軽さをとるか、快適さ・強さをとるか。テント選びでは常に悩ましい問題です。どんなギアにでも当てはまりますが、丈夫で快適なギアは重くなりがちで、逆もまた然りです。
少し前、とにかく軽さNo.1を競い合っていた時代には、快適性度外視のとんがった超軽量テントも多く見られていました。ただ最近はというと、どうやらその揺り戻しで、軽さを犠牲にすることなくバランス良く快適性や堅牢性が実現された優等生型テントがトレンド。そんな欠点の少ない快適山岳テントの代表例のひとつがNEMOの新しくアップデートされた、ダガーストームです。
居住性や建てやすさといった使い勝手に優れ、その上で2人用テントとしてはそこそこ軽量、そしてドーム型ならではの安定性でも優れた仕上がりになっている、高い次元でバランスの良いテント。発売から約半年とやや遅くなりましたが、実際に使ってみたレビューをお送りします。
目次
ダガーストーム 2Pの大まかな特徴
実用的な新しいアイデアと、使い勝手を重視した軽量さが魅力。常にアウトドアギアに新しい風を吹き込み続けるNEMOの3シーズン向けバックパッキングテント、ダガーストーム 2Pは、2名が快適に過ごせることを前提に設計された変則ドーム型テントです。ポールの形状に工夫をこらし、2名でも余裕を感じるほどの室内空間の広さを確保しながら、軽量性・耐候性・便利な収納パーツ類も備えた高いバランスの良さが魅力です。
おすすめポイント
- 広い室内と前室を備えた高い居住性
- 設営の簡単なポールシステム
- 入り口が両開きで高い通気性と出入りしやすさ
- ヘッドライトの光を拡散させるネットポケットなど使い勝手の良いパーツ類
気になったポイント
- 雨天時のプロテクションとレインフライの防風性
- 両ドアを閉めたときの通気性
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
就寝人数 | 2名 |
最小重量 (実測/公式) 本体・フライ・ポール |
1489g / 1510g |
最大重量 (実測/公式) 最小+ペグ・ガイライン・収納袋 |
1711g / 1750g |
実測重量詳細 |
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本体素材 | メッシュ/15D ナイロン リップストップ |
フライ素材 | 15D Sil/Silナイロン リップストップ (2000mm) |
フロア素材 | 30D PeUナイロン リップストップ (3000mm) |
ポール素材 | DAC社製 Featherlite NSL 9.6+9+8.5mm |
室内サイズ | 幅229 × 奥行127 × 高さ106 |
フロア面積 | 2.9㎡ |
前室面積 | 1.1㎡ × 2 |
収納サイズ | 本体:50×16cm |
付属品 |
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オプション |
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居住快適性 | ★★★★★ |
設営・撤収の容易さ | ★★★★★ |
耐候性 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
携帯性 | ★★★☆☆ |
汎用性 | ★★★★★ |
総合評価 | ★★★★☆ |
詳細レビュー
パーツは本体・フライ・ポール・ペグ・ガイラインです。収納バッグは3つあり、本体/フライ、ポール、ペグ/ガイラインの3つに分けて収納する事ができます。
本体・フライ用の収納袋は二重になっており、引伸ばせばポールも一緒に収納できます。長期保管時や、パッキングの収納スペースに余裕がある時は全てをひとまとめに収納できるので便利です。
ポールはDAC社製 Fatherlite NSL Greenで、独自のジョイントによって1つに連結されており、折り畳めばワンピースになります。黄色の部分とグレーで色分けされており、向きなどが分かりやすく直感的に設営できるようになっています。
ペグはアルミ製のものが8本付属します。この8本あれば本体・フライを固定することができます。ガイラインも4本付属していますが、使うにはペグが余分に必要となります。
重量は、最低重量 (本体626g・フライ413g・ポール450g)で実測値1489gと、1500gを切っています。ペグは1本17gで、最低限必要な本数8本であれば134gでした。ガイラインは4本で31gです。各収納袋は本体36g, ポール13g, ペグ8gとなっています。 ペグ・収納袋・ガイラインまで全て合わせると1711gと、公式重量の1750gとほど同じ値で、通常公式重量より実測重量は重くなりがちななか、好感がもてます。
細かい部分まで行き届いた設営しやすさに好感触
本体とポールの接続部分は全部で6箇所ありますが、まずは底辺4箇所をポールと接続します。ポールはワンピースですが、展開すると非常に独特な形状をしています。この構造が室内空間を広げるために非常に工夫されているポイントです。
ポールの先端は丸くなっているので、本体とは簡単に接続できます。
4点を接続し、本体のフックを吊り下げるとひとまず自立はしますが、黄色のポールが残っています。このポールが室内空間を広める工夫の一つとなっています。
このポールも同じ様に接続すれば、頭上の空間が非常に広く拡張されます。昔ながらのドーム型との違いは、長辺両端の予め曲げ加工を施したジョイントポールと、この短辺に伸びるポールによって側面がより垂直に立ち上がるため、テントの頂点付近以外の空間も飛躍的に広げられたことです。
あとはフライを被せれば完成。
これまでのドーム型テントの常識を覆す居住性の高さ
入り口は両長辺に2箇所あり、2名がそれぞれから出入りすることができます。入り口が1つしかない2名用テントに比べストレスが少ないだけでなく、開放感があって心理的にも広さが感じられます。
入り口はメッシュにもなるので、通気性を確保したい時・暑い時などはとても重宝します。両入り口をメッシュにしておけば、空気が籠もることなく快適です。
普段のテントになれていると、室内空間に対する感動はひとしおです。底面は127cm×229cmと、2人用テントとしてはそこまで広いという程ではないのですが、頭上の付近の広さがそのスペック以上に快適さを体感させてくれます。隅に座っても天井まである程度の高さがあるので、ストレスも少なく済みます。無駄にデカいテントというわけではなく、限られたスペースに期待以上の広さを感じさせてくれる、見事な作りです。
天井にはいくつもループが備わっているので、ロープを張り巡らせたり、物をぶら下げたりと、様々な用途があります。ちなみに本国には天井用のギアロフトがアクセサリで販売されていますが、日本では取り扱っていない模様。側面・天井にはポケットが合計6つもついているので、荷物の整理には重宝します。
全室の広さも特筆すべきです。フライを完全に締めた状態でも個々に広々とした全室があり、調理はもちろんのこと、バッグや荷物などを置いておけば、室内空間をより広く使うことができます。
実際に使ってみたインプレッション
とにかく快適性が非常に高い。通常のテントだと頭上にいくほど狭くなりますが、側壁が立っているおかげで、頭上の空間がしっかりキープされています。通常の山岳用のテントだと、2名用となっていても、お互いの距離は非常に近く、寝返りをうつと隣の人を起こしてしまう、という程度でしたが、このダガーストーム2Pは余裕を持って2名が過ごすことができます。
特に両方の入り口を開けて寝転んだときの開放感は格別です。
入り口も非常に広く取られているので、テント内から調理したり、なにか作業する際も広々としていてストレスはありません。やはりこのあたりは、長辺側に入口があるテントを使ったときに感じる大きなメリットでしょう。
室内の6つのポケットのうち天井付近の2つは、光を拡散させる特殊なメッシュ生地が使われていて、ヘッドランプを入れるとテント全体に光を拡散してくれます。150ルーメンほどのヘッドライトを入れて点灯させれば、テント全体に光が行き渡り、これがまた思っていた以上に便利でした。こういう細かい点を見つけるたびに、NEMOには感銘させられます。
それでも気になったポイント
穏やかな天候での快適さ・使いやすさに関しては言うこと無しでしたが、フライの構造は少し悩ましいものを感じました。長辺側は地面まで這うようにフライを伸ばせますが、短辺側のフライは高く持ち上がっているので、通気性は良い反面、風に煽られやすく、雨が強い場合は地面からはねた水によってインナーテントはかなり濡れてしまいます。もちろんインナーテントも高めに設定されたボトム生地部分は防水仕様なので浸水まではしてこないでしょうが、足や手が当たった時は冷たさを感じますし、冬季に濡れるとインナーテントが凍結する恐れもありそうです。
また、換気性について、入り口を締め切った際には、つっかえ棒によるベンチレーションもあまり期待できません。その点にも注意が必要です。
この通気口は、テント内側からも開閉可能です。
まとめ:こんな人におすすめ
軽いとはいえど、同じNEMOの2人用テントであるタニ2Pや、ホーネットストーム2Pと比べると重量は重くなってしまい、超軽量テントとは言い切れません。ただし居住快適性の高さは段違い。他メーカーのモデル等と比べても重すぎる訳ではない、まだまだ軽い部類に入るとすれば、この特徴は十分魅力的です。
欠点が比較的少なく、登山など本格的なアウトドアでも安心の耐候性というのがドーム型テントの魅力のひとつですが、その魅力をベースに、より軽く、より居住性の高さを追求したのがこのダガーストーム。あれもこれも捨てきれない欲張りなハイカーにとって、このうえない満足を与えてくれるのではないでしょうか。