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食に妥協したくない人必見!登山向けクッカー・コッヘルの選び方

半端な気持ちで選ぶと火傷する、本当に使いやすいクッカー・コッヘル選び

最近日帰りの低山であっても、山で自炊する人が増えているような気がします。書店でもひと頃に比べて山ごはん系の本をたくさん見かけるし、つい最近、そのものズバリのWEBマンガもはじまったようだし。もちろん道具や食材の進化で山での炊事が簡単になったということも理由にはあると思います。でも山で食べるあったかいごはんの、あの旨さというより”お金で買えない幸せ”感を一度知ってしまうと、止められなくなる人が増えるのも大いにうなずけるというもの。さて、今回はそんな山で自炊するときに欠かせないアイテムのひとつ、クッカー(日本では昔からドイツ語の「コッヘル」という呼び方も一般的)を取り上げたいと思います。

そのルーツを各国の軍隊で用いられていた金属製調理器具にもち、日本においては飯盒として長く親しまれてきたクッカーは、近年登山やキャンプなどのさまざまな用途・目的に最適化されてきました。その結果、今では素材や形状、サイズ、デザインなどバラエティに富んだ数多くのモデルのなかから選ぶことができます。一方で、何をどう選んでいいかという基準が複雑になってきているのも事実。かく言うぼくも昔、非常に軽量なチタン製のクッカーが登場したとき「チタン=軽い=良いもの(高価)」と半端に考えていた時期がありました。ところがせっかく買ったチタン製のクッカーは全然上手く調理ができず一瞬で焦げ焦げ。チタンの実力を発揮するには然るべき状況の選択と使い方があったということがかなり後になって分かり、高い授業料を払うことになったりしたものです。そんな後悔をしないように、本当に使いやすいクッカーの選び方をしっかりここで整理したいと思います。それではいってみましょう!

これだけ多種多様なモデルが存在している珍しい国、日本。食に対するこだわりの強さはさすが。

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目次

優れたクッカーに求められる性能とは?

クッカーがもし単に食べ物をよそるための食器というだけであれば、重量とサイズだけ気にすればほとんど事足ります(実際、木や樹脂でできたお椀も十分山で使えます)。しかし、今回のようにそれを火にかけて調理することを前提として考えた場合、調理器具としての性能や使い勝手を含めてさまざまな要素が求められてきます。以下、ざっと挙げてみます。

上の要素すべてにおいて完璧なクッカーをぼくはまだ見たことはありません。そこで大切なのは、ギア同士のさまざまな特性の違いを知り、その中から自分のよく使うシーンや目的・こだわりに合わせて最適なモデルを選ぶことです。ここから最適なクッカーを選ぶときにチェックするべきポイントを5つ説明していきます。

チェックポイント1:サイズ

クッカーには1杯のコーヒーが飲めれば良いというモデルから、大人数パーティのカレーをつくる鍋まで、細かく多様なサイズが存在していますので、実際に自分が調理するモノと食べる人数を照らし合わせてサイズを検討するというのがまずは大事。その他、効率的なパッキングのために「ガスカートリッジがクッカーのなかに収納できるかどうか」ということも重要な検討事項のひとつ(チェックポイント4も参照)。万が一小さすぎるサイズを選んで失敗しないように、下の表に各用途で大体どれくらいの容量・サイズが必要かをまとめてみました。当然のことながらお湯の他に多くの食材をクッカーに投入して調理する場合には、必要な容量は倍以上に膨れ上がりますのでご注意ください。ともあれここから大まかに自分が使用するシーンを想像し、必要なサイズ検討の参考にしてみてください。

用途 容量の目安
コーヒー1杯 湯量約140ml
カップラーメン 湯量約330ml
インスタントラーメン 湯量約450ml(麺の体積は除く)
アルファ米 湯量約160ml
米1合 水約200ml(米の体積は除く)
小型ガスストーブ 直径約10cm/高さ約7cm(実測)
中型ガスストーブ 直径約11cm/高さ約9cm(実測)

選ぶときのポイント

チェックポイント2:型・形状

同じサイズのクッカーでも、使い勝手や好みに合わせて大きく3つの形状から選ぶことができます。それぞれにメリット・デメリットがありますので、まずは下記の表で特徴を比較してみましょう。

素材 深型 浅型 角型
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メリット
  • ガスカートリッジを中に収納できる
  • 縦長でパッキングがし易い
  • 蓋を皿・フライパンとして使用できるモデルが多い
  • 調理しやすい
  • 食べやすい
  • 洗いやすい
  • 熱効率が良い
  • (コンロの上での)安定感がある
  • 大人数向けのサイズがある
  • インスタントラーメンを割らずに収納・調理できる
  • 調理しやすい
  • 食べやすい
  • 洗いやすい
  • パッキングし易い
  • 液体を注ぎやすい
デメリット
  • 調理しにくい
  • 食べにくい
  • 洗いにくい
  • (コンロの上での)安定感が低い
  • 大人数用の大きさがない
  • ガスカートリッジを中に収納できないモデルが多い
  • パッキングがしにくい
  • バリエーションが少ない
  • 大型サイズがないため、多くても2人用

選ぶときのポイント

チェックポイント3:素材

一般的にクッカーで使用されている材質は昔からアルミ、ステンレスが主流、そして近年チタン製が徐々に増えてきています。この中でステンレス製は重すぎて登山には現実的でないため、通常はアルミかチタンのどちらかを選びます。

当然これらは別の金属ですので特徴は異なり、初心者のうちはチタンの方が高価だし何となく良いものと思ってしまいがち。ぼくももちろんその道を通ってきたのですが、結局のところ、実際には一長一短があって決してはっきりと優劣はつけられません。ただとにかくチタンは、(特別なコーティングなどされている場合を除けば)ちょっとでも火力が強過ぎるとすぐ底が焦げて歪みますので、せっかく高いお金を出して手に入れた後も、この使い勝手の悪さに付き合っていかなければなりません。そこまでしてチタンにこだわる必要があるか。例によって下表にメリット・デメリットをまとめましたので、今一度確かめてみてください。

素材 アルミ チタン ステンレス(参考)
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メリット
  • 焦げにくい
  • 熱伝導率が良い(調理がし易い)
  • 薄くて軽い
  • 硬くて凹みにくい
  • 錆びにくい
  • 熱が伝わりにくいので取っ手が熱くなりにくい
  • 金属臭が少ない
  • 錆びにくい
  • 傷つきにくい
  • 冷めにくい
  • 安価
デメリット
  • 変形したり凹みやすい
  • 耐久性が低く、錆びやすい
  • (チタンに比べ)重い
  • 熱伝導率が低い
  • 火が当たるところに熱が集中してそこだけ焦げやすい
  • 高価
  • 重い
  • 熱伝導率が低い
  • 焦げやすい
備考
  • 近年ではアルミ表面に特殊な加工を施すことによって、弱点である耐蝕性、耐久性、硬度を高めているモデルが一般的になりつつある
  • さらに内側に焦げ付き防止のコーティングが施されたモデルもある
  • さらに内側に焦げ付き防止のコーティングが施されたモデルもある
  • EPIのATS加工のように、メーカー独自の技術によって弱点である熱伝導率を高めたモデルも登場
 

選ぶときのポイント

チェックポイント4:収納性

中身が空洞で圧縮もできないクッカーは、パッキングが非常に厄介なギアの1つです。そこで極力コンパクトに収納するために、微妙なサイズ違いの容器をマトリョーシカのように重ねて収納(スタッキング)できるようになってるものが一般的です。たとえ今は一人分の小さなクッカーひとつで十分だったとしても、2人・3人とパーティが増えたときに無駄なく買い足していけると非常にスマート。

このためまず確かめておきたいのは、自分が選んだブランド・モデルに、将来的にスタッキング可能なサイズ違いのセットがあるかどうか。できればそうした拡張が可能なモデルのなかから今自分に必要なサイズを選んで揃えていくというスタイルがベスト。もちろんはじめから大小セットのモデルを買うという選択も十分アリです(左写真はモンベル アルパインクッカー 18+20パンセット)。その意味では深型と浅型・角型は統一するのが効率は良い(・・・ということは頭では分かっているのですが、色々なシチュエーションを考えると、なかなかそうもいかないのが現実ですよね・・・)。

また、クッカー内部の空洞を埋めるのにまず思い浮かぶギアはガスカートリッジですが、それだけでなく例えば GSI ピナクル デュアリスト(右写真)のように、食器やマグ、ストーブ、ライター、食材など、なるべく隙間なく無駄なくさまざまなギアも一緒に収納できるのが理想的なクッカーの条件の1つでしょう。

 

収納性という観点でいうと、これまでシリコン製の折りたたみ式食器を展開してきた SEA TO SUMMIT の新製品 X-POT がかなり衝撃的。底面がアルミ、側面がシリコンで折りたたみ可能なため、驚異的な収納性と調理器具としての利便性を兼ね備えた驚きの”クッカー”です(左写真)。側面まで火が伸びないように火加減を調整しなければいけないため火力はたかがしれていますが、これからどう進化していくか注目です。

 

チェックポイント5:その他の機能・使い易さ

取っ手(ハンドル)

クッカーの出っ張りがパッキングの邪魔になっては使い難いし、かといってすぐに折れ曲がってしまうようでは調理がやりにくいことこの上ない。利便性と収納性という2つの相反する機能を両立させようと、各メーカー創意工夫しているのがこの取っ手部分。個人的には以下の3点をチェックしています。

すべてにおいてしっくりとくる取っ手にはなかなか出会えないのですが、個人的には MSR QUICK SOLO SYSTEM のような安定した握りやすさと折りたたみやすさはかなり理想に近いのではないかと。ただ弱点としては作りが複雑で壊れたときが怖いってのがありますが。

コーティング

素材の項目で触れたように、現在ではアルミにしてもチタンにしても、その弱点を補うべくさまざまな加工技術(下記参照)が取り入れられ、全体的な品質は着実に高まっています。クッカーを選ぶ際にはただアルミだからとか、チタンだからとかだけでなく、これらの技術がきちんと取り入れられているモデルをチェックすることが非常に重要であるといえます。

用途 容量の目安
アルマイト加工
ハードアノダイズド加工

アルミの弱点を改善するための表面処理技術のひとつがアルマイト加工。この加工を施すことでより硬く丈夫に、耐蝕性、耐摩耗性を向上させることができる。またそのなかでもさらに硬度と耐久性を高める加工方法のことを「ハードアノダイズド加工(硬質アルマイト処理加工)」という。

ノンスティック加工
テフロンコーティング
セラミックコーティング

いずれもクッカー内側表面に施した焦げ付き防止加工のこと。これらのうちノンスティック加工はその総称的な呼び方で、そこから具体的にどのような加工を施しているのかは知ることはできないが、一般的にはフッ素樹脂によるコーティングが多い(テフロンはフッ素樹脂の商品名のひとつ)。
一方セラミックによるコーティングは焦げ付き防止という点ではフッ素樹脂とほぼ同様だが、セラミックコーティングの方が耐熱性・耐久性が高く、さらに260度以上で有害なガスを発生させてしまうようなことがないなど、安心して使いやすいというメリットがあるという。

いずれにしても焦げ付き防止のコーティングは溶けたり剥げたりし易いので、丁寧に扱わないとすぐにダメになってしまうことには注意が必要です。

ATS加工 EPI のチタンクッカーに施された技術。元々は船底のコーティングなどに使われていた技術で、鍋底にアルミを吹き付けることで、チタンの弱点である熱伝導効率の低さを克服、さらに鍋底の細かな凹凸がゴトクの上での安定性を高めることもできる。
底面滑り止め加工スパイラル加工 深型クッカーはどうしても高さが出てしまい安定性に劣るため、それを改善するため容器の底に施された加工。ゴトクの上でズレにくいように底面に微細な溝をつけるなどが一般的。

まとめ:結局のところおすすめは?

また細かいことを長々と書いているが結局おすすめは何なんだ、と言われてしまいそうなので、上記を踏まえて最後に編集部が選ぶおすすめを。条件やこだわりによっては別のチョイスも十分考えられるのですが、それは後日比較テストなどで詳しくレポートしますので乞うご期待。まずは万人にとってこれを選んで間違いはないという、鉄板モデルを以下にご紹介します。

ソロ~2人ハイク用 大人数パーティ用
調理も最低限しやすいセラミックコーティングの超軽量チタンクッカー シンプルな使いやすさと無駄のないスタッキングが可能な、何十年経っても変わらない安心の機能美
エバニュー チタンクッカー深型 W セラミック
(サイズのバリエーションやセットタイプなどもあり)
エバニュー アルミコッヘル L
(同様のラインナップでより軽量なチタンバージョンもあり)

クッカーは数あるアウトドア・ギアのなかでも各人のセンスとこだわりがモロに出る分野。それだけにこれという決定的なブランドやモデルがあるわけではなく、それぞれにとってのベストな選択は他のギア以上に分かれてもおかしくないと思っています。だからこそ山の中で「自分だけの理想のキッチン」を追求することが、アウトドアの楽しみ方のひとつとしてなんとも言えない魅力的な香りを放っているのだと考えるのは、ぼくだけでは無いはず。そう思ったみなさんは、ぜひ一度「コッヘル沼」を覗いてみると良いと思いますよ!

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