Review:Black Diamond ディスタンス15 アクティビティの垣根を完全に消し去る完成度の超万能ハイブリッドパック
人は万能という言葉に弱いもの。1つより2つ、2つよりも3つ、なんならアレもコレも何でもできたらいいのにと願うものです。アウトドアギアでもそれは同じ。1つのギアを様々なアクティビティに使えるのなら、持ち歩く荷物も減るし、お金もかからない。確かに使おうと思えば兼用もできますが、ふとした瞬間に不便さを感じたりします。ギアごとに必要な要件や機能が異なるのが、アウトドアアクティビティです。クライミングギアはクライミング用で、トレイルランギアはやっぱりトレイルラン用です。
しかし今回紹介するディスタンス15というバッグパックは、そんな誰もが憧れる万能という言葉を体現したギアかもしれません。その万能っぷりをじっくりレビューしてみました。
目次
ディスタンス15 の大まかな特徴
Black Diamondのディスタンス15は、Black Diamondが得意とするクライミングやスクランブリング用の耐久性の高いバッグパックに、ランニング要素を融合させた新しいタイプのバッグパックです。岩場での擦れなどにも対応できる高い耐久性、シンプルな作りながらも豊富な機能性、そして走ってもフィット感・機動性を維持でき、全ての要素においてハイレベルで完成度の高いハイブリッドバッグです。
おすすめポイント
- ランニングバッグ並のフィッティングの高さ
- 岩などとのスレに対する耐久性
- シンプルな外見以上の高い機能性
気になったポイント
- 背面・ショルダーは速乾性あるが濡れには注意
アイテム外観
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
公式容量(本体) | 15L |
公式重量 | S=392g、M=394g、L=396g |
実測重量 | 421g (Mサイズ) |
生地 |
|
ポケット | ショルダーハーネス
本体内部
|
快適性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
機動性 | ★★★★★ |
機能性 | ★★★★☆ |
収納性 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★★★ |
総合評価 | ★★★★☆ |
詳細レビュー
特徴・形状など
クライミングバッグやアタックバッグのような非常にシンプルな形状で、本体に外部ポケットはなく非常にスタイリッシュな形状です。メインの生地には、引き裂き強度が鉄の10倍という、210デニールPU糸のリップストップ生地を使用しています。この生地が本体トップまで伸びて雨蓋の役割を果たしています。この生地は丈夫なだけでなく、防水仕様なので多少の雨でも心配はありません。
本体は非常にシンプルですが、ショルダーハーネス部分はランニング用バッグを基に開発されているため、ショルダーストラップには深めのポケット、広めで収納性の高いポケット、そして一番上部にはファスナーつきのポケットが両ストラップについており、合計6つのポケットがあります。
上のポケットは深めの作りで、500mlのペットボトルであれば余裕で入ります。下のポケットは比較的大きめなので、行動食やスマートフォン、コンデジくらいであれば収納可能です。薄手のウィンドシェルでも丸めれば収納できます。これだけ収納できれば、行動中ザックを開ける必要はかなり減りそう。
上部のファスナーポケットは、マチがありストレッチ性もあるので、見た目以上に物が入ります。ジェルや行動食、ゴミなどを入れておけば落とす心配もなく便利です。右のポケット内にはホイッスルがついています。
背面パネルにはBD.dry™ベイパーバリヤーバックパネルを採用し、 蒸れにくく快適に背負っていられます。たとえ湿ってもバック内部に汗が染み込むことはないので、中身の心配は不要です。メッシュ生地の下に、少し硬めのフォーム素材のバックパネルを備えているので、しっかりとしています。
雨蓋はなく、本体から伸びるパネルをフックで留めるだけの設計になっています。
内部へのアクセスも非常に簡易にできています。フックを外して両端を持って引っ張ればそのままガバッと全開する仕様です。瞬時というより、蓋を開ければ同時に開けられます。
ランニングバッグとしても引けを取らないフィット性・機動性
やはりランニングパックが基になっているだけあり、フィット性を高める工夫が随所に見られます。まずはショルダーストラップ。上部はやや細めながら、下に行くにつれ太くなり、体を包み混むようなフィット感を生むようになっています。
ショルダーハーネスと本体を繋ぐ部分はドローコードを使用し、ここを絞ることにより体との距離を縮め、様々な動きに対して対応してくれるので、フィット感と機動性を向上させてくれます。
シンプルながら考え尽くされた高い機能性
本体左右にはBlack DiamondのZポールが収納できるポケットがあります。Zポールを収納するために作られているので、使用している人にはかなり嬉しいポケットです。他のメーカーの三つ折りや伸縮性のあるポールであれば入りますが、グリップが太かったりすると入らない可能性もあるので、そこは要注意です。このポケットはポールの長さに合わせて作られているため、かなり深く、ボトルや小物も入れられはしますが、取り出しにかなり苦労するので、ポール用と考えておいた方が良いでしょう。
本体横左右には、ジグザグにコードがついています。コード自体には伸縮性はありませんが、テンションをかけることができるので、脱いだ服を挟むこともでき、荷物が少ない時のコンプレッションにもなります。
細かい機能ですが、パネル裏には小さな窪みがあり、そこに小物を入れられるようになっています。ライトなど今は使わないからしまっておきたいけど、あとで絶対使う!ようなものをいれるためでしょうか。
本体内部には、ファスナーつきのメッシュポケット、ハイドレーションパックをいれる深めのポケットもついています。貴重品などはファスナーつきのポケットに入れるのが良いでしょう。
本体底には、アイスアックスを固定できようにスリーブとループが備え付けられています。
実際に使ってみたインプレッション
4シーズン使えるスクランブリング・クライミングパックということで、生地の耐久性を高め、最低限必要な機能をシンプルに実現しています。しかしそこまででは通常のバッグになってしまいますが、この特徴は、そこにベスト型ランニングバッグの要素を取り込んだ点です。開発にあたってはトレイルランナー・ジョー・グラント(個人的に大ファンなんです)も開発メンバーに加わっていることからも、ランニング要素にもかなり力を入れていることが伺えます。
やはりランニングバッグを元にしているだけあり、フィッティングは非常に良好。ショルダーハーネスが胸から腰あたりにかけて幅広く取られ、それこそ体が包み込まれる感覚です。そこは国産トレイルランバッグであるパーゴワークスのRUSHのような安心感のあるフィット感です。それに加え、ショルダーハーネスと本体はゴム製のドローコードで繋がっており、ここを絞ることにより激しく動いても本体がブレにくくなり、より安定感が増すようになっています。
背面はBD Dryベイパーバリヤーバックパネルが使われており、背中は運動量が増えても蒸れにくくなっています。しかし、蒸れを逃す様な構造にはなっていないため、運動量が多くなれば背中は湿ってしまいます。それでも速乾性のある素材なので不快感は低いのと、バッグ内部に浸水しにくい作りになっているため、安心です。特にショルダーハーネスは、透けるほどのメッシュ素材を使用しているため通気性はよく、汗で濡れることはほとんどありませんでした。しかしその分ショルダーハーネスのポケットは左のファスナーポケット以外メッシュ生地に直に付けられているため、濡らしたくないものを入れる時には注意が必要です。
本体はトップローディング式で、上から荷物を突っ込んで蓋兼用の本体のパネルを閉め、フックで留める様になっています。この時本体の開閉は非常に簡素化されており、パネルを持ってドローコードを引っ張れば閉まり、逆にパネルと本体を引けば開く様になっています。もともと荷物の出し入れを少ないアクティビティ向けではありますが、その数少ない動作に対してもストレスを減らす様な工夫がされています。
このディスタンス15の15は、そのままバッグの容量となっています。この15Lという容量は絶妙で、クライマーが必要な道具を詰め込んで岩壁までのアプローチに使用したり、ベースキャンプからのアタックザックにしたりと、様々なアクティビティで使用するできるように考慮した容量です。
しかし15Lという容量はアクティビティによっては大きいこともあるでしょう。特にトレイルランニングで使うとなると、基本的にはやや荷物の多くなる長距離での使用になりそうですが、本体側面のドローコードを絞ればコンプレッションの代わりになるので、少ない容量でも中身が揺れることなく安定してくれます。
まとめ:こんな人におすすめ
バッグのコンセプト通り、4シーズンにおいて、スクランブリング、クライミング、日帰り登山からトレイルランニングなど、様々なアクティビティーにおいてシームレスに無理なく使用できる汎用性の高いバックパックです。ブラックダイアモンドの得意なクライミングバッグにランニング要素をうまく融合させた走れるクライミングバッグなのでしょう。
確かに、そのアクティビティ専用のパックは存在していて、使い勝手はもちろん高く作られています。しかし兼用できるのであればそれに越したことはありません。しかしこのディスタンス15は、その兼用という枠を超え、それぞれのアクティビティでも専用に作られているのではないかというほどの完成度の高さです。
見た目のシンプルさとは裏腹に、収納力や使い勝手は非常に高く設定され、どんなアクティビティでもストレスなく背負っていられます。また15Lという容量をフルに使ってもフィット感は非常に高く、トレイルラン・ファストパッキングでも十分活躍してくれます。
日帰りのトレイルランで、駅のロッカーに荷物を預けて同じ場所に戻るコース設定をせざるをえなかった人も、いつもより多く荷物を入れても快適に走れるので、スタートとゴールに縛られない自由なコース設定もできるので、普段のトレイルランでも十分利用価値はあるでしょう。