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やっぱりまだまだ、山で一番使いやすい防寒着はこの子。一年中使えるフリースジャケットの賢い選び方

ジャケットから、プルオーバー、パンツ、手袋、ビーニー、ブランケット、そしてペット用ウェアまで。フリースは数多あるアウトドア由来製品のなかでも、おそらく最も多くの人々に知られ、親しまれている衣服(素材)のひとつではないでしょうか。

誕生から今に至るまで登山家たちに愛され続けてきた万能防寒着であるフリースは、さまざまな競合の防寒素材が生まれている現在では、確かに以前のように常にベストな選択肢ではなくなっているかもしれません。軽さと暖かさで優るダウンジャケットや、飛び抜けた通気速乾性を誇るアクティブインサレーション等、現在ある面で比較するとどうしても新しい素材にはかなわないことが無いわけではないのが現実です。

ただ、だからといって「フリースはオワコン」といって片付けてしまうのは早計だと、自分は今、あらためて声を大にして言いたいのです。

フリースのもつアウトドア・アクティビティ向け防寒着としての総合的なバランスの良さはまだまだ健在であり、捨てたものではありません。さらにフリース自体、半世紀にわたる技術革新によって機能・デザイン面はもちろん、多くの面で強化・改善・多様化が進められてきたこともまた事実。今や専門アウトドアブランドで作られているフリースと、◯ニクロで売っているフリースでは、求められている要件がまったく異なり、それによって生まれた製品は別ものだと考えてもいいくらいです。

つまり一言で「フリース」といっても、そこには想像以上に奥行きのある世界が広がっており、それが現在のフリースをめぐる状況をややこしくも、面白くもしているわけです。ぼくだけかもしれませんが、個人的にはそのことについてずっとモヤモヤとし続けていました。

てなわけで、ぶっちゃけ今のアウトドアで本当に使いやすいフリースってのはどんなものなのか、今一度あらためて整理してみたいと思います。

今回はあらためてフリースの特徴を振り返りつつ、最新素材・技術を押さえながら、今、登山で、スキーで、クライミングで、サイクリングで着るべきフリースって何なのかを探っていきます(大げさ)。途中には個人的にこれまで使ってきておすすめのフリースアイテムのリンクを置いておきます。クリックして購入してもらえるとこちらも助かりますので、気になる方はのぞいてみてください。

これからアウトドア用の防寒着を揃えようと思っていた人、フリースっぽいものがいろいろあり過ぎて、結局何を買うのが正解なのか訳分らんぞという人、そんな人にとって役に立ってもらえれば幸いです。

はじめに:フリースとはどんなもので、いつどこでどうやって着るものか?

フリースの誕生

70年代まで山の防寒着の主役はウールのセーターでした。ただご存じの通り、ウールは十分な保温性がある一方で濡れると重くなるし乾きにくい、チクチクする、手入れも大変、また原料は動物から調達する必要があるといった問題があり、決してこれで満足と言える状態ではありませんでした。

この問題を解決するべく、レジェンドクライマーでありパタゴニアのファウンダーでもある、かのイヴォン・シュイナードは、ウールに取って代わる新素材を探し求め、ついに化学繊維(ポリエステル)のパイルセーターにたどり着きます。その後モルデン・ミルズ(現在のPolartec社)社との協業によっていくつかの進化を経てリリースされたのが、現在でもほぼ同じデザインでラインナップされている伝説的フリース「シンチラ・スナップT」です。

※この辺の有名な誕生話については、Patagoniaが発信しているコラムで詳しく書かれています。興味のある方はこちらも参照ください

フリースの特徴(長所と弱点)

フリースとは、一般的にはポリエステル(化学繊維)の織物にロフト(かさ高)を確保するための起毛処理を施した生地のことですが、これらは綿やウールと比べて格段に軽いにもかかわらずウールと同等レベルの暖かさを備え、通気性が高く湿気を通し、濡れても保温性を失わず、繊維自体が水を含まないため速乾性があり、丈夫で洗濯機で洗濯できるイージーケアと、当時にして理想のアウトドア向け断熱素材でした。また、フリースはかゆくなりにくく心地よい肌触りで、想像できる限りの色や柄を作ることができるという点は日常着としても優れており、フィールドにあってもまるでソファでくつろいでいるかのように快適に過ごすことができます。

一方でそんなフリースにも弱点はあります。例えば依然として同じ保温力で比べるとダウンに比べ重くかさ張るという点。その他、基本的に防風性を備えていないという点など。また通気性が高いとはいえ、厚手の生地の場合は運動時に蒸れやすいといえます。また洗濯をすると毛玉ができやすく、皮脂汚れによる臭いがつきやすいのも玉に瑕。静電気も発生しやすく、糸くずやペットの毛、ホコリなどを吸い寄せます火に弱く焚き火のそばで着用していると燃えやすいという点も見逃せません。

昔ほどではないが、洗濯を繰り返していくと毛玉ができやすく、毛先に纏わりついた糸くずや埃がなかなか取れないことも。

参考までに、他の素材を使った防寒着との比較を特徴別にまとめてみます。もちろん個々の製品の個性や生地の厚み、中綿の質・量によって性能は大きく上下するので、あくまでも目安として考えてください。

種類ウールのセーターフリースウェアダウンインサレーション化繊インサレーション(保温重視)アクティブインサレーション(行動着向け化繊インサレーション)
重量当たりの断熱性
コンパクトさ×
通気性・速乾性×
濡れに対する強さ×
着心地の良さ
動きやすさ
防風性
手入れの簡単さ

結局フリースは何を、どうやって着るのが賢い?

ここまでで、一般的にフリースは暖かくて着心地が良くて、動きやすくて濡れにも強くて、極めつけに手入れも簡単という万能選手でありながら、どうしても保温力を上げれば上げるほどかさ張りがちで、また風に弱いという弱点があることが分かりました。ただ逆に言えば、そこをクリアすれば依然としてバランスのとれた快適防寒着であることに変わりはありません。つまりフリースを着るならば、

「かさ張る・風に弱い」といった弱点を無視できるような使い方・着方

ができれば、フリースの弱点なんて気にせず、最強・最快防寒着が着れるというわけです。というわけで、だんだん登山愛好家にとって最適なフリースというものの輪郭が見えてきたところでいよいよ次からは、このサイトでおすすめする賢いフリースの選び方をまとめていきます。

選び方:最適なフリースを選ぶためにチェックしたい5つのポイント

ポイント1:保温性(フリース生地の厚さ)

フリースは防寒着である以上、最も大切なことはまず目的に適した保温性能を選ぶことです。

おそらく最も多くの人が着ているであろうPolartec社のアウトドア向けフリース製品を例にとると、フリースの厚さ(ウェイト)は単位当たりの重量によって基本的に3ないし4つの段階に分かれています。まずはこの4段階のウェイトの違い「マイクロ(または)ライトウェイト、ミッドウェイト、ヘビーウェイト」を意識することから製品選びがはじまります。

1. マイクロ(または)ライトウェイト(200 g/m2以下)

画像:polartec.com

結論から言ってしまうと、現状山で使うフリースとしては最も使い勝手のよいボリューム。山で使うフリースを考えている人はまずこの辺りの厚さを検討してみるべし。

ライトウェイトとはその名の通り薄手のフリースのこと。もちろん薄いがゆえに軽いため、登山での使い勝手の良さは間違いなし。また通気性にも優れ、身体を暖め過ぎず、動きも妨げにくい。ただ当然保温性はそこまで高くない。

ライトウェイトの中でも「マイクロフリース」と呼ばれる種類は特に細くて柔らかい糸を使用した高品質モデルであることが多い。軽量でありながらも高い断熱性を実現し、しかも動きやすく、滑らかな表面の手触りが病みつきになります。

ライトウェイトなフリースは、動いたり止まったりの繰り返しであるアウトドア・アクティビティで、過度に暖めすぎることもなく冷やし過ぎることもなく、運動中の肌面を一定の状態に保ちやすくしてくれる「ちょうどよさ」を備えています。この辺のラインナップを「レギュレーター(整える、調節する、調整する、加減する)フリース」なんて呼ぶメーカーもあります。基本的なバランスの良さも相まって、年間通して非常に使いやすいモデルが多いと思っています。

着方としては、レインジャケットやアウターの下の中間着として着用するのが基本です。春先から初冬までの肌寒い天候で、ハイキングやファストパッキング、ランニング、サイクリングなど幅広いアクティビティで活躍してくれます。

2. ミッドウェイト(200〜300 g/m2)

画像:polartec.com

こちらもその名の通り、中厚程度のフリース。ライトウェイトに比べて保温性が高いので、中間着としてだけでなく、アウターとしても着られることから、ある意味汎用性の高い部類に入るといえます。

ただ自分の経験上「中厚手」のフリースは、行動中の防寒着としても、またテントサイトでの防寒着としても物足りないというケースがあり得るため、注意が必要です。ボリュームがあり過ぎれば行動時に暑すぎると感じるし、ボリュームが足りなければ寒い夜になるという怖さがあります。

この難しさから、個人的にはよほどこだわりと自信がない限り、このボリュームのフリースジャケットをチョイスすることは少ないです。特に寒い季節に中間着として着るか、春先や秋冬の穏やかなハイキングで防寒着として携行するか、街中で着るのがちょうどよいといえます。

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3. ヘビーウェイト(300 g/m2以上)

画像:polartec.com

最も厚みがあり、かさ高でボリューミィなフリースがヘビーウェイト。当然保温性は最強、さらにモコモコした着心地が気持ちよく、防風性もそこそこある。逆に衣服内の湿気は逃げにくくなりますが、こうなると中間着としては考えにくく、基本的にはアウターとして着ることが想定されてきます。もちろん重量・携帯性も最悪です。

そんなヘビーウェイトは、冬の山小屋やベースキャンプで一日中くつろぐ人、街で心地よく着られるアウターを探している人にとっては最適ですが、動きがあり、携帯性が重要なハイキング等で使うのであれば、はっきり言っていらない子と割り切っていいと思います。

ポイント2:付加機能(長所を伸ばしたり、弱点をカバーしているか)

今やフリースはさまざまなバリエーションがあり、その生地で何をつくるのか、アクティビティの種類など、目的に合わせた加工がなされていることがほとんど。

フリースを開発したモルデン・ミルズは、当時このフリース生地の特許を取らないという英断によって、フリースは瞬く間に普及し、さらに現在に至るまでフリースは常に進化と多様化の道を歩み続けました。

例えばもっと快適に、もっと暖かくといった長所を伸ばす方向へ。あるいはもっと完璧な使い勝手の防寒着を目指して弱点を補うような方向へといった進化です。その意味ではこれまでフリースの基本的な長所やら短所やら述べてきましたが、実際にはこの50年あまりの間で、初期のフリースが抱えていた多くの問題点を克服するモデルが数多く登場しています。

つまり、今ぼくたちにとっての最適なフリース選びで重要なのは、基本的なフリースの特徴を踏まえたうえで、どれだけ自分の目的に合った、最先端の機能を取り入れたモデルを選択するかということであるといえます。そこでここからは、アウトドア向けフリースでここ最近までに登場した、重要な付加機能について押さえておきます。

1. より通気性の高いフリース

トレイルランニングやファストパッキングなど、短時間・高負荷のアウトドア・アクティビティが盛んな昨今では、どんなウェアであっても「より高い通気性(速乾性)」が求められています。汗を大量にかきながらもいかにドライに過ごせるかが直近の最先端フリースのトレンドでもあります。

画像:polartec.com

こうした優れた通気性を実現するための代表例がグリッドフリースで、保温性はそこそこですが、軽量でコンパクト、裏地に張り巡らされた細かい格子状(あるいはボーダー)の溝が空気の通り道を作り、薄さ軽さと通気性を両立したフリース素材です。

あるいは独自の中空糸と波状の凸凹構造によって、保温性を損なうことなく軽さ・通気性・速乾性を向上させたパタゴニア R1エアなど。

2. より軽くて暖かいフリース

フリースが防寒着である以上、保温性の追求は至上命題です。より暖かいフリースジャケットには、厚手の生地であったり、ボアフリース(シアーリングフリース、シェルパフリース)と呼ばれる刈り取った羊毛のようにモコモコとした生地が採用されていることが一般的ですが、この場合それなりの重量とボリュームを覚悟しなければならないため、どちらかというと日常使いのアウターであることがほとんど。残念ながらアウトドア・アクティビティ用のフリース選びという視点ではストライクゾーンには入りにくいのが実情です。

一方、流石に長年の研究開発を重ねてきた素材だけあって、話はそこで終わりません。保温性を高めるだけでなく、強みである軽さも損なわない最先端のフリース生地がしっかりと存在しています。その代表的な技術の1つは「ハイロフトフリース」と呼ばれる、フカフカの毛皮のような手触りのフリースです。

フリースの保温(断熱)効果は、生地の中に作られる小さな空気のポケット(ロフト)が体温を閉じ込めることで発揮されますが、ハイロフトフリースは長い毛足の起毛処理によってこのロフトを(重量を抑えつつ)極限まで大きくし、空気のポケット(=保温効果)を最大化します。また着てみると分かるんですが、ハイロフトフリースは暖かいだけでなく、生地のフワフワ・滑らかな毛並が心地よいのなんの。まさに病みつき級の気持ちよさ。

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もう1つは注意しないと見逃してしまうような細かい技術ですが、そのフリース生地が「中空糸」を使用しているとしたら要注目です。中空糸とは、その名の通り糸の中が空洞になっている加工糸のことで、繊維の空洞部分に空気をため込むことができるだけでなく、内部が空洞になっている分だけ軽くなります。

過去に何着か実際に試していますが、普通のフリースと比べて確かに同程度の外観なのに、明らかに軽く、そして暖かい。ここ数年で中空糸の技術を使った素材・生地は続々登場していますが、これからも見逃せない技術のひとつです。

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3. より丈夫なフリース

フリースは、その汗抜けの良さを利用して、積極的にアウターとして使っていくという判断も悪くはないでしょう。ただそんなとき、一般的なフリースではどうしても生地自体の弱さが気になります。枝などに引っ掛ければすぐ破れますし、ベルトに当たる部分や洗濯などですぐ摩耗してきてしまいます。そこで考えられたのが、フリースの表地により摩耗やピリングに対する耐性を備え、さらに多少の悪天にも強いDWR(耐久撥水)加工が施されているフリースです。タフな登山でも心配なくガシガシ使いたいという人にはピッタリです。ただその分、やや重量的にハンデが出てくることは留意しましょう。

4. より動きやすいフリース

基本的にフリースは伸縮する生地ではないため、はじめは静かな時に着る防寒着としてゆったりとしたシルエットが多く、激しい運動の最中に着るということは想定されていませんでした。

やがて運動時にもフリースを着たいという声の高まりを受け、タイトなシルエットでも優れたフィット感と着心地、そして動きやすさを実現するようなフリースとして生まれたのがPolartec POWERSTRETCH®PRO ™などのストレッチ性に優れたフリースです。

ポリウレタンなどの伸縮性のある糸との混紡生地を使用し、これまでの保温性と通気速乾性、そして耐摩耗性を保ちながら心地よい肌触りと4方向ストレッチを実現。激しいアクティビティにおいても常に自然な着心地を提供してくれます。その絶妙なフィット感は、個人的に激しい運動でなくても1日中着ていたくなる代物です。

5. より快適なフリース

フリースは本来ウールの防寒着の代替として生まれたのですが、ここへきて最近、フリースの弱点を補完する目的で再びウールなどの天然繊維と融合した素材を採用した興味深いモデルが登場してきています。

ウールをはじめとした天然素材の良いところは、何かの飛び抜けた機能性を発揮していることではなく、端的に言えば我々動物が快適さを維持するために必要なさまざまな機能をバランスよく備えていることです。

特に運動時、身体が暑くなり過ぎて発汗が起こった時、従来のポリエステル100%では急激に肌面が冷やされるため寒さを感じやすいのに対し、ウールが混紡されていると、天然の吸放湿機能によって肌面の温度変化をやわらげてくれるため、体温の急激な低下や運動後の身体の冷えを緩和してくれるといいます。ポリエステルは「0か1」かのデジタル的な働きであるのに対し、ウールはアナログ的な働きをしてくれます。どちらかが正しいということではなく、この違いを用途・目的・季節によって上手く使い分け、利用することが重要です。

それ以外にも、ウールによって天然の抗菌防臭機能やナチュラルな着心地の良さなど、化繊にはなかった快適さが上手く加わってくれれば、フリースはこれまで以上にスキのない防寒着になってくれそうです。

NORRONA(ノローナ)falketind warmwool2 stretch Zip Hood(フォルケティン ウォームウール2 ストレッチ ジップ フード )

6. 風を防ぐフリース

フリースの快適さと、アウターでも使える利便性を求めると、必然的に風を防いでくれるフリースジャケットが欲しくなるもの。当然この機能を備えた製品もこれまでに作り出されてきました。防風の仕組みは大きくフリース生地の間に防風メンブレンをラミネートする方法の他、風を通さないくらいタイトなニット構造にする方法などがあります。

ただこうした技術は確かにあるものの、実際のところ優れたミドルレイヤーとシェルレイヤーの選択肢がたくさん存在している現在において、アウターとしてフリースジャケットを使用するという方法は、正直なところどうしてもという事情がない限りあまりおすすめはできません。実際この手の防風フリース製品もアウトドアブランドからは最近あまりリリースされなくなってきているのが実情です。

7. 必要な機能をバランスよく備えたフリース(ハイブリッド)

これまで話してきたさまざまな付加機能・特徴は、何も1アイテム1つしか搭載されないわけではもちろんありません。最後にチェックするのは、それらの機能が用途・目的に合わせて巧みに組み合わされたハイブリッド製品の存在です。

例えば代表的な例でいうとパタゴニアのR2フリースのように、1枚のフリースに複数のウェイトのフリースを組み合わせることで、重量を最小限に抑えつつ効果を最大限に発揮することができます。

あるいはNORRONA lyngen hiloflex100 Jacketのように、風を受ける部分に防風性・撥水性を備えたソフトシェル素材とフリースの表裏構造の生地を使用し、熱を効率よく放出したい背面部分にはグリッドフリースのみの生地を配置するなど、まったく別の素材も組み合わせたハイブリッドモデルもあります(もはやこれはどちらかというとフリースジャケットではなくソフトシェルジャケット?)。

NORRONA(ノローナ)lyngen hiloflex100 Jacket(リンゲン ハイロフレックス100 ジャケット)

こうしたハイブリッドなフリースの使い方をしているモデルは、たいていの場合特定のアクティビティ向けに作られているケースが多いようです。いろいろな用途に使えるオールラウンダーを探しているというよりも、使い道がある程度決まっている人にとっては最適な1着になる可能性が高いといえます。かくいう自分もこの種のフリースが大好きで、これらを複数モデル使い分けると、フリースのポテンシャルと有難みがひしひしと実感できます。

ポイント3:スタイル(デザイン)

ジャケット・プルオーバー・フーディ・ベスト・・・フリースが一般にも広く浸透したおかげで、今やさまざまなスタイル(デザイン)のフリースが珍しくなくなっていますが、その人の好み以外にも、登山やハイキング、ランニング、自転車など、アクティビティや目的ごとに適するタイプは多少異なります。

もちろん答えはひとつではありませんが、どんなシーンにはどんなタイプのフリースが最適なのかについて、ある程度意識しておくと後々後悔をすることが少なくなるはずです。季節や、その人が暑がりか寒がりかにもよりますが、自分の場合を振り返ると、以下のようなことを考えてスタイルを選んでいます。

ベスト(フルジップ)

  • 袖がないので上半身の動きを妨げにくい
  • 保温性はそこまで高くない
  • 防風性は期待できない
  • 通常のハイキングから、冬のファストパッキングやランニングなどの動きが激しいアクティビティなど幅広い分野でベースレイヤーの上に着る。暑ければアウターは着なくていい。
  • 最近では他の中綿素材を使用したベストの使い勝手の良さに押され、アクティブ用途のフリースベストモデルは現実的に選択肢が少ないかも。

プルオーバー(通常1/4ジップ)

  • ジッパーやポケット等がないため、軽い
  • 脱ぎ着がしにくいため、なるべく着っぱなしでいけるように薄手が○
  • 着っぱなしで激しく動いても不快にならないよう、通気性を重視した生地を使っている方が○
  • 秋以降、気温の低い日のハイキング等で、ベースレイヤーの上にさらに暖かさが必要な場合に中間着として着る。基本脱ぎ着はしない想定。

ジャケット(フルジップ)

  • 基本的にはプルオーバーと同じ考え方
  • ポケットやジッパーがついている分若干重くかさばる
  • 脱ぎ着がしやすくアウターとしても使い勝手がよいため、汎用性はこちらの方が高い
  • ベースレイヤーでは暖かさが足りないときの中間着としての他、涼しい季節の激しいアクティビティでの行動中アウターとして、キャンプや旅行などの穏やかなアウトドアで中間着・アウターとしてなどさまざまなシーンに適している

フードの有る無しは?

フードがあることで保温力が高まり、多少の雨風を防ぐことができますが、たくさんあれば良いというものでもありません。フリースジャケットにフードが必要かどうかについては、以前防寒着の選び方でも書きましたが、そのジャケット単体で考えるのではなく、レイヤリング全体で考えることが重要です。

ベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターという3つの層であまり重ならないように意識しながら、アウターのフードで十分とするか、フリースのフードでより防寒力を高めたいか、あるいはビーニー等で頭部をカバーするからフードは不要か、など、季節や全体のコーディネートによって判断します。

ポイント4:ジッパー・ポケット・裾・サムループ

フリースジャケットは主に中間着として内側に着ることが多いとはいえ、アウターとしても使う場面がないとはいえません。そこで、生地素材・デザイン以外の面で、目的によってどのような機能(パーツ)が備わっていたら嬉しいか、個人的にこれまでの経験から選ぶ際に気にしておいた方がいいポイントをまとめてみます。

ジッパー

プルオーバータイプであったとしても、ほとんどのフリースはファスナーが付いています。これは首元を開放することで換気を良くできるからであり、フルジッパーであれば全開放できて換気性も最高なのですが、その分重くかさばることにもなってしまいます。そのバランスが取れているという意味で、中間着としての着用を優先して1/4(あるいは1/2)ジッパーはおすすめです。

ポケット

ポケットがあれば便利なことは確かですが、これも不必要にありすぎると重量増につながってしまいます。またアウター向けのフリースにとってポケットはほぼ必須と言えますが、中間着でしか使わないのであれば、左右のハンドウォーマーポケットは人によっては不要です。個人的には、どんなタイプのフリースであったとしても胸のジッパー付きポケットは譲れません。小ぶりながら、そこにはライターやカード、メガネ拭き、サプリメントなどのちょっとした小物を収納することができます。

袖・裾・首周り

作りのしっかりとしたフリースジャケットには、袖口やフード、裾まわりに伸縮性のある素材が使用されています。またフードとウエストに調節可能なドローコードがついているモデルもあり、フィット感を向上してズレを防いだり、暖かさを閉じ込めたりすることができます。

そしてフリースジャケットの中には袖口にサムループがついているモデルもあります。ロッククライミングやバックカントリーのようなテクニカルなアクティビティを想定したモデルに多く、手袋のように手を温めてくれて、アウターを重ね着するときに袖がずり上がりにくくなる点が好まれていますが、無ければ致命的となることはないので、ここは好みで判断すればよいでしょう。ただ、サムループのあるジャケットはややもすると袖が長めに作られているため、サムループを使いたくない人にとってはサイズが合わない可能性もありますので注意してください。

ポイント5:サステナブル

最初に説明したとおり、初期のフリースは石油由来の化学繊維からなる衣服です。バージン・ポリエステルで作られたフリースは、環境への意識が現在よりも希薄であった誕生当初にはそれほど問題にはなっていなかったものの、持続可能性について正面から向き合う企業としてのパタゴニアにとってそれはやがて避けては通れない問題となりました。すぐさま改善にとりかかり、1993年にはリサイクル・ポリエステル・フリースによる製品をリリースします。

現在ではほとんどのポリエステル素材のフリースはリサイクル素材に置き換えられてきており、またその他メリノウールのような生分解性繊維を使ったフリース製品も登場しています。

さらに最近になると素材そのものの環境負荷だけでなく、フリースから出る「マイクロファイバー(マイクロプラスチック)」による海洋生物等への悪影響が注目されるようになり、こうしたマイクロファイバーを大幅に削減したPolartec® Power Air™のようなフリース製品も開発が進んでいます。

この流れはここ数年で確実に大きくなっており、好むと好まざるとに関わらず、意識が高かろうが低かろうが、今後出会う新製品はますますサステナブルを意識した製品になっていくに違いありません。最先端の技術的トレンドと言う意味でも、個人が参加できる環境への取り組みという意味でも、製品が持続可能性に配慮されているかという点は今後見逃せないポイントになってくるのではないでしょうか。

まとめ

この冬もさまざまなフリースを試しましたが、クオリティの高いモデルを着た時に感じるあの何でもできる感、「薄さ・軽さ・暖かさ・着心地のよさ・ムレにくさ・ケアの容易さ」といった多くの要素をここまでバランスよく備えることができるってやっぱりすごい。何だかんだ言って総合的な使いやすさという意味でやっぱり素晴らしいポテンシャルをもっているとあらためて感じます。

フリースって何となく古臭い感じがする、そう思っているあなたはぜひ一度この記事を参考に、フリースの最先端に触れてみてはいかがでしょうか。