冬の隠れた重要アイテム!スノーグローブの選び方とおすすめの10組
快適な冬のアウトドアは指先から
冬のアウトドアにとって、大敵は何といっても冷え(濡れ)と寒さ。油断をすると最悪の場合、凍傷という重い代償がすぐ隣に待っています。このため常に氷点下での行動を強いられる冬のアウトドアでは、身体の部位のなかでも特に凍傷にかかりやすい手足の保温は至上命題。保温性が高く、風や雪を完全にシャットアウトするグローブを使い、手や指先を常に暖かくドライに保っていなければなりません。
最適なスノーグローブ(冬用手袋)を選ぶことは、旅が快適で喜びに満ちたものになるか、あるいは過酷で凍傷の恐怖に怯えながらのものになるかの大きな分かれ目だといっても言い過ぎではないでしょう。
そこで今回は、冬のアウトドア・アクティビティで使用するスノーグローブ選びについて、どんな種類があるのか、どんなポイントに気をつければよいのかについてお伝えします。後半ではポイント別編集部のおすすめグローブをご紹介したいと思いますので、すぐにおすすめが知りたい方は以下の目次から直接ジャンプしちゃってください。
賢いスノーグローブの選び方
ポイント1:形状「五本?三本?二本?」
一般的に冬用のグローブはどれも高い保温性が特徴ですが、目的やスタイルによって3つの形状パターンに分かれています。これらはどれが一番優れているということではなく、メリット・デメリットを理解した上で自分の志向や状況に合わせて選択していくのが賢い選び方の第一歩といえます。
選ぶときのポイント
- はじめて購入する場合には、五本指か三本指を購入するのが安心。
- そこまで手先の繊細さは必要ない雪山縦走や登攀要素の少ないバックカントリーには三本指タイプの方が暖かくておすすめ。
- 保温性よりも指先の器用さを優先したい場合には五本指タイプを。その際、操作性と保温性のバランスを考えてグローブの厚さを選ぶ。
- 特に手先が冷えやすい体質や、低温下でじっとしていることが多いと予想される場合には二本指も検討。
ポイント2:構造「一体型か、セパレート型か」
一般的な手袋と違い、スノーグローブは「保温目的のライナー層」と「防風・防水目的のシェル層」の多層構造にすることで、保温力や耐久性、透湿性を最大限に高めています。
そして現在多くのメーカーが展開するグローブには、それらの層が一体型になっているモデルと、そうでないセパレート(3-in-1)モデルがあり、これについてもメリットとデメリットを知っておくことで、より自分に合ったグローブを選択することができます。
選ぶときのポイント
- 幅広い用途・季節などに対応したい場合には、汎用性が広いセパレートタイプがおすすめ。
- より手先の繊細さが必要とされる場合やシンプルさを優先する場合は操作性が高く携行も楽な一体型がおすすめ。
※ゲレンデスキー用グローブをはじめとしたベーシックなモデルの多くは一体型なので、その意味ではすべての一体型グローブが高度で繊細な指使いを意識して作られているわけではありません。
【補足】一体型でもインナー(ライナー)グローブは必須?
一体型グローブは素手のまま装着することができますが、氷点下での細かい作業を、素手で行うのは禁物。雪に触れば一気に体温を奪われ、金属などに触れると指の皮が貼り付いたりして怪我をしてしまいます。その意味では一体型のグローブを使うにしても、薄手のインナー(ライナー)グローブは必ず用意しておいた方が安全です。
ここで面白いのは、人によってインナーを「常時はめておく派」と「ポケットに忍ばせておく派」に分かれること。あるショップの店員さんは一体型でもインナーは常時はめておくからサイズはそれを考慮して選ぶべし、と説明していましたが、一方でとあるガイドさんは、作業した後の濡れたインナーをずっとはめていたがために凍傷になったお客さんの例を挙げ、インナーは作業時にその都度はめて使うというやり方を推奨していました。どちらの考え方にも良し悪しがあり、間違いではありません。実際に使う人がそれぞれの考え方で責任を持って危険を回避するのがアウトドア。さまざまな情報や経験を糧に、自分のやり方を見つけていきましょう。
ポイント3:ライナー(インナー、断熱素材)
スノーグローブの保温性を大きく左右するのが、ライナー(インナー)部分に使われている絶縁素材。一部の極地向けグローブを除けば、現在のところライナーで使用されている素材の多くは化繊インサレーション(断熱)素材、フリース、そして古くからの定番である未脱脂ウール(例えばハンガロテックス)、さらにそれらの混紡素材というように、多種多様のアプローチが見られます。
素材の質だけでなく、その嵩(量)の大きさによっても保温力は大きく異なります。このためどれが一番暖かいというのは一概に決められるものではなく、ここがスノーグローブ選びの難しい部分でもあります。
もちろん保温性だけでなく、肌触りやフィット感、薄さなど、実際に試着することでしか見えない使い心地も重要な選択基準のひとつです。
選ぶときのポイント
実際にはメーカーやモデルによって強弱はありますが、経験的にいえることをまとめてみます。
- ウール系のライナーは昔からの信頼性と保温性は問題ないが、肌触りが硬めでフィット感も薄い。
- フリース系のライナーは保温性と速乾性・フィット感のバランスがよく、快適さ重視。
- 化繊インサレーション系は最も進化の激しい分野で保温性・軽さ・肌触りが日々進歩している。ただ厚みがあったり、ライナー表面がスベスベ(セパレートタイプの場合)な分、細かい作業はやや苦手。
【補足】自分のお気に入りインナーグローブを常に使うという選択もアリ
自分の場合、グローブによってフィットしたりしなかったりが気になるので、ほとんどのグローブで自分が気に入ったインナーグローブを使うようになりました。こうするとどのグローブを使うにしてもフィット感や感触が変わりにくいのでおすすめです。ただそのとき注意としては、購入時にそのインナーを必ずはめた状態でフィッティングすることです。
ポイント4:シェルレイヤー(アウター)
アウトドアでの着こなしについて、基本的な考え方である「レイヤリング(重ね着)」はグローブでもまったく同じです。外界との接点であるシェルレイヤーでは、保温性を維持するために何よりも高い防風・防水・防寒性能が求められます。
さらに手指を凍傷から守るためにはグローブ内を濡れたままにすることは絶対に避けなければならないため、水分や湿気を外に排出する透湿性能も同じく重要です。このため冬山用グローブのシェル部分には、レインウェアやハードシェルで採用されているのと同じレベルの防水透湿生地が使用されていなければなりません。
もうひとつ、グローブのアウターで特徴的なのは、風・雪・雨を防ぐという対候性能だけでなく、岩や氷、ロープとの摩擦といった物理的な障害にも耐えられるよう、用途に合わせて各所に強靱な補強がなされていることです。これは必要に応じてですが、特にロープワークがあるようなスタイルでは、必ず手袋のサイドまでしっかり耐久性の高いレザーで覆われたグローブを用意しましょう。
その他、バックカントリースキーなどに特化したグローブはポールの握りやすさを高めるための立体裁断形状をしているなど、ややクセのあるフォルムをしているものもあります。こうしたモデルは別の用途では使いにくかったりすることもあるので、シェルの形状についてクセがないかどうか、試着して確かめておきましょう。
選ぶときのポイント
- シェルレイヤーには単なる防水だけでなく、しっかりとした防水透湿素材が使われているモデルがおすすめ。
- 防水透湿素材の中でも耐久性、しなやかさ・伸縮性、通気性などそれぞれ強みが違うので、できる限りアクティビティに合わせたシェルを選ぶ。
- 手のひらや指周りは特にすぐ(下手をすれば1年で)解れたり擦り切れたりする弱い部分。レザーなどで補強されている耐久性が高いモデルを選ぶ。
ポイント5:その他細かい機能
長めのカフ(袖口)・ガントレット
グローブのカフ(袖口)が長いことによって、グローブとウェアの間からの雪の侵入を防ぐことができます。特に日本のような多雪地域では大雪の中をラッセルする機会が多いため、大きな動作により手首の間から雪が侵入するリスクが高く、こうした長めのカフは用途によっては想像するよりずっと有り難い特徴です。
一方でバックカントリースキー向けグローブなどでは、袖を極端に短くしてアウターの下に入れられる構造のモデルも多く存在しています。これはラッセルでの雪かきなどは想定せず、着脱の手間や収納性、デザインなどを優先した結果です。どちらの方が自分に合っているか、自分の目的に合わせて選ぶとよいでしょう。
タッチスクリーン対応
最近では登山中のスマートフォン操作もすっかり当たり前になってきました。しかし冬になるといちいちグローブを脱ぎ着しなければならず、そこには手を冷気に晒す、グローブを紛失するなど、細かいけど無視できないリスクが生まれてしまいます。グローブを脱がずにスマホが操作できることで凍傷・紛失のリスクは減り、時間短縮にもなります。どうしてもなければならない機能ではありませんが、どうせなら楽で安全な方が良いですよね。
手首調節用ベルクロ・ドローコード
フィット感の向上と外の冷気の侵入予防のために、手首の締め具合を調節するためのベルクロやドローコード。グローブによっては手首部分に内蔵されたゴムが適度に締めつけてくれるモデルもあり、こうした機能がまったく無いグローブを探すのは今では難しいぐらいです。ただ万が一ないなんてことがないように、必ず何かしらが備わっていることを確認しておきましょう。
ゴーグルワイパー
スノーグローブの中には、主に親指の背のあたりにスエードのように起毛した生地が配置されているモデルがあります。これはゴーグルに付着した雪や水滴などを拭き取る役割があります。ただ、個人的には実際あまり便利に思ったこともなく、しかも結構選択などで劣化してボロボロになった経験もあるため、あってもなくても気にしないことが多い機能です汗。
リーシュコード(流れ止め)
これは地味に大切な部位。強風の中でアウターを外して作業することが多いスノーグローブでは、油断するとあっという間にグローブが飛ばされてしまうことが往々にしてあります。それを防ぐために重要なのがこのリーシュコード(流れ止め)と呼ばれる紐ですが、要するにグローブと手首を結びつけるための細引きまたはゴム紐のことです。最初から付属していればもちろん便利ですが、万が一付属していなかったとしても、それを取りつけるためのリングはついているはずなので、なければ自分で作るなどして本番では必ずつけておきましょう。
冬山も安心、編集部おすすめのスノーグローブ
ここではまだ厳密なテストは行っていませんが、スペックと試着したなかで特におすすめのモデル10組をご紹介します。詳細比較テストは近いうちに公開予定ですので乞うご期待!※価格は2018年1月現在
冬山でのアクティビティ全般で使いやすい万能型グローブ
Arc’teryx アルファ AR グローブ
冬山でのオールラウンドな使用を想定したクセの少ないモデル。GORE-TEX®による優れた防水透湿性、特長に合わせた二種類のPrimaLoft®による保温性と手先の動かしやすさのバランスの良さは同ブランドのなかでも随一です。グローブの裁断もほぼストレートで素直だし、袖も十分な長さ、掌から甲にかけてのレザーによる補強もしっかりしているので縦走・クライミング・スキーと幅広く使えるでしょう。インナーが一体型なのが個人的には残念。
「ソフトシェルライナー + 防寒GORE-TEX®アウター」の破壊力
Black Diamond ヘリオ
このインナーとアウターの組み合わせは、個人的に今まで待ち焦がれていたパターンかも。というのも、冬山ではグローブをつけたまますべての作業をこなすことは実際には不可能なわけで、インナーグローブでの作業がどうしても多くなる。そこへきて耐久性と撥水性がそこそこあるソフトシェルライナーであれば、アイゼンやスノーシュー、スキーシールの付け替え時などに雪や摩耗から防げるという寸法です。アウターももちろん防水透湿のGORE-TEX®、保温にPrimaLoft®と盤石。今後の新しいスタメンになるかもしれません。
数あるエントリーモデルのなかでも群を抜いたクオリティのセパレート型グローブ
Black Diamond ソロイストフィンガー/ソロイスト
初めて購入する1組として激しくおすすめ。他ブランドでも同じようなベーシックなモデルはたくさんありますが、個人的には最も作りがよくコストパフォーマンスが優れていると感じています。まずシェルとインナーが分離するセパレートタイプであること、ライナーに使用されているPrimaLoft®Goldはダウンに対抗する化繊素材として防寒着にも多く使われる高機能断熱素材。しなやかなゴートレザーで補強もまずまず。2組目3組目と買い足していくと5本指モデル(ソロイスト)は見劣りしていきましたが、保温力高めな3本指(ソロイストフィンガー)は今でも寒さが気になる季節に重宝しています。
確かな技術を受け継ぐ国内工場生産の逸品
finetrack エバーブレスアルパイングローブ
昨年あたりから高品質な国内工場生産に完全移行したfinetrackの最新冬山向けアルパイングローブ。だからかどうかは定かではありませんが、ストレスのない裁断によって指先の間隔は他と比べても非常に繊細です。おなじみの防水透湿素材エバーブレスをアウターに採用し、手のひらや甲にもしっかり補強がなされています。またミッドレイヤーの撥水機能を備えた3層構造の生地を使い、単体で利用もできるほどの完成度。メーカー的にはさらにインナーグローブ(別売)を合わせて完璧なレイヤリングとしていますが、それがなくても十分機能しそうです。バックカントリーに特化するならば手のひらをレザーで補強したエバーブレススノーグローブもアリ。
高い保温性と透湿性を両立させた新素材Polartec® Alpha®を本格採用
MONTANE Alpha Glove
米軍特殊部隊の要請で開発された、驚くほど軽量かつ保温性と通気性を両立させた最新素材Polartec® Alpha®は、その驚くほどの高パフォーマンスが話題となり、ここ数年で特に冬の防寒着に採用するブランドはうなぎ上りです。その注目の素材をグローブに実装した(おそらく)唯一のモデルがこちらのアルファグローブ。アウターにはしなやかなソフトシェルであるschoeller®3XDRY®とインサレーションPrimaLoft®Gold ECOで保温性と操作性を確保。超軽量で(一体型ゆえに)操作性は抜群、そして常にドライで滑り難いという特長から、常に手先がアクティブなアルパインクライミング等には最適でしょう。
重厚な作りにもかかわらず手頃な価格が魅力のスノーグローブ
Mountain Hardwear クラウドシーカーグローブ
手のひらから高までしっかりとレザーで補強され、メイン生地も70×160Dとわりとしっかりした生地を使った、クライミングにも強い耐久性を備えています。断熱素材にはブランドのフラッグシップ素材であるサーマルQエリートインシュレーションを採用と、かなり本格仕様ですが、価格は他ブランドと比較してもかなりお買い得です。「スティミュラス」という独自の機構によってアウターからでもスマホ操作が可能という機能もイケてます。
全方位に隙なし、オールマイティな用途で使いやすく価格も手頃な優等生セパレート型グローブ
OUTDOOR RESEARCH ARETE GLOVES
グローブの世界では存在感抜群のアウトドアリサーチにはいいグローブがたくさんありますが、より万人におすすめできるのはこの定番スノーグローブです。軽くて厚すぎないGORE-TEX®とソフトシェルで構成されたアウターは操作性も抜群。また取り外し可能なライナーグローブや使いやすいリーシュコードなどもよく考えられていて好感触。Black Diamondのソロイストと並んで1組目に購入するべきグローブ。
極上の快適さはバックカントリースキーの世界における神品
HESTRA 3-FINGER GTX FULL LEATHER
北欧スウェーデンで100年近く続くグローブ専門ブランドの伝統的な皮革素材による三本指グローブは、バックカントリーに疎かった頃には正直見向きもしませんでした。ただ初めてはめてみた時の、その明らかに他と違う極上の着け心地には脱帽で、多くの熱狂的な支持者がいることも瞬時に納得できるものでした。このモデルはそうしたHESTRAの揺るぎない長所部分を活かしつつ、インナーにGORE-TEXメンブレンをはさむことでさらに防水透湿性を高め、よりハードなシーンにも応える作りとなっています。アルパイン用途としてはややクセがありますが、スキー用途ではやはり憧れの1組です。
【番外】アウター・インナーを自分好みでムダなくチョイスする”カスタマイズ派”に最適
ISUKA ウェザ-テック オ-バ-ミトン
このグローブはインサレーションも、インナーグローブも付いてない、防水透湿シェルのみという非常にシンプルな作りのグローブです。グローブといえばインナー(保温素材)とアウターがセットになっているものばかりではありません。かつて自分が大学ワンゲルにいた頃は厚手のウールやシンサレートの手袋の上にこのアウターを被せて冬の手先を守っていました。こうする最も大きな理由のひとつはまず費用が安く抑えられるということですが、それだけではありません。そもそも冬には予備の手袋などを何組ももっておく必要があり、その上結構すぐ擦り切れたりしてしまう消耗品でもあります。その度に新しいセットを買っていたのでは実際のところ無駄が多くなりますが、この方法ならばその無駄を省くことができます。確かに見栄えは少々悪いかもしれませんが、そこさえ気にしなければ、実はかなり賢い選択だと思いませんか?