
SALOMON「X ULTRA 5 MID GORE-TEX」&「AEROTREK 30」レビュー:ますます死角がなくなった軽量ハイキングブーツと、ついに登場した本格ハイキング用バックパックが山旅をさらに加速させる
トレイルランニングをはじめとしたアウトドアスポーツ界隈では誰もが知るビッグブランド、そして今やライフスタイル分野でも絶好調のSALOMON(サロモン)ですが、実は登山やハイキング、カヌーやラフティングなど多様なアウトドア分野でも、優れたフットウェアやアパレル製品を作り続けているという事実はまだあまり知られていないかもしれません。
そんなサロモンから、自分を含めた登山愛好家にとっても大きなニュースが飛び込んできました。
ひとつはサロモンが10年以上前から地道に開発を積み重ね、個人的にもサイト開設当初から今でも変わらずお気に入りの軽量快適ハイキングシューズ「X ULTRA」シリーズがついに「5」へとフルリニューアルしたこと。そしてもうひとつは、久々に登場した本格ハイキング向けの中型バックパック「AEROTREK」シリーズの発売です。
X ULTRA シリーズはアップデートの度にこのサイトでもじっくりとレビューしてきた愛着のあるハイキングシューズ。そしてAEROTREKはサロモンにとって久しぶりのオーソドックスな登山向けバックパック。どちらも長年のサロモンウォッチャーとしては見逃せない新作で、もちろん今回もじっくりと山で使わせてもらいました。今回はこの最新ハイキングブーツとバックパックをフィールドでの使い心地について、さっそくレビューしていきたいと思います。
目次
X ULTRA 5 MID GORE-TEX:主な特徴
X ULTRA 5 MID GORE-TEXは、信頼性とパフォーマンスを求めるハイカーのために設計された、疲れにくくケガしにくいミッドカットのハイキングブーツ。シューズの底を支えるAdvanced Chassis™ が足の自然な可動性を維持しながら横方向のブレを抑え、Active Support™による優れたホールド力によって力強いステップから急な下り坂まで安定した着地を可能に。衝撃吸収性に優れたEnergyCell™を内蔵したミッドソールが長時間歩行の疲れを軽減します。快適でフィット感に優れたアッパーには新たに軽量ながら耐摩耗性と通気性に優れた Matryx® 素材を採用し重量を増すことなくこれまで以上に高い堅牢性を実現。泥道、岩だらけの道などの荒れた路面もAll Terrain Contagrip® アウトソールは安定したトラクションとグリップを提供し、タフな路面で思い切ったステップを可能にしてくれます。快適な履き心地と安定感の高いサポート力によって、これまでにないトレイルでの安全性と機敏なフットワークを実現しました。
お気に入りポイント
- 着地時の横ブレを効果的に抑える圧倒的な安定性の高さ
- Matryx® 繊維を採用し、軽量ながら高い通気性とプロテクションを実現
- Active Support™ で靴の中で足がずれたりしにくいホールド感の高さ
- 急傾斜やウェットな地形でも安定して着地・踏み込みが可能なグリップ力
- GORE-TEXによる優れた防水透湿性
気になるポイント
- アッパー生地の伸縮性は少なく履き心地はやや硬め
- 足首付近のシューレースフックがやや飛び出ていて引っかかりやすい
主なスペックと評価
項目 | SALOMON X ULTRA 5 MID GORE-TEX |
---|---|
重量 | 440g |
ドロップ | 11mm(トゥ 22mm / ヒール 33mm) |
アッパー |
|
ミッドソール |
|
アウトソール | All Terrain Contagrip® |
防水透湿 | GORE-TEX |
参考価格 (2025年4月現在) | ¥25,300 (税込) |
Outdoor Gearzine 評価 | |
快適性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★★☆ |
グリップ | ★★★★★ |
クッション性 | ★★★☆☆ |
プロテクション | ★★★★★ |
安定性 | ★★★★★ |
X ULTRA 5 MID GORE-TEX:詳細レビュー
疲れにくく、ケガもしにくい。相変わらず圧倒的な安定感とフィット感の高さ
X ULTRA 5 はいくつかあるシリーズラインナップの中でも、X ULTRA 4 直系の後継にあたるモデルで、そこから基本的な特徴の多くを引き継いでいます。このため「4」の最大の魅力でもあった「Advanced Chassis™」による軽量性と安定性を両立したソール構造は今回のモデルでも健在です。
土踏まずの直下に位置し、靴底から足をがっしりと掴むように成形された剛性の高いプラスチックパーツは、足の自然な可動性を維持しながら横方向のブレを軽減するように足をサポート。これに加えてミッドカットの足首が、ねん挫の危険性を激減させてくれます。
感覚的な印象で表現するならば、普通に歩いているときは違和感なく自然な歩き心地なのに、誤って足首が外側に曲がりそうになると(要はねん挫する瞬間)、Advanced Chassis™が足の外側から壁のようにがっちりとガードし、未然にケガを防いでくれているような感覚です。
特に感心したのは下り坂。どうしても登り疲れて注意が散漫になりがちな下りでは、着地がブレてねん挫をしてしまいがちですが、たとえそんなちょっとした油断でもこのブーツの場合、足首をひねりすぎてしまうという恐怖をまったくと言っていいほど感じませんでした。
またステップのブレにくさという点では、アッパーの「Active Support™」によるフィット感・ホールド感の高さも大きく貢献しています。
靴の外側でミッドソールとシューレースを繋ぐ帯のように配置されたその補強材は、靴底から甲にかけてグイっと引き締めるようにホールドし、着地時に大きな負荷がかかってもブレずに足を正しいポジションに位置づけてくれます。また下りではつま先が靴の先端に押し付けられなくなるので、急な下り坂も躊躇なく力強く駆け下ることができました。
軽量高強度繊維Matryx® を採用して新たに加わった「強さ」という魅力
こうした相変わらずの高い安定性に加えて今作で新たに進化したのは、「Matryx®」素材によってより堅牢性と通気性が向上した、軽量・高耐久・高通気アッパー構造です。
Matryx® は以前このサイトでも「GENESIS」をレビューした際に紹介したことがありますが、個別にコーティングされた高張度ポリアミドとケブラーを混紡した最先端の素材。細い繊維を緊密に織り込むことで軽量でありながら非常に高い剛性と耐摩耗性を備え、岩場やオフロードでの擦れや突き刺しに対しても安心の堅牢性を提供。どれだけ岩面に擦りつけようが、岩角に引っ掛けようがびくともせず、よほどのことがない限りこのアッパーが破れるということはないでしょう。それでいてしなやかでメッシュのように高い通気性を備えています。
他にもつま先からかかとの周りにかけて張り巡らされた補強などは前モデル同様で軽さと堅牢性を兼ね備え、岩や木の根などからの衝撃からしっかりと足を守ってくれます(下写真)。
全地形にバランスよく効く粘度の高いラバーを採用した高いグリップ力
X ULTRA では平坦な不整地からぬかるんだ泥道、ガレ場から岩場まで幅広い地形を想定していることから、あらゆる地形にまんべんなく対応できるグリップ力が求められます。このためアウトソールには、あらゆる地形で確実なグリップ力を確保し、耐久性も高いラバーである All Terrain Contagrip® コンパウンドが採用されています。
ラグパターンは、これまでのくさび型の「シェブロンラグ」形状は基本的に踏襲しつつ、着地から踏み込みへというスムーズな歩行を計算に入れた、左右非対称の変則ラグパターンを採用しています。多方向に対して安定感がありつつ、より前への推進力が増した感覚です。
深く泥ハケもよいラグデザインは、乾いた路面だけでなくガレ場やぬかるみの登り下りでもしっかりとグリップし、安心して歩くことができていました。
まとめ:軽量・快適・安定感に「強さ」が加わり、ますます死角なしの万能ハイキングブーツ
これまでの「軽量・快適・安定感」に加えて「強さ」が追加された X ULTRA 5 MID GORE-TEX は、極端に速さや丈夫さを重視する人を除いて高いパフォーマンスと信頼性をどちらもバランスよく求めたいというハイカーにとって最適な選択肢といえます。
低山のハイキングから始めたい登山ビギナーはもちろん、ねん挫しやすいけどスピーディに移動したいというファストパッキング愛好家にとってもおすすめです。
AEROTREK 30:主な特徴
AEROTREK 30 は、日帰りから小屋泊りのハイキングに最適な、軽快さと安定性が魅力のハイキング バックパック。独自設計の背面システム「Advanced airCHASSIS」は、特許取得済みのランバー サポートによる安定性と、肩、胸骨、ウエスト、ロードリフターによる計算された荷重分散により、重い荷物でも快適な背負い心地をキープし、長時間の行動をサポートします。通気性のあるメッシュで作られた吊り下げ式バックパネルは、背中とバックパックの直接接触を減らすことで空気の流れを高め、例えば炎天下での激しい発汗を伴うハイキングでもより涼しく快適に過ごせます。前面にフラスク用メッシュポケット、背面・サイドなど多種多様な外部ポケットを備えるなど、高い快適性と安定性を提供しながら、数日間の冒険をよりストレスなく過ごすために必要な収納性・実用性も決して犠牲にしません。
お気に入りポイント
- 通気性に優れたテンションメッシュの背面パネルやウエスト・ショルダーストラップ
- 軽量ながら快適なフィット感と十分なクッション性
- 荷重安定性の高い高重心フォルム
- 身体の動きに追従する背面フレームとヒップベルト
- アクセスしやすいフルレングスのメインジッパー
- 収納力の高いフロント・サイド・ショルダーのストレッチメッシュポケット
- 手に入れやすい価格
気になるポイント
- 背面長の調節ができない(背面サイズはS/M・M/Lの2サイズ展開している)
- フロントメッシュポケットの口が小さく、荷物の出し入れがしにくい
- 標準ではレインカバーが無い
主なスペックと評価
アイテム名 | SALOMON AEROTREK 30 |
---|---|
容量 | 30L |
容量バリエーション | 20L / 30L / 40L |
重量 | 992g |
素材 |
|
女性向けモデル | あり |
サイズ(背面長) | S/M(43-49)、M/L(48-54) |
背面パネル |
|
ハイドレーションスリーブ | 〇 |
メインアクセス |
|
レインカバー | × |
ポケット・アタッチメント |
|
参考価格 (2025年4月現在) | ¥19,800 (税込) |
Outdoor Gearzine 評価 | |
快適性 | ★★★★★ |
安定性 | ★★★★☆ |
収納性 | ★★★☆☆ |
機能性(使いやすさ) | ★★★☆☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★☆ |
ハイキング満足度 | ★★★★★ |
AEROTREK 30:詳細レビュー
快適性・安定性・通気性・・・参入一作目とは思えない完成度の高い背面システム
パックを背負って真っ先に感じたのは、驚くほどしっくりとくるフィット感の高さ。ランニングバックパックで培ってきた経験とノウハウはここにも存分に活かされていました。
背面パネルは、フレームにテンションをかけて背中の当たる部分にメッシュを張り、背中の通気性を向上する背面ベンチレーション構造。背負うと下写真のように背中とバックパックの間に空気が通る空間が作られることでこの部分を涼しい空気が通り抜け、背中の汗を素早く発散します。
肌に当たるパッド部分もすべて速乾性と通気性、クッション性を考慮した3Dメッシュ素材を採用。テストでも十分に爽快でしたが、これからの熱くなるシーズンにはきっとさらにこの通気速乾性が効いてきそうです。
このような、いわゆる背面ベンチレーション式バックパックでは、抜群の通気性による快適さは大きな魅力ですが、一方で登場初期には構造的に重心が身体から離れやすいなどの弱点も指摘されていました。しかしそうしたデメリットへの対策もここ数年でのさまざまな研究開発でかなり進んできており、このモデルも背負い心地に関してはさまざまな対応や工夫が施された結果、一般的なテンションメッシュ構造とは思えない背負い心地のよさが感じられました。
例えば特許技術でもあるサロモン独自のサスペンションバックフレーム「Advanced airCHASSIS」と腰椎サポート機能を携えたバックパネル構造。これは背面フレームが中央でくびれた「砂時計型」デザインや、それに連動したヒップベルト・幅広ショルダーハーネスなどを含めた背面構造のことを指しており、身体の縦・横方向の動きに対してバックパックが自然に追随しながらサスペンション効果も発揮し、ブレや反動を吸収(下写真)。常に適度なフィット感と衝撃吸収効果を提供してくれます。
さらには、バックパックの底部分がシェイプされて底面積が小さく、上部にいくほど広くなる高重心フォルム(下写真)。これによってバックパックが下方に引っ張られるような感覚ではなく、重みが背中の肩付近に乗っかるように(つまり最も背中の負担を感じにくい場所に荷重がかかるように)背負うことができます。両サイドの下部にはコンプレッションストラップが配置されているため、荷物が少ない場合でもさらに底部分の容量を絞り込むことでなるべく重心を上に置けるように配慮されていました。
そしてだいたい10キロを超えるような荷物を背負う場合では非常に重要になってくる、肩口のロードリフターストラップもしっかりと搭載され、重荷での安定感を支えています(下写真)。
そしてこれは意外な発見でしたが、肉抜きされたヒップベルトは骨盤を包むように固定しつつ動きにも柔軟に追従してくれ、こちらもまた歩く時の身体の傾きによる重心のブレをきちんと吸収するように機能していました(下写真)。
これらの仕組みが組み合わさることで、常に風通しよく爽やかな背中と、安定性の高い快適な背負い心地とが同時に実現。また肩と腰裏側に配置されたパッドのクッション性も見た目以上にハリとコシがあり、重荷に対してもしっかりと衝撃を吸収してくれました。
ランニングバックパックと登山用バックパックの「いいとこ取り」のアクセスしやすい豊富な収納類
行動中の荷物の出し入れを極力楽にしてくれる外部収納も、さすがは優れたランニングバックパックのノウハウを持っているサロモンだけあって、(実験的な部分もありつつ)予想以上に隅々まで工夫が行き届いていました。
まずパネルローディング方式のメイン収納は、上から下まで大きく開くジッパーによってアクセスが非常にしやすくなっています(下写真)。背中が凹んだバックパックは形状的にどうしても素直なパッキングがしにくいという宿命のため、こうした配慮はありがたい。
ダブルジッパー仕様になっているので、下部の荷物を取り出すのもスマートにできます(下写真)。
上部には地図やその他小物入れとして便利な大き目のトップジップポケットを配置(下写真)。
両サイドのストレッチメッシュポケットはボトル2本も入るほど余裕があって、深さもあります。それでいてやや入口が斜めになっているので、立ったままぎりぎりボトルにアクセスできました(下写真)。
水分補給に関してはショルダーストラップのストレッチメッシュポケットがサロモンのソフトフラスクに対応(もちろんスマートフォンなども入ります)している他、パック内部にハイドレーションスリーブとチューブのアクセスもあるので自分のスタイルに合わせて自由に選べるようになっています(下写真)。
ヒップベルトには右側に大型のスマホも収納可能なジップポケットが備わっており、ジェルや行動食の他、日焼け止めやヘッドランプ等の小物に便利です(下写真)。
フロントにはメッシュ地の大型スタッシュポケットが配置されています。ただこのポケット、上部が縫い付けられているため、出し入れは左右斜め脇の小さめの入口から行うという少しユニークな仕様になっています。中身が飛び出にくいのはいいと思った一方、サイズの大きなアイテムを出し入れするのは難しそうで、その部分はやや残念な気がしました(下写真)。
まとめ:ランニングバックパックで培ったノウハウをいかんなく取り入れつつ、登山に必要な安定感も忘れていない。決して侮れない背面ベンチレーション型バックパックの会心作
サロモンが出す登山向けバックパックということで、正直はじめは心の中で侮っていた部分がなかったとは言えません。そこは素直に認めたうえで、今回の新作バックパックにはいい意味で大きく予想を裏切られました。テンションメッシュ構造の快適な背負い心地と、重荷でもフラつきにくい安定感の高さを両立した秀逸な背面システムは同じタイプの競合モデルと比べても決して見劣りするようなことはなく、他には感じたことのない動きの中でも確かなフィット感の高さを感じることができました。
収納性についても、多少のクセはありながら多くの使いやすくアクセスしやすい収納類を取り揃え、ベテランはもちろん、初心者でも迷わない使い勝手の良さが十分すぎるほど感じられました。雪の心配がないあらゆる季節やエリアで、日帰りから小屋泊りを中心としたハイキングや、軽量装備でのテント泊ファストパッキングが楽しめるはずです。
何よりこれまでランニングをメインに活動していたサロモンユーザーが本格的に登山を開始してみたいという場合にはこれ以上ないくらいぴったりの選択肢になるはず。より完成度の高まったハイキングブーツと、疲れと不快感・不便さを抑えて軽快なハイキングを可能にしてくれる新作バックパックで、より深いアドベンチャーの扉を開けてみてはいかがでしょうか。
SALOMON 新作ハイキング・ギアの詳細と購入について
製品の詳細についてはX ULTRA 5 MID GORE-TEX/AEROTREK 30それぞれの公式通販サイトもあわせてご確認ください。