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Black Diamond ソラノ グローブ レビュー:充電式発熱グローブは冬アウトドアの救世主となるのか?

冬山でのアウトドアにおいて、誰にとっても大敵となるのが寒さ。比較的「末端冷え性」な自分にとっては、冬山で手先・足先の感覚が無くなるほど冷たくなることは日常茶飯事。極寒のなかじっとしていると手は氷のようにカチカチになってしまいます。うっかりグローブに雪なんかが入ってしまったときのいまいましさと言ったら!これまでも常にグローブ選びに気を遣ってきた自分にとって、寒さの心配がないグローブは長年の密かな夢の1つでした。

この冬、その夢がついに適うかもしれない。

手に入れてしまいました、禁断の「電熱式」グローブ。もちろんこの類の製品がかなり前からあったのは知っていたけど、どれも言うなればウィンターレジャーレベル。冬山用グローブの代わりになるかどうかはアヤしいものばかりでした。自分の使い方からすれば、どうしても本格冬山登山も十分対応できるヤツでないと満足できないことは分かっていた。

で、満を持して購入したのが今回のBlack Diamond ソラノ(2019年モデル)。同社のソロイストガイドグローブは自分も何度もお世話になっている冬山の定番グローブで、その昔からこうした多くの優秀なモデルを提供してくれている、紛うことなきトップ・アウトドアブランドが手掛けた電子加熱式グローブです。

現時点ではまだ発展途上の分野でもあるこの充電式発熱グローブに早くから参戦したトップブランドによる、このぶっ飛んだ価格のグローブは果たして本気なのか?それともポーズなのか?自分の眼と手でしかと確かめてみましたので、早速レポートしてみたいと思います。

末端冷え性なアウトドア愛好家たちの悩みが、ついに終わる時が来た。Black Diamond ソラノ 電熱式グローブの主な特徴

おすすめポイント

  • ヒーターONでの桁違いの保温力
  • PrimaLoft® Goldの中綿とGore warm technologyがヒーターをOFFにしていても十分暖かい
  • 全面ゴートレザーによる高い耐久性
  • GORE-TEXによる高い防水透湿性

気になるポイント

  • 指先が分厚くて細かい操作がしにくい
  • 袖をハードシェルの下にすると調節ボタンが隠れてしまう
  • 手首のリーシューコードが標準で付属していない
  • 手が届きにくい価格
  • ビーコン探索時には電波の干渉がゼロではないため、捜索時には必ずスイッチをOFFにしなければならない

主なスペックと評価

スペック
アイテム名Black Diamond ソラノ ブローブ
実測重量514g(Mサイズ両手・バッテリー164gを含む)
素材
  • 100% waterproof and breathable GORE-TEX® insert + Gore warm technology
  • Full goat leather shell(手全体)
  • 2L Pertex Shield nylon(手首表地)
  • 200 g PrimaLoft® Gold(甲)
  • 100 g PrimaLoft® Gold Insulation Eco with Grip Control(掌)
温度域-29/-1度(摂氏)
付属品3種類の変換プラグ付きバッテリーチャージャー、充電式リチウムイオンバッテリー、収納袋
評価
保温性★★★★★★★
指先の器用さ★★☆☆☆
防水性★★★★★
重量★★★☆☆
耐久性★★★★☆
機能性★★★☆☆

スキー・冬山登山で使ってみた(詳細レビュー)

ファーストインプレッション

まずこの製品、たかが手袋のくせになんとも物々しい箱に包まれています。早速箱を開けてみると、一般的なスノーグローブよりも一回りくらい大きな、ごついグローブが収納袋のなかに大事そうに収められているではありませんか。箱の中にはグローブ本体の他に収納袋、充電式リチウムイオンバッテリー、充電アダプター(海外使用向け変換プラグ付)など電化製品らしく中にはいろいろな付属品が入っています。

全面ゴートレザーに覆われたその外観は、見た目の色気もさることながら、見るからに丈夫そのもの。

何はともあれ、とりあえず素の状態でグローブに手を入れてみると、多少のずっしり感はあるものの、違和感という程はありません。思ったよりもフカフカして、スイッチONにしていなくてもじんわりとぬくもりが伝わってきます。

ただ一方で、少し指を曲げてみると、これまでのグローブにはなかったちょっとした抵抗感も感じられました。このため全体的なはめ心地は(見た目や手のサイズ感以上に)ややキツめです。サイズ感に関してはジャストサイズよりも少し大きめを選ぶ意識でいるのが良いでしょう。

フィールドで使用するにあたっては、当然ですがまずバッテリーを充電しておきます。二股の充電ケーブルに2つのバッテリーを繋いでから数時間程で充電が完了。ここから12月~1月の約2ヵ月間、様々な環境でゲレンデスキーやバックカントリー、スノーハイクなどしてみました。

保温性 ★★★★★★★

この手袋の際立った部分は1にも2にも、もちろん手袋に張り巡らされた電熱線による発熱機能です。この機能は手首表側にあるスイッチによって、手首から甲~指全体に張り巡らされた電熱線を通じて3段階の熱が伝わる仕組み。メーカースペックによると、発熱レベルと持続時間は下のような具合です。

  • グリーン:最大38℃/8時間程度持続
  • イエロー:最大45℃/4.5時間程度持続
  • レッド:最大55℃/1.5時間程度持続

実際にフィールドで使ってみると、効果は想像以上に期待通り。圧倒的な暖かさです。どれだけ寒い状況でもスイッチを入れれば、部分的にではなく、親指・人差し指を中心に、手全体をまるでカイロが包んでくれているかのように心地よく温めてくれます。

温度レベルは3段階ありますが、自分の場合はグリーン(最低)設定を手が完全に冷たくなりそうな場面であらかじめ設定しておけば、たいていの場合は手がかじかむことなく快適に使い続けられました。風が弱く、氷点下10℃前あたりまでなら、グリーンのスイッチを入れて数分もすれば手の甲あたりから徐々に指先までじんわりと温かみが行き渡っていくのが分かります。

ただ、-10℃以下で強風のなかリフトにさらされていた時には、流石にグリーンではあまり効果は得られず寒さが襲ってきました。そのときにはオレンジやレッドなどを瞬間的に設定したところ、無事手指の温もりは復活しました。このように通常の寒さならばイエローやレッドはよほどでない限り暖かすぎるくらいなので(電池の消耗も激しいし)あまり長く使用する必要はありません。

グリーンでのバッテリー持続時間は8時間くらい持ちますので、とりあえず日帰りの山行ならばほぼ一日機能します。その1段下のイエローでも4時間くらいは確実に持続してくれたので、このためバッテリーが持たないといった重大な不満を感じることはありませんでした(電化製品なのでいつまでもスペックどおりいくかどうかは未確認のため、そこは不安ではあります)。

そもそも印象的だったのはスイッチOFFの時でも十分に暖かいスノーグローブであるということです。たとえ発熱機能が尽きたとしても、この手袋は手の甲と手のひらにPrimaLoft®Goldなど十分な断熱性を備えているため、少なくともぼくの手は途端に冷えるということはありませんでした。緩やかにでも活動している状態であれば、手指の血行も手伝って十分暖かいままでいてくれます。

よくよく考えてみれば、冬山という危険な世界で使う道具が電池切れとともにまったくの役立たずになってしまうようでは、道具として失格であるのは当然のこと。とはいえ素の状態でもここまでしっかりと作り込んであることには少なからず感心しました。BDすごいよBD。

参考までに、下にレッドで温め続けた状態のグローブ(左)のソラノとスイッチOFF状態のソラノ、そして他社製のスノーグローブをスキー場の駐車場にしばらく放置した後、サーモグラフィ写真を撮ってみました。表示されている温度は実際の温度にはなっていないようなので参考でしかありませんが、発熱グローブによるグローブの保温力が少しでも分かるかと思います。

指先の器用さ ★★☆☆☆

一方、唯一無二の爆熱さとは裏腹に、残念ながらソラノの指先の不器用さにはちょっと無視できないものがあります。

重なり合った生地や電熱線によって指先周りが分厚くかさばってしまう構造で、クランポンやシールやヘルメットの着脱から、カメラや無線の操作はもちろん、ウェアのジッパーの開け締めにいたるまで、何から何まで指先の厚みが邪魔して非常に億劫です。

この不器用さは、手袋をはめたまま何かを操作したり作業するのを早々に諦めるレベルです。このため作業するときにはいちいちグローブを脱ぐ必要があるため非常にストレスフルだし、念のための薄手ライナーグローブは必須になるかと思います。

さらにこのとき、もう一つこのグローブに足りない機能が気になってしまいます。それは手首の「リーシュコード」が標準でついていないこと。

なぜこんなに高価なグローブで標準付属していないのか理解に苦しみますが、幸いコードをあとから装着するためのループはついていますので、もれなく各自リーシュコードを用意して、取り付けておくことをおすすめします。

防水性 ★★★★★

ソラノグローブのシェルは耐久性と耐水性に優れたゴートレザーで覆われ、内側にはGORE-TEXメンブレン、さらにガントレット部分も防水透湿のPertex Shieldナイロンで作られており、しっかりと防水性が確保されています。このため雪や雨滴はもちろんのこと、水の中に手を突っ込んでもグローブの内部には浸水することはありません。またガントレットには調節しやすいドローコードがついており、密閉性もバッチリ。

耐久性 ★★★★☆

多くのスノーグローブが摩耗の強い部分にピンポイントで補強材を貼り付ける程度であるのに対し、このグローブは全体を高耐久でしなやかな山羊革で包み、さらに手のひらや親指から人差し指にかけての内側などにはレザーを二重に補強するなど、感動的なまでに細部に渡って堅牢に作られています。さらに手の甲にはパッドが入っており、リフトバーや木の枝への衝突から保護してくれます。テストでも、安心感は絶大、摩耗の兆しすら見られませんでした。

ただ、一方でリチウムイオン電池の方は別。バッテリーは日進月歩で軽くコンパクトになり、今回も手首の下側の止水ジッパーのなかに大して気にならない程度に収まってくれていますが、コードの形状的にカーブや接続部分が多く、引っかかったり、ひねってしまったりする恐れがあります。この辺は(多少補強されているとはいえ)内部で断線などしないかやや不安が残ります。

また今のところ問題はありませんが、リチウムイオン充電池の寿命も(日頃スマホを使っていれば分かりますが)数百回充電と放電を繰り返せば寿命と言われており、正直どこまでパフォーマンスを維持してくれるかは未知数です。

機能性 ★★★☆☆

基本的なグローブ性能の他の機能についても見てみます。

両親指には鼻を拭くための柔らかい布地は必ず要るというものではありませんが、あれば嬉しい機能です(下写真)。

その他干すときや保管のために手袋をまとめるためのクリップが付いていたり、先述した調節しやすいガントレット部分のドローコードなど、基本的なパーツに関しては十分納得のいく作りです。

ガントレットは適度に長く作られているため、状況に応じて下写真のようにアウターの中にしまうことも(右)、アウターの上から覆うことも(左)できます。

ただ、構造上アウターの中にしまってしまうと発熱ボタンが確認できなくなって操作が難しくなります。自分はアウターの上にグローブが通常なので、逆の人にとってはこの点は厄介になるでしょう。

まとめ:冷えに悩まされている人なら、この安心感は一度使うともう手放せない

確かにこのグローブは一筋縄ではいかないほど高価なのは間違いありません。ただ、冷え性に悩まされている人、使い捨てカイロが手放せない人、より暖かい手袋を手に入れるために労を惜しまない人にとっては願ってもない福音となる品質を備えていることもまた確かです。かじかんだ手に苦しむスキーヤーやハイカー、極寒の地であまり身体を動かさずじっと寒さに耐えなければならないアクティビティをする人にとっては、そのコストに見合った価値があるといえます。

ただ、その代償として手先の不便さや重量、価格、電池の扱いといった要素を考慮しなければならず、それらを天秤にかけて見合うかどうかは個々人の志向によるのも事実。総合的な観点からいえば、これよりも優れたスノーグローブがあることは率直に言って否定できません。その意味でこのグローブは人を選ぶかもしれませんが、このグローブのもつ「頑丈で寒くならない」という安心感は、冬山の寒さに対処したいユーザーにとってはこれ以上ない魅力であり、一度使えば手放せなくなるほど役に立ってくれるでしょう。

注意:ビーコン捜索時の干渉には注意

1点だけレビューとは違いますが、このグローブを使用する可能性のある人に伝えておいた方がいいことを念のため。スイッチがONになったソラノグローブは、雪崩ビーコンが0.5メートル以内にあると、手袋が雪崩ビーコンに干渉します。このため雪崩などで埋没者を捜索するためにビーコンをサーチモードにする際には、必ずグローブのスイッチをOFFにしておくことを忘れずに(これはスマホやGPSウォッチなどの電子機器全般にいえることですが)。