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【2025秋冬】雪山登山にバックカントリースキー、アルパインクライミング。過酷な冬山アクティビティに対応するバックパックの用途・こだわり別ベストモデル

今回は久々にバックパックの話題です。

いよいよ中部山岳エリアも本格的に積雪期に入ってきました。

これから数カ月間は、スノーシューハイキングから雪山登山、バックカントリースキー、アルパイン(アイス)クライミングなど、日常からは想像のつかない壮大で神秘的な自然の魅力に触れられる、冬ならではのアクティビティが僕らを待っています。毎年雪山を奥深く分け入った先にある絶景の瞬間に出会うたびに、これまで山をやっていて良かったとあらためて思います。

雪山・冬山アクティビティに適したバックパックとは?

そんな雪山ではどんなバックパックを背負うのがよいのか。

まず第一に、雪山にしか使えない「雪山専用モデル」というバックパックはまずもって存在していなくて、あるのは「雪山アクティビティに最適化された登山用バックパック」であり、雪山向けバックパックは無雪期の登山でも使えます。

逆に言うと、いつも使っている無雪期用のバックパックも、雪山にまったく使えないという訳ではありません。ぶっちゃけとりあえず(ある程度地ならしされた緩やかな)雪道を歩くだけなら、特別なバックパックは必要ないかもしれません。無雪期のハイキングに使っているいつものパックをそのまま流用しても初心者向けルートならほぼ問題なく行けてしまうでしょう。だから雪山を始めたばかりの人や、年に数回しか行かないという人にとってはあえてこのためだけに購入する必要はないと思います。

とはいえ、本格的に雪山登山やアルパインクライミング、バックカントリースキーをやっていこうという人やその道の愛好家たちにとっては、雪山アクティビティに最適化されたバックパックは多くのメリットがあります。

例えば、

  • 岩の上を引きずったり、凸凹の地面に落としたりしても破れない丈夫さ
  • 凍結に対しての強さ、雪に対しての相性の良さ
  • 登るために不要な要素を省いた、最小限の重量で機能的な構造(および基本シンプルで必要に応じてアレンジできるカスタマイズ性)
  • 雪山を歩く、壁を登る、斜面を登って滑るなど、それぞれのアクティビティで必要なギアを持ち運ぶのに便利な収納
  • 腕を上げたりハーネスをつけて行動するといった状況でも邪魔にならず動きやすいショルダー・ウエストハーネス構造

などなど。重い荷物を背負って快適に歩けるという意味では無雪期用のバックパックと変わりませんが、それ以外の部分で重視するポイントは所々で異なってきます。

そこで今回は、無雪期のハイキング・トレッキング向けバックパックにはない特徴を備えた「雪山登山・縦走」や「バックカントリースキー(スノーボード)」「アルパインクライミング」向けのバックパック約170モデルを調査したうえで、今シーズンベスト・モデルを考えてみます。

雪山登山に適したバックパック、それぞれの主な違いは?

ちなみに雪山登山、バックカントリースキー、アルパインンクライミング向けのバックパックを一緒のタイミングで同じくくりで紹介するのはちょっと自分でも悩みました。

別々に紹介することも考えましたが、よくよく考えてみるとそれぞれのバックパックは互いに用途・目的が異なり特徴も違うものの「雪山で使用することを前提に作られている」という部分では共通していることから、いっそのことそれらの違いを含めてまとめて紹介することで、逆により分かりやすく参考になるのではないか?そんな気になり、これまであまりやる人はいなかったかもしれませんが、今回あえて一緒の記事にまとめてみました。

その意味で基本的な考え方としては、「アルパインクライミング向けバックパック」が最もシンプルでなおかつカスタマイズ性が高く、このため無雪期の登山や沢登り、クライミングをはじめ、雪山登山にもバックカントリースキーにも十分適応できるという高いポテンシャルがあります(実際玄人のクライマーで気に入ったアルパインザック1本ですべて乗りこなしているという人もよく聞きます)。

一方「雪山登山用」はアルパインクライミング向けザックからより快適性と汎用性を高めたもの、さらに「バックカントリー用」はそこからアバランチセーフティギアや山岳スキーでよく使うギアの収納性を高めたものと考えれば概ね間違ってはいないかと。

前置きが長くなりましたが、それではさっそくはじめてみます。

なお、ここでは各部門で1点ないし2点しか紹介していませんが、その他のベスト候補やそれらを含めた全169点の比較一覧表はメンバーシップになっていただくことで閲覧することができます。

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オールラウンド雪山向けバックパック:【中型】FERRINO インスティンクト 40+5 / 【大型】Black Diamond ミッション55・75

まずは登山用バックパックのなかでも最も汎用性が高く、山岳バックパックに求められるあらゆる要素で高いレベルにあるオールラウンド系雪山向けバックパックでのベストモデルから。

これ1つあれば、ハイキングトレッキングも、岩登りも沢登りも、そして雪山登山もアイスクライミングも山スキーも、1年を通してオールラウンドな山岳アクティビティに(ホントにするかどうかは別として)対応できてしまいます。いくつかあるベスト候補から特に日帰り40リットル前後とテント泊対応の50リットル以上の2モデルをピックアップしました。

まずは中型モデル。イタリアの知る人ぞ知る老舗山岳ブランドのFERRINO は、日本での展開も規模が限られているためなかなか知られることがないメーカーですが、僕は数年前にドイツのISPO展示会で見かけ、その質の高さといい、イタリアブランドらしい尖り方といい密かに注目していました。そんなFERRINO から、今回オールラウンドな雪山向けザックとして本気でおすすめしたいのが、このブランドの魅力を凝縮したといえる「インスティンクト 40+5」です。軽量かつ高耐久なDCFを素材に採用し、フロントとボトムはさらに補強されてハードな登山でも問題なし。基本構造はシンプル最低限の作りながら、ストラップやデイジーチェーンによって外部のアタッチメントもカスタマイズしやすいのでアルパインからBCスキーなど幅広いアクティビティに対応。背負い心地よい背面に通気性に優れたウエストハーネスは取り外し可能。そしてロールトップ式のメイン収納とフロントダイレクトアクセスジッパーとパッキングしやすさも考えられている。旧モデルは沢登り用のザックとして大変お世話になりました。

一方言わずと知れた世界的山岳ブランド、ブラックダイヤモンドの「ミッション(55・75)」も、高耐久ボディに無駄のない外観と追加・取り外しの可能なパーツ類、快適な背面システムなどを備えた、登山からアルパインクライミングまで対応するオールラウンドで高バランスの優秀なバックパック。

特にフロントに設けられたクランポンポーチによって、アイゼンが必要な「ここぞ」という時に素早い出し入れが可能になるのは何よりも素敵。

低価格オールラウンド雪山向けバックパック:MILLET プロライター38+10

前述した幅広い山岳アクティビティへの対応力を備えたシンプルなバックパックでなおかつ価格もお手頃(3万以下)な、ありがたいモデルがこちら。軽量かつ高耐久なハニカム構造のロビックナイロンを使用し、本来であれば高級バックパックであるはずなのにこのお値段はうれしすぎる。

バックカントリースキー向けバックパック:bca STASH 35 / Haglofs センセイト プロ 32 他多数

今回最も選出が難しかったのがこのバックカントリー向けバックパックの最優秀モデルでした。なぜって、今回挙げたモデルのどれもが快適で便利で、甲乙つけがたくほんとによくできているからなのですが、「全部おすすめ」ではさすがに芸が無いので、客観的な性能だけでなく、自分のスタイルに合っているかどうかという点も含めて「個人的に推したい」バックパックを2つ選ばせてもらいました。

僕が基本的にバックカントリー向けバックパックに求めているのは、もちろん背負いやすさは大前提としてあるけれど、やはり大きく差が出てくる「収納面での利便性」です。スキーの取り付け、アバランチギア、スキーアイゼンとアイゼン、ヘルメットにシールに、ゴーグルにグローブにバラクラバにと、バックカントリースキーはとにかく荷物の出し入れが忙しい(個人的にいろいろと荷物が多くなってしまう性分もありますが)。しかも迅速な行動が求められる。そんなわけで、バックカントリー向けのバックパックには煩雑で多様な荷物を、できる限りシンプルな方法でスマートに解決してくれるモデルを選びたい。

ということでまず一つ目に挙げるのは、今シーズンめでたくアップデートした「BCA STASH」の35リットルモデルです。BCAのこのシリーズ、快適性といい収納性といい昔から非常にお気に入りです。スキーの複数スタイルでの取り付け、アバランチツール収納はもちろんのこと、背面のジッパーによって大きく開くメインコンパートメントには通常のスペースに加えてハイドレーションやトランシーバー用のスペース、キー クリップ付きの小さなメッシュポケットなどもあり、もちろんヘルメットホルダーにフリース裏地のゴーグルポケットも完備。何ならクランポンの外付けも可能なデイジーチェーンもあると、収納に関しては隙が無さすぎる。その分やや重いのが難点といえば難点か。

 

もう一つ、これもスノー系のアイテムでは個人的に信頼度の高いブランドのひとつ、ホグロフスから「センセイト プロ 32」。同じように平均以上の快適性と軽量性・耐久性を備えながら、収納性も抜群。こちらは特にメインコンパートメント下部には、サイドからアクセスできるクランポン用のポケットが素敵。スペース的にはここにクランポンだけでなくクライミングスキンやスキーアイゼンなんかも入れられるので、モードチェンジ時の素早い出し入れが可能です。

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低価格バックカントリースキー向けバックパック:ARVA RESCUER 32 PRO

ハイエンドなBC用バックパックと同じように高機能ながら、執筆時点で30リットル以上のサイズで2万円を切る驚きのコストパフォーマンス(ヘルメットホルダーは別売り)を見せているのが「ARVA RESCUER 32 PRO」。1kgちょっとという軽さも見逃せない。

軽量バックカントリースキー向けバックパック:ORTOVOX スイッチバック27

自分のような収納厨とは違って、バックカントリースキーでもできる限り最小限の装備で身軽にツーリングしたい人もいるでしょう。あるいは3月以降の天候が落ち着いてきた時期ならばがっつり完全装備でなくてもいい場合もあります。そんな時には最小限の重量で高機能かつ快適なBC用バックパックがおすすめです。この分類の中では「ORTOVOX スイッチバック27」が極めて優秀でした。できる限り軽くするため、ともすればいろいろな機能を削らざるを得ないところを、耐久性十分な生地を使い、スキーの取り付けもAフレーム、ダイアゴナル、スノボもOK、背面ジップオープンアクセスもできて、ヘルメットホルダーまで付属と、ワンデイサイズで1kgを切る重量ながら十分多彩な機能性を備えています。

大型バックカントリースキー向けバックパック:Osprey ソールデン45

尾根と谷を何度もハイクアップと滑走をしながらつなぐ、複数日でのスキーツーリングは一つの憧れです。そうした長い滑走旅を送るにはバックパックの大きさも十分になければなりません。この部門の選択肢は決して多いとは言えませんが、それでも(今では珍しい)バックパック専門ブランド、Osprey が手掛ける「ソールデン」シリーズの45リットルモデルはやはり相変わらず素晴らしい。何よりも間違いないのはその重荷でもしっかりと荷重を分散して無理なく背負える疲れにくくて快適な背負い心地は、ややもすると背負い心地が軽視されがちなBC向けバックパックにあって貴重な存在であるといえます。

バックカントリースキー向けアバランチエアバッグ:bca FLOAT E2 35L

BCスキーで雪崩に遭遇した際の埋没を防ぐアバランチエアバッグを搭載したバックパックは、自分の中ではもはや1~2月のBCでは欠かせないギアとなっています。価格が価格のため万人に勧められるという訳ではありませんが、命の値段と考えればぜひとも持っておきたいバックパックです。

そのアバランチエアバッグに、今シーズン新たな注目モデルが登場しました。先ほどのSTASHでもふれましたが、高品質なBC用バックパックに定評のあるbca から、軽量で使い勝手の良い「Alpride E2」を搭載した「FLOAT E2 35L」。背面構造や収納面を見てもSTASHがベースとなっていることから、バックパックとしての質の高さは折り紙付き。そして前世代からさらに軽量コンパクトになったエアバッグと、これは間違いない。

アルパインクライミング向けバックパック:Osprey ミュータント38

重量、耐久性、機動力、柔軟性、、、厳しい条件下で高いパフォーマンスが要求されるアルパイン・アクティビティでは多くの高い機能が求められますが、「Osprey Mutant」は、相変わらず快適な背負い心地を備えながら、シンプルでいて多くのテクニカルな機能と、柔軟なカスタマイズ性の高さを兼ね備えた、まさに機能美が突き詰められた秀作です。この実質的な前身のモデルである「バリアント」シリーズから大のお気に入りでしたが、その精神はしっかりと受け継がれ、着実に進化しています。優れているのは、基本的にクライミングに特化しながら、パーツや収納にクセが無くカスタマイズ性が高いため、幅広いアクティビティに対応できること。実際このモデルはぎりアルパイン向けというカテゴリに入れてますが、アイスクライミングから雪山登山、岩登り、アプローチやトレッキング、さらにはスキー登山など、一年中オールラウンドに使える万能バックパックに限りなく近い性能を有しています。

超軽量アルパインクライミング向けバックパック:patagonia アセンジョニスト・パック 35L

純粋なクライミングバックパックとして考えると、ともすれば先ほどのミュータントは機能的にごちゃごちゃし過ぎていると感じる人もいるかもしれません。事実ミュータントはクライミングパックとしてはやや重量は大きめです。クライミング用のバックパックは極力丈夫でシンプル、そして軽量であるべきなのも確か。その意味でシンプルさと軽さを追求したクライミングバックパックの最優秀モデルはある意味ベタかもしれませんがやはり「patagonia アセンジョニスト・パック 35L」が外せません。その極限までそぎ落としたシンプルな構造ながら、必要なギアを取り付け・収納するのに必要十分な無駄のない、それでいて、メイン収納の開け閉めしやすい出し入れ口に代表される使い勝手の良さ、そして多様なアクティビティにも応えられるカスタマイズ性の高さ、それらが統合された全体としての絶妙な高いバランス。長い間多くのクライマー(に限らず多くの登山愛好家たちに)支持されてきたこともうなずけます。

低価格アルパインクライミング向けバックパック:Blue Ice ドラゴンフライ 34L

軽さと耐久性、必要な機能に絞ったシンプルな構造、そして機動性の高さを備えながら、価格的にも非常に魅力的なのがフランス発、新進気鋭のアルパイン・ギアブランド、BLUE ICEのバックパックです。

中でもこの「ドラゴンフライ」シリーズは、クライミングパックとしての基本的な特徴に加えてサイドポケットやダイレクトジッパーアクセスなどのちょっとした利便性も備え、使い勝手が良いモデル。それでいで2万円前半台の価格と、コストパフォーマンス面で特筆すべきモデルです。