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ジョン・ミューア・トレイル 北向き縦走 (2025 NOBO) の記録 【第15章】シャドウ・クリークから ドノヒュー・パス

【第15章】シャドウ・クリークから ドノヒュー・パス

シャドウ・クリークの JMT ジャンクションから北に進路を変えてガーネット・レイクを目指す。登りは最初は緩い勾配で、スイッチバックが始まると少しきつくなる。例年なら小川があるので、途中でキャンプも可能だが、今年は完全にドライだった。パス手前もスイッチバックがあり、少し傾斜は急である。パスの南やパス付近の水も涸れていたので、結局、ガーネット・レイクまで行った。

ガーネット・レイクからサウザンド・アイランド・レイクは意外にストレスが少ない。途中にルビー・レイクやエメラルド・レイクがあるからだろう。アイランド・パスへの登りも簡単である。ラッシュ・クリークまで、全体的に下りが多いので、意外に距離が稼げる。今回はラッシュ・クリークの広いキャンプ・サイトまで歩いた。

ラッシュ・クリークからドノヒュー・パスも登りが続くが、全体的な勾配は緩いので、難しくない。パスには午前中に着いた。ここにはパーミットをチェックする人がいる。今年は人手不足なのか、フォレスト・サービスの人だった。

ドノヒュー・ピークに登ったのは 2009 年と昔のことになったが、比較的やさしいので、クロスカントリー・ルートを解説しておいた。図 15.1はこの辺りの地形図である。

図 15.1: シャドウ・クリークからライエル・キャニオン

ガーネット・レイクへ

JMT に合流して、歩き始めたのは午後 2 時半。「シェイピング・イン・ザ・シャドウ」を通り過ぎてしばらくすると、左手にテントが張れそうな場所がある。今年は完全ドライの夏なのでも水は一滴もないが、例年ならキャンプ・サイトになっている。

スイッチバックを繰り返して高度を上げていくと、左手に小川がありそうな茂みがある。右手にキャンプ・サイトがある場所をいくつか通過するが、今年は水がなかった。それで、止むを得ず、歩き続けた。

図 15.2 はパスへの中間地点あたりである。左手に小川があり、右手にサイトがある。今年は残念ながらテントは張れない。時刻は 4 時近くになった。水の手持ちは 300ml くらいである。困ったが、先に進むほかない。テントが張れそうな場所はパス手前の湿地帯か、パスの向こう側の小さな池、その先はガーネット・レイクである。

ハイカーが二人下りてきた。高齢者夫婦だった。

「水を持っているか。」

「大丈夫です。持っています。」

アメリカ人ハイカーは親切な人が多い。手持ちの水は少ししかなかったが、水が無くなっても 2~3 時間行動できる体質なので、常に断ってしまう。そのまま歩いたが、水は見当たらなかった。パスの手前は湿地帯で、そこには水があるはずである。

残念ながら、ここも干上がっていた。パスから南側を写したのが図 15.3である。低い場所は湿地帯のはずだった。見てわかるように、大部分は干上がって茶色になっていた。

パスに到着が 5 時過ぎだった。水がないので歩くほかない。パスを越えた所にも湖はあった。その湖が図 15.4 である。完全に干上がっていた。それでやむを得ず、昨年のキャンプ・サイトを目指した。スイッチバックを下ってすぐである。サイトは空いていたが、近くの水場は枯渇していた。

ガーネット・レイクの下流部はキャンプ禁止である。湖の周りに平地が少ないので、キャンプできる場所は限られる。そこで、テントを立ててから湖面まで下りて水を調達することにした。少し勾配はあったが、問題なく 5L を調達した。

テントは図 15.6 である。水を確保しさえすれば最高の場所である。 なお、夕食は VVR で拾ったフリーズドライ (図 15.5) である。2 パック食べないと足りない。拾うと食べるが、お金を出してまで食べたいとは思わない。

図 15.2: ガーネット・レイクへの中間地点。通常は小川がある。

千恵子にメールを出した。

「やっとこさのキャンプサイト。だれもいない、水もない。湖面まで降りて5L 確保。ご飯は拾ったBeef Stroganoff とGrilled Chiken の ダブル 4人前にする。どうせ食料は残る。今日含めて3 泊程度と思う。明日は Rush Creek まで行けると思う。James さんから音沙汰ない。だいぶへばっているかも。」

ジェイムズさんにも「大丈夫か」とメールを出した。

よく寝て 7 時出発。少し歩くとガーネット・レイクが良く見えてくる。最下流近くで写したのが図 15.7 である。ガーネック・レイクからリバー・トレイルに下りるトレイルはあるが、ノー・メインテナンス・トレイルで、昨年、降りようとしたが、途中で道が分からなくなり、引き返した。トレイルは川沿いなのだが、はっきりしない。

図 15.3: ガーネット・レイクへのパスの南側、通常は湿地帯で小川が流れる。

図 15.4: パス近くの湖。完全に干上がっていた。

図 15.5: VVR で拾った夕食。ダブルで食べた。

図 15.6: 明け方のキャンプ・サイト

図 15.7: ガーネット・レイク

図 15.8: ルビー・レイク。

サウザンド・アイランド・レイクからラッシュ・クリークへ

ガーネット・レイクの下流域もキャンプ禁止区域である。スイッチバックで北方に登り、分かれ道から上流領域の湖面近くまで下りるほかない。それで、ガーネット・レイクでキャンプする人は少ない。穴場といえば穴場である。

登りは少しきつい時はあるが、すぐに終わる。パスを過ぎると湖が見えてくる。図 15.8 のルビー・レイクである。アメリカの湖の名前は単純で、湖はルビー色である。9 時過ぎに到着した。例年なら雪が少し残っているのだが、今年は何もない。狭いキャンプ・サイトはある。

続いて、緩い坂を登ってパスを越えると図 15.9 のエメラルド・ レイクである。文字通りエメラルド色である。ここは斜面を横切るので、テントは厳しい。ぎりぎり張れそうな場所は一か所ある。

図 15.9: エメラルド・レイク。

ほとんどの人はサウザンド・アイランド・レイクでキャンプする。筆者は賑やかな場所が嫌いなので、一度もキャンプしたことがない。湖の下流領域はキャンプ禁止で、サイトは上流部にある。ここは人気の場所で、誰かが必ず現れる。記念撮影のカメラマンには困らない。今年も少し待って、写してもらった。湖は通り過ぎて少し高い位置から撮ると綺麗になる。図 15.10 である。

図 15.10: サウザンド・アイランド・レイク。高い山はバナー・ピーク、低い丘状の山はマウント・デイビス。

時刻は 10 時 20 分になつた。登りが少ないので意外に捗った。アイランド・パスでランチにすることにした。ゆっくりの登りである。パスから南を見たのが、図 15.11 である。トレイルの左右に小さな池がある。右手の湖の近くに行き、ランチとした。例の如く、まず水を汲んで落下式で浄水しつつ、食事をする。ハイカーが二人ばかり通り過ぎた。奥まった場所なので、挨拶をする必要がない。

図 15.11: アイランド・パスから南

ここは、裸地があればキャンプはできる。図 15.12 は 2016 年の場所、図 15.13 は 2019 年の場所である。2019 年は時間切れで、ぎりぎりだったが、草がない場所を選んだ。標高は 3,000m はあるので、ここで寝るには高所順応しておく必要がある。人が少なく静かな場所なので、何度もテントを張っている。

図 15.12: アイランド・パスでのキャンプ。2016 年撮影。

図 15.13: アイランド・パスでのキャンプ。2019 年撮影。

千恵子から日曜日もエスタ・バスはランカスターへ走ることを確認したというメールが来た。ロスの都ホテルも一泊に変更できたという。これでゆっくりとビショップで過ごせる。

アイランド・パスからは下りである。ラッシュ・クリーク近くで 2 時半。良い場所があればテントを張ってもよいが、まだ早いので先に進んだ。ラッシュ(rush) は激しいという意味で、水量は少ないが、相変わらずの激流である。登りもそれなりに続く。

3 時 15 分、支流を渡って高い場所に狭いサイトはあったが、マリー ・レイクとのジャンクション付近にキャンプ・サイトがあったことを思い出した。

図 15.14 がマリー・レイク付近の橋で、流れが急だと恐ろしい。キャンプサイトはここを渡った右手で、かなり広い。4 時にテントを設営した。それが図 15.15 である。たった一人だったのだが、残念ながら 1 時間ほど後にカップルのハイカーが来て、さらにもう一人来た。夜は一人でしっかり眠りたいので、50m ほど奥のサイトに引っ越した。

図 15.14: マリー・レイク近くの丸太橋

図 15.15: ラッシュ・クリークのキャンプ・サイト。

引っ越しは簡単で、重い物をさきに移動しておき、スリーピング・マットなどはそのままでペグを抜いてテントの両端を持って持ち上げて移動する。引きずるとテントが痛むのでなるべく持ち上げて移動する。目的の場所に移動すればペグ・ダウンして持ち物の点検と再配置である。なれると 30 分くらいでできる。

夕食は拾ったツナの真空パックをダブルでご飯の上にかけた。もちろん、乾燥野菜入りのスープやデザートの乾燥果物とカキピーなどのお菓子もある。後はドノヒュー・パスを越えて一泊すればトゥアルムである。バスは午後 1 時過ぎだから、昼までにストアに着けばよい。いよいよ JMTが終わる。

レッズ・メドウからのPCT ルート

レッズ・メドウからデイビルズ・ポストパイルを通過して JMT を北上するとPCT ジャンクションがあった。そこを PCT を通ると川沿いの北上ルートとなる。ジョンストン・レイクからガーネット・レイクの湖沼群を迂回するが、トレイルは水平で風通しがよく、夏なら花が綺麗なルートである。PCT ハイカーは雪の多い時期に通るので、安全なルートでもある。

2017 年と 2019 年にはこのルートを通った。PCT ルートに入ると、しばらくするとミナレット・フォール (図 15.16) がある。幾筋にも別れた滝である。この辺りまではレッズ・メドウからの観光客がくるが、この滝を越えて北には行かない。滝を越えた場所にキャンプ適地がある。2019 年に宿泊した。

図 15.16: ミナレット・フォール。2019 年撮影。

トレイルは川沿いのなだらかな登りである。3~4 時間歩くと、アグニュー・メドウのトレイル・ヘッドに行くスイッチバックがある。残念ながら1時間ほどの登りである。登り切ると、メドウになり、穏やかになる。トレイルヘッドにはゴミ箱もあり、ここでゴミが捨てられる。2024 年はここから道路まで歩き、マンモス・レイクスに脱出した。歯の根が割れていて、コロナに罹患したためである。

トレイルは少し高度を上げる。小川があり、キャンプ・サイト もある。この後は斜面を水平に歩くので、距離が捗る。1~2 時間ごとに小川を横切るので、水の補給ができる。図 15.19 はメドウで、夏なら草花が咲き乱れる。図 15.20 は野生のニラの一種であるが、このルートでしか見たことがない。図 15.18 はアグニュー・トレイルの北端のサイトである。この後、トレイルはさらに東に向かい、サウザンド。アイランド・レイクの下流に入り、JMT と合流する。

図 15.17: 湖はシャドウ・レイク。2019 年撮影。

図 15.18: PCT ルートでのキャンプ。

図 15.19: PCT ルートのメドウ。2019 年撮影。

図 15.20: アスペン・オニオン。2017 年撮影。

ドノヒュー・パスへ

何時もの朝食をとって 7 時に出発した。アメリカ人ハイカーのカ ップルはまだゆっくりしていた。トレイルは登りだが、傾斜は緩い。1 時間ほどで湖についた。図 15.21 である。例年は比較的広い湖だが、水深が 50~60cm 減っていて、干上がる寸前である。小さいほうの湖は干上がっていた。

図 15.21: 比較的広い無名の湖

無名の池から少し歩くと、ラッシュ・クリークの上流部 (図 15.22) で、メドウが広がる。所々にキャンプ・サイトがあるので、テントが張れる。図
15.23 はトレイルから入った場所の裸地である。サイトはパイン・ツリーの陰にあることが多い。

図 15.22: ラッシュ・クリーク上流部。正面左の低い場所がドノヒ ュー・パス。

図 15.23: ラッシュ・クリーク上流部でのキャンプ。2024 年撮影。

緩い登りだが、べた遅れになる。ドノヒュー・ピーク全体が見えたので写真を撮った。それが図 15.24 である。時々、ハイカーに抜かれるが、気にしない。ラッシュ・クリークのサイトで一緒だったカップルも先に行った。

図 15.24: 左がドノヒュー・ピーク、右のピークがマウント・アンドリア・ローレンス。

ドノヒュー・パスに近づくと、図 15.25 のような風景になる。岩だらけの緩いパスである。スイッチバックを切りながら登っていく。パス近くから振り返ると、図 15.26 のような風景が広がる。時間はかかるが遥か彼方から登ってきたことが分かる。

図 15.25: ドノヒュー・パスは低い場所

図 15.26: ドノヒュー・パスの南。

ドノヒュー・パスには関所がある。パーミットのチェックである。インヨーのパーミットならヨセミテに入れるが、ヨセミテから入れるのは、ハッピー・アイルとライエル・キャニオン (ドノヒュー・パス・エリジブル) というパーミットだけである。

今年は人手不足なのか、図 15.27 のフォレスト・サービスの人がチェックしていた。みなさん、優しい人が多くて、写真を撮らせてもらい、自分の写真も撮ってもらった。パスに常駐するのは数日で、交代要員が来れば別の場所に移動するのだと思う。

図 15.27: 胸のマークからはフォレスト・サービス。

何時もはここでランチだが、時刻は 10 時と早すぎるし、図 15.28 のように湖も干上がっていた。ドノヒュー・パスから北の風景は図 15.29 である。トゥアルムはずっと先の低い森がある場所である。

図 15.28: ドノヒュー・パスの池、完全に干上がっていた。

図 15.29: ドノヒュー・パスの北。

例年、夏なら雪渓が残っているのだが、今年はまったくなかった。岩稜帯の中にはよく整備されたトレイルが続いているので、問題ない。岩稜帯の最後が振り返ったのが図 15.31 である。尖った部分がドノヒュー・ピークで、この辺りのパイン・ツリーからクロスカントリーしてピークに登る。

ドノヒュー・ピークへのクロスカントリー

図 15.30 はこの付近を拡大した地図である。クロスカントリー・ルートを二つ描きこんでいる。一つはラッシュ・クリークが徒渉困難な場合は、マリー・レイクへのトレイルを使い、北の方へクロスカントリーするルートである。幸い、そういう状況に陥ったことはないが、2017 年に PCT ハイカーの間で盛んに議論されていた。

図 15.30: ドノヒュー・パス付近のクロスカントリー。

もう一つの点線はドノヒュー・ピークに行く時のルートである。図 15.31の辺りからクロスカントリーを始める。戻ってくるのでバックパックは岩陰に隠すとよい。また、見通しは良いが、類似のパイン・ツリーや岩が多いので、出発時に GPS や腕時計の地図にマークを付けて置く。トラッキングも ON にしておくとよい。

図 15.31: ドノヒュー・ピークを北側から眺める。

しぱらく歩くと、図 15.32 の北側に着く。稜線の傍は大きな岩が多くて歩きにくいので、高度を上げずに稜線に平行に歩いて行く。もう少し低い場所を歩くべきだった。ピークでの記念写真は図 15.34 である。ピークから南側の風景は図 15.35 である。遠くの大きな湖はサウザンド・アイランド・レイクだと思う。遥か彼方から歩いてきたことが実感できる。

図 15.32: ドノヒュー・ピークの手前の湖。2009 年撮影。

図 15.33: ドノヒュー・ピークの北側。2009 年撮影。

図 15.34: ドノヒュー・ピークにて。2009 年撮影。

図 15.35: ドノヒュー・ピークの南。2009 年撮影。

<第16章へ続く>

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村上 宣寛

1950年生まれ。元富山大学名誉教授。専門は教育心理学、教育測定学。アウトドア関連の著作は『野宿大全』(三一書房)、『アウトドア道具考 バックパッキングの世界』(春秋社)、『ハイキングハンドブック』(新曜社)など。心理学関係では『心理テストはウソでした』(日経BP社)、『心理学で何が分かるか』、『あざむかれる知性』(筑摩書房)など。近著に、グレイシャー、ジョン・ミューア・トレイル、ウィンズといった数々のアメリカのロングトレイルを毎年長期にわたりハイキングしてきた著者のノウハウ等をまとめた『アメリカハイキング入門』『ハイキングの科学』(アマゾン)がある。

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