厳しい雪山に不可欠なハードシェルジャケットの今シーズンベスト・モデルと、失敗しない選び方のポイント
ハードシェルとは「シェル(貝)」という名が示す通り、アウターとして最も外側に羽織るタイプのウェアですが、基本的な特徴を一言でいうと、「雪山や氷壁を対象にした登山・山岳スキーを念頭に置いて作られているアウター」ということです。
今回は冬のアウトドア・アクティビティに最適なハードシェルについて、前半では10年以上山道具のレビューサイトを運営するOutdoor Gearzine編集部が自信をもっておすすめできるハードシェルジャケットの銘品を紹介し、後半ではハードシェルジャケットの後悔しない選び方と気をつけるべきポイントにについてまとめてみます。
編集部おすすめのハードシェル3×3【用途・目的別】
まずは当サイト編集部が毎年主要メーカーの新作をチェックしているなかで実際に「これを選んでおけば間違いない」と自信をもっていえる、おすすめするハードシェルジャケットを3カテゴリ(クライミング向け・BC向け・コスパ重視のオールラウンド向け)で3着ずつ紹介します。実際には3着に絞り込むのも大変なくらい優秀なモデルはまだまだたくさんあるのですが、ここは初めての方にとってとりあえずの目安になることを第一に、あえて3モデルに絞り込んでいます。
クライミング向けハードシェルのおすすめ3モデル
ハーネスの装着を想定したスリムなシルエットながら、動きやすさを考えられたカッティングのウェア。岩と雪のミックスされた登攀から、厳冬期の雪山登山での使用におすすめモデルを紹介します。
Rab Latok Extreme GTX Jacket
生地に80DリサイクルGORE-TEX Pro が採用された安心感抜群の一枚。
過酷な山登りのためのハードシェルジャケットで、タフなシチュエーションでの使用を考えている人におすすめ。クライミング向けにすっきりとしたフィット感で、バックパックやハーネスを装着した時にゴワゴワしないシルエット。
ハーネスを装着した時に干渉しない場所にポケットがあり、ジッパーには大きめのループが採用されているため開閉がしやすくなっています。
各アジャスターも操作性を高めるために細部までこだわり抜かれており、安心感だけでなく、使いやすさも抜群。
シンプルな見た目のデザインから、タウンユースにも違和感のないウェアです(街着にするにはオーバースペックですが。。。)
THE NORTH FACE ハイブリッドシアアイスジャケット
ザ・ノース・フェイス最高峰ライン「サミットシリーズ」のハイブリッドシアアイスジャケットは場所によって厚さの違う生地が採用されたハードシェルジャケットです。
摩擦が起こりにくい前後身頃と袖下には30デニールの「GORE-TEX PRO」が採用され。摩耗が起こりやすく、よく動くフードと肩回りには、70デニールの「Stretch GORE-TEX」が使用され、その名の通り、ハイブリッドな一枚。
裾に足を通せるループがあり、行動中にウェアがまくり上がってしまうことがないようになっているのが特徴。激しいストップ&ゴーが繰り返される過酷な環境下で冷気や濡れから体を守れるようにクライミングシーンの可動域を考慮されてつくられたウェアです。
登攀向けに細めのシルエットのため、使用する環境を想定したレイヤリングを考慮し、サイズを選びましょう。
パタゴニア M10 アノラック
1グラムでも軽く、1ミリでも自由であることを求めるアルパインクライマーたちから支持を集めながらも、製品改良のために販売休止していたアルパインシェル「Patagonia M10」シリーズが2024年、およそ6年ぶりに進化して復活。
不必要な機能を全て廃し、最低限の機能でで極限までシンプルに軽量化した 3 層防水透湿シェルはスリムシルエットながら細部まで計算された独自パターンによって、肩回りや股関節をはじめあらゆる場面でストレスのなく動かせるようにデザインされています。
3層のハードシェルとしては驚くほど軽量で、冬山に慣れた人が、最小限の装備で最大限の機動性を実現したいファスト&ライトなアルピニストやスキーヤーにおすすめの一着。
なおパタゴニア M10 アノラックについてはこちらの記事で詳しく解説していますのでよかったらご覧ください。
Patagonia M10 アノラック & M10 ストーム・パンツ レビュー:余分なものすべてを削ぎ落とし、ナイフのように研ぎ澄まされた一年中使える超軽量テクニカルシェル
バックカントリースキー / スノーボード向け ハードシェルのおすすめ3モデル
パウダースノーを求めてゲレンデを飛び出し、BC(バックカントリー)へと向かう人にはゆとりのあるデザインで、長めのレングス、そして耐久性の高いウェアを3つ紹介します。
Teton Bros. TB Jacket
耐久性に優れた高強度ナイロンを使用したティートンブロス独自の防水通気素材「Täsmä(タズマ)」は完全防水性と通気性を両立し、激しい発汗を伴うハイクアップ時にも汗がこもりにくく快適。また表面には現状で最高水準の撥水加工を施されており気温高めの時期も強い。
ナイロン素材ながら十分なストレッチ性があり、立体裁断も相まって体の動きを妨げず、これが本当にハードシェルか!?と思わせる着心地の良さは他の追随を許しません。
胸元から脇腹まで斜めに大きく開くユニークな位置に配置されたベンチレーションは行動中も開閉が容易。前面にアジャスターを集中させたフード、手首を包み込むように締まる袖口など、BCスキー(スノーボード)での使用において文句なしの一枚です。
NORRONA ロフォテン ゴアテックス プロ ジャケット
バックカントリースキーヤーにとってのあこがれ、NORRONA スノーシリーズのフラッグシップモデル。
リサイクルナイロン100%の表地70デニールのGORE-TEX PRO most breathableが採用され、防水透湿に加え、耐久性の高い一枚です。
素材の品質と計算された無駄のない立体裁断によるスタイルと動きやすさは折り紙付きですが、ここ数年でとにかくバックカントリースキーに特化した細やかな機能性の高さにどんどん磨きがかかっています。例えば左胸に設けられた、フロントファスナーを開かなくても素早くアバランチビーコンを取り出せるアクセスホールやフロントファスナーに沿って開く胸のメッシュベンチレーター、雪の侵入を防ぐ厚手のハンドゲイターなど、BCフィールドにおいて使いやすさを突き詰められています。
こいつを身に纏えば、厳冬期の深雪も怖いものなしでしょう。
Rab Khroma Latok GTX Jacket
RabのハイエンドモデルのクローマラトックGTXジャケット。
生地素材には最高レベルの耐久性と耐候性を誇るGORE-TEX Proを使用していますが、表地の補強部には80Dを採用、ボディには40Dにし、場所によって生地の厚さを変えることで耐久性を損なわずに軽量性を両立。いずれの厚みもGORE-TEX Proの中で最も透湿性が高い「GORE-TEX Pro Most Breathable」を使用している抜け目のなさもさすが。
長めに設計されたレングスにスノースカート、ハンドゲイターはBCスキー(スノーボード)において深いパウダーでも雪の侵入を防ぎ、快適に行動できるでしょう。
価格を抑えたオールラウンド向けハードシェルのおすすめ3モデル
性能も大事だけどコストも無視できません。ハードシェルジャケットとしての性能は担保しつつ、コストを重視したオールラウンド向けのジャケットを紹介します。
モンベル ダイナアクション パーカ
ハードシェルながらストレッチ性を備えた防水透湿性素材「スーパー ドライテック」を使用した、ダイナアクションパーカ。モンベルのアルパインジャケットの中で最も軽量なモデル。
2種類の生地を使い分け、しなやかさと軽量性を追求。冬季登山やアイスクライミングはもちろん、無雪期のトレッキングまでアクティブなシーンで一年を通して活躍する一着。
これだけの性能を持ちながら、3万6300円(税込)というお財布に優しいウェアです。(価格は2024年12月時点)
MILLET ティフォン ウォーム ネクスト ストレッチ ジャケット
100年をこえる歴史を誇る総合登山ブランドが新たなレベルに到達した、耐水圧(30,000mm)、透湿性40,000g/m2/24hという驚異的なスペックの生地を採用した同ブランド定番ハードシェルがティフォン ウォーム ネクスト ストレッチ ジャケット。高い防水透湿性を持ちながら、裏起毛の三層構造で快適性と耐久性も備え、おまけにストレッチ性まで備えている、至れり尽くせりなジャケットです。
それでいて何と4万円でお釣りが来る驚きの価格設定。
シンプルなデザインでレギュラーフィットなシルエットは寒い季節の登山やスノーアクティビティのためのアウターシェルとしてだけでなく、タウンユースとしても活用できます。初期コストを抑えたい人やエントリーモデルとして、激おすすめの一着です。
Mountain Hardwear ファイアフォールジャケット
2層構造の独自の防水透湿素材Dry.Qを採用したスノージャケット。価格は税込で3万1,900円と紹介するハードシェルジャケットの中で最も低価格。
低価格な分、低機能かというとそんなことはなく、ウィンターアクティビティに便利なスノースカートやベンチレーション、ヘルメット対応のフードなど、必要な機能は備わっているのでご安心を。
失敗しないハードシェルジャケット選びで大切な5つのポイント
ハードシェルとは
雪山にハードシェルが欠かせない理由を一言で言うと、最も過酷な積雪期の冬山で最高のパフォーマンスを発揮するために最新の技術が投入され、雨だけでなく風雪を含めたあらゆる天候に適応できるような防水・防風・耐久・通気・透湿性を備えているからです。
積雪期の雪山でも天気が良ければ太陽の温もりを感じ、ポカポカした中で気持ちよく行動できることもありますが、天候が悪化すると一変、吹雪になり、暴風雪が襲いかかってくることもあります。そんな時に暴風雪から守ってくれるのがハードシェルです。
ただ、アウトドアショップに行ってみるとハードシェル以外にもソフトシェル、レインウェアなど、アウターとして着用できるジャケットの種類は豊富にあることに気がつくはずです。ぱっと見た限りではレインウェアと何が違うのか、よく分からない場合もありますよね。それぞれの違いはなんなのか?そんな疑問に思う人もいるはず。
まずハードシェルが冬のアウトドア・アクティビティには欠かせない理由を、他のシェルレイヤーやレインウェアとの特徴を比較してみることで確認してみましょう。
ハードシェル・ソフトシェル・レインウェアの特徴の違い
ハードシェルは雪山アクティビティでのマストアイテム
種類 | ハードシェル | レインウェア | ソフトシェル |
---|---|---|---|
防水性 | ◎ | ◎ | ◯ |
防風性 | ◎ | ◎ | ◯ |
防寒性 | ◎ | ◯ | ◯ |
透湿性(通気性) | ◯ | ◯ | ◎ |
耐久性 | ◎ | ◯ | ◯ |
ストレッチ性 | △ | △ | ◎ |
重量 | ◯ | ◎ | △ |
ざっくりとした生地の質感 | ザラザラ | ツルツル | しっとり滑らか |
袖口 | グローブを着用を前提とした広口可変構造 | 素手での利用を前提とした可変構造 | 素手での利用を前提とした可変構造 |
フード | ヘルメット着用が前提で調節可能 | ヘルメット対応・非対応両モデルあり | ヘルメット対応・非対応両モデルあり |
ベンチレーション | ついているモデルがほとんどで、大きく開くものが多い | 有り・無しの両モデルあり | ついていないのが基本 |
ハードシェルには防水・防風・透湿の機能が備わり、過酷な環境に耐えうる強度のあるウェアですが、他にも冷気をシャットアウトする襟やフードの構造、雪面滑落時の摩擦抵抗や撥水性能を高めるザラッとした質感の表生地、グローブ着用を想定した袖・裾など、雪山で快適に使用するためのさまざまな細かい機能や工夫が凝らされています。
季節やアクティビティによっては生地のしっかりしたレインウェアでも代用できる場合もありますが、本格的な雪山登山を考えている人や、BC(バックカントリー)スキー / スノーボードをする人にとって、ハードシェルは頼りになるマストアイテムといえるでしょう。
ハードシェルジャケット選びで大切なポイント1:用途に応じたタイプを選ぶ
ハードシェルジャケットを選ぶ際、まず初めに用途を決める必要があります。ハードシェルジャケットにはアルパインクライミング向けに作られているものや、BCスキー/スノーボード向けに作られているジャケットによって微妙にサイジングや機能、デザインが変わってきます。
- アルパインクライミング向け・・・上半身の動きやすさ重視で細身のフィットで、ハーネスなどの登攀具を付けることを想定したデザイン
- 山スキー/スノーボード向け・・・ややゆったりめのフィット(中により厚手の防寒着を着込めるように)で、滑走中に雪が入りにくい構造
登攀系の冬山やアイスクライミング用に考えているのであれば、ゆとりのあるフィット感のウェアではハーネスなどを装着した際に邪魔になってしまいますから、スリムフィットのウェアをチョイスするのがセオリー。ハーネスをつけることで腹部のポケットも使えないことがあるのでポケットの位置などもしっかりとチェックしたいところです。
山スキーやスノーボードなどは滑走中の動作が大きくなるため、ゆったりめで、着丈の長いタイプの方が滑走中に雪が入りにくく、動きやすいでしょう。ゲレンデでの滑走時はリフトに乗っている間は寒いため、ウェアの重ね着を想定して選ぶと失敗しにくくなります。
ハードシェルジャケットは明確に◯◯用、◯◯用と線引きされているわけではないため、アルパインクライミング向けのウェアでスノーボードができないわけではなく、(逆も然り)あくまで適したデザインになっているだけですが、用途を決めておくことでハードシェルジャケットは選びやすくなります。
ハードシェルジャケット選びで大切なポイント2:防水透湿性能の生地・素材を選ぶ
ハードシェルジャケットは行動中常に着用していることが前提のため、晴れているときも雪や雨の時も常に快適でいられるよう、あらゆる天候で快適な防水透湿素材の生地が使われています。当然ながら、生地の防水性・透湿性が高ければ高いほど品質の高いウェアと言えるでしょう。
さまざまな防水透湿生地の中でも、GORE-TEXは数十年にわたって多くのアウトドアメーカーが採用している素材です。高い防風性・透湿性・耐水性を備え、すべての製品でラボや実際のフィールドでの厳しいテストを実施して作られています。その意味であらゆるタフなアクティビティにおいても安心して使うことのできる素材です。
中でも最も過酷な条件で使用することが想定されたハイエンドラインである「GORE-TEX PRO」は、耐久性のある表・裏地に、十分な防風・撥水性、激しい発汗にも対応する優れた透湿性を備え、冬山でのあらゆるタフなアクティビティで、安心と快適さを提供してくれます。もちろんGORE-TEXの他の種類でもハードシェルはありますが、もし厳冬期の冬山までを考えているのであればGORE-TEX PROがおすすめです。
用途と目的が決まっていて、価格帯も考慮するならばメーカー独自素材も十分アリ
一方でGORE-TEX以外で、各メーカーが独自で開発している防水透湿素材も日々進化しており、最近では王者GORE-TEXに負けず劣らずの高性能素材も存在していることにも注目です。これらの素材は総合力ではなく、透湿性や重量、着心地など、特定の部分でGORE-TEXより優れていることが多く、さらにうれしいことにGORE-TEXよりもやや低く抑えられた価格帯であることが多いのが特徴。
有名どころをかいつまんで紹介すると、パタゴニア独自の防水透湿素材「H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル」、モンベルの「スーパードライテック®」、ノースフェイスが開発した「FUTURELIGHT™(フューチャーライト)」、マウンテンハードウェアの「DRY Q(ドライQ)」、ティートンブロスが東レと共同開発した「Täsmä(タズマ)」などなど。
これまで積み上げてきた実績でGORE-TEXにかなう素材はないとはいえ、個々の特徴や価格など、ある面でGORE-TEXより優れた素材はたくさんあります。基本的な防水透湿性能をクリアしたうえで、用途と使用環境・価格帯に合わせて無駄のない生地・素材を選びましょう。
ハードシェルジャケット選びで大切なポイント3:生地の厚み(耐久性)と重量とのバランスを考える
過酷な環境下において、必要な道具を全て背負い行うアウトドアアクティビティでは、重量や耐久性も重要になってきます。
常に着用するハードウェアジャケットですが、重ければ行動時にかかる負担が大きくなり、動きにくさからストレスを感じるでしょう。
衣食住を全て背負い、長距離を歩くようなシーンではできるだけ重量が軽いウェアを選ぶべきですし、BCスキー(スノーボード)において、ツリーランなどする際や、岩と雪のミックスされた険しい場所を登攀するようなシーンでは小枝にひっかかっても切れず、岩に擦っても穴の空かない耐久性が求められます。
ハードシェルジャケットの重量は使用されている「糸」の太さや生地のレイヤー(何層)なのかや、付帯機能(ポケットなど)によって変わってきます。一般的に太い糸を使用したジャケットはその分重たくなるし、防水のために使用しているシームテープなども影響してきます。
生地の厚さは使う「糸」によって差が生まれますが、糸の太さ=耐久性というとそうではありません。
例えば、シンプルに考えれば40デニールの糸を使用したウェアよりも80デニールの糸を使用したウェアの方が生地は厚く重たい反面、耐久性が高くできるといえますが、細くても密に編めば強度は上がるし、重量も上がるため糸の太さと耐久性は一概に相関関係にないことが分かりました。
使用している糸の太さや、縫製の密度までなってしまうと、公表しているメーカーは少ないので、実際には試着し、着心地や、着用時の重量感など確かめましょう。
ざっくり50着ほどのウェアの重量を確かめてみたところ、アルパインクライミング向けのハードシェルジャケットでは平均すると500g〜600gほどで、500gを切るウェアは軽量な部類と言え、600gを超えてくると重たいとウェアと言えそうです。
BCスキー向けのウェアとなると、スノースカートや大きめのポケットがあるモデルが多いため、アルパインクライミング向けに比べ重く、600g台が一般的です。
ハードシェルジャケット選びで大切なポイント4:必要な機能が備わっているか確認する
用途によって求められる機能も変わってきます。
それぞれのウェアに備わっている機能は最終的に使いやすさと着心地に大きく影響してきます。ハードシェルジャケット選びを失敗しないためには必要に応じた機能が備わっているかも購入前にしっかりと確認しましょう。
購入前にチェックしておきたいパーツ・機能
- フロントジッパー
- ポケット
- フード
- スノースカート
- ベンチレーション
- 襟
ジッパー:開閉のしやすさや防水性をチェック
ジッパーにもさまざまな種類があり、使いやすさを左右する重要なパーツです。
ジッパーは防水性が高いものを使っているか。また開閉のしやすさも重要です。止水ジッパーのタイプによっては硬く、片手では開け閉めできないモデルもあるので要注意。脱ぎ着するためのメインジッパーだけでなく、ベンチレーションやポケットのジッパーもしっかりと確認しましょう。
壊れにくく、凍結しにくく、防水性も高くて軽量なビスロンタイプの止水ジッパーは、冬山用に多く採用されている信頼性の高いジッパーです(下写真)。
開閉のしやすさだけでなく、ダブルジッパーになっているモデルなら、ジャケットがバタつくことを防ぎつつも効果的に換気を行うことができるので便利。ジッパーはグローブを装着した状態で開閉がしやすいかもチェックしましょう。
ポケット:用途に合わせて配置・数が違うため、行動時のアクセスしやすさをチェック
ポケットは数が多ければいいってことでもありません。どこに配置されているのかも重要です。アルパインクライミング向けのウェアはハーネスを取り付けることを想定し、腹部をポケットは廃し、代わりに胸ポケットが大きく、両サイドに設けられているモデルもあります。
BCスキー(スノーボード)向けのウェアであれば、胸ポケットは小さめで、代わりに内ポケットにゴーグルやスノーグローブ、シールなどが入るほど大きなポケットが用意されていることが多いです(これあると便利です)腕にポケットがあるモデルも多く、ICチップを採用しているゲレンデではゲートの通過がストレスなく行えます。
鍵などの貴重品はアクセスの頻度の低い内ポケットに入れておくのがおすすめ。内ポケットのないウェアもありますので注意が必要です。
フード:アジャスターを使った時のフィット感をチェック
悪天候の時にはフードはマスト。大きさもメーカーによっては千差万別。フィット感はしっかりとチェックしましょう。
フードにツバが付いていないモデルだと雨や雪が降っている時に顔の露出した部分が濡れやすくなります。ツバの長さは好みにもよりますが、長い方がよりガード力が上がりおすすめです。
基本的にヘルメットの上から被れるよう大きめの設計になってるモデルが多いですが、フードが大きすぎるとヘルメットなしではうまくフィットしないこともあります。アジャスターが設けられているため、ヘルメット無しでのフィット感を確認しましょう。
フードにアジャスターがついていても、サイズが合わないと横を向いた時に視界をさえぎってしまうこともありますから試着の際には顔を左右に振ってみて視界が確保できるか確かめましょう。
スノースカート:雪の侵入をシャットアウト
ハードシェルの中に雪が入り込むのを防いでくれるスノースカート。BCスキー(スノーボード)などを目的としたウェアには装備されていることが多いです。なくてもそこまで酷いことになったことはありませんが、パウダーランをするようなシーンで、雪の侵入をしっかりとプロテクトしたい時はあると便利です。転倒した時に雪の侵入を防いでくれるので、BCスキー初心者はスノースカートのあるウェアを選ぶ方がいいでしょう。
一方アイスクライミングなど垂直方向の雪山登山で主に使用する場合には、スノースカートは重くなるだけで不要、という場合の方が多いはず。その場合は逆にスノースカートがないか、あるいは取り外しが可能なモデルを選ぶのが賢い選択です。
ベンチレーション:操作のしやすさ、大きさ、ゴワつきなどをチェック
ベンチレーションは行動中にオーバヒートしてしまうのを防ぐために設けられた換気口です。ハードシェルジャケットは行動中は常に着用することが前提になっているため、ほとんどのモデルにベンチレーションがついています。
開閉部が大きいほど大きく換気できるので便利ですが、ジッパーの開閉操作がスムーズでなかったり、ベンチレーションの位置や大きさによって着心地にゴワつきが感じられたりする場合もあるので、ここもしっかり試着して自分にフィットしているか確認した方がいいポイントです。
襟部:着た時にアゴと干渉しないかをチェック
防風時には顔を守ってくれる襟部ですが、これもメーカーやモデルによってデザインが違い、着心地に大きく関わってきます。
ハードシェルジャケットを着てみて、ジッパーを上まで閉めた時の襟の位置、ゆとり具合(キツすぎないか)もしっかりと確認しましょう。地味だけど意外と重要なポイントです。着用中にあごに当たる位置にきてしまうとストレスになります。襟が高すぎて着用するとあごに干渉し丸まってしまうようなこともありますから、生地のハリなどチェックしてみてください。
ハードシェルジャケット選びで大切なポイント5:サイズ感・着心地を確かめる
いくら性能と機能が十分に備わっていたとしても、着心地が悪ければ台無しです。用途のところでも解説しましたが、基本的に同じハードシェルジャケットでも、アルパインクライミング向けは身体のラインに密着したスリムなシルエットになっていたり、BCスキー(スノーボード)用なら逆にややゆったりめの作りになっていたりと、それぞれのアクティビティに適したデザインになっています。それ以外にも、各メーカーやトレンドによって細部の作りやフィット感が変わってきますので、流行りのメーカーやデザインだけで選ぶのではなく、購入前にはしっかりと試着してから選ぶのが理想です。
またサイズ感に関しても、メーカーやモデルによって想像と異なることが多々あります。ジャストサイズすぎるのは、重ね着したときに窮屈になったり、身体を動かしたときに突っ張り感があったり腕が出たりするかもしれませんので、試着の際には行動中を想定して手を上げてみたり、伸ばしてみたりといった、できる限り行動を想定したレイヤリングや動きを試して、見落としがないようにしましょう。
まとめ
ハードシェルウェアは堅牢な作りで、過酷なアウトドアで身を守ってくれます。自分に合ったハードシェルウェアを見つけてフィールドへと出かけましょう!
昨今では環境への配慮から、リサイクル素材が使われていたり、これまで撥水加工に使われてきたフッ素化合物を含まないPFCフリーのモデルが一般的になってきています。自然の中で行動するためのウェアが自然に優しい素材や加工により製造されるのは嬉しいことではありますが、これまでのようにノーメンテで長く撥水が維持できるものは少なくなってきています。
お気に入りのハードシェルを見つけたら、定期的にメンテナンスをし、性能を維持させて長く使いましょう!