後悔しないスリーピングマットの選び方とおすすめ9アイテム 季節やシーンに合わせて賢く使い分けよう
形も特徴も価格もいろいろスリーピングマット。季節やシーンに応じて使い分け
いわゆるアウトドア用のマットレスであるスリーピングマット(パッド)は、不整地で横になるアウトドアにおいて寝袋に勝るとも劣らないくらい、寝床の質を大きく左右する重要なピースです。
マットレスといえば忘れもしない、20年前のことでした。なけなしのバイト代(1万弱)をはたいて購入したサーマレスト社の自動膨張式モデル。それまで薄い銀マットしか使ったことのなかった当時のぼくは正直、これで山の夜では無敵だと確信していました。がしかし、その野望は数ヵ月後、無数のパンク跡と共に無残にも消えていきました。今考えればすぐに分かることですが、小石がゴロゴロした地面の上に素で敷いていた自分が悪かったのです(ギリ大丈夫かなと思ったのですが…)。
ここで何が言いたいかというと、キャンプや泊りの登山でシュラフの下にクッションとして敷くスリーピングパッドは決して必ずしも「高ければいい」わけではないということです。下は1,000円程度のロールマットから上は3万円以上もする高価なモデルまで、スリーピングパッドには幅広い価格帯でさまざまな種類が存在していますが、購入にあたっては価格だけではなく種類の違いによる構造や特徴の違いを理解して選ばないと、痛い目にあう可能性が大いにあります。
そこで今回は失敗しないスリーピングパッドの選び方についてまとめ、現時点で20年以上スリーピングパッドの上に寝てきた編集部がおすすめする最新モデルを選んでみました。マットレス迷子のみなさんが利用シーンやスタイルに合った自分だけの1枚を探す手助けになれば幸いです。
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目次
- 編集部おすすめのバックパッキング向けスリーピングパッド9アイテム
- 3シーズン向けベスト:NEMO テンサー インシュレーテッド レギュラーマミー
- 4シーズン向けベスト:Therm-a-Rest ネオエアーXサーモ
- サマーシーズン向けベスト:Therm-a-Rest ネオエアーウーバーライト
- 寝心地(快適性)ベスト:Sea to Summit コンフォートプラスS.I.マット
- 暖かさ(断熱性)ベスト:EXPED ULTRA 7R MUMMY
- ベストコストパフォーマンス:Big Agnes インシュレーテッドエアコアウルトラ レギュラー
- 個人的お気に入りエアーパッド型マットレス:Sea to Summit ウルトラライト インサレーティッドマット
- 個人的お気に入りセルフインフレータブル型マットレス:Therm-a-Rest プロライトプラス
- 個人的お気に入りクローズドセル型マットレス:NEMO スイッチバック レギュラー
- 選び方:最適なスリーピングパッドを賢く選ぶためにチェックしたい5つのポイント
- まとめ
編集部おすすめのバックパッキング向けスリーピングパッド9アイテム
まずは実際に編集部が「こんなシーン・目的にはこれを選んで間違いない」というおすすめモデルをご紹介します。
3シーズン向けベスト:NEMO テンサー インシュレーテッド レギュラーマミー
2022年にアップデートしたニーモのエアーパッド式マットレスは、ブランドらしい軽量・コンパクト、利便性の高い作りに加え、素晴らしい快適性と断熱性を実現した、高次元でバランスのとれた完成度の高い1枚です。横型にも縦型にも見えるバッフルデザインは、どちらの欠点も補い合う素晴らしい寝心地の良さを提供してくれます。最新モデルではR値も大幅に向上し、穏やかな冬山にも持っていくことができる十分な暖かさも備えています。唯一の不安点は20Dという薄い生地。
- R値:4.2
- 重量(レギュラー):410g
- 厚さ:8cm
- サイズ:51×183
- 収納サイズ:20×Φ7.5cm
- ポンプサック:付属
4シーズン向けベスト:Therm-a-Rest ネオエアーXサーモ
そのトップクラスの断熱性の高さ(R値6.9)は他のパッドと比較して明らかに違いが分かるほど。一言でいうと、他のパッドが温度を「逃がさない」のに対し、このパッドは「発熱している」感覚。その上軽量・コンパクト、さらに新しいバルブによって空気の出し入れもめちゃくちゃ便利に。強いて言えば、ややバリバリとした音が気になるといえば気になります。決して低くはない価格ですが、1年通して使いたい人にとってはそれに見合った価値はあると実感できます。
- R値:6.9
- 重量(レギュラー):430g
- 厚さ:6.4cm
- サイズ:51×183
- 収納サイズ:23×Φ10cm
- ポンプサック:付属
サマーシーズン向けベスト:Therm-a-Rest ネオエアーウーバーライト
250gという驚異的な軽さに、R値2.3というそこそこ満足できる断熱性を備えたことの価値が分かると、このモデルのスゴさが分かるでしょう。夏限定と考えれば驚きの軽量・コンパクトさと快適さを実現した最軽量クラスのエアーマット。言うまでもなく軽さが正義となるファスト&ライトなハイカーやアルピニストにとって最高の選択肢を提供してくれます。極端に薄手の生地(15D)は破損に要注意ですが、薄いクローズドセルマットと併用して耐久・保温性を補えば、1年通してかなりの季節で活躍できるはず。
- R値:2.3
- 重量(レギュラー):250g
- 厚さ:6.4cm
- サイズ:51×183
- 収納サイズ:15×Φ9cm
- ポンプサック:付属
寝心地(快適性)ベスト:Sea to Summit コンフォートプラスS.I.マット
経験上、寝心地の良さという1点だけを考えれば、セルフインフレータブル型に勝るマットレスは無いと思っています。その中でもこのモデルは、ぎりぎり持ち運びの考えられる重量で最も快適な睡眠を約束してくれる1枚です。エアマット並の厚さ(8cm)に、フラットでコシのあるベッドに近い低反発の自然な寝心地を実現。秋冬のトレッキングにも対応する十分な暖かさを備えています。ただ、重さと収納サイズに関しては登山用としてはある意味一線を超えていますので、キャンプや贅沢なベースキャンプ向きのマットとして考えてください。
- R値:4.1
- 重量(レギュラー):970g
- 厚さ:8.0cm
- サイズ:51×183
- 収納サイズ:26×Φ19.1cm
暖かさ(断熱性)ベスト:EXPED ULTRA 7R MUMMY
厳冬期登山でぜひ持っていきたい、最強の断熱性を備えたスリーピングパッドがこのEXPED ULTRA 7R MUMMYです。ブランドとしてラインナップ全体を整理し見直した今シーズン、超軽量かつ高保温レベルのハイエンドモデル「7Rシリーズ」は、内部に700 Fill Powerのダウンを封入することでけた外れの断熱性を実現しています。縦方向のバッフルは両脇が微妙に高くなって横にずり落ちにくく、十分な厚みとともに身体をしっかりと支えてくれます。寒がりの人の冬キャンプ・ハイキングにもピッタリです。
- R値:7.1
- 重量(レギュラー):480g
- 厚さ:9cm
- サイズ:52×183
- 収納サイズ:27×Φ12cm
- ポンプサック:付属
ベストコストパフォーマンス:Big Agnes インシュレーテッドエアコアウルトラ レギュラー
何をもってコストパフォーマンスの高低を考えるのかという点に関してはいろいろな意見があると思いますが、今回考えたのは限られた予算でどれだけ高いR値を確保できるか、つまり「R値あたりの単価」です。その点、この1枚は(担当者がバグったのかと思うくらいに)高コスパ。4.5といえば、登山でもほぼほぼ1年中使えるレベルの断熱性を備えています。にもかかわらず価格は競合製品と比べても万単位でお安い。欲を言えば、マミー型であればもっと重量も削減できたのにという惜しい気持ちもありますが、その分寝心地がよいわけなので、これはこれで納得できるのではないでしょうか。
- R値:4.5
- 重量(レギュラー):624g
- 厚さ:8~9cm
- サイズ:51×183
- 収納サイズ:20×Φ10cm
- ポンプサック:付属
個人的お気に入りエアーパッド型マットレス:Sea to Summit ウルトラライト インサレーティッドマット
ここでは総合部門とは別に、各タイプで個人的にお気に入りのマットレスを紹介します。Sea to Summit ウルトラライト インサレーティッドマットは軽さと暖かさ・使いやすさの全体的なバランスが絶妙なことに加え、エアーパッド型の中でも最高だと思っている寝心地の良さが個人的にお気に入りです。独自の「エアスプラングセル」技術によって、一カ所を体重で凹ませても周りが盛り上がることなく、エアーマットにもかかわらずまるでポケットスプリングマットレスのように安定した寝心地を提供してくれます。このえも言われぬ心地よさはまだ他のどのエアーマットにも塗り替えられていません。
- R値:3.1
- 重量(レギュラー):480g
- 厚さ:5cm
- サイズ:55×183
- 収納サイズ:23×Φ10cm
- ポンプサック:付属
個人的お気に入りセルフインフレータブル型マットレス:Therm-a-Rest プロライトプラス
このマットレス(とその派生モデル)にはもうかれこれ何十年もお世話になってきましたが、相変わらずバランスの良さ、完成度の高さは未だに健在です。確かに軽さ・コンパクトさこそエアーパッド型に劣るとはいえ、暖かさと快適性(クセのなさ)、耐久性、そして価格のバランスがとれていて、はじめての人にもおすすめしやすいのがこのパッドの魅力。新しいバルブになってこちらも益々使い勝手よくなり、春・夏・秋のほとんどの山旅で快適な夜を提供してくれます。
- R値:3.2
- 重量(レギュラー):650g
- 厚さ:3.8cm
- サイズ:51×183
- 収納サイズ: 28×12Φcm
個人的お気に入りクローズドセル型マットレス:NEMO スイッチバック レギュラー
軽い、壊れにくい、設置も収納も簡単、そして価格の割にそこそこ温かいと、ビギナーでも安心して使える信頼性の高い1枚。エアーマットに比べれば薄くて硬いことや、かさばる収納サイズは確かに難点ですが、自分の身長や好みに合わせてカットして無駄を省けるなどのDIY性もあって、軽量化にこだわるスルーハイカーにはもってこいです。冬山の下敷きにも重宝。
- R値:2.0
- 重量(レギュラー):415g
- 厚さ:2.3cm
- サイズ:51×183
- 収納サイズ: 13×14×51cm
選び方:最適なスリーピングパッドを賢く選ぶためにチェックしたい5つのポイント
はじめに:スリーピングパッドの2つの大きな役割
快適な寝床にとってスリーピングパッドがなぜ大切なのか。それはこの道具が山で寝るときに以下の2つの重要な役割を担っているからです。
1:凸凹で硬い地面をフラットで柔らかくする
テントを張る場所は往々にしてどんなに整地されていたとしても多少の小石や凸凹は免れません。それはテントのグランドシート程度では改善できず、素の地面に寝ることは決して気持ちの良いものではありません。
そんなときスリーピングパッドに注入された空気の層やスポンジなどのクッション素材は、寝心地の悪さを忘れさせてくれます。日々寝ているベッドと同じで、程よい体圧分散性やちょうどよい硬さで理想的な寝姿勢を維持してくれるマットは質の良い睡眠につながり、疲労の軽減に大きく役立ちます。
何が一番快適かという問題は、その人の好みや体質によって違ってくる可能性もあって判断が難しい面もありますが、いずれにせよ最適なマットレスにとってこのフラットで適度な柔らかさの面を提供するという機能は無くてはならない要素といえます。
2:冷たい大地に体温を奪われないように熱を遮断する
夏のうちはあまり大きな問題にはならないのですが、スリーピングパッドのもうひとつの重要な役割は、冷えた地面と身体との間に断熱層をつくり、就寝時に体温を奪われないようにすることです。
人が寝ている際に接している面では常に熱が(温度の高い方から低い方へと)逃げていきます。このとき、接している面が地面であるのと、デッドエア(動かないように閉じ込められた空気)である場合とでは、その熱伝導率は約20倍以上もの差があります。つまり性能によっても若干差は出ますが、何も敷かずに地面の上で寝ると、スリーピングパッドを敷いて寝るよりも20倍もの熱を失ってしまうのです。
ちなみにシュラフ(寝袋)は体重で押しつぶされてしまうため、底面に関していえば、パッドがなければ地面の上に寝ているのと大して違いはありません。だからこそスリーピングパッドによる「断熱機能」は、低温下であればあるほど、睡眠時に無くてはならない要素なのです。
ポイント1:スリーピングパッドの種類を選ぶ
スリーピングパッドの役割と重要性が分かったところで、早速選び方のポイントをみていきましょう。まず最も基本的なことですが、登山・キャンプ用のマットレスにはその構造的な違いによって3つのタイプに分けられます。
これらのタイプはそれぞれにメリット・デメリットがあり、スリーピングパッド選びはまずこの3つのタイプの特性を理解し、どれが自分にとって必要なのかを選ぶところからはじまります。
1)クローズドセル(独立気泡)パッド
断熱材などに使用される、主に耐久性・断熱性に優れたポリエチレンフォーム(ポリエチレンをスポンジ状に発泡させた素材)を使用した、独立気泡(クローズドセル)構造のマットレス。安価で破損しにくく設置・片付けも簡単と、初めてでも使いやすい山マットの定番タイプです。
2)エアー(空気注入式)パッド
マットに空気を注入して膨らませることで、断熱層とクッションを形成するタイプ。最も断熱性を高く、厚みを持たせて快適性を提供することができるのが一番の長所。雪山用にはより保温性を高めるため内部に熱反射板やダウンなどの中綿を封入するモデルもあります。一方で穴が開いてパンクしてしまったら使い物にならないというリスクもあり、正しい使いどころと使い方が重要です。
3)セルフインフレータブル(半自動膨張)パッド
空気を注入して断熱・クッション性を確保できるのに加えて、中身に肉抜きしたウレタンフォームなどのスポンジが入っているため空気を注入しなくてもある程度自動で膨らんでクッションになるタイプ。自動膨張と寝心地という、クローズドセルとエアーパッドの両方のいいところ取りしている部分が魅力(個人的には最も寝心地がいい気がしています)ですが、意外に重くてかさばり、ともするとどっちつかずになる可能性も。ともあれ現在ではサーマレスト社の特許が消滅して多くのメーカーが工夫を凝らしたモデルをリリースしています。
これらの説明をまとめたのが下の表になります。
ポイント2:利用シーンに適した保温性を選ぶ
カタログに書いてある”R値”をチェックしよう
冬のテント泊に寒さで眠れない夜を経験したことがある人ならば、マットの保温性の大切さは誰よりも身に染みて分かるはずです。自分がいったいどのくらいの温かさのマットを選べば十分なのかについて判断するための目安がR値(R-VALUE)と呼ばれる指標です。
R値とは端的にいうと、マットの”断熱性(熱の伝わりにくさ)”を数値化したもの。この値が高いパッドほど熱が伝わりにくい=断熱性が高い=温かいというわけです。例えば真夏の低山ハイキングならばR値の低いマットを選ぶ、厳冬期登山ではR値の高いマットを選ぶといった具合で目的に適した保温性のマットレスが選べるようになります。
実はかつてこの数値は各社独自の方式によって算出されており、基準としてやや信頼性に欠けるものだったのですが、2020年以降はASTMという国際規格(ATSMF3340-18)を採用することとなり、少なくともアメリカで商品を販売するメーカーはこのASTMに則ったR値を表記するようになりました。これでメーカー同士でも直接暖かさの比較ができるようになります。
※ただ現在の日本では、ASTM規格のR値を表記する義務はありませんので、今後R値を比較するときには「ASTM規格」での計測値かどうかは注意しておくようにしましょう。
では実際にどのくらいのR値でどの程度まで対応できるのか。メーカーによってはR値と利用シーズンの便利な対応表を作ってくれているところもあります。例えば下の図はSea to Summitのウェブサイトに掲載されているR値ガイド(2022年4月26日現在)です。
個人的な経験では、マットレスのR値(暖かさ)は大きく夏・春~秋・冬・厳冬期の4つくらいのカテゴリに分類して考えています。それをまとめたのが以下の表です。
自分は人より飛び抜けて暑がりでも寒がりでも無いつもりですが、暑さ寒さの感じ方は人それぞれですし、地面の状態やテントの通気性やシュラフの性能によっても大きく違ってきますので、下の表が一概にいつでも誰にでも当てはまるわけではありません。R値と気温の対応関係も絶対的なものではなく、あくまでもその人それぞれの感覚的なもの、相対的なパフォーマンスの違いであると知っておく必要があります。
R値 | 夜間気温の目安 | 適した季節・用途 |
---|---|---|
~2.0 | 約5℃以上 | 夏・ウルトラライト |
2.0~4.0 | 約5~-5℃ | 春~秋・トレッキング |
4.0~5.0 | 約-5~-10℃ | 秋~冬・トレッキング |
5.0~ | 約-10℃以下 | 厳冬期・冬山登山 |
R値は重ねて敷けば加算できる
厚みがない、または断熱素材が入っていないマットレスしか持っていなくても、複数枚持っていれば、上の写真のように2つ以上のパッドを重ねて使用することで、それぞれのR値は合算されるので、結果として断熱性を高めることができます。このため何もR値の高いマットを新たに購入しなくとも、R値の低いアイテム同士を重ねれば気温が低い季節でも十分対応可能であるということは覚えておくとよいでしょう。
ポイント3:快適性(長さ・幅・形・厚さ・表面)
長さ:一番快適なのは自分の身長以上。軽量化を狙ってあえてショートサイズも
快適なマットで寝たいと思えば、基本はまず頭から足までをしっかりカバーする、自分の身長以上のサイズを選びましょう。
ただ、ある程度山で寝ることに慣れてきた人が、(パッドの必要性が相対的に低い)暖かい季節のハイキングに持っていく等の場合であれば、思い切って自分の身長よりも短い”スモールサイズ”を選ぶことも十分アリです。この場合、パッドがカバーする範囲は腰くらいまでで(120cm前後)、下半身は中身を空にしたバックパックを敷いてマットレス代わりにすれば、荷物を切り詰めることができます。
そうすることで重量と容量は大幅に削減でき、荷物の軽量化に繋がりますので、軽量化に興味のある人は十分検討の価値がある選択です。快眠することも大切ですが、より軽い荷物で負担なく歩くことも同じくらい重要。寒い季節にはなかなか勇気がいるチャレンジだと思いますので、寒さの心配が少ない季節から少しずつはじめることをおすすめします。
幅・形:寝心地重視の幅広&長方形か、軽さ重視の幅狭&マミー型か
最低限の領域をカバーするという意味では、マットレスの横幅は最低限自分の肩幅分の50センチちょっとあれば十分といえます。さらに下半身も足が乗っていれば十分、というコンセプトで最も無駄を省いたスリーピングパッドのシェイプは下の写真のような「マミー型」です。
あるいは極端な例では、加重がかかるポイント以外の部分をくり抜いたチューブ型というモデルもあります。ただこの場合、余分な部分を極力そぎ落としたことによって軽さは確かに図抜けていますが、一方で快適さに関しては文句を言わないという覚悟も必要です。
当然このサイズの欠点は、寝返りが打ちづらかったり、少しでもズレたら身体がマットから落ちてしまうという余裕の無さにあります。たった10数センチでも幅広サイズであればこれらの窮屈感は劇的に改善され、より快適な寝心地を提供してくれることは確かで、そちらの方の寝心地の良さがどうしても忘れられず、常に幅広サイズを選ぶという人もいるくらいです。
形もマミー型より広くて癖のない長方形であれば、ベッドと同じ感覚の寝心地でより安心でしょう。ここでも快適性をとるか、軽量・コンパクト性をとるかというトレードオフの選択が必要です。
厚さ・表面:快適なマットは厚いだけではダメ
マットレスはより厚い方がクッション性も高いので寝心地はいいはず。確かに薄いよりは厚い方がいい、その意味では間違っていません。ただ、厚ければ厚いほど快適なのかというと一概に言えないのがパッド選びの難しいところでもあります。ベッドでもスプリングのような高反発が好きな人がいれば、体にフィットするような低反発が好きな人もいるのと同様、スリーピングパッドは最低限の厚さは必要ですが、それとともに「表面のフィット感(凸凹感・感触)」が重要です。
例えばエアーパッドの場合、表面は空気の仕切りであるバッフルの形状に影響し、ボーダー状、ストライプ状、ドット状、それらのハイブリッドなど様々な形状があり、フィット感、滑りやすさなどがそれぞれに特徴があります。ちなみに自分のお気に入りはドット状のエアーパッドの表面でしたが、正直こればかりは好みが分かれても仕方がない部分でしょう。
またセルフインフレータブルパッドの場合は基本的にフラットな表面と低反発マットのようなしっくりフィット感によって、最も癖のない快適な寝心地を提供してくれます。このタイプで厚みも十分なモデルは、べらぼうに重いですが寝心地は最高。主にオートキャンピング用の贅沢なマットレスに多くラインナップされていたりします。
ポイント4:重量・収納サイズ
スリーピングパッドの重量は軽くてコンパクトであるのに越したことはありませんが、その代わりに何かを妥協する必要があるかもしれないことを知っておき、選ぶ際には自分が優先したいことを基準に「何ならば妥協できるか」を考えます。
一般的にエアーパッドタイプはどんなタイプよりも軽くてコンパクトな代わりに、「快適性」「価格」に関してセルフインフレータブルタイプに劣り、「耐久性」「価格」に関してクローズドセルタイプに劣りがちです。また同じタイプ内で比較しても、R値が同じならばより軽くてコンパクトなほど生地が薄くて弱くなりがちです。
ポイント5:空気の入れやすさ・抜きやすさ
クローズド・セル以外のタイプでは、パッドに空気を注入しなければ十分な断熱力を得ることはできません。この空気の注入作業は地味に面倒で、この作業をなるべく軽減できるようなモデルを探すことが幸せに繋がります。
例えばセルフインフレータブルタイプは、バルブを開けることである程度は自動的に空気が注入されますが、実際には結局大部分の空気を吹き込まなければならず、その意味で、手間のかかり具合はエアーパッドタイプとそこまで大きく変わらないのが実際であったりします。
それよりも最近では、「空気孔が大きめだったり、より空気が入れやすい・抜きやすい構造になっているかどうか」「エア注入用のポンプサックが付いているかどうか(あるいはオプションで販売されているかどうか)」の2点をチェックすることの方が重要です。これによって注入スピードは倍以上、呼気による余計な湿気なども入ることなく、空気の注入は格段に楽になります。
まとめ
スリーピングパッドは用途や目的によって形も特徴も価格もさまざま。今回はよりラグジュアリーさを考慮したキャンプ用モデルについては触れていませんでしたが、それらを含めるとさらに幅広い選択肢があります。
繰り返しになりますが、お金さえ出せば完璧なスリーピングパッドが買える、ということはなく、使用環境や目的に合わせて適材適所で自分に合った1枚を選ぶことがベストです。つまり年間通して最適なパッド選びをするには、最終的には何枚かのマットを複数枚持って、山行に合わせてチョイスしたり、組み合わせたりするのが賢明です。面倒かもしれませんが、それも山登りの醍醐味のひとつというわけで。
スリーピングパッド迷子のみなさんの幸運を祈ります。