登山やキャンプでのテント泊において「安眠」と「軽量化」はどうしても避けられないトレードオフ。
ここ数年のスリーピングパッド(マットレス)の主流である、軽量で高断熱な「エアマット」ですが、そこにはどうしても「パンクのリスク」と「マットが滑るストレス」といったデメリットがつきまといます。パンクの心配がないクローズドセルマットは安心ですが、嵩張る上に重さと断熱性がネックになりがちです。
そんな登山者やハイカーたちのジレンマに対し、気鋭のブランド「arata(アラタ)」がまた興味深い新作を届けてくれました。それが今回レビューするスリーピングパッド「arata ASP-14」です。
一見すると単なる「極限まで薄くて軽いマット」なのかと思いますが、ちょっと違う。このマットはこれまでのエアマットが持っていたデメリットを補完し、スリーピングシステムそのものをアップデートする、新たな可能性を秘めた新しいタイプのスリーピング・ギアと言えます。
そんな新しいコンセプトの折り畳み式クローズドセルマットを、春先の低山テント泊で試してみましたのでさっそくレビューをお届けします。
目次
arata ASP-14の主な特徴 ~なぜ今、あえて「R値1.4」の薄型マットなのか?~
昨今の高い保温性と快適性を備えたエアマットが主流のスリーピングマット市場において、気鋭の国産ブランド arata が提案したのは、重量わずか110g、畳んだときの薄さ9.6cm という薄型軽量のクローズドセルマット「ASP-14」。この製品はR値も1.4 と決して高いものではなく、単体で春秋の山岳用マットレスとして機能するほどの断熱性を備えているとは言えないかも知れません。ただ、これを既存のエアマットと組み合わせて使うための「ベースシート」として考えると、一気にこの製品お魅力が見えてきます。これまでかさ張り過ぎ・重すぎ(あるいは薄すぎ・弱すぎ)であったクローズドセルマットの悩みを解決してくれ、エアマットの「パンクしやすさ」「滑りやすさ」という弱点を最小限の重量とかさ張りで補完することができてしまいます。全長180cmで身体全体をカバーし、軽量スタイルのハイキングでは使い方次第で夏の単体使用にも活躍してくれます。
お気に入りポイント
- 圧倒的な軽さ(装備に加えても負担がほぼゼロ)
- エアマットのパンク防止・滑り止めとして機能
- 四隅カットなど、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザイン
- アルミレスによるマット同士の摩擦力(ズレない)
気になるポイント
- 耐久性は低い(傷やヘタリに弱く、丁寧な扱いが必要)
- 単体では厳冬期や冷え込む季節の使用は不可
- 軽すぎるため、休憩時などに強風で飛ばされやすい
- 極厚マットに比べると、クッション性は一歩譲る
主なスペックと評価
| アイテム名 | arata ASP-14 |
|---|---|
| サイズ | 51×182×1.7cm |
| 収納サイズ | 51×13×9.5cm |
| マット厚さ | 1.7cm |
| 重量 | 110g |
| 素材 | Polyethylene |
| R値 | 1.4 |
| 季節対応 | 3シーズン |
| 付属品 |
|
| Outdoor Gearzine評価 | |
| 快適性 | ★★☆☆☆ |
| 断熱性 | ★★☆☆☆ |
| 重量 | ★★★★★ |
| 収納性 | ★★★★★ |
| 使い勝手 | ★★★★☆ |
| 耐久性 | ★★☆☆☆ |
| 汎用性 | ★★★★☆ |
詳細レビュー
驚きの軽さと収納時のコンパクトさ
ASP-14の主なスペックを整理すると、まず驚きなのはやはり「驚異的な軽さ(110g)」です。一般的なフルレングスのクローズドセルマット(約400g前後)に比べても約1/4ほどと圧倒的。薄さだけでなく、断熱性を高めるための表面アルミ蒸着も省いたり、マミー型寝袋に合わせて頭部や足元の四隅を大胆にカットするなどして軽量化には特に配慮されており、手にとっても重さを感じないほどの軽さです。その反動か、断熱性に関しては割り切っており、R値は 1.4 と、夏の単体使用でギリギリ使える程度の断熱性といっていいでしょう。ここからもこのマットの主要な役割が、エアマットの下に敷いて補完することであるのが感じられます。
Z折り(蛇腹式)でパタパタと折り畳めば、収納時の厚みはわずか9.5cm。ザックの外付けはもちろん、フレームレスの軽量バックパックの内部に背面パッド代わりに這わせることもできちゃいます。
エアマットの下に敷いた時の絶妙な「黒子っぷり」と、単体でも最低限の心地よさを提供する「絶妙な薄さ」
厚さは1.7cm。これ1枚では極厚のエアマットのような寝心地とは正反対のせんべい布団ですが、エアマットの下に敷いて地面の木の根や小石の凹凸を受け止めるだけの強度は備えています(折れた笹の稈などは突き抜けてくるので注意)。
51×182cm というサイズはマットとしては十分な広さ。硬すぎず柔らかすぎない絶妙な反発力があり、疲れた体を休めるには最低限必要なクッション性を持っています。
山のテント場で「まっ平らな場所」にテントを張れることはまれ。たいていの場合、平らなところに設営したと思っても、実際には少し傾いていたりします。すると滑りやすいエアマットはどうしても寝ている最中に傾斜の低い方にズレていってしまい、寝心地の良いものではありません。
そこでポリエチレンで作られたASP-14 を下に敷くと、テント内でエアマットをしっかりと固定することができます。
また断熱性を表わすスコアであるR値「1.4」は決して高いとはいえず、単体なら初夏〜秋口の低山あたりに限定されてしまうかもしれません。ただ、例えば手持ちのR値「3.0」のエアマットの下に敷けば、合計R値は「4.4」となり、晩秋や初冬の冷え込みにも対応可能になります。5 以上のマットと組み合わせれば厳冬期のテント泊も不可能ではありません。地面からの冷気を物理的に遮断しつつ、突き刺しやズレを防いでくれる頼もしいレイヤーとして機能してくれました。
軽量化ゆえに耐久性には「割り切り」が必要
クローズドセルマット最大のメリットは「雑に扱ってもパンクしないタフさ」ですが、ASP-14 においてはこの常識が必ずしも常に通用するとは限らないことは指摘しておく必要があります。110gという極限の軽さを実現するため、従来のクローズドセルマットに比べれば、素材の強度や耐久性はあえて削ぎ落とされています。
このため、岩場に強く擦り付けたり、木の枝に引っ掛けたりすると傷がつきやすく、また体重を超えるような荷重を長期間かけすぎると圧力によって素材のヘタリ(圧縮)も、一般的なマットより早くきてしまう可能性が高いので、そこは注意が必要だと感じました。「絶対に壊れないマット」ではなく、「パンクはしないが、ある程度消耗品として覚悟すべき超軽量ギア」という認識が必要です。
まとめ:arataが提案する山での新しい「安心・快眠スタイル」これからのスタンダードになり得る
ここまでのレビューで述べてきた通り、arata ASP-14 は、決して登山初心者が何も考えずに使える万人向けのマットではないかも知れません。
ただ、ビギナーから一歩進んで、自分の登山を追求していく熱心な登山者にとっては、arata ASP-14 が提示する、エアマットと組み合わせた新しい「ハイブリッド・スタイル」は、弱点を補いつつパフォーマンスを向上させるという意味で非常に合理的で魅力的な方法であると今回確信しました。
どんどん軽く・高断熱になった(それゆえに高価にもなった)エアマットを、地面の突起(パンク)から守り、睡眠中にマットから滑り落ちるストレスをゼロにし、さらにR値を底上げする。これだけのメリットを、進化して軽くなった分と同程度の重さ、たった110gの追加で得られるなら、十分にアリでしょう。
もちろん、単体のマットとしても十分な完成度を備えた高さarata ASP-14 は、軽さを追求する超軽量スタイルのハイカーにも対応できます。夏の低山やファストパッキングで 1g でも荷物を削りたい時に、全身をカバーして110gという軽さは攻めるハイカーにとって最良の選択肢になり得ます。そんな arata 新しいマットレスを、ぜひフィールドで体感してみてください。


