。ワコールはショーツにしては少しお値段が張りますが、耐久性を考えたら元は取れるかもしれません。両股部分にゴムの締め付け感が一切ないので足運びも快適。
洗濯テストに対してはナイロンが70%となっていて、肌触りもひんやりしているためか、全アイテムより乾きが遅かったです。しかしそれによって腰回りが冷えるという感じがでるような問題はありませんでした。
まとめ
形状もタイプもそれぞれ違うのでその特性を活かしたおすすめシーンをトライアスリートの私の立場から2点選抜してご紹介します。
何よりも保温性の高かったMILLET。雪山登山は勿論、冬場の自転車練習でのインナーに是非おすすめしたい。というのも峠を登っている時は汗だく。しかし下り坂になった途端、ペダルを回す足の動きが止まるため凍えるような思いをしがち。自転車でこの寒さはパフォーマンスどころか事故にも繋がりかねません。そこでこのMILLETにて是非ご自身を守って欲しいと思います。
ウルトラランニングや、タイムが遅く歩いたり止まったりして体温が上下するランナーにも同時におすすめできるといえます。が、通常動き続けることが可能な街中ランにはおすすめしません。街中ランや市街地でのマラソン大会などでは、レース後に素早く脱ぎ着できるフロントホックタイプのmont-bellが一押しです。最後の着替えのテントで凍えることなく、さっと更衣室から出て、アフターパーティーを楽しんでくださいね。
曽根 倫子
” 焦らずゆっくりマイペース ” をモットーにトライアスロンを楽しむ水陸両用ライター。2015年:企画編集プロダクションを立ち上げフリーランスとして活動中です。優しい言葉でわかり易く心が伝わる記事を提供するよう心掛けています。半径100km以内なら、いつでも自転車に乗って取材に駆けつけるバイタリティーを持ち、ご用命とあらば、山の中を走り、海の中を潜り、世界中を飛んで参ります。自慢できることは、面白そうなコト・モノを探し出す嗅覚が鋭いこと。
企画編集プロダクション:Office Astro Writing
Blog:Rinko’s Diary
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