何を捨て、何をとるか?最適なスリーピングパッド(マット)の選び方とおすすめの3枚

その最新モデルに10倍以上の金額的価値があるのか?それが問題。

スリーピングパッド(スリーピングマットとも。以後スリーピングパッドで統一)といえば忘れもしない、およそ20年前、学生の分際にもかかわらずなけなしのバイト代(1万弱)をはたいてGETした、サーマレストの自動膨張式スリーピングパッド。その当時のぼくは正直、これで山では無敵の快眠ベッドを手に入れたと信じていました。が、しかし、その希望は数ヵ月後、無数のパンク跡と共に無残にも消えていきました。今考えればそりゃそうです、沢登りで、ゴロゴロした小石の上に敷いていた自分が悪かったのです・・・。

そもそもスリーピングパッドとは、テント泊のキャンプや登山で使う、シュラフの下にクッションとして敷くマットですが、下は1,000円程度のロールマットから、上は3万円以上もする超高級パッドまで幅広いモデルが幅広い価格帯に散らばっています。苦い経験を経たぼくにとっては、常々スリーピングパッドだけはそのラインナップと価格のあまりの開き具合に違和感を感じずにはいられませんでした。

高いものは確かに快適。だけどその快適さにはウラがあります。その情報を知らずして、むやみに高価なモデルに手を出すのは危険です。これから紹介するスリーピングパッドの選び方を参考に、覚悟と計算を考慮して、本当に自分に合ったパッド選びをしてもらえたらと思います。それでは早速みていきましょう。

編集部が注目するスリーピングパッド11枚を比較テストした結果はこちら

目次

スリーピングパッドの役割

ポイント1:種類

ポイント2:温かさ

ポイント3:長さ・広さ(形)

ポイント4:重量・収納性

ポイント5:その他の機能・使い易さ

まとめと編集部のおすすめスリーピングパッド3選

スリーピングパッドの役割

何はともあれまずはじめに、スリーピングパッドが果たす2つの重要な役割について、あらためて整理します。

快適さ ~凸凹の地面でフラットな寝床を提供してくれる~

スリーピングパッドが提供してくれる快適さは四季を問わず、スリーピングパッドの最も基本的な役割です。だいたいにおいてテントを張る場所は、どんなに整地されていたとしても多少の小石や凸凹は免れず、テントのグランドシート程度では(シュラフに入ったとしても)気持ちの良いものではありません。スリーピングパッドの弾力素材や注入された空気の層は、そうした寝心地の悪さを忘れさせてくれるでしょう。各モデル毎、素材、表面の凹凸、弾力性、厚さなどさまざまな要素によって違いが生まれてきますが、どれが最も快適なのかという問題は、実際には主観による部分もあって判断が難しいところです。一般的な違いだけでなく、最終的には店頭などで実際に試してみることをおすすめします。

温かさ ~冷たい大地の上でも温々と寝られる~

夏のうちはあまり大きな問題にはならないのですが、スリーピングパッドのもうひとつの重要な役割は、冷えた地面と身体との間に断熱層をつくり、就寝時に体温を奪われないようにすることです。

寝ているとき、身体の一部分は地面に接しているわけですが、当然のことながら温度の違う2つの物質が接すると、熱は高い方から低い方へと逃げていきます。ここで意外なことに、その熱の伝わりやすさ(熱伝導率)は、接している物質が「土(0.52)」「0℃の空気(0.024)」では20倍以上もの差があります。つまり、何も敷かずに地面の上で寝るのと空気で膨らんだパッドを敷いて寝るのとでは、前者の方が20倍もの量の熱を失ってしまうのです。

これはたとえシュラフに入っていたとしても、シュラフの断熱素材は体重で押しつぶされてしまうため、地面の上に寝ているのと大して違いはありません(テントのグランドシートは言うに及ばず)。だからこそスリーピングパッドが提供してくれる「断熱層」が低温の大地で寝るときに無くてはならないものである理由です。

ポイント1:スリーピングパッドの種類

スリーピングパッドの役割と重要性が分かったところで、早速選び方のポイントをみていきましょう。スリーピングパッドには基本的な素材・構造的の異なる3つのタイプが存在し、それぞれメリット・デメリットがあります。スリーピングパッド選びはまずこの3つの特性を理解し、どのタイプを選ぶかというところからはじまります。

素材 クローズド・セル(独立気泡)パッド エアー(空気注入式)パッド セルフインフレーティング(半自動膨張)パッド
イメージ THERMAREST(サーマレスト) 寝袋 マット Z Lite Sol Zライト ソル シルバー/レモン R (51×183×厚さ2cm) R値2.6 30670 【日本正規品】THERMAREST Z Lite Sol Zライト ソル THERMAREST(サーマレスト) 寝袋 マット NeoAir Xlite ネオエアー Xライト マリーゴールド レギュラー(R) 【日本正規品】 30273THERMAREST NeoAir Xlite レギュラー(R) THERMAREST(サーマレスト) 寝袋 マット Prolite Plus プロライト プラス レギュラー(R) 【日本正規品】 30789THERMAREST Prolite Plus レギュラー(R)
構造 折りたたみ式・あるいはロール式の、最もクラシックで基本的なパッド。空気を含んだ微細なクローズド・セル・フォームによって構成されている。 チューブ状の気室に口から直接あるいはポンプから空気を注入し、膨らませることで断熱層とクッションを形成するパッド。より保温性を高めるため中に熱を反射する素材やダウンなどの中綿を封入してあるものも。現在最も進化が激しく、用途に応じてさまざまなバリエーションが選べるタイプ。 エアーパッドと違い、バルブを開けるとある程度まで自動的に内部のスポンジ状のオープン・セル・フォームが空気を吸引して膨張してくれる。サーマレスト社によって開発され、特許が消滅した現在では多くのメーカーが同じタイプのモデルをリリースしている。
メリット
  • 総じて軽量
  • 高い耐久性(パンクがない)
  • 価格が安い
  • 濡れの心配がない
  • 途中できるなどカスタマイズができる
  • 滑りにくい
  • 非常に保温性の高いモデルがある
  • 軽いモデルや温かいモデル、寝心地のよいモデルなどバリエーションが豊富
  • 凹凸のある地面でも快適(空気の注入量によって調節可能)
  • エアーパッドに比べ、空気の注入作業が相対的に少なくて済む
  • 内部のウレタンフォームによる適度な弾力性
デメリット
  • 非常にかさばる
  • 相対的に快適性が低い
  • 自分で空気を注入しないと使用できない
  • パンクのリスクがある(パンクしたらまったく使い物にならない)
  • 滑りやすく、傾斜があるところではマットから落ちてしまう
  • 途中で切るなどのカスタマイズができない
  • 価格が高め
  • 内部のウレタンフォームの分、若干かさばり、重量がある
  • パンクのリスクがある(パンクしたらほとんど使い物にならない)
  • 価格が高い

選ぶときのポイント

  • はじめて購入する場合や、まだ最終的にどれにするか決め手を欠いている場合は、確かな性能、安価で丈夫なクローズド・セルがおすすめ。
  • 3シーズンの一般的な登山により快適なモデルを選ぶなら、バランスのよい(ミドルエンドクラスの)エアーパッド、もしくはセルフインフレーティングタイプ(好みで寝心地の良い方)がおすすめ。
    とことん軽量にこだわるなら
    極薄のクローズドセル(快適さを犠牲)か、軽量エアーパッド(価格と耐久性を犠牲)がおすすめ。
  • 保温性を最優先する場合は中綿入りのエアーパッドタイプから選ぶ。
  • 雪山をはじめとした寒冷地帯での利用では耐久性を何よりも優先し、クローズド・セルは必携、さらにその他エア式の併用がおすすめ。
  • オートキャンプなどで快適さを最優先させる場合には、極厚のセルフインフレーティングタイプ(例えばスノーピーク キャンピングマット2.5w)、あるいはキャンプ向けのエアーマットレス(例えばコールマン コンフォートエアーマットレス)などを検討。

ポイント2:温かさ

R値のチェック

温かさというというと、夏にはあまり気にする必要のない要素ですが、冬のテント泊でのあの恐ろしい、底冷えで眠れない夜を経験したことがある人ならばこの項目の重要性は誰よりも身に染みて分かるはず。ではいったいどのくらいの温かさがあれば十分なのか。それを判断するための第一歩がR値(R-VALUE)と呼ばれる数値です。

R値とは、端的にいうと、製品の”熱の伝わりにくさ”を数値化した、メーカー共通基準。この値が高いパッドほど熱が伝わりにくい=断熱性が高い、つまり温かいというわけです。現在のところ、各製品は1.0から小数点刻みで10.0あたりまで広範囲に細かく分布しており、より寒い季節・地域になればなるほどR値の高いモデルが有効になってきます。

では実際にどのくらいのR値でどの程度まで対応できるのか、使用する場所の気温と対応するR値の大まかな目安を表にまとめましたので参考にしてみてください。 ※実際の温かさは地面の状態やシュラフによっても大きく違ってきますので、あくまでも参考値です。

R値 適応する最低気温の目安 季節の目安
1以下 10℃ 真夏
1~2.5 0℃ 夏前後
2.5~4 -5℃ 3シーズン
4以上 -5℃以下 4シーズン

出典:facewest.co.uk

R値がない場合はどうする?

スリーピングマットのR値表示は、残念ながらまだ全てのメーカーが行っているわけではありません。そ現状ではこうした数値が公表されていない場合には自分で推測するしかないのですが、その際、保温性の高いスリーピングマットのセオリーをいくつか知っておくことで確実ではありませんが、より間違いのない判断ができるようになります。

  • 中身が同じならば、厚いマットほど温かく快適(ただし内部のつくりが違えば、同じ厚さでも温かさは変わってきます)。
DSC02101

スリーピングパッドの厚さの違いだけでは温かさは決まらない。厚さの違いはむしろ凸凹地面で寝たときの快適さへの影響が大きい。

  • インサレーション(ダウンや化繊綿等の断熱素材)がより多く封入されているほど温かい。
  • 内部に熱を反射する断熱シートがより多く挟み込まれているとほど温かい(なおかつインサレーション封入タイプよりも軽い)。
  • 厚みがない、または断熱素材が入っていない場合でも、2つのパッドを重ねて使用することで保温性と快適さは十二分に高めることができる(写真)。
DSC02097

個々のR値は高くなくても、重ねることによって低温下でも十分対応可能に。冬のテント内では迷うことなくこうしてきています。

ポイント3:長さ・幅(形)

長さ

近年ほとんどのメーカーでは、同じシリーズで2~3種類の長さを展開しています。スリーピングパッドはどうしてもかさばりがちですので、とにかく荷物の重量と嵩を切り詰めたい、就寝時には最低限の快適さが確保できればよいとすれば、スモールサイズがスマートな選択。この場合、パッドがカバーする範囲は肩から腰まで(120cm前後)、頭にはスタッフサックに衣類を詰めて枕にし、下半身は必要に応じてバックパックをシュラフの上から穿くなどし、ある程度防寒の足しにします。こうした工夫により最小限のサイズに切り詰めることで軽量化することができます。

とはいえこうした切り詰めは3シーズンまで。冬の寒さに耐えるにはどうしても全身をカバーするレギュラーサイズ(175cm前後)が必要でしょう。もちろん3シーズンでもそこまで荷物を切り詰める必要性がない、より快適な寝床を優先したい場合には、迷わず自分の身長に合ったサイズを選びましょう。個人的には、薄くても最低限全身をカバーする1枚は必要だというのが、今のところの結論です。

選ぶときのポイント

  • 通常は全身を覆う長さ(レギュラーサイズ)を選んで問題ないが、とことん軽量・コンパクトさを優先する場合はスモールサイズも可能。快適性と重量・携帯性はトレードオフの関係にある。

幅(形)

長さのところでも述べましたが、最低限の領域をカバーするという観点でいえば、パッドの形と広さは自分の肩幅と腰の重量がかかる部分が入っていればOKといえます。これを具体化したのが、写真のような幅51cm(20インチ)のマミー型や、加重がかかるポイント以外の部分をくり抜いたチューブ型です。余分な部分を極力そぎ落とし、軽量化を図りつつ、最低限の快適さを確保した幅と形状になります。

NEMO(ニーモ・イクイップメント) ゾア20M NM-ZOR-20M KLYMIT(クライミット) イナーシャ X フレーム パッド INERTIA XFRAME PAD [並行輸入品]

 とはいえ、流石にここまでまったく余裕のないサイズでは寝返りも打ちづらく、時には傾斜のある場所で寝なければならないテントにおいて、狭くてズレやすいパッドから身体が外れないように寝るのも一苦労。より余裕をもった幅と形を選ぶならば、例えば幅はより広く64cm(25インチ)、形もより広くてテントへの収まりのよい長方形ということになるでしょう。ここでも快適性をとるか、軽量・コンパクト性をとるかというトレードオフの選択が必要です。

選ぶときのポイント

  • 少しでも軽量化を考えるのであればマミー型、あるいはチューブ型などの形状を選ぶ
  • パッドの安定性と、寝返りの打ちやすさを考えるとより幅広で、長方形(あるいはそれに近い形)がおすすめ。

ポイント4:重量・収納性

スリーピングパッドの重量は軽いに越したことはありませんが、だからといって「軽い=正義」とはいかないのがパッド選びの難しいところ。一般的には軽ければ軽いほど保温性や快適性・耐久性は下がる傾向にあります。また内蔵しているポンプなどによって重量が増えいているというケースもあるので、単純な重さの比較は禁物。重量の内訳を理解し、何を優先するかを考えて選ぶことが重要です。

収納性に関しても同様で、単純に「小さい=正義」ではありません。下の写真を見るまでもなく、クローズド・セルタイプのパッドは他のタイプと比べて文句なくかさばるのは確かですが、決してパンクしない耐久性の高さと十分な保温力、そして相対的に手頃な価格は決して侮れません。

DSC02091

クローズド・セルとそれ以外では、収納性の違いは一目瞭然。一方エアーパッドとセルフインフレーティングではあまり違いはない。

選ぶときのポイント

  • 軽量・コンパクトなスリーピングパッドを選ぶときには、それによって何が失われているのか、いないのかに注意する。

ポイント5:その他の機能・使い易さ

空気の入れやすさ・抜きやすさ

クローズド・セル以外のタイプでは、パッドに空気を注入しなければ断熱力はほとんど得ることはできません。この空気の注入作業が個人的には地味に面倒で、何とかこの作業が楽なモデルは無いものかいまだに彷徨い続けているのが現状です。

確かに、セルフインフレーティングタイプはバルブを開けることで自動的に空気が充満していってくれるという点で最も簡単に空気を注入できるといわれています。しかし、実際には数分待っても膨らむ量はそこそこ。時間が何よりも大切な登山では、結局大部分の空気を口から吹き込んでいる自分がいます。その意味では、このタイプにエアーパッドタイプと比較してそれほどのアドバンテージを感じてはいないのも事実です。

DSC02062

最近では空気を大量に注入できる大きな口や、吹き込んだ空気が逃げていかない一方通行のバルブも登場し、どんどん使いやすくなってきている。

ここでスピーディに、かつ簡単に注入できる方法として注目したいのが、最近サーマレストやエクスペドなどがオプション(あるいは付属品)として提供するようになった、スタッフサックにもなるエア注入ポンプの存在です。これによって注入スピードは倍以上、呼気による余計な湿気なども入ることなし。まだまだ新しいイノベーションが期待される領域として、これからも大注目です。

pump_sack2

サーマレストは底部にビニール状の穴が空いたスタッフサックをバルブに装着し、袋を巻き上げながら空気を注入する方法。1度で大量の空気が注入できる。

pump_sack

シートゥーサミットでは蛇腹のようなスタッフサックをバルブに装着し、伸縮を繰り返すことによって空気を注入する方法がおもしろい。1度に注入できる量は少ないが、狭いところでも操作しやすくスマート。

DSC02099

ニーモのコズモエアーシリーズは足側に内蔵されたポンプを踏んで空気を注入する機構を採用。ただ、足で踏むスペースが必要なうえ、注入量も多くないため思ったよりも手間がかかる。

表面(・裏面)

タイプの違いは大きく3つしかありませんが、表面の構造は千差万別。実際に比較してみると、なるほど各モデルで寝心地は大きく異なり、その差は眠りの質に少なからず影響を与えるものだと実感しています。神経質な人はもちろん、そうでない人も、スリーピングパッドの表面の形状は実際に横になるなどしてチェックしておくべきでしょう。また、裏面に滑り止め加工を施すなど細かい点が行き届いているモデルにも要注目です。

pad_surface

昔は縦に長いチューブでしかなかったエアの形状も、横長やV字チューブ、セル状と進化していった。クローズド・セルタイプも今ではさまざまな凹凸形状から選ぶことができる。

まとめと編集部のおすすめスリーピングパッド3選

冒頭からお伝えしているとおり、スリーピングパッドは他のギアに比べて特に「どんな機能を優先するか」という選択基準が厳しく求められる(間違ったときの金額的なリスク含め)わりと面倒なギアです。現状では残念ながら軽くて・コンパクトで・温かくて・快適で・丈夫で・安いというパーフェクトなモデルはまったくといっていいほど望めませんが、最後に、編集部的に「これを選んでおけば損はしない」と言える、各タイプでのおすすめモデルをご紹介して終わりたいと思います。より詳細なおすすめ、レビューは比較テストレポートでお伝えしようと思いますので、乞うご期待ください。

クローズド・セルタイプのおすすめ: THERMAREST RidgeRest SoLite

軽くて温かい(R値2.8)、価格も抑えめなロールマットは誰もが安心して選択できる信頼性の高い1枚。唯一かさばるのが難点ですが、軽量化にこだわりたい場合には自分の身長や好みに合わせて大胆にカットして使えるという自由度の高さも素敵です。

エアーパッドタイプのおすすめ: THERMAREST NeoAir XTherm

その断熱性の高さ(R値5.7)は他のパッドと比較して明らかに違いが分かるほど。一言でいうと、他のパッドが温度を「逃がさない」のに対し、このパッドは「発熱している」感覚。その上軽量・コンパクト、さらに注入スタッフサックも付属していて、価格相応の価値はあると実感。

セルフインフレーティングタイプのおすすめ: NEMO ZOR 20R

多くのメーカーから製品が乱立し、ひと頃に比べればドングリの背比べ状態になりつつある自動膨張式ですが、このモデルはそのなかでも「軽量化」というテーマにフォーカスした製品づくりで際立っています。同タイプのなかで一際軽く、コンパクトながらも快適さ・保温性のバランスも確保。軽さと快適性、両方捨てられないハイカーにとってのどストライク。

山仲間にシェアしよう!

200 Shares

最新ギア情報をゲットしよう!