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Black Diamond ベータライト45 バックパック レビュー:最先端軽量素材とスマートなディテールが融合した、ファストパックスタイルへのBDからの回答

最小限の装備でできる限り荷物を軽くすることで、より「長く・速く・楽に」歩きたいというのがウルトラライト(超軽量)スタイルのハイキング。かつては一部の小さなコテージブランド(※先鋭的でニッチな製品を小規模に生産するメーカー)と熱狂的な愛好家たちによって支えられていたアクティビティでしたが、ロングトレイルやスルーハイクへの注目とともに徐々に人気が上昇。今では大小問わず世界中のメーカーによってそれにマッチした製品が作られるようになるなど、ここへ来てますます広がりを見せています。

今回紹介するベータライト45は、クライミングやスキー登山、マウンテンランニングなどアグレッシブな山岳アクティビティ向け製品をグローバルに展開するBlack Diamond(以下BD)が手掛けた超軽量バックパック。自分もこいつをはじめて見たときには、これまで小規模なバックパックメーカーのテリトリーであった超軽量バックパックという領域に真っ向から挑むかのような尖がったスペックや割り切り方には驚かずにいられませんでした。それが一部のコアなお店や通販ではなく全国の山専門店で手にとってみることができるのですから、超軽量スタイル愛好家はもとより、これまでそうした先鋭的なスタイルに慎重であったアウトドア好きもきっと色めき立ったに違いありません。

BDの公式PV曰く「ファストパックスタイルへのBlack Diamondからの回答」と胸を張るほどの超軽量バックパックのサンプルを早速試すことができたので、何度かトレイルを歩いてみたレビューを早速お送りします。

Black Diamond ベータライト45の主な特徴

Black Diamond ベータライト45は、長いハイキングルートをできる限り軽量で高速に移動したいミニマリストのために設計された超軽量バックパック。ボディ素材には非常に軽量ながら優れた耐久性と高い防水性を誇る「Ultra 200」を採用し、重量はフル装備で890gを実現。さらにこの重量はベルトやフレームなどのパーツを取り外すことで最小521gまで削減可能と、ミニマリストの幅広いニーズに対応しています。2本のアルミステーによる荷重安定性の高い背面や、適度なクッション性と通気性を両立させたメッシュ地の背面・ショルダー・ヒップベルトのパッドは長時間の行動でも快適な背負い心地を提供します。またランニングベストにインスパイアされたフィット感と収納性に優れたショルダーストラップをはじめ、大容量のストレッチメッシュフロントポケット、サイドストレッチポケット、ウェストベルトポケットなど、行動中でも素早く荷物にアクセスできる利便性を備えています。数日にわたる軽量テント泊ハイキングに応える45リットルサイズの大容量、加えてこのパックのためにデザインされた別売りの「ベータライト サテライトバッグ」を組み合わせれば、さらに収納性と利便性を高めることができます。

お気に入りポイント

  • 軽量で引き裂きに強く耐久性に優れたボディ素材
  • 防水生地、縫い目のシームテープ、ロールトップ式の口など防水性の高い作り
  • 便利な収納と優れたフィット感を備えたショルダーストラップ
  • 通気性とフィット感に優れた快適な背負い心地
  • 容量の大きいフロント、サイドのストレッチポケット
  • 多数の取り外し可能なパーツにより、重量を最小限に抑えるカスタマイズ性
  • 別売りのサテライトバッグと組み合わせてより便利に使える拡張性

気になるポイント

  • 肩口のロードリフターストラップが行動中に緩みやすい
  • 垂直方向への荷重に対する安定感はあるが、横方向のブレにはやや弱く重荷ではパックが揺さぶられがち
  • 摩耗しやすいサイドストレッチポケットがUltra 200素材ではない

主なスペックと評価

アイテム名Black Diamond ベータライト45
容量約45リットル(メイン収納43L、サイドポケット: 各サイド1L、他フロントポケット)
実測重量
  • 総重量=890g
  • 最小重量=521g(背面パッド、ヒップベルト、ステー、ストラップ取り外し時)
素材
  • メイン:Ultra 200
  • 補強部:Ultra 400
  • フロントポケット:デュアル4ウェイストレッチメッシュ
  • アクセント:100D4mmリップストップナイロン
女性向けモデルなし(ユニセックス)
サイズ(背面長 / ウェスト)
  • XS:背面長=36-41cm / ウェスト=61-107cm
  • S:背面長=39-44cm / ウェスト=69-114cm
  • M:背面長=44-50cm / ウェスト=74-122cm
  • L:背面長=50-55cm / ウェスト=79-130cm
背面パネル2本のアルミステー(30リットルモデルは無し)、背面フレームパッド(取り外し可能)
推奨最大耐荷重約18キログラム(40ポンド)
ハイドレーションスリーブ
メインアクセスロールトップ式(トップストラップ付)
レインカバー不要
ポケット・アタッチメント
  • 背面のスペーサーメッシュパネルで通気性を確保
  • 肩口にロードリフター(30リットルモデルは無し)
  • 2本のスターナムストラップ
  • 左右のショルダーストラップにソフトフラスクやスマートフォンが収納可能なメッシュポケット
  • 左右ヒップベルトポケット
  • 大容量フロントストレッチメッシュポケット
  • 左右側面に大容量ストレッチポケット
  • インナーハイドレーションスリーブ
  • サイドとボトムにダイネックス®製コンプレッションストラップ(取外し可能)
  • 別売のベータライトサテライトバッグ(4リットル)に対応
評価
快適性★★★★☆
安定性★★★☆☆
収納性★★★★☆
機能性(使いやすさ)★★★★☆
耐久性★★★★★
重量★★★★☆
拡張性(カスタマイズ性)★★★★★

詳細レビュー

重量と耐久性:ボディ素材に最先端の「Ultra Fabric」を採用し、軽さと強さを両立

ここ数年、尖った軽量バックパックによく採用される素材として大きな注目を集めている、Challenge Sailcloth社の超軽量ファブリック「Ultra 200」。これまで比較的小ロットしか生産されないガレージメーカーのモデルでしか見られなかったこの高級素材が、ベータライトでは惜しげもなく使われている、そこがまず注目に値します。まずはこのマテリアルの話から始めましょう。

馴染みのない方のために説明すると、Ultraファブリックはラミネート裏地を備えた UHMWPE(超高分子量ポリエチレン、いわゆるダイニーマ)を含む織物で、極めて高い耐摩耗性と耐紫外線特性を備えた超軽量で防水性のあるテキスタイル。コーデュラナイロンに比べて数倍の強度と耐摩耗性を備え、これまで軽量高耐久生地の代名詞でもあったDCF(ダイニーマコンポジットファブリック)と比べても同等以上の重量当たりの耐久性を備えていると言われています。

またUltraファブリックには生地の厚みによって(薄い方から)100、200、400、800とありますが、このパックにはメインボディに標準的な厚みのUltra 200を、摩耗の激しいボトム部分にはUltra 400が使用されているのも注目点です。最近の超軽量ブランドではUltra 100を使っていることの方が多いなか、BDは200生地を採用することで、あまりに過激な軽量化よりも耐久性と重量のバランスのよさを選択したといえます。

ちなみにメーカーの表記では「Ultra 200」とありますが、厳密にいうと生地が誕生した最初期からアップデートされ、ラミネートが厚くなり裏地にX格子状の補強がなされたバージョンを使用しています(ところによってはそれを「Ultra 200X」と表記していることもあるようです)。こちらの方が最初期に比べると微妙に重量は増したものの、生地の引き裂き強度や剛性・耐久性は高くなっています。

生地の質感はDCFのようにバリっとしたゴワつきよりもよりしなやかさ(生地っぽさ)が感じられます。とはいえ適度なコシ(剛性)も備えており、バックパックとして自立しやすく、パッキングはしやすい印象。これは自分の手元にある、以前のUltra 200を使ったバックパック「Durston Kakwa 40」と比べると違いは明らかで、ベータライトのUltra 200生地の方が扱いやすさという点では優れています。

裏地にはリサイクル素材のRUV™ フィルムがラミネートされることで、生地として優れた防水性を実現していますが、さらにこのパックは縫い目にもしっかりとシームテープ加工が施されています(上写真)。水没させたりしない限りはほぼ雨の侵入を防げるような非常に高い耐水性を備えているため、メイン収納内部は悪天候でも安心です。

こうして「軽さ」に全振りせず手荒く扱っても壊れにくいプロテクションや耐久性への配慮によって、このバックパックは実際のところ極端な軽さは抑えられています。とはいえ実際には45リットルで「890g」という重量は、持ってみると気にならないほど十分に軽く、やはりテンションが上がります。デイパックといってもいい程の軽さです。しかもしっかりと背面にはフレームが入っておよそ18キロの荷物にも耐えられ、生地の強度も万全なわけで、快適さや丈夫さも決して犠牲にはしていません。どんな人が使っても安心して「軽さ」のメリットを実感してもらうための気遣いが感じられます。

背負い心地と安定性:フィット感と通気性に優れた丁寧な作りの快適な背面パネル

バックパックの軽さを優先するとどうしてもトレードオフの関係で疎かになってしまいがちなのが背負った時の心地よさですが、入念に開発されたこの超軽量パックはその点に関しても決して「軽いのだから快適性は我慢して」とはならないきめ細かく丁寧な作りが表れています。

2本のフラットアルミフレームとフォームパッドが内蔵された背面パネル

背面パネルやショルダーベルト・ヒップベルトは、同社のスピードハイク向けバックパック「ディスタンス」シリーズなどのランニングパックで培ったノウハウが注ぎ込まれています。汗をすばやく拡散させる通気性の高いメッシュと薄くてフィット感の高いフォームによって構成され、汗が溜まることなく長時間の行動を快適に過ごすことができました。その丁寧な作りはガレージブランドにはなかなか真似できない部分であり、今回非常に満足している点のひとつです。

スピーディな行動中も快適で便利なショルダーストラップ

ショルダーストラップは登山用バックパックではなくランニングベストスタイルのハーネスを採用。軽いパッド入りで通気性の高いストラップは二本の高さ調節可能なスターナムストラップでしっかりとフィットし、走っている時でも揺れにくく、各種ポケットへのアクセスも良好。ファストパッキングには最適な構成といえます。ただ逆をいえば普通にのんびり歩くだけでいい人にとってはもっとクッションの効いた柔らかく分厚いものの方が快適かもしれません。

垂直方向の荷重安定性の高いフレーム構造

また背面パネルの内部構造はEVAフォームのフレームパッドと2本のアルミステーで構成されています。これにより背中は荷物の形状に左右されずにフラットになり、またm荷物の重さは適切にヒップベルトに伝わり、約18キロという耐荷重を実現し、荷重に対する強度は十分といえます。ただ欲を言えばこのフレーム(とヒップベルトの連結構造)は横ブレ(回転ブレ)にはあまり強くなく、できればヒップベルトがパックの底部全体を腰に引き寄せて固定できるような構造であればより安定したという気はします。

さらに45リットルモデルのこちらには肩口にロードリフターストラップが搭載されているため、重心を背中の近くに引き寄せることができ、また歩行中のブレも防いで安定した背負い心地をキープします。実際に自分が歩いた時には13キロほどの重量を背負っていましたが、肩への負担はほとんど感じないでしっかりと腰に荷重が乗ってくれ、また重みで後ろや下方にひっぱられるような感覚も皆無。

ただ、パックの構造については文句なしだったものの、ロードリフターに使われている軽量なラダーロックパーツについては残念ながらうまく機能してくれませんでした。ストラップをしっかりと締めて歩き出したとしても、いつの間にかまったくテンションが無くなってしまい、度々締め直さなければならないのです。おそらくずっと一方向にテンションがかかっていれば緩むことはないのだと思いますが、歩いて身体が上下左右に揺れているうちに少しずつ緩んでいってしまうのです。簡単には取り替えられるパーツではないので、全体のデザインがしっかりとしているだけに惜しい(こんなサードパーティ製パーツで差し替えてみるという手はある)。

パーツを取り外してさらなる軽量化が可能なカスタマイズ性の高さ

「最先端の超軽量素材を使いながら、ビギナーにとっても優しい作り」というのがこのモデルの基本的な特徴といえますが、何も本格的な超軽量スタイルができないという分けではありません。その分かりやすい例は、このパックが主要なパーツを取り外すことで大幅に軽量化することができるという点。フォームパッドをはじめ、内部の2本のアルミステー、ヒップベルト、コンプレッションストラップなどのストラップ類を取り外せば、最小521gまで重さを削減可能です。個人的には快適さを失いたくないのでそこまでやるつもりはありませんが、アルミステーを取り外しても12kgの対荷重性能はあるということ。本気でのウルトラライトスタイルを実践することもまったく非現実的なことではありません。

収納性と使いやすさ:最小限まで切り詰めてもなお、水準以上の使いやすさを保つスマートな収納類

メイン収納

ロールトップ型のメイン収納は防水性が高く雨や汚れの侵入を防ぎ、また荷物の量に応じて容量を圧縮・拡張しやすくなっています。

背面側にはハイドレーションスリーブが(省略されることなく)用意されており、中央にはチューブを外に出すための孔も配置されています(下写真)。ショルダーストラップにはチューブなどを固定するためのゴムが付き、水分補給にハイドレーションを使用する人にとっては十分な使い勝手を備えています。

行動中でもアクセスしやすい外側収納ポケット類

ファストパッキングを想定してデザインされたベータライトは、無駄を省きながら行動中でもアクセスしやすい便利な収納性を備えていました。

たとえばフロントには見た目はすっきりしていますがかなりストレッチする巨大なメッシュポケットが付いており、雨具や防寒具などのかさばる衣類や、さらにはテント場で履くためのビーチサンダルなんかもすんなり入ります(下写真)。

またサイドポケットもここ数年のトレンドを踏まえかなり大きなサイズで使いやすい。ナルゲンボトルと500mlのペットボトルもすんなり入ります(下写真)。ただ、最も出っ張っているこのサイドストレッチポケットの素材がUltra 200でないのは何ともモヤっと気になります。擦れにはあれば良かった

またサイド上部には取り外し可能なダイネックス®製コンプレッションストラップが付いているので、トレッキングポールやテントポール、三脚などの長い物もしっかりと固定することができました。

ショルダーストラップには同社の「ディスタンスシリーズ」から引き継がれたスマートな収納が揃っています(下写真左下)。左胸のストレッチメッシュポケットは縦長サイズのソフトフラスクを入れるのに最適なサイズ。500mlのペットボトルも容量的には収納不可能ではありませんが、ストラップが膨らみ過ぎて当たりが気になるのであまりおすすめはしません。右胸はスマホを収納しやすいジッパー付きメッシュポケットと、その前面にジェルなどの小物を入れておくことができるオープンポケットが配置され、行動中に最も素早くアクセスしたいものはたいていここに収納しておくことができます。

シンプルながら用途に合わせた三種類の収納を設けられたショルダーストラップは使い方もいろいろ。下写真のように右のオープンストレッチポケットにスマホを入れておいてもそう簡単に落ちてしまうことはないので、こうすればすぐに地図を確認したいと時などでもストレスなくスマホにアクセスすることができ非常に使いやすかったです(下写真)。

取り外し可能なヒップベルトには立体的な形状でジッパー操作もしやすいポケットが左右に備えられています(下写真)。飛び抜けて大きいわけではありませんが、小物を入れるには十分な大きさで、自分の持っている大きな6.7インチスマホも(スマホカバーを外せば)ぎりぎり入る大きさだったので、小さすぎるということはありませんでした。

底部には側面の物と同じ取り外し可能なダイネックス®製コンプレッションストラップが付いています(下写真)。一見シンプルな作りですが、これ一つで「パックのコンプレッション」「マットレスなどのかさ張る荷物の収納」「トレッキングポールやアックス固定のためのループ」という3つの機能が可能となっているすぐれモノ。

別売りのサテライトバッグでさらにスマートな収納

超軽量パックとしてはよく考えられた収納がたっぷり仕込まれているものの、一般的な登山用ザックとしてみれば、例えば雨蓋収納がないといった多少の不便さがあるのは、致し方ないことではあります。ところがその不便さも解消されてしまうどころか、普通に便利なバックパックに早変わりしてしまうのがこの別売りの「ベータライト サテライトバッグ」の存在です。

基本的にはシンプルなポーチで、裏面にはウェストポーチとして使えるスリーブが付いている他、ストラップを取り付けるためのループがさまざまな場所に取り付けられ、これがバックパックの追加ポケットや肩掛けのサコッシュなどさまざまな携行方法を可能にします。中身はいたってシンプルで、ジッパーを開けると中は500mlのペットボトルも入る広い空間と、シンプルな間仕切りが備わっています。

バックパックにはこのサブバッグを取り付けることを想定したループがフロントについているため、雨蓋のように使うこともできます。また前面にはスターナムストラップの空いているループに取り付けてフロントパックのように使うことも可能です。

まとめ:すべての人に「超軽量バックパックの最先端」への扉を開けた画期的なバックパック

ベータライト45バックパックは、これまで資材調達の関係で大きなメーカーで採用するのは難しいと思われてきた最高クラスの軽量高耐久素材を使用しつつ、スタイリッシュなデザインに快適な背負い心地、便利な収納類たちが魅力的なバックパックでした。これまでなかなか本格的なULスタイルを試すことができなかったという多くのハイカーに、新たな世界の扉を開けるための理想的な選択肢のひとつです。言うまでもなくこのパックは「軽快に、素早く」移動したいという考えをもつハイカー(つまりファストパッキングやスピードハイキング愛好家)ならば誰もがきっと気に入るはず。

そうした多くのメリットを踏まえつつも、個人的にはヒップベルト周りの固定力と安定性(パックの全体を両サイドから引き付けるようなヒップベルト構造が理想)や、ロードリフターの固定力には物足りなさを感じたので、軽量パックでも重荷が安定して腰に乗りブレにくい構造を重視する人にはやや不満が残るかもしれません(30リットルでは試していないので不明ですが、45リットルという大き目の容量も影響しているかもしれません)。

容量について、このバックパックを背負うならばその他の荷物も軽量装備でそろえているはずで、その場合45リットルは1泊のテント泊なら大きすぎるくらいの容量です。山小屋に宿泊したり1泊程度のルートを想定するのであれば30 リットルのパックで十分。この45リットルは3泊以上のスルーハイクや縦走、あるいは装備がかさむ泊りでロープありの沢登り等でなら存分に実力を発揮してくれるでしょう。これまで超軽量バックパックは快適さや利便性を我慢しなければならないと思っていた方は、これを機にぜひ試してみてはいかがでしょう。