毎年のようにより明るくなった新製品が登場するのが、登山やトレイルランニングなどのために作られたアウトドア用ヘッドランプ。
確かに明るさはヘッドランプの良し悪しを評価する上で、大きなポイントのひとつではあります。ただ、ここ数年ヘッドランプを使っていて、そのちょっとだけ明るくなった新製品に対しての喜びは実のところ、それほど大きくはなくなってしまっているかもしれない。もちろん明るいに越したことはないのですが、ここまでどのモデルも十分すぎるほど明るくなってしまうと、印象としての実力差はそれほどないように思えてしまいます。
ヘッドランプには、単なる明るさだけでなく、全体としての見やすさであったり、電池の寿命、軽さ、使いやすさなど、ある目的を達成するための道具としての総合的な品質がもう少し見直されていいのではないか。これまでのメーカーによる明るさ競争がやや一段落しつつある昨今は、そんなことを思わせてくれるようなタイミングに見えます。
そんななか、今回取り上げるLedlenser(レッドレンザー)社は、ドイツ・ゾーリンゲンのガレージで誕生してからさまざまな分野で利用される「ライト」を一貫して作り続け、今や世界で約1,500名の従業員が働くライティングのグローバル・リーディング・カンパニーです。アウトドアやスポーツはもちろんのこと、自動車・航空・鉄道・建設・工事現場や警察・消防など、確かな品質の明かりが必要となる場所は漏れなくすべて彼らのフィールドであり、それぞれの現場にとって必要かつ最善のライティング生み出し続けています。
そんなLedlenserが誇る、アウトドア向け、特に登山など山で使えるモデルをつけ比べてみました。明かりの専業メーカーの実力やいかに。
今回取り上げたヘッドランプについて
今回はLedlenserの幅広いラインナップのなかでも、登山やキャンプ、トレイルランニング、フィッシングといったさまざまなアウトドアアクティビティに向けて製作されたヘッドランプであるNEO・MHシリーズのなかでも人気・性能的に主要な3アイテム、NEO10R、NEO6R、MH5をピックアップしました。
NEO10R/NEO6R/MH5 性能・機能のざっくり比較
アイテム | NEO10R | MH5 | NEO6R |
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イメージ | |||
参考価格 (税抜) |
10,000円 | 5,500円 | 4,500円 |
ここが◎ |
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ここが△ |
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遠距離照射 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
近距離照射 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
バッテリー寿命 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
操作性 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
機能性 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
スペック | |||
アイテム | NEO10R | MH5 | NEO6R |
光量(lm) (最大/最小) |
600/10 | 400/20 | 240/20 |
公式照射距離 (m) (最大/最小) |
150/20 | 180/40 | 30/10 |
公式照射時間 (h) (最大/最小) |
10/120 | 4/35 | 6/40 |
公式重量(g) | 179 | 94 | 95 |
実測重量(g) (本体+バッテリー) |
178(129+49) | 98(76+21) | 96 |
専用バッテリー |
リチウムイオン電池 |
リチウムイオン電池 (750mAh、3.7V) |
リチウムポリマー電池 (1400mAh、3.7V) |
乾電池 | × | 単3電池×1 | × |
防水防塵性能 | IP54 | IP54 | IP57 |
正面赤色ライト | × | ○ | × |
リアライト | △(後頭部装着時のバッテリーランプ) | × | ○ |
それぞれの項目で特徴を比べてみた
照射性能:「遠くまで明るく」のNEO10R「手元を広く」のNEO6R、「バランス」のMH5
他ブランドのライトにはないレッドレンザーの優れた特徴は、何よりも高品質なレンズによる均一で見やすい配光です。一般的なヘッドランプでは中心から周辺に行くにしたがって明るさが多かれ少なかれ減少していきますが、レッドレンザーの明かりは照射範囲内をほぼ同等の明るさで照らしてくれます。その性能は、今回の3モデルともに発揮されています。
遠くの1点を明るく照らすのに適したNEO10R
下写真では全モデルをワイドモードで近くの段差・凸凹のある場所に照らしてみました。いずれも明かりの中心から縁まで、きれいに均一の明るさで照らしていることが分かります。モデル同士を比べてみると、NEO10Rがスペック通り明るさでは頭一つ抜きんでていますが、MH5も十分明るく・範囲も特に狭くはありません。NEO6Rは明るさ的に遠くを照らすには適していません。照射範囲についてはとにかくNEO6Rが大きく、NEO10RとMH5はほぼ同じですが、NEO10Rが微妙に大きい。
次は弱モードで手元を照射してみまたのが下の写真です。スペック上弱モードの明るさはNEO10R:10ルーメン、MH5:20ルーメン、NEO6R:20ルーメンですが、違いはほとんど気にならない程度です。ただ、NEO10R・MH5がワイドにしても周辺の縁が気になる広さなのに対し、NEO6Rはワイドで広範な照射範囲によって視界全体を照らしてくれる感じで快適です。
ワイドな光で近場を照らすのに最適なNEO6R
下の写真はすべてワイド光です。NEO6Rの照射範囲は非常に広く、150度といわれる人間の視野と同等に作られています。首を振らずとも視野内の障害物などを視認できるため、ストレスをかなり低減できます。
バッテリー寿命:大容量バッテリーで長時間明るいNEO10R、軽量・汎用性のMH5、軽量・長時間のNEO6R
ヘッドランプのパッケージやHPで表示されている電池寿命は、あくまでもメーカーの考える限界の明るさまでどれくらいの時間照らすことができるかということであり、決してフルパワーの明るさを保っている時間ではありません。せっかく長もちだと思って買ったのに、実際にはすぐに暗くなってしまうなんてことも、残念ながら可能性としてはあり得ます。
そこで照度計を使用して、時間経過による実際の明るさの変化を測定し、そこからバッテリーの消耗によって明るさはどう変わっていくかを比較してみました。
3モデルとも標準の専用電池を満充電し、強モードで、3メートル弱ほど離れたセンサーに向けて照射し続け、時間経過とともに明るさがどう変化するのかを観察しました。
なおここでの明るさ(LX、ルクス)はあくまでもこの測定環境・照度計によって得られた数字ですので、ここでは時間経過にともないバッテリーの消耗とともに明るさがどのように変化していくかという変化の度合いを参考にしてもらえればと思います。
明るさと光の種類が異なるため、まずNEO10RとMH5の比較から。
どちらのヘッドランプも、満充電時の明るさMAX状態は実際には急激に落ち込みます。NEO10Rでは5分持ちません。ヘッドランプはフルパワー時の明るさ(ルーメン)で製品を比較してもあまり意味がないことが分かるでしょう。
驚異的なバッテリーのNEO10R
とはいえ、一気に落ち込んだ後は、比較的高い照度で明るさを維持し続け、ゆっくりと下降していくものの、半日以上十分な明るさを維持してくれます。
※NEO10Rの公式の電池容量は「3000mAh 3.6V」でしたが、今回使用した電池をあらためて確認したところ「3400mAh 3.7V」でした。大勢に影響はないと思いますが、現在販売されいてるモデルはもう少し寿命が短いかもしれません。
軽量ながら実用性が考えられたMH5
一方MH5は、満充電から30分過ぎまではNEO10Rよりも明るい状態を維持し、40分ほどで同じように一気に落ち込みます。そしてそこから3時間ほどその光量を維持しますが、4時間後には再度落ち込み、ほとんど明るさを失っています。
低照度ながらこの軽さにして長寿命のNEO6R
次にNEO6R(下写真)。こちらはワイドモードのみで上の2機種と明るさが違いすぎるため、グラフを分けてあります。下降のパターンこそ上の2機種と同じですが、こちらは初期の落ち込みも少なく、一定の光量を長時間にわたり維持してくれます。今回は6時間過ぎに一気にほとんどゼロに近くまで落ちていきます。
操作性:すべてシンプルかつ直感的な操作感
操作性は、すべてのモデルにおいて非常にシンプル。操作するボタンは1つのみで、明かりの強弱や種類の変更が可能です。複雑な操作性のヘッドランプが多い中、何も気にせず直感的に使えるのは高評価です。ただ、NEO10RとMH5のワイド・スポット切り替え時のレンズ絞りは、若干力がいるため、これが片手で容易にできるようになるとさらに使い勝手は上がる気がします。
NEO10RもMH5もバッテリーは1本のみなので、交換する時はとても楽です。暗闇でバッテリーを3本も4本も交換するのは集中力もいるしストレスを感じるので、1本で済むのは非常に助かります。
機能性:多機能のMH5、防水のNEO6R、走りやすさのNEO10R
ここではランプとしての性能ではなく、付随する機能をみていきます。3モデルの中では特にMH5の利用状況に即した細かい機能が印象的でした。
ランプ部分はヘッドバンドから簡単に取り外すことができ、個別で使うことができます。ハンドライトとしてそのまま使ったり、クリップがついているので、バッグに取り付けたりして使用することもできます。テント場で調理する時などは簡単に明かりの方向を固定できるのでとても便利です。
MH5には正面に赤色LEDもついています。赤色LEDはテント場や山小屋で回りの人たちに気を遣わずすみそうです。
他にも付属の充電池は、単三電池とほぼ同形で、単三電池を代わりに使用することも可能です。もちろん充電池に比べ性能を100%引き出すことはできませんが、充電できないような環境では、乾電池が使えることは非常に安心感が高まります。
その他の機種で目立った機能を挙げると、NEO6RはIP57と水に漬かっても問題なく使用可能な防水性能です。NEO10R、MH5はIP54とやや劣りはしますが、多少の雨であれば壊れる心配せず使い続けられます。
またNEO10Rは延長コードによってバッテリーを身体付近に配置することができ、後述する重量のハンデを乗り越える工夫ができています。
重量:驚きの軽さのNEO6RとMH5、重いけど工夫次第で気にならないNEO10R
NEO10Rは178g(本体:129g、バッテリー:49g)で、他の2モデルと比べるとやや重め。ただ、バッテリーは後方についているので、実際使ってみると数値ほどの重量感はありません。特徴的なのは、付属の延長コードを使えばバッテリーごとバッグなどへ移動できる点。バッテリーボックスごと外せば、本体重量は71gになり(バッテリーボックスは107g)、頭部へのストレスはかなり減少させられます。
MH5は98g(本体:76g、バッテリー:21g)、NEO6Rは96gとほぼ同重量。しかしMH5はバッテリーの収納位置が本体と同じなので、バッテリーが後頭部にくるNEO6Rと比べると、フィット感はやや悪く走ったりするとぶれやすいので、トレイルランニングやファストパッキングのような高速で移動するアクティビティーには不向きです。
まとめ:各モデルの特徴とおすすめの使い方
NEO10R:明るく・長時間・フィット感で動きの激しいトレイルランニングに最適
NEO10Rは、Ledlenserのトレイルランニング向けモデルです。最大600ルーメンで最大10時間のバッテリーライフと、他メーカーのトレイルランニング向けモデルと比較して安価なのも相まり、長距離を走るトレイルランナーには人気のモデルです。
Ledlenser全般に言えることですが、特にNEO10Rは中央から周辺部まで、照射されている範囲を均一に照らしてくれます。中央は明るいが、周辺部に行くにつれ徐々に暗くなるランプだと、岩や木などで影やができやすかったりと、視界に支障ができます。しかしこのNEO10Rにはレンズとリフレクタ両方を利用したアドバンスフォーカスシステムを採用し、無駄なく、ムラなく照射地点を照らし、障害物による陰影があまり発生しません。
ランプ周りはリングがついていて、これをひねることによって照射の種類をワイドとスポットに切り替えることができます。ワイドは光を分散させより広範囲を、スポットは光を収縮させより遠くを照らすことができます。
ワイド光とスポット光では見え方にかなり差が出ます。ワイド光では足元から数メートル先までしっかり同じ明るさで照らしますが、スポットに変えるとワイド光では見えない遠方まで視認できます。
重量は実測179と重めですが、バッテリーを後頭部に持ってくることで、重量を感じさせないバランス感を保っています。
フィット感の高さも、動きの多いアクティビティに向いています。この高いフィット感は、ゴムバンドが2重になっているのとバッテリーボックスの形状が頭の形に合せ湾曲しているのに由来しています。
バッテリーボックスを後頭部に着けている場合はバッテリーランプが赤いリアライトにもなるので、後方への認識度も安心です。
Ledlenserのアウトドアラインの中では、ハイエンドとされるNEO10R。様々なアクティビティで使用できますが、メーカー自体もトレイルランニングやファストパッキングなどのアクティビティ向けとしていることから、夜間比較的ハイスピードで行動するアクティビティで良さが発揮されるよう、光量、重量、装着感が設定されています。トレイルランニングモデルとなると、結構いい値段がするモデルが多い中、十分使える性能・機能性を持ちながら1万円で購入できる点は、かなり高いアピールポイントでしょう。ボタン一つという操作のシンプルさも、疲れた状態でもいつもと変わらず使える安心感を与えてくれます。
MH5:軽量・多機能・汎用性で登山をはじめとしたアウトドア全般に最適
MH5はアウトドア向けのハイエンドモデル。2020年モデルでは細かいアップデートがあり、機能性・使い勝手ともに向上しています。
NEO10Rと同様、アドバンスフォーカスシステムを採用し、照射範囲をムラなく均等な明るさで照らしてくれます。これはLedlenserを選択するうえで非常に強力なアドバンテージとなるでしょう。明るさは弱・強の2種類で、各20ルーメン・400ルーメンを切り替えられます。テント場や山小屋での手元の作業では、20ルーメンの弱は十分な明るさです。夜間トレイルを歩いたり暗闇で行動する時には強を使えば、400ルーメンという十分な明るさを得られ、明るさに関しては必要最低限ながら、十分な性能です。
ランプ周りはリングがついていて、これをひねることによって照射の種類をワイドとスポットに切り替えることができます。ワイドは光を分散させより広範囲を、スポットは光を収縮させより遠くを照らすことができます。
前モデルではバッテリーを本体から取り出して充電する必要がありましたが、2020モデルからは専用のケーブルで直接充電できるようになりました。充電のために毎度ヘッドバンドから本体を取り外す手間が省けました。しかし、予備バッテリーを持っていく際には、予備バッテリーの充電も本体に装着して充電しないといけないので、その点はやや不便かもしれません。モバイルバッテリーで気軽に充電できるのはありがたい。
MH5は、非常にシンプルながら十分な性能と、汎用性の高いマルチな使い方、使いやすさを向上させる機能性など、十分な性能を持ち合わせています。400ルーメンという十分な光量を持ちながら電池1本で使えるうえに、ヘッドバンドから取り外して、バッグのショルダーストラップにつけたり、テント内に固定して室内のランプとして使ったりと、汎用性も非常に高い。基本的にバッテリーは付属の充電池を使うと思いますが、単三電池も使えるため、長期の縦走や旅行などでも捗りそうでし、災害用に家庭に一つあってもよしと、非常に汎用性の高いモデルです。他メーカーのハイエンドモデルというと、特殊なギミックを持ち合わせたりするのが当たり前のような風潮ですが、それに逆らうかのようなこのモデルを使うと、本当のハイエンドとはなんなのか…と考えさせられます。
NEO6R:キャンプや防災用としてのメインライト、登山やトレイルランでのサブライトに最適
NEO06Rの特徴として挙げられるのは、非常に広い照射角度、高い防水防塵性、軽い装着感が挙げられます。今回テストしたモデル内ではパワー劣るものの、最大240ルーメンとゆっくり歩くには十分な明るさで、Lowモード時は40時間照射可能と明るさ・バッテリーともに安心できる性能を持ちます。
このライトはその近場での使いやすさに注目して、キャンプなど遠くを見る必要のないアウトドアや、軽さ・防水性などから防災用としても最適です。またチェストベルトが標準で付属しているので、メインライトとは別に、足元などを照らすためのサブライトとしても非常に役立ちます。
ランプはとても小型で、バッテリーも後頭部に配置しているので、総重量はMH5とほぼ同重量ながら、バランスがよく装着しているのを忘れるほどです。防水性能は高くIPX7と、一時的に水没した状態(水深1mに30分)でも浸水せず使用できます。バッグの中に入れっぱなしで大雨に打たれても、びくともしない防水性です。
内蔵型バッテリーは交換が可能なので、使いつぶしても安心です。NEO6Rは充電池仕様ですが、乾電池が使える同等性能のNEO4もラインナップされています。