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歩いてたどり着けない秘境で、ネイティブイワナに出会う旅 ~MRSのパックラフトで楽しむ「お手軽秘境釣行」のすすめ~

昨シーズン初めて体験してから、その可能性と純粋な楽しさに気づかされ、すっかりハマってしまった「パックラフト」。圧縮すればバックパックにも容易に収まるほど軽量コンパクトになることに加え、想像以上の推進力と、急流でも安定した高い浮力、そう簡単には破れたりしない耐久性の高さなど、幅広い大河から急峻な渓谷までバリエーションに富んだ地形をもつ日本の自然環境にもぴったり。さらにカヌーやカヤックのように広い保管スペースが必要ないという日本人の住宅事情にフィットした点もいうことなしです。

そんなパックラフトですが、昨年からずっと温めていた計画を今年やってみることにしました。それは、通常は船でしかたどり着けない場所にある渓流を遡り、希少なネイティブイワナ釣りを楽しむ「パックラフト秘境釣行」です。

「パックラフト × 沢登り × 渓流釣り」で自分だけの「ルート(線)」を引く

これまでの沢登りや渓流釣りでは基本的にアプローチは車や徒歩で、長くても数時間歩いて入れる沢ばかりでした。ただ、日本に数ある自然湖やダムによってできた人口湖などのなかに、湖岸に沿った道路が通ってないエリアがいくつかあり、その先にあるバックウォーター(ダムや湖などに流れ込む河川の流入部分)の上流部分は船をチャーターするか、自力で漕いでいくしかたどり着けないという場所が存在しています。

今回はそうしたまれにしか人が訪れることがないであろう秘境渓谷にパックラフトでアプローチし、幻の巨大イワナを目指して釣りするというもの。春から日本中の候補地探しを続け、ようやくとある山奥深くのダム湖に流れ込む美溪を見つけ、3泊4日の山行計画を立て、信頼のあるメンバーを揃え、9月のシルバーウィークにいよいよ実行、までは良かったのですが。

ご存じの通り9月のシルバーウィークに台風が日本列島を横断するという不運に見舞われ、泊まりの山行は不可能になってしまいました。

ただ1年間温めてきた計画をこのまま諦めることはどうしてもできず、そこで以前候補地探しの中で見つけていたプランB「日帰りでできるお手軽秘境釣行」を実行することに変更。場所は水上にある奥利根、ならまた湖。そこで小粒な小さい渓流を片っ端から釣り上がるというバックウォーター巡りのソロ釣行旅です。

相棒のパックラフトと最新ギアで未知の沢の入口へ

今回のレポートには昨年に引き続き、徹底した品質へのこだわりで世界中に多くのファンを持つ信頼のパックラフトブランド、MRSさんの協力を得ることができました。昨年から借りてずっと使い続けていますが、いままで故障などもまったくなく、アクセサリ類も充実、さまざまな面で愛用させてもらっています。

ちなみに強い起業家精神とアウトドアへの情熱にあふれたMRS創業者への貴重なインタビューの模様は、こちらから読むことができます。

軽さと直進性を兼ね備えた軽量パックラフト「Surveyor」

今回も昨年から使っている、ラインナップの中でも軽さと直進性を兼ね備えた軽量モデル「Surveyor」(下リンク)を使用しました。

1艇で2キロ足らず(総重量2,380g)という軽さで、60リットル以上のバックパックであれば収納し、(パドルはザックの左右に刺して)持ち運ぶことも可能。もともと激流を下るためのいわゆる「ホワイトウォーターモデル」ではなく、湖などのフラットウォーターを想定している自分にとってはこの軽量コンパクトさこそ求めていたもの。SurveyorはMRSのラインナップの中でも最軽量というわけではないのですが、その分スペース的にややゆとりがあるので大きなザックを入れても漕ぎやすい、船体が細長くパドリングもスムーズという観点から、他の軽量モデルと比較して試してみた結果、今回はこのモデルをチョイスしました。

使用時には膨らまして浮力を上げ、収納時は空気を抜いてコンパクトに携行できるPFD「SPY 自動膨張式PFD」

さらに今回初めてMRSの開発したPFD(ライフジャケット)も導入しましたがこれがまた素晴らしい。一般的なPFDはたいていの場合その嵩張り具合や重さに悩まされてしまうものですが、このモデルは通常のフォーム式PFDと違い、空気膨張式のためバルブの開閉によって簡単に自動膨張と収縮の調整が可能。これによって使用時は膨張させ、陸に上がれば空気を抜いて収納サイズを圧縮でき、収納性が求められる水陸ハイブリッド山行にもってこいの設計なのです。重さも610gと、標準的なPFDに比べても明確に軽量・コンパクトです。

ただ浮力は約5~6kgとそこまで大きくないので、メーカーが推奨する使用環境はあくまでも穏やかな場面(湖のような静水・瀬のない緩やかな流れの川)です。自分の使い方であれば十分ですが、その点だけは理解して使う必要があります。

エアチャンバー部分以外は薄く通気性のある生地で、全体的にも軽量コンパクトな作り。

ポケットは左右に各1つずつ。かさばる物も入れやすいマチ付きで入口も3方向あり、そのうち1つはジッパーで閉じられるので、万が一沈しても安心です。

ならまた湖の奥に佇む未知の沢へ、尺イワナを求めて出発

シルバーウィークの初日、台風の合間を縫って訪れたならまた湖は朝からほぼ無風、青空も出ていて、湖面もこんなに穏やか。これ以上ないパックラフト日和です。しかも連日の雨でこの日の湖はほぼ満水。1年のうちでも最も水量が多いという。これならば減水しすぎて沢にたどり着けないといったこともなさそうです。

早速コンパクトに畳まれたSurveyorを紐解き、空気を注入していきます。空気の注入には付属のインフレーションスタッフサックと、仕上げで口からの注入によって数分で膨らませることができます。もちろん市販のポンプなどを自分で用意することでもっと簡単にスピーディに膨らませることも可能ですが、今回のような軽量重視の山行ではフットポンプさえも余分な重量となりますので、スタッフサックと呼吸、一択です。

その後、中央の座面シートを膨らませれば完了。底部にはあらかじめ「スケグ」と呼ばれるフィンを装着しておきますが、それを含めてもここまででも10分とかかりません。

4ピースに分離したパドルを組み立て、PFD(ライフジャケット)を着ればとりあえず準備OKです。

ここからまず数分水の上に浮かべて内部の空気を冷ますといったんパックラフトが萎むので、もう一度空気を追加注入。以前はこのまますぐに遠くまで漕ぎ出してしまって焦ったことがありましたが、慣れてきた今となってはそんな轍は踏みません。

毎回感心するのですが、非常に軽くてコンパクトなパックラフトが、水に浮かべてみるとこんなにスイスイと進み、しかも安定しているものかと。風がほとんどなかったこともあり、湖という静水上でのパックラフトは、軽く漕いで時速4kmちょっと。ちょうど歩くのと同じくらいのスピードで進んでくれました。少し漕ぐペースを上げれば、5.5km/h程度まではペースアップが可能です。

この日はシルバーウィークにもかかわらず、台風の影響か、人が本当に少ない。抜けるような秋の青空と、吸い込まれそうな広く艶やかな湖面の上に、僕の漕ぐ1艘のパックラフトだけ。周囲にはただただパドルを漕ぐ音だけが響きます。歩くのと違って目線が地面(水面)と近づいているからか、不思議と自然そのものとの距離がいつもよりも近くに感じられる感覚。言葉では上手く表わせているかどうか分かりませんが、とにかくただただ幸福感に満たされたひと時でした。

いよいよ未知の渓流に到達。果たして釣果は?

バックウォーターの沢といっても、当然ながらどこでもいいわけではありません。なるべく水量が多い大き目の谷が理想ですが、ならまた湖の場合は最奥の楢俣川まで行かないと、そこまで確実な谷はない模様。しかし楢俣川は歩いてもたどり着ける場所にあるため、釣り師もそれなりに入っている。そこで地形図を見ながら「ここなら遡れるのではないか?」と思えるいい塩梅の深い沢筋を探して、そこに向かって漕いでいきます。

数十分で第一の目的地である「板目沢」の河口付近までたどり着きました。いかにも秘境という雰囲気にテンションが上がってきます。しかし崖ばかりの様子で、こんなところに上陸できるところはあるのだろうか?と不安もよぎりながら、さらに奥へと漕いでいきます。

構わず奥へ奥へと進んでいくと、ついに行き止まり(=河口)が見えてきました!

河口には流木が溜まっており、船体を傷つけやしないかとややヒヤッとしましたが、パックラフトは思った以上に丈夫で、慎重に木をよけながら進めば多少の擦れでもびくともせず、無傷で無事上陸地点まで到達することができました。期待通り水量もまずまずしっかりと流れており、これは確実に「棲んでる」沢です。

漕いできたパックラフトは、万が一の増水でも流されない陸上に退避させて枝にビレイをしておきます。

いよいよ遡行スタート!・・・と、歩いて1分もたたないうちに、出てきてしまいました。等高線の間隔からしてまったく予想していなかった「直登不可能な滝」が突然目の前に立ちはだかります。

無理して高巻きすれば行けないこともないかもしれませんが、かなりの高度まで登らされてしまいそう。まだ探索したい場所もあるし、時間的には余裕もあり、ソロでは無理もできないということでここはきっぱりと諦め、他の沢を当たることにします。

その後、ここから2つほど他の沢を当たりましたが、水量が足りないヤブ沢だったり、またすぐにいやらしい滝が出てきたりとどれもいまいち。

で、そろそろ引き返しのリミットが近づくという頃にたどり着いたのが最奥から一つ手前の「大石沢」。ここが無理なら今回の探索は釣果ゼロで諦めなければなりません。相変わらず流木の関門を潜り抜け、上陸。

ここは地形図によると両岸が切り立ったゴルジュ状になっているので、きっと水流が圧縮されて遡行は困難なのでは、と予想していたのですが、その予想もいい意味で外れてくれました。

沢はどちらかというと河原が多く、時折小さな釜が出てきたりして、程よくいい感じのポイントがあるちょうどいい渓相です。しかし、そんなに人が入っているはずはないものの、魚影は見られず、なぜだかアタリもありません。

先行者の足跡はもちろん、標識や赤テープなど、人がつけた形跡が微塵も見られないありのままの自然を進むのは(危険も多いとはいえ)何とも気持ちがいいものです。飲まず食わずで無心に竿を振りながら歩いていると、次第に魚影らしきものが見えてきた気がする。

そうこうしているうちに、ここまでで最大のポイントである二俣が見えてきました。本流の左俣には大きな滝がかかており、おそらくここが魚留めでしょう。

時間的にもこの先へはもう進めない。つまりここで釣らなければ、本日の釣りはボウズ確定。緊張のなか、ここしかないというポイントに毛バリを打ち込むと、ついにヒット!

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流石に尺はいきませんでしたが、25センチちょっとの、間違いなくネイティブなイワナ。ネットに収まった、濃厚な緑褐色に、何とも言えない奇麗な柄を纏った魚体を眺めていると、これまでの疲れが一気に吹き飛び、思わず叫んでしまいました。ここではどれだけ大声を出しても誰にもかまうことなしです。

準備と安全への備えさえすれば、誰もが楽しめるパックラフトでの秘境釣行。来年こそは泊りで行こう!

残念ながら天候に恵まれず、日帰りのコンパクトな旅となってしまった今回の(お試し)パックラフト秘境釣行。しかし、この先に何が待っているか分からない未知の沢の遡行というスリルと、湖面を滑るように進んでいくパックラフトの気持ちよさ、そして先行者など気にせず思う存分楽しむネイティブイワナとバトルは、日帰りとはいえ存分に楽しめました。これでかなり自信にもつながったので、来年もチャンスがあれば、ぜひとも今年目標としていたエリアにリベンジしてみたいと思います。

日本にある数少ないバックウォーターでしか楽しめないとっておきの遊び、みなさんもぜひMRSのパックラフトでチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

詳しくはMRS公式サイトへ

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