個人的に、軽くて柔らかい、走れるミッドカットブーツを履いてハイキングすることが多くなってかなりの年月が経ちます。
ただそれは、軽い荷物で比較的短期間のルートを歩くことが多くなったからであり、決して走れないトレッキングブーツが時代遅れだということではありません。
MAMMUTから2019シーズンに鳴り物入りで新登場のハイキングブーツ、Ducan Knit High GTXは、一見するとしっかりとした本格トレッキングブーツのようでありますが、履いてみると驚くほど軽快で、まるで軽量ハイキングブーツのよう。その実態はその両方、硬軟あわせもった絶妙なバランスを備えた、新感覚のトレッキングブーツ。
何がどう革新的なのか、今シーズンじっくり履いてみましたので、早速いろいろな角度から紐解いていきたいと思います。
目次
MAMMUT Ducan Knit High GTXの主な特徴
MAMMUT Ducan Knit High GTXは、ミッドソールに独自開発のFlextronテクノロジーを搭載。足の自然な動きをサポートし、圧力を軽減(分散)して疲労を軽減しつつ、ハードな地形や重量でも安定したステップとパフォーマンスの向上を可能にしました。またアッパーはGeorganic 3Dと3D Knitの組み合わせによって圧力とサポート性をコントロールし、立体的に優れたフィット感と快適な履き心地を実現。解剖学に基づいた靴型が快適さをいっそう高めています。アシンメトリーなレーシングの洗練されたデザインも魅力で、最新技術とスタイリッシュなデザインが融合した次世代型トレッキングブーツです。
ここが◎
- アシンメトリーでクールなデザイン
- つま先から足首まですっぽりと包み込むような快適な履き心地とフィット感
- MAMMUT Flextron Technology™による歩きやすさと疲れにくさの両立
- 確かなプロテクションとグリップによる安全性の高さ
- 足首までしっかり守られる防水性
ここが気になる
- 足首の可動性は低く重荷にも強そうだが、実際重荷に耐えるにはシャンクが少し柔らかく感じる
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
重量 | 595g (8UK) |
アッパー生地 | MAMMUT® Georganic 3D Technology™/3D Knitted Textile |
ミッドソール | MAMMUT® Flextron Technology™ |
アウトソール | Vibram® Flextronアウトソール |
防水 | GORE-TEX® |
快適性 | ★★★★★ |
重量 | ★★★☆☆ |
グリップ | ★★★★☆ |
プロテクション | ★★★★☆ |
安定性 | ★★★★★ |
総合点 | ★★★★★ |
詳細レビュー
アシンメトリーでクールなデザイン
アッパーはアシンメトリーなアイレットが配置された特徴的なデザイン。単純にかっこいいし、締め心地やフィット感に影響しない範囲で遊びを効かせるところは嫌いじゃないです。
つま先から足首まですっぽりと包み込むような快適な履き心地とフィット感
つま先の甲部分からシュータン~足首全体にかけて縫い付けられている、ストレッチ性のニット地はこのブーツの大きな独自ポイントの一つ。
このニット、甲部分がシューレースと連動して足全体が適度な圧力でホールドされるだけでなく、かかとから足首にかけてもしっかりフィットすることによって靴との一体感がさらに高まり、普通の登山靴には体感できない極上のフィット感を得ることができます。
この絶妙なフィットはマムートがGeorganic 3Dと呼ぶ、計算された圧力とサポート性コントロールと、3D Knitと呼ばれるニット縫製技術の組み合わせによって可能になっています。
さらにこのニット地は最新のGORE-TEXストレッチ技術を取り入れた防水透湿仕様。小石などの侵入を防ぐだけでなく、首の高い位置までの防水が可能になるなど、一石二鳥にも三鳥にもなっています。
足首付近のシューレースフックは留めやすく、緩みにくいため、使い勝手も良好です。
MAMMUT Flextron Technology™による歩きやすさと疲れにくさの両立
少しトレイルを歩いてみれば、アッパーの飛び抜けた快適さはこの靴の魅力の序章にすぎないことがすぐに分かりました。路面の凸凹にかかわらず常にフラットで安定した足裏感覚。そして着地からけり出しまで、堅牢な登山靴にあるような硬さがなく、適度な柔軟性で足の動きに追従し、思った以上に軽快でスムーズ。安定感と歩きやすさが高い次元で絶妙なのです。そのからくりはずばり、最新ミッドソール技術のFlextron Technology™にあります。
上図にあるように、このブーツのソール内部には足の動きや地面への圧力を考慮して計算された角度のウェーブが入った金属プレート「スプリングスチールソール」が内蔵され、いくつかの効果を生み出しています。
まず波状プレートが地面からの突き上げを防いで凸凹から足を守りつつ着地の衝撃を分散。
そして不安定な地形でも足の無駄な横方向のねじれを抑制しながら、波の角度によって足の自然な屈曲と体重移動を導き、ステップの安定性が保たれるという仕組み。
かかとも三次元的に新設計されたラスト(足型)によって、しっかりとホールド感の高い作りに。靴の中でかかとが浮きにくく、安定感・適度なクッション性が疲れをどこまでも軽減してくれます。
確かなプロテクションとグリップによる安全性の高さ
当然アッパーの周囲には堅牢なプロテクションが備わっているため、日本中のどこを歩いたとしても耐久性は十分。アウトソールはビブラム製、マムートオリジナルのFlextronアウトソールを採用。
濡れた岩場をはじめ、一通りのハードな地形を歩いてみましたが、ほぼすべての地形で十分なグリップを発揮していました。ただ濡れた岩場に関してだけは、ビブラムのメガグリップと比較(同じ場所で左右別々の靴を履いて比較)すると、やはり粘り気が足りないことが分かり、そこは少し残念です。
気になるとしたら
1泊~2泊程度の重量で歩いている限りはまさに快適!の一言。不満はまったくないのですが、例えば数十キロの荷物を背負うような自重が重い登山になると、脚力のない人にとってはソールの安定感やクッション性に限界が来てしまうことはどうしようもないところ。さらに他方、それなりの重量と足首周りまでホールドするニットによって、思い切って走るのは難しいということ。ファストパッキングももちろん可能ですが、早足程度が気持ちよく進めるスピード感でした。
まとめ:こんな人におすすめ
マムートの登山靴は、これまで恥ずかしながら試したことがなかったのですが、今回の一足は正直、感動モノでした(これまでスルーしていてごめんなさい)。スニーカーライクな歩きやすさと、登山靴に必要な安定感、堅牢性、そして疲れにくさを兼ね備え、典型的なハイキングやトレッキングにこれ以上ないほどフィットし、歩くことそのものを楽しくしてくれます。これから山歩きを楽しもうというすべての登山家・登山入門者に愛されるべき一足です。
一方でファストパッキングやスピードハイキングなどのエンデュアランス系アクティビティや、長い縦走ルートを重荷山行、あるいはウィンターシーズンのハイキングなど、用途が偏っている場合には、このモデルではその性能を十分に活かしきれないかもしれません。ただ、そうしたケースには、このDucanシリーズの豊富なバリエーション「Ducan Low GTX」「Ducan Mid GTX」「Ducan High GTX」「Ducan Pro High GTX」などがある程度解決してくれるのではないでしょうか。ぜひともこの快適さを、自分の好きなアクティビティで体感してみてください。