アメリカで2002年に誕生した新興アウトドアギアメーカーNEMOは、誕生して以来常に冒険者目線で必要な道具や機能を、思いも寄らない独創的なアイディアで採用し続ける、非常に新鋭的なメーカーです。テントでメーカーを興しただけのことはあり、特にテントは毎年と言って良いほど新商品や既存のテントのアップデート版をリリースし続けています。
その中でもホーネットストームは、NEMOのテントラインナップ内でもウルトラライトバックパッキング向けの軽量モデル。2019年モデルはいくつかのアップデートを加え完成度も高く、軽量ながらウルトラライトハイカーだけでなく幅広いユーザーでも安心して使える、NEMOの代表的なテントになってきました。今回はそんなホーネットストームのソロテントを実際使用してみた感想をお送りします。
目次
ホーネットストーム 1Pの大まかな特徴
NEMOのテントラインナップ内でも最軽量のソロテント、ホーネットストーム 1P。本体にフライをかぶせる自立式のダブルウォールながら、重量は本体・フライ・ポールを合わせても800g以下という超軽量性を誇ります。軽量なだけでなく、様々な工夫により、居住性や耐候性などテントに必要な機能は高く維持されています。2019年モデルには、NEMOの独創的なアイディアを投入したアップデートを数点加えることにより、快適性や居住性を向上させ、重量とテントそのものの性能を、より高いバランスで実現したモデルです。
おすすめポイント
- とにかく軽い
- 居住性
- 耐風性
気になったポイント
- ボトム部分の強度
- 降雨に対する耐性
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
就寝人数 | 1名 |
カラー | グリーン |
公式最小重量 | 760g |
実測重量 | 782g(ペグ・収納袋含めて917g) |
実測詳細重量 | 本体364g, フライ207g, ポール211g, ペグ90g(15g×6), ガイドライン17g(4本), 収納袋(27g, 10g, 8g) |
本体素材 | メッシュ/10D ナイロン |
フライ素材 | 10D Sil/PeUナイロン |
フロア素材 | 15D Sil/PeUナイロン |
ポール素材 | DAC社製 Fatherlite NFL Green |
室内サイズ | 間口221×奥行79/108×高さ98cm |
収納サイズ | 本体:12×42cm |
フロア面積 | 2.0㎡ |
前室面積 | 0.7㎡ |
付属品 |
|
オプション |
|
居住快適性 | ★★★★☆ |
設営・撤収の容易さ | ★★★★☆ |
耐候性 | ★★★☆☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★★ |
携帯性 | ★★★★☆ |
汎用性 | ★★★★☆ |
総合評価 | ★★★★☆ |
詳細レビュー
パーツは本体・フライ・ポール・ペグです。収納は本体・フライ、ポール、ペグの3つに分けて収納するようになっています。。
本体・フライ用の収納袋は二重になっており、引伸ばせばポールも一緒に収納できる長さになり、全てをひとまとめに収納できます。パッキング容量に余裕がある時などはこのまま収納すれば便利です。
ポールはDAC社製 Featherlite NSL Greenで、展開するとY字になる1本のみ。2股側が黒、反対側が黄色になっています。この色分けはテント本体のポール接続部分の色と連携していて、設営するときに間違わずに直感的に設営できるようになっています。
黒いポールの一部は直線ではなくやや湾曲しています。湾曲しているおかげでテンションをかけずに本体を持ち上げられるので、耐久性向上や室内拡大の手助けをしています。
アルミ製のペグが6本付属。最低必要本数は6本に合わせた付属本数です。強風時の設営用にガイドラインも付属していますが、これを使う際には余分なペグが必要となります。
重量は、最低重量 (本体364g・フライ207g・ポール211g)で実測値782gと、800gを切り超軽量。ペグは1本15gで、最低限必要な本数6本であれば90g。各収納袋は本体27g, ポール10g, ペグ8gとなっています。 収納袋まで全て合わせても、917gと1000gを下回り非常に軽量であることには変わりはありません。
もはや完璧に近い設営の簡潔さ
では順に設営していきます。
本体のポール接続部に色を合わせてポールを接続すれば自立します。ポールを接続するだけで自立はしますが、4隅はペグを打った方が安定感は高く、室内空間を最大限利用できます。特にY字ポール1本側は隅を固定していないので、ペグは必須です。
あとは本体のフックをポールに吊り下げれば本体の設営は完成です。
本体には2ヶ所、非常に特徴的なポイントがあります。
1つ目は、Y字ポール1本側の隅2ヶ所です。この2ヶ所は2本の紐で引っ張り固定するようになっていますが、この紐の付け根の間には、コーナーストラットという硬い棒状のパーツが入っています。このパーツのおかげでこの灰色の部分は垂直に立たせることができ、室内空間を安定させています。
もう一点は、ポールに付いているプロペラのようなパーツです。フライバーボリューマイジングポールクリップと呼ばれるこのパーツは、フライシートを被せた時に、天井の空間を安定して広げる働きをしてくれています。NEMOによると10%ほど拡張されているとのことです。確かにフライシートを被せてみると拡張はされているようですが、それよりもこのパーツにより天井の風周りが向上しそうです。
あとは、フライシートを被せて完成です。入り口側長辺と、反対側の長辺はペグで固定した方が安定感は格段に高くなります。
フライシートと本体の固定は、片方は写真のようにワンタッチではめ込むタイプ。もう一方は紐を本体を固定しているペグに引っかけてテンションをかけるだけなので、非常に簡単です。
シンプルで無駄のない居住空間
フライは向かって左半分、入り口側を大きく捲っておく事ができます。本体は通気性はほとんどない10Dナイロンが採用されているので、この状態では通気性はほとんどありません。入り口はとても広く、長辺側のほぼ半分の大きさがあります。
この大きな入り口は2重仕様で、メッシュにする事が可能です。全開にすればかなり広く通気口を取る事ができます。しかし通気口はこの入り口のメッシュ部分のみです。
室内は広く、2.0㎡(221cm × 79/108cm)とソロテントとしては十分な広さ。天井も100cm近くあるので、狭く感じるようなことはありません。長辺は221cmもあるのでレギュラーサイズのマットを敷いてもまだ余裕があります。
天井には、ライト用ポケットが備え付けてあります。ヘッドライトを入れ点灯させると、不透明な生地のおかげで光が拡散し、室内全体を照らす事ができます。
入り口横には、程よい大きさのメッシュポケットが備え付けてあります。ストレッチも効いているので、ややかさばる物でも収納可能です。
前室もソロ用としては十分な広さがあり(0.7㎡)、濡れたものや靴を置いたり、調理をしたりするには十分な空間です。しかしフライの位置が高いので、降雨時は跳ねて雨が入ってきそうです。
実際に使ってみたインプレッション
ソロテントとしての重量と居住快適性の高バランス
ポールが一本にも関わらず、室内の空間は非常に広く高さもあり、ソロテントとしては十分。それもプロペラ形状のフライバーボリューマイジングポールクリップや、本体隅を直立させるコーナーストラットなど、様々な工夫によって成り立っています。これだけの居住空間があれば非常に快適に過ごせます。
中から外を見ると、入り口が大きいおかげで開放感があります。とてもソロテント内にいるとは思えないほどの開放感です。
この大きな入り口兼通気口のおかげで通気性は非常によく、通常であれば蒸れることはありません。フライを閉じてしまうと密閉され空気の流れが留まってしまいそうですが、短辺側片方のフライはやや短く、降雨時フライを全て閉じた状態でも風を呼び込む事ができます。外部と直接換気するシステムはないので換気は抜群!とは言い切れませんが、降雨時や強風時でも必要最低限の通気性は確保できます。
しかしフライを閉じ、入り口のメッシュも閉じれば、本体はブリーザブルナイロンなので、風が入ってくることはありません。実際テスト時は度々強風が吹いていましたが、外部から冷気を感じることはありませんでした。テントの状態により通気性も防風性も上手に両立されています。
テスト中は雨は降りませんでしたが、フライが短い分降雨時には跳ねた雨などで本体が濡れやすくなりそう。本体は防水加工はしていないので(ボトムのみ防水加工)、思わぬ大雨に遭遇した際は心配することになりそうです。
強風といえば、今回はペグ6本のみ使用して設営し、ガイドラインは使用しませんでした。しかし強風に煽られて音で目を覚ますことはありましたが、テントの安定感は高く不安はありません。
本体・フライは10Dナイロンの生地でかなり軽量化に貢献してくれています。もちろん10Dなので、やや耐久性にかける部分はあると思いますが、800gを切る軽量テントなので、ある程度の犠牲はしょうがないでしょう。
しかしボトム部分はもう少し厚めの生地でもよかったのではないかと思います。ボトムには防水加工した15Dナイロンが使用されていますが、やはり物足りない。地面に直接設営すると今回のような草原では大丈夫でしたが、場所によってはかなり気を使いそうです。特に石などとのスレは気にした方が良さそう。オプションで専用のフットプリントも用意されているので、検討するのも良さそうです。
自然界に青色はなかなかないので、ペグについている青色の紐は、見失ってしまった時に意外に目印になってくれます。硬い地面に打ち込んだ時も、紐を引っ張る事で抜きやすくしてくれます。
やはり生地が薄いおかげで収納は非常に楽。特に収納袋とフライはシリコン加工がしてありスルスル滑って綺麗に畳まずとも突っ込めばなんとかなります。ただ、本体の居住空間を広げるための棒状パーツ・コーナーストラットがやや曲者。結構硬度があるので、適当に丸めて収納しようとすると、こいつが邪魔をしてうまく丸められないことがありました。本体をしまう時はこいつの存在を頭に入れておいた方がストレスない撤収につながります。
まとめ:こんな人におすすめ
NEMOは毎年のように新しいアイディアを反映させたモデルをリリースする、先進的なテントメーカです。ホーネットストームは最軽量モデルではありますが、ただ軽量化に突き進むのではなく、居住性など他の重要な機能性を犠牲しないような進化を続けています。最低重量800gを切る超軽量にも関わらず広い居住空間が確保され、耐候性・通気性にも優れた山岳テントです。生地自体は全体的に耐久性は低いので、雪が大量に降るような本格的な山岳テントとしての使用は難しいかもしれませんが、年間を通して様々なフィールドで使える、能力の高いオールマイティーなソロテントとして活躍するでしょう。
しかしやはりウルトラライトなテントなので、耐久性や強度では劣る部分もあります。その辺りを考慮しておけば、ULハイカーやファストパッカーには申し分のない安心感の高い相棒になってくれるはずです。