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【忖度なしの自腹レビュー】氷点下20℃の南アルプスで痛感した「軽さと温かさ」の重要性。モンベルの隠れた名品「US EXライト ダウン アノラック」は雪山向け軽量ダウンのの最終兵器

冬の八ヶ岳、硫黄岳に登って以来、すっかり雪山の虜になってしまった自分。冬もテントを背負って山に登っていますが、厳冬期の山岳地帯は言うまでもなく極寒で、自分がそれを身に染みて感じることとなったのが1月の南アルプスでのテント泊。キンキンに冷え込んだ環境で自分はスリーピングバックの中で朝が来るのを待つしかありませんでした。

マイナス20℃、南アルプスの極寒の中で体感した「ダウンウェア」の必要性

極寒の南アルプスでのテント泊は想像を超える過酷な環境だった

厳冬期の雪山山行では保温性の高いスリーピングバッグ(寝袋)や防寒着は必要不可欠です。低体温症や凍傷のリスクがある雪山ではたとえ重たくなったとしても環境に適した装備を持っていくことは当然ですが、少しでも装備を軽くしたい自分としては保温性を担保しつつ、同時に装備をコンパクトに軽量化するには何が最適解なのかを考えました。

保温力の高いウェアは、主に「化繊」と「ダウン」が中綿に入っているのが一般的ですが、高い保温力を発揮し、さらにコンパクトになることから防寒と携帯性を優先させる場合「ダウン」が圧倒的に優位です。そこで注目したのがダウンウェアで、高い保温力と携帯性の高さからを自分の抱える課題を解決できると考えました。

数多くあるアウトドアブランドから軽量でコンパクトでありながら保温力の高いモデルをリサーチし、各モデルを実際に試着した上で自分の好むスタイルに合う一着を選らび、購入したのがモンベル US EXライト ダウン アノラックです。

この記事では、購入に至るまでの厳選から絞り込みのプロセスと、購入したモンベル US EXライト ダウン アノラックのフィールドレビューをお伝えします。自分のように軽量化を図りつつも保温力のあるダウンウェアを探している人や寒さで辛い経験をしたことのある人にとって参考になれば幸いです。

マーケットリサーチ:最強軽量ダウンジャケット候補10選

ダウンウェアはアウトドアシーンに限らず冬の定番ウェア。エスキモーや極地で活動することを目的にされたモデルから、ジャケットの下に着込んでも目立たない薄手のモデルまで各メーカーからラインナップされていますが、自分がダウンウェアを選ぶにあたっては「重量・保温力・コンパクトさ」に優れたモデルを候補として市場に出回る400g以下のダウンウェアを厳選しました。ここでは候補として選んだ10点のハイスペックなコンパクトダウンを選出に至った理由と合わせて紹介します。

1. Black Diamond「ディプロイダウン0.5プルオーバーフーディー」148g(Mサイズ)・¥66,990

調査した中でぶっちぎりの軽量さを誇る1着。4Dナイロンウルトラライトリップストップ生地に1000FPのグースダウンが封入された超ハイスペックモデル。プルオーバータイプでポケットも廃されカリカリに軽量化された尖りまくったウェア。

2. Highland Design 「Superlight Down Jacket」250 g・¥33,000

ULハイキングのパイオニアショップ、三鷹の「ハイカーズデポ」のオリジナルブランドのダウンジャケット。UDD加工された810FPのグースダウンが100g封入されており、候補の中で唯一のフードレスタイプ。状況やシーンに応じて同ブランドの別売のDown Hoodを併用することで幅広く対応できることを期待。

3. Rab「ミシックアルパインジャケット」313g・¥51,700

10D Pertex® Quantumに900FPヨーロピアングースが封入されたモデル。フルジップで左右ポケットもあり使いやすさ抜群。さらに体にフィットするカッティングにより保温力を発揮してくれる1着。

4. mont-bell 「US EXライト ダウン アノラック」215g・¥35,000

7デニールのバリスティック エアライト®・ナイロン・リップストップに900FPのEXダウンが封入されたモンベルの海外販売モデル。ハーフジップのアノラックタイプで着やすさよりも軽量さに振り切った1着。ダウンの品質、重量に対しコストパフォーマンスにも優れる。

5. NORRONA「リンゲン ダウン850 フード」382g・¥68,200

10デニールの極薄リサイクルポリエステルの生地に、850FP ダウンをたっぷり150g封入され、保温力と機能性のバランスが取れた1着

6. ARC’TERYX「セリウム フーディ メンズ」338g・¥68,200

アウトドア界のロールスロイス(だと思っている)「アークテリクス」のダウン。山で着ると言うよりかはタウンユースにしたくなる1着。しかし850FPのダウンが封入され保温性はバッチリ。

7. mont-bell「プラズマ1000 アルパインダウン パーカ」236g・¥41,800

モンベルの軽量ダウンシリーズの最上位モデル。1000FPのダウンが封入され、ポケットなどのベーシックな機能もついていながら驚異的な重量。

8. Rab「ミシックGジャケット」277g・¥63,800

最高級1000FPグースダウンを使用し、7Dの極薄生地にTILT(サーモ・イオン・ライニング・テクノロジー)が採用されていることで保温力が高められている。

9. Goldwin「1000フィルパワースパッタリングフーデッドダウンジャケット」約202g・¥71,500

1000FPのダウンを使用することで少ないダウン量でも保温力が高く、生地にチタンスパッタリング加工を施すことで輻射熱も利用し保温力が高められている。

10. TETON BROS「Bering Inner Hoody」249 g(Mサイズ)・¥49,500

中綿にアライド社製850フィルパワー撥水ダウンを100g封入したアウターとしてもインナーとしても使えるベーシックなデザインの一着。

絞り込みと比較:軽量で保温力の高いダウンウェア3選を比較

上記の10モデルのなかから特に悪天で安心して使えるかを重視し、さらに軽量性・設営性・耐候性・購入しやすさを考えて3モデルを厳選し、比較してみました。

アイテム名 モンベル:US EXライト ダウン アノラック ブラックダイヤモンド:ディプロイダウン0.5プルオーバーフーディー Rab:ミシックGジャケット
イメージ
重量 215g 148g(Mサイズ) 277g
ダウン品質 900FP EXダウン 1000フィルパワーグースダウン(ダウン95%、フェザー5%) 1000FP RDS認証ヨーロピアングースダウン
封入量 非公開 非公開 127g サイズM
生地素材 7Dバリスティック エアライト®・ナイロン・リップストップ 4Dナイロンウルトラライトリップストップ(ナイロン100%、17g/m2)
  • 表地:7D Atmos™ ナイロンリップストップ (23gsm) フロロカーボンフリー DWR (耐久性撥水加工)
  • ライニング:TILT(サーモ・イオン・ライニング・テクノロジー)7Dリップストップ・ナイロン(23gsm)
参考価格 ¥35,000 ¥66,990 ¥63,800
ここがお気に入り
  • 軽さ
  • アノラックになっていることによりコールドスポット少ない
  • コストパフォーマンス
  • ジッパーが邪魔にならない
  • 異次元の軽さ
  • 最高品質のダウン封入
  • コンパクトさ
  • アノラックになっていることによりコールドスポットが少ない
  • ジッパーが邪魔にならない
  • 軽さ
  • 最高品質のダウン封入
  • しなやかさ
  • TILTによる保温力向上
  • フルジップタイプにより脱ぎ着しやすい
ここが残念
  • フルジップタイプに比べ脱ぎ着しにくい
  • フルジップタイプに比べ脱ぎ着しにくい
  • コストパフォーマンス
  • Web限定、購入できるショップが限定底的
  • アノラックタイプに比べると少し重い
  • コストパフォーマンス
Outdoor Gearzine 評価
保温力 ★★★★☆ ★★★★☆ ★★★★★
コンパクトさ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★
重量 ★★★★☆ ★★★★★ ★★★★☆
機能性 ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★★
実用性 ★★★★☆ ★★★☆☆ ★★★★★
コストパフォーマンス ★★★★★ ★★☆☆☆ ★★☆☆☆

モンベル US EXライト ダウン アノラックの購入の決め手

10点の候補から3つに絞り、実際に着用し、徹底検討し選んだのがモンベル US EXライト ダウン アノラックです。

保温力を重視するのであればとにかく中綿が多く入ったダウンを選択することが1番簡単であり、もっとも失敗の少ない選択となりますが、できる限り軽量化を図りたい自分としては保温力と携帯性のバランスのいいダウンを見つけることが課題でしたが、モンベル US EXライト ダウン アノラックは215gと軽量ながら900FPのダウンがしっかりと封入されていて(封入量は非公開)バランスの良いダウンです。

自分のこれまでの厳冬期における雪山経験からすると、マイナス15℃〜マイナス20℃まで冷え込むような環境であっても行動中にダウンウェアを着用することはありませんでした。歩き出しは寒さを感じたとしてもそれは少しの間だけですぐにじんわりと汗をかいてくるため自分には行動着としてのダウンウェアは必要ありません。モンベル US EXライト ダウン アノラックはアノラックタイプになっていることでフルジップタイプよりも脱ぎ着はしにくいですが、自分がダウンを必要とするのは行動中ではなく停滞時です。テント場で過ごす時や休憩時などに着ることを目的としているためアノラックタイプの着用しにくさは気になりませんでした。

そして性能とは直接関係がありませんが価格も決め手の一つです。他の候補と比べても保温性と携帯性はトップクラスに高いにもかかわらず、比較した中でもっともコストパフォーマンスに優れており経済的に考えてもかなり優秀なダウンだったことでモンベル US EXライト ダウン アノラックを選びました。ここからはモンベル US EXライト ダウン アノラックを北アルプスなどの山岳地帯で使用してきて感じたことをお伝えします。

モンベル US EXライト ダウン アノラックの主な特徴

モンベル US EXライト ダウン アノラックは可能な限りシンプルに設計され、必要な機能と付け加えられた海外販売モデルのアノラックタイプのダウンウェアです。

保温剤には900FPの高品質EXダウンを使い、生地には7Dの極薄シェル素材バリスティックエアライトが採用されていることで保温性と軽量コンパクト性に優れ、フロントに設けられた大型のポケットを配置し、両側からアクセス可能で、胸元まであるハーフジップは帽子などを被ったままでも脱ぎ着しやすくなっています。フードの作りも大きめになっており、ヘルメットに対応するほか、後頭部のベルクロを調整することでどんな状況でもフィットさせることが可能です。

付属するスタッフバックに入れることで約12×20cmのサイズになり、重量は215gと非常に軽量なため保温着として携帯しやすいだけでなく、厳しい環境では行動着として使用することもできるのがモンベル US EXライト ダウン アノラック(以下USアノラック)です。

お気に入りポイント

気になったポイント

使用インプレッション

テスト環境

【期間】10月〜11月
【気温】-8℃〜10℃
【山域】北アルプス
【天気】晴れ、暴風
【アクティビティ】登山

215gの軽量さ、コンパクトさ。なのにしっかりとダウンが封入されているためあたたかい

1Lサイズのボトルとの比較

「軽さ」という観点ではぶっちぎりに軽量だったブラックダイヤモンドのディプロイダウン0.5プルオーバーフーディー(148g・Mサイズ)ですが、着用してみると薄手で、どちらかといえば行動着として使うためのモデルであることを感じました。USアノラックよりも高品質の1000FPダウンが使用されていますが、試着した限りでは封入されているダウンの「量」はUSアノラックの方が多いと感じました(どちらもダウンの封入量は非公開のため、実際に試着してみての体感値となります)。実際に着てみるとしっかりとダウンが入っておりモフモフ。保温力が高いことを感じることができました。

USアノラックは最軽量とはいかないまでも215gとかなり軽量。高品質の900FPのしなやかなダウンに7Dの極薄生地が採用されており、さらにはフルジッパーではなくハーフジップになっていることでダウンウェアとしては最軽量クラスと呼べる仕様になっています。

XLサイズの実測値。収納袋(6.2g)を含めた重量

秋の北アルプス・白馬槍ヶ岳、マイナス6℃で体感した保温力

生地はシェル素材になっているため単体でも風をシャットアウトし、十分な保温力を発揮してくれますが、USアノラックはインナーとしてもギリギリいけるボリューム感になっているため、強風時にはシェルの下に着ることでより効果的に保温してくれました。行動中のレイヤリングにUSアノラックを追加するだけで想像以上の保温力をえることができます。

試着した際も着用した瞬間から暖かさを感じたUSアノラックですが、その実力をしっかりと体感できたのが晩秋の北アルプス・白馬鑓ヶ岳でした。10月末、まだ雪が降る前でしたが気温はマイナス6℃。強風だったこともあり体感気温はさらに低く感じる中、日が昇るまでの約1時間を山頂で過ごせたのはUSアノラックを着用していたからこそでした。

白馬鑓ヶ岳山頂、冷え込む中でご来光の瞬間を待てたのはUSアノラックのおかげ

アノラックになっていることによるコールドスポットがないこと。お腹周りがスッキリでゴワつかない

アノラックタイプのウェアはフルジップタイプに比べて脱ぎ着がしにくいというデメリットを持つ反面、ダウンウェアのような中綿の入ったウェアはコールドスポットがないというメリットを持っています。

フルジップタイプのダウンジャケットもジッパーの裏側にチューブが設けられていることでコールドスポットができない設計になっているモデルが多いですが、アノラックタイプのUSアノラックは特に保温したいお腹周りを確実に温めてくれます。

アノラックタイプはお腹周りに邪魔になるものがない。ジッパーがあることで脱ぎ着も容易

雪山では着るウェアの枚数も多くなります。その際にジッパー付きのウェアが多くなることで座った時やバックパックのウエストベルトを装着時にお腹周りにジッパーのゴワつきを感じることがありますが、USアノラックのようにお腹周りにジッパーがないことで腹部のゴワつきは軽減されました。

アノラックタイプはフルジップタイプと比べれば脱ぎ着しにくいというデメリットも持ち合わせていますが、USアノラックはみぞおち辺りまでジッパーがあるため、帽子などを脱がずともガバっと着ることができストレスを感じませんでした。それに自分のようにレイヤリングの一枚としてではなく、単に停滞時の保温着として考えている人にとっては脱ぎ着のしにくさは気にならないでしょう。

調整可能な大きめのフードに、ハンドウォーマーなど機能も充実

USアノラックは余計な機能がないシンプルな構造ですが、自分にとってほしい機能は揃っていました。まずはポケット。左右からアクセスできるポケットは繋がっていて、これがテント場などではすごく活躍してくれました。

ヘッドランプやグローブ、リップクリームなど小物を入れておくことができ、両側からアクセスできることでストレスフリー。大型のポケットなのでお湯を入れた完成前のアルファ米など仕込めば暖をとることもできるしとにかく便利。整理ができず、テント内が散らかりがちな自分にとってはこのポケットがあるおかげで無くし物をする頻度も減りました。

ポケット内部が繋がっていることで大型のポケットになっている

フードもヘルメットをした状態でも被れるほど大型で、後頭部には調整用のベルクロもあるためヘルメットやキャップなどシーンによって調整可能。両サイドの顎の部分にあるコードを引けば顔まわりを絞ることができるため頭周りへの冷気の侵入を防ぐことができます。

まとめ:軽くてあたたかい、そしてコスパに優れる優秀ダウン

モンベル US EXライト ダウン アノラックは保温性と携帯性のバランスがとれたダウンウェアでした。軽くて暖かい上にコストパフォーマンスも抜群に良く、経済面も優れています。

就寝時の防寒ということならシュラフ(寝袋)のスペックをあげた方が有効ですし、レイヤリングに組み込むには保温力がありすぎる上、アノラックタイプで脱ぎ着がしにくいことから誰に対しても使いやすいと思えるようなアイテムではありませんが、雄大な景色を楽しんだり、写真撮影を楽しんだり屋外にいる時間が長くなる人におすすめの一着です。

執筆:Yosuke.C(ヨウスケ)

不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。

春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。

20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。

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