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【忖度なしの自腹レビュー】「超軽い」も「美味しい」も愉しみたいミニマリストのための超軽量アルミクッカー&アルコールストーブ「GARUD kanamari400 & ao」実践レビュー

もともと体力に自信があったわけではない筆者。自然とより軽い装備を選ぶようになり、気がつけば装備の大半がどちらかというと軽量な部類のものばかりになりました。

今では軽さに振り切ったアイテムと見るやとにかく試してみたい気にかられ、そもそも体力をカバーすることが目的だったはずなのですが、もはや「なんだ?これは」と思うような奇天烈なアイテムを使いこなすこと自体を楽しんでいるような気さえします。

そんな中で見つけたのが、気鋭のガレージブランド、GARUD(ガルド)が作るクッカー&アルコールストーブ。

クッカー本体と、一緒に使うアクセサリー類を全部合わせてもなんと80gで収まってしまう圧倒的な軽さ。

使いやすいかどうかはともかくとして、この異次元の軽さ、この尖り具合はまさに自分好みのクッキング・システムです。そこで今回はGARUD の超軽量アルミクッカー「kanamari400」、アルコールストーブ「ao」、ポッドリフターの「tsuibami」、風防兼ゴトク「hizutsu」を今シーズン実際のフィールで使用してみることができましたので、早速レビューしていきます。

GARUD kanamari400 & aoの主な特徴

GARUD「kanamari400」は超軽量で調理のしやすい極薄アルミ合金製のリッド付きクッカー。当時「軽量ギアでのキャンプ」という自分のスタイルに合うアイテムがなかなか見当たらなかったことから「なければ自分で作ってしまおう」と開発したのがきっかけで誕生。市場に並ぶ軽量なクッカーといえば多くはチタン製ですが、kanamari400 は「超軽量でもご飯をおいしく炊きたい」というこだわりを追求し、あえて熱伝導率の低いチタンではなくアルミニウム合金を採用。限界まで薄く加工することで本体は31g、リッドは10gと極めて軽量なクッカーを実現しました。耐熱プラスチック容器「Ziploc」のスクリューロックコンテナの中に収まり、収納袋を必要とせず持ち歩くことが可能。

またkanamari400 とセットで使用することを想定して開発されたアルコールストーブ「ao」は、アルミニウム合金を切削加工したアルコールストーブ。強度と軽さのバランスを両立させた美しいボディに、故障や事故の危険性の少ないカーボンフェルト方式の燃焼機構を備えていることから、高火力でのスピーディな湯沸かしではなく、安定した長時間の燃焼で炊飯や調理・保温を得意とするストーブです。

kanamari400のお気に入りポイント

  • アルミ製で炊飯がしやすい(1回で0.5合炊くことが可能)
  • 容量が400mlで湯戻し調理ならちょうど一食分に必要な水が用意できる
  • アルミ製なのにフタとあわせて41gという圧倒的な軽さ
  • ジップロックにシンデレラフィットし、調理に必要なものをオールインできる設計
  • 耐食性を向上させる硬質アルマイト処理の、使うごとに味が出てくる経年変化

kanamari400の気になるポイント

  • 軽量のため沸騰時にグラグラと本体が揺れる
  • 1食分の湯沸かしにギリギリのサイズ感なので、吹きこぼれに注意が必要
  • カップ内に目盛りがないため計量しにくい

aoのお気に入りポイント

  • 構造がシンプルなためトラブルの心配がない
  • カーボンフェルト方式のため、燃料がこぼれたりすることがなく扱いやすい
  • 弱火で加熱し続けることができる(炊飯に向いている)

aoの気になるポイント

  • すぐにお湯を沸かしたいという人には向かない

kanamari400の主なスペックと評価

アイテム名kanamari400
サイズ
  • ポット:Φ102 x 67 mm
  • リッド:Φ104 x 6 mm
容量400ml
重量
  • ポット:31g
  • リッド:10g
素材アルミニウム合金
参考価格7480円
Outdoor Gearzine評価
熱伝導性★★★★★
調理しやすさ★★★☆☆
機能性★★★☆☆
重量★★★★★
携帯性★★★★★
耐久性★★☆☆☆
適したシチュエーション重量をとことん切り詰めたいけど、湯沸かしだけでなくそこそこ調理もしたいソロハイカー

aoの主なスペックと評価

アイテム名ao
サイズΦ50 x 31 [mm]
重量21g
素材アルミニウム合金、カーボン
参考価格5060円
Outdoor Gearzine評価
燃焼力★★★☆☆
耐風性★★☆☆☆
炊飯やとろ火での調理しやすさ★★★★☆
重量★★★★★
携帯性★★★★★
機能性★★★☆☆
耐久性★★★☆☆
多用途性★★☆☆☆
適したシチュエーションスピード湯沸かし用のメインストーブの他に、炊飯・じっくり調理もしたい超軽量スタイルのソロハイカー。

詳細レビュー

重量と収納性

燃料、Ziplocを除いた状態で重量は80g

kanamari400 は見てわかる通りハンドルが付いておらず、ノンハンドルタイプのカップに同じくつまみなどのないリッドがセットになったクッカーです。容量は400ml(満水時)で、クッカーとしては最小クラス。重量はクッカーが31gにリッドが10gで合わせて41gと50gを切る軽量さ。kanamari400 と同等のサイズのカップといえば、エバニューのチタンクッカー「Ti400NH」がありますが、こちらは重さ34gと、重量だけでいえばチタンのTi400NH よりもアルミのkanamari400 の方が軽量という結果に。400mlクラスのクッカーやカップでは最軽量クラスと言えるでしょう。

リッドと合わせて41gという軽さ

GARUDは紹介するクッカー、ストーブの他にもポッドリフターの「tsuibami」やゴトクにもなる専用の風防「hizutsu」もラインナップされていて、それらを合わせることで完璧な「超軽量炊飯調理セット」が完成します。

tsuibamiは親指と人差し指でクッカーを挟み込むように掴めるポットリフターで、クッカーを持ち上げるだけでなく、リッドの操作にも使うことができるため、ノンハンドルのkanamari400を使う際には必需品。単体重量は6gと非常に軽く、kanamari400がノンハンドルであるアドバンテージの相殺を最小限にしています。このポッドリフターは非常に小さいため、容量の大きなクッカーの扱いは指先にかなりの力が必要になり操作性は下がりますが、400ml程度の容量であればストレスなく使うことができました。ノンハンドルのクッカーは加熱時の取り扱いは火傷のリスクと隣り合わせになるため、ポッドリフターがあることで初心者でも安心して取り扱うことが可能です。

指でつまむように使用するtsuibami。400mlクラスのクッカーなら問題なく扱える

もちろんカリカリのUL派であればポッドリフターは使わないという選択もできますが、クッカーの素材が熱伝導の高いアルミ製でクッカー側面がチタンクッカーよりも熱くなるため、素手で持つのはまず不可能。ポッドリフターを使わないのであればグローブをするなど対策は必要です。

ゴトク兼、風防になっているhizutsuは厚さ0.15mmのステンレス製で組み立て式になっており、重量は12gです。組み立て時は70 x 65 mmの筒状になりアルコールストーブを覆います。風の影響を受けやすい部分はステンレスを採用し、上下にメッシュ部を設けることで風防内の酸欠を防ぐと共に燃焼状態の確認もしやすくなっていて、分解時はシート形状のためポットの隙間に収納可能。単体としても汎用性の高いゴトクです。

kanamari400に21gのアルコールストーブaotsuibamihizutsuを合わせて重量は80g、100gを切る調理キットが完成します。そこにジップロック、ライター、燃料(30ml)を足したとしても約165.3g。さらにこれらをkanamari400の中に収容することが可能で、調理に必要なものをオールインすることが可能です(下写真)。

ライターはBic mini、アルコールボトルはエバニューの30mlを使用。全て合わせて165.3g

Ziploc スクリューコンテナの中にぴったり収まるから収納袋いらず

kanamari400は旭化成のZiploc(ジップロック)スクリューコンテナ473mlの中にぴったりと入ります。ジップロックのスクリューコンテナといえばシンプルな湯戻し調理を基本とするUL界隈ではお馴染みの定番アイテム。ピッタリと入るよう計算して設計されており、その証拠にkanamari400を購入するとスクリューコンテナがケースとして付属してきます。これはマスプロメーカにはできないことというか、遊び心があっておもしろいところでした。もちろんスクリューコンテナはフリーズドライ食品を食べるのに便利なため実用的ですし、限界まで薄く加工しているkanamari400の本体を保護する役割も担っていますから合理的です。

使えば使うほど味が出てくる表面の硬質アルマイト処理

極薄アルミ合金のkanamari 表面には耐食性(腐食や錆を防ぐ)を向上させるために硬質アルマイト処理が施されています。その影響で、このクッカーは使い始めると、はじめはまったくツルっとしていた表面に徐々にひび割れ模様が発生していきます(下写真)。

このひびは劣化している分けではないので使用上は何の問題ないとのことですが、一方で個体ごとに同じ模様になることはありません。つまり使えば使うほど自分だけのクッカーとして味が出てくる、そんな経年変化を楽しむことができる素敵な仕様です。

フィールドでのパフォーマンス

karnamari400:ある程度慣れは必要だが、沸騰時間のとびぬけた早さと必要十分な使い勝手は大満足

満水状態で容量が400mlのkanamari400は実用的に湯沸かしできる容量は300mlと、決して余裕のあるサイズではありません。ただ、カップヌードル1食(300ml前後)や一般的なフリーズドライ製品の1食分(150ml〜180ml)と粉末スープなどがちょうど足りる量で、1人が一食分のお湯を用意するための必要最低限はカバーしていますので、超軽量スタイルのソロハイカー用としてはこのギリギリのサイズ感こそありがたい。

ギリギリの重量・容量を攻めている以上、扱いにはやや注意が必要です。沸騰したときに吹きこぼれないようにきちんと見ておく必要があったり、ポッドリフターがあったとしても完全沸騰した状態のクッカーはグラグラと揺れやすいので慎重につまんだり、慣れないうちはいちいち面倒だと思うかもしれません。

またkanamari400 には目盛りが付いていないのですが、内部を見ると2本の溝があり、これが計量の際の目安にすることができます。上の線が容量約300mlほどで、扱える容量の上限。そして一食に必要な容量。下の線は約150mlほどで、一杯のコーヒーやスープなどを作る時の目安にできるため目盛りがないことの使いにくさは感じませんでした。というか、実質この線が目盛りになってくれるのでむしろどこからみても線が確認でき使いやすいです。

下の線が約150ml、上の線が約300ml

極薄アルミ合金のクッカーであるkanamari400 は、「アルミ × 極薄」なだけに熱伝導率の高さはずば抜けています。実際に通常の環境でガスストーブを使って試してみたところ、期待通り抜群のスピードでお湯が沸きました。

300ml程度のお湯が約1分程度で沸騰まで、ほんとにあっという間です(した写真)。とても熱が伝わりやすい極薄素材なので、うっかり過熱しすぎには要注意です。

アルコールストーブao:安定した炎で使いやすく、長時間じっくり温めたい時にピッタリ。ただ寒さと風には要注意

ao は切削加工されたアルミカップにカーボンフェルトが詰め込まれた構造のアルコールストーブ。UL装備による登山やハイキングにおいてアルコールストーブの役割といえば調理よりも湯沸かしがメインですが、このao も基本的に平地で穏やかな無風の環境であれば、当然ですが普通にお湯を沸かすことができます。

ただし一方で、厳しい環境でのスピーディな湯沸かしというシーンでは勝手が違いました。

たとえば標高1500m前後、気温5℃、微風のフィールドで、ao とhizutsu の上に300mlの水を入れたkanamarini400 を載せて沸かしてみたところ、10分ほど加熱しても、熱いお湯まではいくものの完全沸騰はせず、結局燃料が尽きてしまいました。このようにao は高火力を謳う他のオープンジェット方式のアルコールストーブに比べるとどうしても最高火力は見劣りするため、あらゆる環境でのスピーディな湯沸かしに向いているとはいえません。

一方で、単純な湯沸かしではなく「弱火の炎を安定して長時間の燃焼させる」必要があるような「炊飯や保温」といったシチュエーションでは、上記のオープンジェット方式のアルコールストーブではかなり困難ですが、逆にao × kanamari ならなんの工夫もせずにできてしまいます。

決して登山やハイキングシーンでメインのストーブとしては使いにくいかもしれない、その意味ではかなりユニークなアルコールストーブですが、わずか21gという重量ならば装備の中に忍ばせることはほとんど不可能ではありません。サブのストーブとして忍ばせ、炊飯をする。または保温をする。これができるだでも山で楽しめる食事のレベルはグッと向上し、山メシは豪華にできるでしょう。

火力は強くないが、安定した炎で燃焼する

kanamari400 と ao のコンビで実際にお米を炊いて食べてみた

アルミ製のクッカーであるkanamari400 と、トロ火による絶妙な火加減で長く安定して加熱し続けることができるao のコンビは、ソロハイカーが最小限の重量で炊飯システムになり得る。それを実証してみるため、自分でも実際にこのコンビでお米を炊いてみましたが、実際自分で複数回炊飯を試したかぎりでは、確かにすべてコゲつかずにふっくらと炊き上げることができました。

0.5合のお米を炊くことが可能で、一食分を用意するのにちょうどいい大きさ

ちなみに、余談ですが、お米をおいしく炊くためのコツは、「しっかりと時間をかけてお米を水に吸わせること」と「中の様子をちょこちょこ確認すること」です。調理をするには小さすぎるkanamari400 ですが、湯沸かしのほかに炊飯するのにぴったりでチタン素材のクッカーにはない個性をもったクッカーでした。自分がkanamari400 ao を使って炊飯をしたときは30分ほど水を吸わせ、そこから約12分加熱、10分の蒸らしでふっくらとした仕上がりになりました。

実際に1回で炊けるお米は0.5合。チタンで炊飯すると失敗の多い自分ですがkanamari400 ではふっくらと炊くことができました。容量がもう少し大きい方がいいという方には一回り大きいkanamari600 もラインナップされています。どうしてもたくさんご飯が食べたいというなら600 の方ですが、炊飯のしやすさと重量の面でKanamari400 の方が、軽量スタイルのソロハイカーにとってはよりバランスがいいと感じました。

まとめ:軽さを突き詰めるだけでいいのか?ULの味気ない食卓を豊かに彩る新しいクッキングシステム

自分がULハイキングを楽しむ中で、ただ単に1gを削り競うように軽くするために道具を揃えるのではなく、軽量化しながらも遊び心をもって不必要かもしれない道具を忍ばせ、訪れた先でわずかな滞在時間を楽しむのことはアリだと思っています。麓で購入した地酒を担いで絶景と共に晩酌。装備を100g軽くしても麓で気になった日本酒をバックパックに忍ばせ着。そんな楽しみ方も大好きな自分としては次回のテント泊山行でもaokanamari400を忍ばせてしまうかもしれません。

執筆:Yosuke.C(ヨウスケ)

不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。

春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。

20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。

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