
LEKI「レガシーライト PRO AS & スカイ テラ FX カーボン」レビュー:カーボンか、アルミ合金か?折りたたみか、伸縮か?ブランドを代表するハイエンド・トレッキングポールをガチ比較
登山での転倒リスクや疲労の軽減に一役買ってくれる縁の下の力持ちがトレッキングポール。一見シンプルな道具ですが、素材や構造、細かなパーツの作りなどによって思った以上にさまざまな選択肢があり、自分にとってどれが正解なのかを決めるのは意外と難しいものです。
素材はカーボンがいい?それともやっぱりアルミ合金?構造はシンプルな伸縮式?それともコンパクトな折りたたみ式?グリップの素材や形状は?衝撃吸収機能は?——。それぞれのモデルの特徴の違いは、実際のところフィールドでどんな使い心地の差になってくるのか?
そこで今回はトレッキングポールを作り始めて長い歴史を持つ老舗トレッキングポールブランドLEKI(レキ)の本格山岳向けのトレッキングポールの中から、素材や構造の異なる2つのモデル、「レガシーライト PRO AS」と「スカイ テラ FX カーボン」の2本をフィールドで試してみて、それぞれの特徴の違いによってどんな差が出て、それぞれ現在の最先端ともいえるトレッキングポールをレビューしていきたいと思います。
目次
LEKI「レガシーライト PRO AS & スカイ テラ FX カーボン」それぞれの主な特徴
レガシーライト PRO AS
レガシーライト PRO ASは折れにくいアルミ素材が使われた伸縮式のトレッキングポール。スピードロック・プラスシステムにより64cm〜125cmの間で無段階に調節可能で容易に組み立てることが可能。グリップには適度なクッション性のあるEVA素材の軽量エボコングリップを採用し、衝撃吸収性にも優れているのに加え、ポールを突いた時の衝撃を吸収するシステム「アンチショックシステム(AS)」が搭載されていることにより最大時の衝撃を軽減し、関節、筋肉、靭帯への影響を緩和します。扱いやすさと耐久性の高さから初心者から経験者まで幅広く使うことができるトレッキングポールです。
お気に入りポイント
- 突いた時の衝撃を吸収してくれるアンチショックシステム
- 伸縮式の組立てやすさ
- 操作も楽で固定力も調節しやすいロックシステム
- 64〜125cmの間で無段階調節ができる
- 堅牢なアルミ合金製のため「折れにくい」安心感
気になったポイント
- 収納時の大きさ
- アルミ合金製のためカーボンに比べると重い
スカイ テラ FX カーボン
スカイ テラ FX カーボンは8,000m級の登頂を目指す登山家からの要望を基に、堅牢・信頼・軽量・コンパクトであることを具現化させたカーボン製のトレッキングポール。折りたたみ式で収納時には約40cmにまで短くなり、使用時は110〜130cmの間で無段階に調節が可能。従来のラチェット方式とはまったく異なる新しい「コア・ロッキングデバイス」のロック方式を採用することでシャフトの固定・解放が容易にでき、素早い組み立て、収納を可能にしています。人間工学に基づいて設計されたヴァーティコン・グリップは握りやすいだけでなく、延長されたグリップが持ち方のバリエーションを増やし、さまざまなシーンに対応しています。ストラップは通気性と速乾性に優れ、長さ調整も可能な「D-ループメッシュストラップ」を搭載し、長時間の使用でも快適に使うことのできるトレッキングポールです。
お気に入りポイント
- ブレの少ない突き心地の良さ
- スピーディに組立てできるコア・ロッキングデバイス
- 操作も楽で固定力も調節しやすいロックシステム
- 折りたたみ式でコンパクトに収納可能
- 長時間の行動でも疲労しない軽さ
- グリップが拡張されていることで状況に応じて握り位置が変えられる
- 110〜130cmの間で無段階調節ができる
気になったポイント
- 一点に力が集中した時の脆さ(相対的にアルミと比べると扱いに気を遣う)
主なスペックと評価
名前 | レガシーライト PRO AS | スカイ テラ FX カーボン |
---|---|---|
連結方法 | 伸縮式 | 折りたたみ式 |
重量 | 約456g(組) | 約356g(組) |
素材 | アルミ | カーボン |
ポール径 | 16/14/12mm | 14/12/12/12mm |
調節サイズ幅 | 64~125cm | 110~130cm |
収納サイズ | 64cm | 40cm |
Outdoor Gearzine評価 | ||
快適性 | ★★★★☆ | ★★★★★ |
重量 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
セッティング・長さ調節 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
収納性 | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
耐久性 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
汎用性 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
コストパフォーマンス | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
LEKI「レガシーライト PRO AS & スカイ テラ FX カーボン」の使用インプレッション
紹介するレガシーライト PRO AS & スカイ テラ FX カーボンはどちらも本格山岳トレッキングポールながらもそれぞれの特性が異なる2本。実際に南アルプスの稜線や、奥秩父、丹沢などフィールドを変えてテストをしてきました。それぞれの違いに着目しながら使ってみて感じたことをレビューしていきます。
歩行時の突き心地:突いた時の衝撃を吸収してくれる「アンチショックシステム」搭載のレガシーライト PRO AS & ガシッとトレイルを掴むスカイ テラ FX カーボン
レガシーライト PRO ASの大きな特徴のひとつは「アンチショックシステム」が搭載されている点です。これはトレッキングポールの先端部がサスペンションの役割をしてくれる構造になっており、地面に突いた時に先端部が衝撃を吸収し、身体への負担を緩和します。公式ホームページによれば最大時の衝撃を約40%軽減してくれるとか。フィールドテストでは使い始めは突いた瞬間にポールがたわむような感覚がしましたが、実際にはそれがアンチショックシステムの効果でした。

荷重が加わると衝撃を吸収するアンチショックシステム。写真右、荷重をかけてみると矢印の部分が伸縮することで衝撃を吸収してくれる
写真のように力を加えるとアンチショック部が潰れて衝撃を緩和してくれるのが分かります。思いきり体重を乗せることにはやや不安がありましたが、実際に体重をかけてみてもフラフラとすることもなく、またアルミ合金製のポールを突いたときに感じるあの微妙な振動や反発してくる感覚を消してくれ、荷重もしっかりと支えてくれました。突いたときにずれるといったこともなく、通常のポールと比べて使い心地にネガティブな影響が出るということはまったくありませんでした。
一方でスカイ テラ FX カーボンには、アンチショックシステムこそ備わっていませんが、アルミ合金に比べてブレの少ないカーボンシャフトであることからポールを突いた時にはガシッとトレイルを掴んでくれ、たわむような感覚はなく、荷重をかけた際も安定して支えてくれます。アンショックシステムのような衝撃吸収パーツは備わっていないとしても衝撃の不快感はなく、そのうえトレイルの硬さや状態を自然に感じることができるという安心感もあります。もちろんカーボン製で軽量なため、軽快にポールを振りながら推進力の力を利用しペースを上げやすく、登山だけでなくスピードを求めるようなシーンでも活躍してくれるでしょう。
素材による使い心地の違い:バランスと安心感のアルミ、振りやすさ・突きやすさのカーボン
トレッキングポールに使われる素材には大きくカーボンとアルミ、またはアルミとカーボンを組み合わせたものがあります。一般的にカーボンは軽量性と剛性を備え、長時間の使用でも疲れにくく装備の軽量化を図れる反面、一点に強い力がかかると折れてしまうといった脆さも持ち合わせているため、扱いには注意が必要です。
一方でアルミはカーボンに比べれば重さはあるものの、耐久性とのバランスに優れ、必要以上の力がかかってしまったとしても即座に折れるということがない(まずは曲がる)ため、万が一の際にもトレッキングポールとしての機能を即座に失うといった最悪の可能性を回避することができます。
過去にカーボン製のトレッキングポールを使用していた際、岩の間にポール先端が挟まってしまい、テコの原理が働いた状態で一点に力を集中させてっしまった際、簡単に折れてしまいました。その点を踏まえるとカーボン製のトレッキングポールは扱いに注意が必要なことに留意しましょう。

左がレガシーライト PRO AS、右がスカイテラ FX カーボンの1本の重量。
またフィールドでの使用感では、(先ほども触れましたが)カーボン製のトレッキングポールは突いた時のブレが少なく衝撃の伝わり方も一瞬である一方、アルミ合金製のトレッキングポールは地面を突いた時の衝撃による振動がカーボンに比べて長く感じられます。好みの差もあるので一概にどちらがいいとは言えませんが、カーボン製の方が軽くて振りやすいうえに突いた時の振動を感じる時間も一瞬ですので個人的には(微差ですが)快適でした。
その意味で、折れにくいという安心感から初心者におすすめするのであればアルミ合金製(レガシーライト PRO AS)、扱い方に慣れていて軽量化を優先させたい経験者にはカーボン製(スカイ テラ FX カーボン)ということがあらためていえそうです。ただ今回のテストで分かったのですが、アルミだったとしてもアンチショックシステムなどの衝撃吸収機構が付いていればほぼカーボン並みの心地よさが得られるため、「アルミ+アンチショック」という選択肢はビギナーにとっては最強かもしれません。
グリップ:軽量で多様な地形に素早く対応するスカイ テラ FX カーボン、優しい握りやすさが特徴のレガシーライト PRO AS

左がレガシーライト PRO AS、右がスカイテラ FX カーボン
スカイ テラ FX カーボンは人間工学に基づいた形状と、軽さを追求したヴァーティコン・グリップが採用されています。超軽量EVAフォームのグリップは汗をかいた状態でも滑りにくく、長時間の使用でも安定した握り心地。さらにグリップの下部には状況に応じて素早く短く持ち替えられるよう、フォームが延長されており、わざわざ長さを調節する手間を省いてくれます。これにより、岩場とトレイルが次々と入れ替わるようなエリアであっても長さを調節することなくスピーディに進むことができ、ストレスがありません。実際にフィールドテストで岩場とトレイルがミックスされた南アルプスの稜線を歩いた際にはこのグリップの延長部が非常に役立ってくれました。
一方、上部に丸みがある握りやすいラウンドトップ形状で、EVA素材が使われた軽量エボコングリップを採用しているレガシーライト PRO AS。握った時にグリップ下部の突起が手に引っかかってくれる形状になっているため、強く握らずともポールを突けるため、実際に疲れにくかったです。トレッキングポールを長時間使うと、翌日に手が筋肉痛になることがありますが、レガシーライト PRO ASを使用した際は手は筋肉痛にはなりませんでした。グリップは延長されていませんが、グリップの突起部にかける指を変えることで短く持つことも不可能ではなく、状況に応じて持ち方のバリエーションを変更すればさまざまなシーンに対応することができます。
セッティングのしやすさと収納性:直感的で調節範囲も大きいレガシーライト PRO AS & とにかくコンパクトに収納できるスカイ テラ FX カーボン

折りたたんだ状態。折りたたみ式のスカイ テラ FX カーボンは非常にコンパクトになり、伸縮式のレガシーライト PRO ASは扱いが容易
伸縮式のレガシーライト PRO ASはスピードロック・プラスシステムにより64~125cmの間で無段階に調節することが可能。伸縮式であることで扱いは容易で、直感的に操作することができ、ポールには5cm刻みで目盛りがあるため長さ調節の目安にしやすく、固定力を調整するダイヤルは、緩めすぎても外れることがないよう工夫されています。このようにビギナーでも扱いやすい特徴を備えているのが伸縮式のポールであるレガシーライト PRO ASです。ただ弱点としては収納時でも長さが64cmあるため、小さめのバックパックでは大きくはみ出てしまいます。公共交通機関で持ち運ぶ際には注意が必要です。
一方スカイ テラ FX カーボンは折りたたみ式。なんといっても折りたたんだ状態のサイズが40cmまで短くなるという軽量コンパクトさ(収納性の高さ)が魅力です。バックパックのサイドポケットに差し込んだ際もバックパックからはみ出ることがなく、トレッキングポールを使用せずに行動する際も頭上の木々などに引っ掛ける心配はありません。長さはレガシーライト PRO ASと同様のスピードロック・プラスシステムにより110~130cmで無段階に調整することができ、シャフトの連結は従来のラチェット方式とはまったく異なる新しいロック方式「コア・ロッキングデバイス」が採用され、ポール上部を引き上げるだけでシャフトの固定・解放が容易にできます。とはいえレガシーライト PRO ASのように一目見ただけでセッティング方法が想像できるというわけでもないため、組立て方はまず覚える必要があります。

収納した状態でバックパックに収まると行動中に邪魔にならない
まとめ:安定感の「レガシーライト PRO AS」 & スピード、軽さ重視の「スカイ テラ FX カーボン」は間違いない2本だった
レガシーライト PRO AS、スカイ テラ FX カーボンをレビューしました。
比較してみてあらためて分かったのは、レガシーライト PRO ASのような「アルミ合金・伸縮式」タイプのトレッキングポールは壊れたり使いにくかったりといったリスクが少ない、ビギナーにとって安心の特徴を数多く備えたタイプであり、スカイ テラ FX カーボンのように「カーボン・折りたたみ式」タイプはある程度扱い方を知っていて、より軽量コンパクトにしたいという人にとってメリットの多いタイプであるということです。またアンチショックシステムは振動が大きめのアルミに追加されることで、さらに初心者の方がより疲れにくくなる機能として非常に有効であるということも分かりました。
他にも、リスクを最小限にしたい長期ルートや雪山などでは「アルミ合金・折りたたみ式」という選択肢もありかもしれません。
アルミ合金製にカーボン製、伸縮式に折りたたみ式、アンチショックシクテムが搭載(レガシーライト PRO ASのみ)など似て非なる特徴を持つ2本。レガシーライト PRO AS、スカイ テラ FX カーボンはどちらも本格的な山岳シーンで安心して使うことのできるトレッキングポールでした。
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Yosuke.C(ヨウスケ)
不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。一年中アウトドアを楽しんでいるフリーのライター。 自身の経験や使ってみて良かった道具を発信しています。