
【ギアメンテナンス実践解説】手間が少なく効果も高いと噂の Grangers(グランジャーズ)で防水透湿ウェアと登山靴を実際にお手入れしてみた
レインウェアや登山靴といった防水透湿性や撥水性を備えたウェアやギアは、何度か使っていけば汚れや傷などによってその性能が多かれ少なかれ低下していってしまいます。
このため常にアウトドア・ギアの性能を100%発揮させ、さらにより長持ちさせるためにはメンテナンスが重要、といった話は、あらためて説明せずとも当然皆さんもよくご存じのはず。これまでOutdoor Gearzineでも記事やイベントなどで何度か発信してきました。おまけに昨今では多くの製品でPFASフリーの素材へと移行が進んできたことで、良くも悪くもこまめなメンテナンスの必要性は従来よりもさらに増してきているのは間違いありません。
ただ分かってはいるものの、「めんどう」で「手間・コストがかかる」と、なかなかそう頻繁にできないのがメンテナンスというもの。
そこで今回は、いくつかあるメンテナンス用品のなかでもより手間が少なく、効果も高いと噂のGrangers(グランジャーズ)のメンテナンスケア用品を使って、レインウェアやハードシェルなど防水ウェア、そして防水透湿メンブレンの採用された登山靴を実際に手入れしてみたので、その実際の手順をレポートしながら、他製品と比べてのメリット、気になった点などをお伝えしていきたいと思います。
そもそも正しいやり方がいまいち分からない・忘れてしまったという方はもちろん、高価な道具をより効果的に長持ちさせたいという方にとっても、きっとためになるのではないかと思います。それでは早速ケアを始めていきます。
目次
Grangers(グランジャーズ)は世界で最初の「ブルーサイン®」を取得したイギリス生まれのアフターケアブランド
グランジャーズは1937年にイギリスで誕生したメンテナンスケア用品を開発するブランドです。エベレストや南極、北極など世界中のあらゆる過酷な環境や気象条件に対処できるよう高い機能性を発揮する製品を作っています。1947年に初めて水性の保護製品を生産し、繊維製品の環境規格において世界で最も厳格と言われているグローバル基準「ブルーサイン®」を取得した世界で最初のアフターケアブランドであり、グランジャーズが作る撥水剤にはフッ素カーボンを含まない独自の撥水剤「アクリルポリマー」を使用し、容器はバージンプラスチックを使用せず、100%リサイクル可能なボトルを使用することで環境保護も重視しているブランドです。
今回使用したメンテナンス用品
今回使用したのは「シューズケア ツインパック」と「クロージング 2イン1 ウォッシュ&リペル」です。
シューズケアツインパックはフットウェア+ギア クリーナー と、フットウェア リペル プラス を組み合わせた、ギア専用クリーナー&フットウェア撥水剤ボトルセット。登山靴と一言でいってもオールレザーなのか、合皮なのが、それともナイロンやポリエステルなのかモデルによって使用されている素材はまちまちで、まず何が正しいケア用品なのかを選ぶ作業からつまずきます。シューズケアツインパックは幅広い素材に使用可能なケア用品で、フットウェア+ギア クリーナー は洗浄力に優れ、また皮膚への刺激が少なく、化粧水や乳液などにも用いられる非イオン系界面活性剤が主成分として使われていおり、素材にダメージを与えずにパワフルな洗浄力を発揮し、水性なため環境にも優しく、生物分解成分が使用されています。GORE-TEX素材にも使用可能な上、シューズの洗浄だけでなくバックパックの洗浄も可能なスプレータイプの洗浄ボトルです。
フットウェア リペル プラスはフッ素カーボンを含まない環境に優しいアクリルポリマ一成分を採用した撥水剤。オールレザー、ナイロン、ポリエステルとレザーのコンビにも使用可能になっており、透湿性を損なわず撥水加工を施すことができ、また保革・保湿効果もあるためレザーの寿命を長持ちさせることができます。GORE-TEXのシューズをはじめとした多くの防水透湿シューズに使用できるスプレータイプの撥水剤です。
クロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルは水性クリーナーと撥水剤が1本のボトルになったタイプ。レインウェアの洗濯、撥水加工はひと昔前は洗濯機ではなく、刺激臭のする溶剤に漬け込み、自身ですすぎと洗いをするような時代でしたが、クロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルは洗濯機OK。しかも一回の工程で洗濯と撥水加工ができる2イン1。洗浄剤の主成分は洗浄力に優れ、皮膚への刺激の少ない非イオン系界面活性剤を採用し、撥水剤はフッ素カーボンを含まない環境に優しいアクリルポリマ一成分が採用された作業の手間のかからないクリーナー&撥水剤です。
撥水性の重要性と、撥水性が低下した時に性能を失う透湿性
登山靴にしてもレインウェアやハードシェルにしても、防水透湿素材が使用されたウェアは高い撥水性があるからこそ本来の性能が発揮されます。
基本的に防水透湿素材が使われたウェアやシューズは防水してくれるメンブレン(膜)の上に撥水生地を層のように合わせている構造になっていて、2〜3層構造で形成されているのがほとんどです。防水透湿ウェア、シューズの撥水性能は価格がどんなに高価であっても永久的に持続するものはなく、使用するにあたって徐々に性能は低下します。その主な原因は「汚れ」で、ドロ汚れなど目に見える汚れだけでなく目に見えない汚れが生地表面に付着したり、人体の皮脂の付着も性能低下の原因になります。

撥水性能が低下した状態。水分が生地に残ってしまうことで透湿性能も低下してしまう
汚れなどにより撥水性能が低下した防水透湿ウェアやシューズは、雨や悪路を通過した際に水で濡れることで生地表面に膜を形成します。水の膜ができると生地のもつ透湿性が発揮できなくなり蒸れの原因になります。防水素材であっても生地表面に水分が残った状態で圧がかかるような状態になれば内部への浸入を許し、直接浸水する原因にもなります。生地表面がしっかりと撥水をしてくれることで水分がウェアに留まることを防ぎ、ウェアの性能を最大限発揮させることができます。
冒頭でもお伝えしたとおり、永久に性能維持ができる製品は存在しないため、防水透湿ウェアやシューズの撥水性能を維持させるためには定期的なメンテナンスを行う以外方法はありません。とはいえ難しい作業だとしたら定期的にメンテナンスをするのは大変だし、めんどうなほど誰もやりたいとは思わないでしょう。できるだけ楽をして必要なメンテナンスをしたい。そこでシューズケア ツインパックとクロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルです。さっそく登山靴のシューズケアと、レインウェアの洗濯撥水加工を実際にトライしながら手順を解説します。
汚れを落として性能を維持!「シューズケア ツインパック」を使って登山靴をメンテナンス
これまでは靴底の泥汚れを落とし、軽くブラシをかける程度で済ませていた筆者ですが、今回初めてしっかりとしたシューズケアにトライしました。メンテナンス前と後では見違えるほどきれいになった登山靴。撥水性能も復活しました。メンテナンスにあたって用意したものはバケツ、ブラシ、雑巾(着古した綿のTシャツ)です。

用意したのはバケツにブラシ、拭き取り用の古布
シューズケアの具体的な方法
1:ブラシを使って汚れを落とす
フットウェア + ギアクリーナーで洗浄を始める前にまずはシューレース(靴紐)、インソールを取り外し、ブラシを使っておおまかな汚れを落とします。泥汚れは濡れている時よりも乾いているときの方がパラパラとしていて汚れを落としやすいため、こびり着いた泥などをあらかじめ落としていきます。
シューズケアは簡単に済ませていた筆者。普段はあまり見ないようにしていたシューレースの溝にはびっくりするくらいの汚れが蓄積されていました。この汚れが撥水性能を低下させてしまうため細部までしっかりと落としていきます。

クリーナーを使用する前にブラシで汚れを落とす
2:フットウェア + ギアクリーナーを使って洗浄
おおまかな汚れを落としたら、フットウェア + ギアクリーナーを吹きかけて洗浄していきます。刺激臭や人体に有害な成分は含まれていませんが、作業を行うのは風通しがよく換気の行き届いた場所で行いましょう。成分が沈殿していることがあるため、よく振ってから、15cmほど離し全体に吹きつけ汚れを浮かせていきます。汚れがひどい場合には用意したブラシを使って汚れを落としていきます。
フットウェア + ギアクリーナーはシューレースやインソールを洗うこともできるので一緒に洗浄しました。

シューレースも洗浄可能。クリーナーを吹きかけて揉み込むと泡立つのでよく洗いすすぎます
3:洗剤をしっかりと落とす
ブラシで洗浄後はしっかりと洗剤を落とします。拭き取りでもいいですが、水で流したほうがクリーナーの成分を確実におとせるため効果的。水で流す際はシューズ内部に水が入らないように注意。防水シューズは内部が濡れてしまうと乾きにくいため気をつけてください。
4:フットウェア リペル プラスで撥水加工を施す
洗浄後はフットウェア リペル プラスを使って撥水加工を施していきます。洗った後に一旦乾かして、それから撥水加工となるともう1日がかりの作業になりますがフットウェア リペル プラスは水性のため、洗浄後の濡れたまま撥水加工の作業をしてOK。フットウェア + ギアクリーナーと同様に15cmほど離したところから全体に吹きつけていきます。乳白色の液体のため、シューズ表面に馴染まない分は拭き取ります(拭き取らないとシミなどの原因になりうるので注意)。シューレースにも同じく吹きつけておきます。
5:直射日光の当たらない場所で乾燥させる
あとは十分に乾燥させて完了です。日の当たる場所で乾燥させた方が早く乾きますが、色ムラになってしまったり、シミの原因になるため直射日光は避け、風通しのいい場所で乾燥させるのがベター。
シューズケア まとめ:嫌な臭いもせず、簡単4ステップでシューズメンテ完了
アウトドアウェア用の洗浄剤や撥水剤はツンとした臭いのするものもあり、少し苦手意識がありましたが、グランジャーズのフットウェア + ギアクリーナー&フットウェア リペル プラスは鼻を刺すような臭いもなく使いやすかったです。作業時間としては1足で30分ほどでした。この作業、難しいことは一切ありませんでしたが、手間がかからないかというとそうは思いませんでした。簡単とはいえ手間はかかります。ですがこの手間は道具を長持ちさせるために必要な作業であり、登山を楽しむのであれば身につけておくべきことだと感じました。
一回の山行において最も汚れやすいのが登山靴。使用するたびにシューレースを外し、ケアをするのは考えただけでもめんどうに感じますが、こうやってメンテナンスをすることはただ汚れを落とすだけでなく、シューズの異変をチェックすることもできます。筆者が今回ケアを行なった登山靴は5年以上履き込んだ登山靴ですが、ソールのつま先部分が剥がれ始めていることに気づくことができました。
気づかずにフィールドへ行っていたら悪化してソールが剥がれてしまっていたかもしれません。定期的にメンテナンスを行うことは撥水性能の維持、復活だけでなく長く使うためにも欠かせないことだと実感しました。
めんどうな洗濯&撥水加工を1回で!「クロージング 2イン1 ウォッシュ&リペル 」で簡単ケア
クロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルは洗浄剤と撥水剤が1つのボトルに入っていることで1回の洗濯で洗濯と撥水加工ができるため、手間を少なくし効率的に作業ができます。GORE-TEX素材を含めた幅広い防水透湿ウェアに使用可能。手間を省くことで撥水加工の性能は下がってしまうのではないかと心配しましたが、加工後の撥水力はバッチリ。5年近く使い、撥水性能が低下していたハードシェルジャケットも撥水性能が復活してくれました。

撥水加工後、雨のトレイルで2時間ほど行動しましたがしっかりと撥水してくれました
洗濯&撥水加工の具体的な方法
一回の洗濯で洗浄&撥水加工が施せるため作業は簡単ですが、より効率的に作業をするために気を付けるところやおすすめの方法などをお伝えします。
1:洗濯表示の確認後、ウェアのジッパーは全て閉め、濡らしてから洗濯機へ投入
洗濯を始める前にウェアの洗濯表示を確認しましょう。家庭用洗濯機で洗濯ができないウェアを無理に洗濯してしまうと破損の原因になってしまうので注意です。

洗濯をする前に洗濯表示をチェック
ポケット内部に洗剤の成分が残ってしまったり、ウェアを傷つけてしまう原因にならないようジッパーを全て閉めます。ジッパーを閉めたらそのまま洗濯機に入れてもいいのですが、筆者は洗濯するウェアをあらかじめ濡らします。濡らさずにそのまま洗濯機に入れてしまうとウェアが浮いてしまい、洗濯機の水面でただ回っていることになってしまったことがあるため、あらかじめ濡らすようにしています。水でざっと濡らし、流すことでおおまかな汚れも落とすこともできるのでおすすめです。

あらかじめ濡れしておくことでスムーズに洗濯を開始できる。シャワーで流したり、バケツに浸しおおまかな汚れを落としておくのも効果的
あらかじめ水で流すのはめんどうですが、どうせやるならしっかりと洗浄し、バッチリ撥水加工も施したいのでここは手間を惜しんでもやっておくことをおすすめします。洗濯によるウェアのダメージが気になる人は洗濯ネットを使うことで傷つくことを防げるため用意しておきましょう。
2:洗濯するウェアの枚数に合わせてクロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルを入れる
洗濯機にウェアを投入したら、枚数に合わせてクロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルを入れます。成分が均一になるようよく振ってから必要な分量を測り洗濯機へ投入。キャップ1杯が50mlになっていて、ウェア2〜3着の場合は水が20Lに対し150mlの洗剤を入れます。

筆者の使う洗濯機はドラム式のため、上部の洗剤投入口から洗剤を入れます。縦型の洗濯機の場合は洗濯槽に直接入れてOK
クロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルもフットウェア + ギアクリーナー&フットウェア リペル プラスと同様に撥水剤特有の刺激臭はなく、家庭用の洗濯機に使うことに抵抗感を感じることはありませんでした。
ボトル1本が300mlのため、約6着分の洗濯&撥水加工が可能で撥水剤と洗剤が別になっているタイプよりも経済的。こまめなメンテナンスをするにはランニングコストも重要になってきます。一回の撥水加工で膨大なコストがかかってしまっては定期的なメンテナンスもできません。クロージング 2イン1 ウォッシュ&リペルならクリーナーと撥水剤が別になっているタイプよりも安価で購入できるため定期的なケアをするために経済面で優れています。
3:洗濯機のコースを選んで洗濯を開始する
洗濯機のコースをセットし、洗濯を開始します。防水透湿性素材のウェアは脱水することでウェアを傷めてしまうことがあるため注意が必要です。洗濯表示をしっかりと確認の上、コース設定をしましょう。防水透湿素材は洗濯後に1箇所に水が溜まったままになってしまうことがあり、その状態で脱水してしまうと遠心力による負荷が大きくなることでウェアの破損や洗濯槽の故障になる危険があるため、脱水は洗濯コースが終わってからウェアに水が溜まっていないかを確認後に脱水することをおすすめします。
まず洗い・すすぎコースで洗濯後、ウェアに水が溜まっていないことを確認後に脱水のみを行いました。脱水時に乾いたタオルを一緒に入れておくことでタオルが水分を吸ってくれ、より脱水効果が高くなります。
4:乾燥させる

アイロンを使う場合は当て布をし、低温に設定し熱を加える
洗濯後は乾燥させます。そのまま自然乾燥させてもいいですが、撥水性能を最大限に発揮させるために「熱」を加えることを推奨しているグランジャーズ。乾燥機が付いている洗濯機ならそのまま乾燥をスタートさせます。
熱を加えて撥水性能を高める作業は多くの撥水剤で推奨されていますが、この作業が正直めんどくさい。しかしながら熱を加えることで生地の撥水性能がより高まることは事実で、ここはめんどうだとしても性能維持、快適な山旅をするために丁寧に熱を加えていきます。
熱を加える方法は乾燥機やアイロン、ドライヤーなど。アイロンを当てる時は温度に注意し、手拭いなどで当て布をしてからアイロンがけしましょう。熱を当てたあとは直射日光の当たらない場所で風通しのいい場所にかけ、完全に乾燥させて完成です。
まとめ:こまめなメンテナンスで性能維持&長持ち!経済的にもおすすめなグランジャーズのケア用品
過去も現在も使用する撥水剤の成分により撥水効果の高さ持続力に多少の違いがあったとしても、ノーメンテナンスで永久に性能を維持できるウェアやシューズは存在しません。こまめにやるべきであるのは分かっているものの、なかなか手間がかかる作業であったメンテナスは、今回グランジャースのケア用品を使ってみて、昔に比べて手間は本当に簡単になったと実感しました。
メンテナンスをせずに数年でダメにしてしまうか、定期的なメンテナンスを行い可能な限り長持ちさせるか。長くアウトドアアクティビティを楽しんでいる筆者としては後者を選びます。環境問題が深刻化している現代では道具を長持ちさせ、「できるだけ使い続ける」という選択も少なからず環境へのインパクトがあると信じています。そのためにも今持っているギアに対し、長く愛用できる「メンテナンス」の知識と技術を身につけることは、登山やハイキングを楽しむために必要なことではないでしょうか。季節の変わり目、サマーシーズンの終わりはウィンターシーズンの幕開けです。シーズンアウト、シーズンインの前に愛用するギアのメンテナンスをグランジャーズを使ってしてみてはどうでしょう。
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Yosuke.C(ヨウスケ)
不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。
春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。
20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。