Garmin inReach® Mini のすすめ ~山に入るすべての人が知っておくべき革新的衛星通信デバイス~
インリーチとは
2018 年ガーミンはinReach Explorer®+ (以下Explorer +) とinReach® Mini (以下Mini) を発売した。両方ともイリジウム衛星網を利用した位置情報付きの双方向メール・システムで、SOS 送信もできる。Explorer + は本体に地図表示が可能なので、独立したGPS としても利用できる。Mini は超軽量の衛星通信用デバイスである。共にスマートフォンとBluetooth 接続すると楽にメールが作成できる。また、Earthmate というアプリは独立したGPS アプリとしても利用可能である。
現在、ガーミンがinReach を販売しているが、元々、inReach はデローア(DeLorme) という会社の製品である。ガーミンが2016 年にデローアを買収した結果である。そのデローアの設立は1976 年と古く、アメリカの地形図の販売を行い、そのシェアは4割を超えていた。そして、2011 年にイリジウム衛星網を利用した双方向通信用デバイスを発売した。inReach のWeb サイトとガーミンのサイトのデザインが異なるのは、元来別物だからである。
2012 年の初め頃、inReach はアメリカのハイカーの間で話題になった。PCT※ のメーリングリストで議論された。ハイカーの安全のために理想的なデバイスに思えた。それで、筆者はinReach の第一世代機を2012 年に購入し、2016 年まで使った。その後、デローアのExplorer に切り替え、現在もこれを使っている。今回、Outdoor Gearzine からMini(写真1) を借用できたので、旧機種との比較を行いつつ、性能を確認したい。
※PCT:アメリカ西海岸の全長1,600キロにおよぶロングトレイル『パシフィック・クレスト・トレイル』の略。
目次
- 何ができるか
- はじめにやっておくこと
- 基本的な使い方
- inReach MiniとExplorer(旧機種) との違い
- アメリカのハイカーは
- 奥多摩での使用例
- inReach Miniの使用感
- どんな時に役立ったか
- まとめると
何ができるか
- イリジウム衛星網は全世界をカバーしている。それで、世界中で双方向メールが利用できるし、SOS 送信ができる。政情の関係で、キューバ、イラン、韓国、スーダン、シリア、クリミアなどを除く。
- 上空が見える場所なら、携帯電話が通じなくても、どこからでも友人とメールのやり取りができる。友人は送信者の位置を地図で確認できるし、メールも送信できる。
- プリセット・メッセージが三つ作成可能で、同時に複数箇所に送信できる。このメッセージはいくら送信しても無料である。
- スマートフォンとBluetooth で接続し、手慣れた方法で自由にメッセージが作成できる。ただ、inReach デバイスでは日本語が表示できない。メッセージはローマ字か英語で書く方が安全である。
- ガーミンのスマートウォッチと接続し、GPXファイル等を交換できる。この場合、Garmin Connect というサイトを使う必要がある。
- Earthmate というアプリはGPS アプリとしても独立して使える。広範囲の地形図を初期設定時にダウンロードする点が優れている。
- MapShare を使うと、自分の位置情報とメッセージを地図付きで友人と共有できる。また、Facebook やTwitter にも投稿できる。
- SOS ボタンを押せば、緊急信号が位置情報付きでGEOS という組織に送られ、世界規模での救出活動が始まる。ただし、これは最後の手段である。
- アカウント所持者は年18 ドルで最大10 万ドルまでの救助保険に加入できる。
メッセージは、2018 年8 月からセキュリティの関係でFacebook のタイムラインに投稿できなくなった。ただ、MapShare のリンクをブログやFacebook のページに貼り付ければ、この問題はクリアできる。
はじめにやっておくこと
衛星通信契約
inReach Mini を購入後、イリジウム衛星通信契約を結ぶ必要がある。契約は、個人向けプランとプロフェッショナル向けプランがある。個人向けプランにはSafety(安全)、Recreation(レクレーション)、Expedition(遠征)、Extreme(極限) の4種類がある。ここでは個人向けのSafety プランを説明しよう。
Safety プランの料金内容は写真2 の左端の縦の列となる。テキスト・メッセージは10 件までは料金に含まれ、それを越えると1 メッセージあたり0.5ドルが課金される。天気予報の取得は1 つのメッセージとカウントされる。トラッキングは1 トラックあたり0.1 ドルとなる。これが年契約であれば月12 ドル、自由契約であれば月15 ドルとなる。自由契約は必要な時に一カ月単位で契約できるものであるが、契約変更時には25 ドルの料金がかかることがあるので慎重に考えよう。なお、プリセット・メッセージは無料なので、これを上手に使うと、意外に安く運用できる。
ExploreGarmin.com のページ(写真3)に自分のアカウントを作成して、所定の選択を行えば、衛星通信契約が成立する。自分のinReach の環境設定も行うページなので、大切にしよう。このページのメインテナンスなどで、パソコンが必要である。スマートフォンだけではファームウェアのバージョンアップはできない。
Web で契約を済ませれば、機器のアクティベーションだ。これは簡単で、空が良く見える場所に行き、Mini の電源をON にしてしばらく待つだけでよい(写真4)。
Bluetoothによるペアリング
スマートフォンにEarthmate というアプリをインストールしよう。起動すると、地図が表示されるが、右上の縦の3 つのドットがメニューである。ここをクリックすると、Sync、Pair、Settings、Help というメニューが出る。このPair を選ぶ。一方、inReach では、Bluetooth をONにして、Pairing mode を選択する。しばらくすると、スマートフォンにペアリング可能なinReach のデバイスが表示される。承認のため、これをクリックすると、ペアリングが完了する。その途中が写真5 である。
ペアリングすると、右上のメニュー内容が変化する(写真6)。Download を選び、地図をダウンロードしよう。基本地図はOpenStreetMap で、日本全体の地形図が一気にダウンロードされる。興味があれば、他の地図もダウンロードすると良い。
もう一つのメニューは左上のMap という言葉の三本の線である。ここをクリックすると、基本メニューが出る(写真7)。Log on すると、Map、Message、Tracking、Way-points、Routes、Compass、History、My inReach、Weather、SOS である。頻繁に使うのは、Map とMessage である。
ファームウェア
パソコンとinReach をUSB ケーブルで接続し、inReachSync というソフトでファームウェアのバージョンアップを行う。この時に自分のアカウントとの同期も行われるので、プリセットした文章、連絡先などもinReach に転送される。このソフトの動作時の画像を写真8 に示す。
ファームウェアのバージョンアップは数カ月に一度行われるし、安定動作に不可欠なので、時々、チェックしてinReach Mini を最新の状態にしておこう。