常に創意と工夫に富んだアウトドア道具でぼくたちを驚かせ続けているアメリカのアウトドアメーカー、NEMO。今回レビューするのはNEMOが創設以来手掛けるテントの新作、ドラゴンフライ バイクパック 1Pです。
お、Outdoorgearzineはバイクパッキング・ギアのレビューも始めたのか?と思われるかもしれません。確かにこのテント自体は名前の通りバイクパッカーのためのテントなのですが、実はそのベースとなっているのは本国アメリカで発売されているバックパッキング用のdragonfly™ ultralight backpacking tent。バイクパッキング向けにアレンジされたこちらのモデルは、細かい部分で普通の登山用にはない味付けがなされていますが、それらを含めても、いやむしろ逆にそこが他の登山やバックパッキングテントにはない便利な機能として受け入れられるといっても言い過ぎではない、そんな新感覚の使い心地が魅力のテントともいえます。
早速、ドラゴンフライ バイクパックはどんなテントなのか、そしてどの辺りがバイクパッキングだけでなくバックパッカーも幸せになれるテントなのか?レビューしていきます。
目次
NEMO ドラゴンフライ バイクパック 1Pの大まかな特徴
NEMO ドラゴンフライ バイクパック1Pは本国アメリカで発売されているバックパッキング用のdragonfly™ ultralight backpacking tentを、バイク(自転車)パッキングでのキャンプに最適な使い心地になるようにアレンジされた自立式・ダブルウォールテント。軽さと居住性の理想的なバランスを考え、計算された自立式構造に、広い室内と大きな前室、多彩な収納を備えています。NEMOがバックパッキングテントで培ってきたノウハウをつぎ込みつつも、インナーテント・フライ・ポールはもちろんのこと、収納袋までバイカーのために設計された専用仕様。バックパッキングでも十分使用できる軽量性・機能性も持ち合わせた汎用性の高いNEMOらしさが光るテントです。
おすすめポイント
- 室内の快適性
- 随所に散りばめられた便利な物置き
- 広い前室とランディングゾーン
- ハンドルにも取付可能な防水仕様の圧縮収納袋
- コンパクトな収納(特にポールが短いこと)
気になるポイント
- 耐候性(特に雨)
- 本格登山にはやや不安な耐久性
- 足元がやや狭くなる
- メッシュモデルのみであること
主なスペックと評価
スペック | |
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アイテム名 | NEMO ドラゴンフライ バイクパック 1P |
就寝人数 | 1名 |
携行時実測重量 (g) |
最低重量:1007
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インナーテントメイン素材 | 15Dナイロン/メッシュ(FRフリー) |
インナーテントボトム素材 | 30D PeUナイロン (耐水圧:1,200mm) |
フライ素材 | 15D Sil/PeUナイロン (耐水圧:1,200mm) |
ポール素材 | DAC Featherlite® NSL 8.5mm |
室内サイズ | 224(間口) × 80(奥行) × 102(高さ) |
フロア面積 | 1.9㎡ |
収納サイズ | 本体:37×14.6 |
付属品 |
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評価 | |
居住快適性 | ★★★★★ |
設営・撤収の容易さ | ★★★★☆ |
耐候性 | ★★★☆☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★☆ |
携帯性 | ★★★★★ |
汎用性 | ★★★★★ |
ドラゴンフライ バイクパック 1P 詳細レビュー
バイクパッカーのために設計されたコンパクト・軽量テント
インナーテント・フライ・ポール・ペグ(9本)・ガイライン(4本)がセットになっています。収納袋は、テント・ポール用、ポール用、ペグ用と3つありますが、ポールが短く折りたためるため、本体の収納袋にすべて収納可能です。ペグ袋は少し大きめかつ丈夫な作りなので、ペグのほか自転車の工具なども入れれるようになっているのかもしれません。
ポールは2組、メインのポールは両端とも2股に分かれていて、もう一本のサブポールは天井の空間を広げるために使用します。ポール素材はは安心のDAC社のFeatherlite® NSL 8.5mm。ペグは全9本で、付属のガイラインをすべて張っても足りないことはない、過不足なしの本数です。1本19gとそこまで軽量ではないものの、丈夫な構造にすることで抜けにくく、耐久性も相当高くなっています。
インナーテントは、フロア以外は全メッシュでかなりの通気性ですが、フロアは30Dの丈夫な生地を使い耐久性と防風性を高めています。
ここがバイク用らしい部分ではあるのですが、フライは暗めの色合いで反射素材は一切使われていないステルス仕様。野宿しても外部から見つかりにくい防犯のための仕様です。
最後に各パーツの重量です。最小重量(インナーテント・フライ・ポール)は1006gと、わずかに1000gを上回りました。ペグ・収納袋もすべて含めると1303gでした。内訳はインナーテント323g、フライ306g、本体収納袋81g、ポール+収納袋389g(377+12)、ペグ+収納袋187g(19.5×9+収納袋12.8)です。
NEMOらしい、直感的にできる設営
では設営をしていきましょう。
入り口は長辺側になるので、まず位置を確認してからインナーテントを平置きします。
次にポールを伸ばしてインナーテント四隅に固定します。写真を見てわかるようにポール両端は二股になっていますが、各端は色が異なっていて、入り口に向かって右が黄色、左がグレーになっています。
インナーテントコーナーとポールを固定する部分の色と一緒なので、直感的に間違えないようになっています。暗がりで作業する時や、疲れている時にはかなり助かる配慮です。ポールの固定が終わったら、ポールにフックをかけインナーテントを立ち上がらせます。
短いサブポールは、メインポールの上から交差させるようにインナーテントに接続して、フックをかけます。このサブポールのおかげで天井の空間はかなり広々。こんなに天井の広いソロテント、なかなかないのではないでしょうか?
フライをかぶせれば完成です。フライの固定もワンタッチなので、戸惑うことはないでしょう。ペグは9本付属していて、付属のガイラインは4本使うとちょうど9本使うようになっています。ガイラインはなくてもしっかり張力はあるので、強風や強雨とかでなければガイラインで張らなくても大丈夫そうです。
随所に散りばめられた、バイクパッカーが考えたバイクパッキングのための機能(ハイキングでも快適・便利)
このテントのデザイナーの一人は自身がバイクパッカーだそうで、自身がバイクパッキングでテントに欲しかった機能をもりこんでいるようです。
まずバイクパッカー向けに設計されたのがわかりやすい点は、一式すべてがハンドルに取り付けられるという点でしょう。収納袋が防水のロールトップ式になっているので、すべて突っ込んで圧縮すればコンパクトになり、ハンドルにそのまま付けられます。写真のようにフラットバーより幅が狭いドロップバーにも取り付け可能です。収納袋は防水かつ耐久性のある厚い生地なので、雨でも路面から石などが飛んできても中身に影響はないでしょう。
前室には、ランディングゾーンというスペースを作ることができます。室内に入れたくない汚れものを置いたり、逆に地面の濡れや泥から荷物を守ることもできます。テント内で使わないものはここで保管・整理ができるので便利。デザイナーが自転車乗りだからこそ思くアイディア。
インナーテントにはデイジーチェーンがついています。これは濡れたグローブを干したり、食器などをぶら下げたりと、使い道はいろいろありそうです。
1人用にしては快適性の高すぎる室内空間
足元はやや狭くなっていますが、1人で寝るには十分な広さ。床面積としてはそこまで広くないですが、前室のランディングゾーンを使えば荷物は整理できるので、十分です。
インナーテントは総メッシュなおかげで通気性は抜群。しかし、防風性のあるフロア生地は適度な高さがあり、特に頭が来る辺はかなり高くまでフロア生地が伸びているため、寝ていても風が抜けて顔をかすめる様なことはありません。
天井はサブポールのおかげで高いだけでなく、かなり広く取られています。これがより圧迫感をなくし快適性の高さを感じさせてくれています。大きなメッシュポケットと、ヘッドランプの光を拡散させてくれるヘッドランプポケットもついています。
自転車を置くとまではいかないせよ、前室はかなり広く設定してあるため、ランディングゾーンに目いっぱい荷物を置いても、反対側で調理するなどかなり余裕があります。
この広い前室のおかげで、ソロテントながらかなりのボリューム感です。
頭側のインナーテントのフロア生地が高めに設定してある分、フライは短くなっているので、もし大雨など降れば直接雨が当たるでしょうから心配です。
長編側の入り口側のフライはすべてまくり上げることもでき、解放感も非常に高い。テントの中から自転車の整備。ということもできそうです。
まとめ:こんな人におすすめ
商品名に「バイクパック」と付いているため、一見登山やハイキング愛好家にとっては敬遠してしまいそうなテントですが、ここまで読んでいただいた皆さんにはそう考えることが早計であることを分かっていただけたと思います。
ベースのバックパッキング向けモデルからして、重量と居住性、そして使い勝手のバランスが高次元で融合した、非常に優れた自立式テントなのです。本国アメリカでは両方ラインナップされていますが、日本では残念ながらバックパッキングモデルは展開されていません。このバイクパッキングモデルは、重量こそトータルで100gほど重いですが、収納袋が防水・圧縮可能、ポールが短くコンパクトに収納できる、荷物を整理するためのデイジーチェーンやランディングゾーンがある……など、ハイキングや登山用と考えても十分活用可能なメリットは、逆にこのモデルの方が個人的に選ぶ価値があるのではないかと思ってしまうくらいです。
さすがに本格登山用というにはやや耐候性・耐久性に不安があるかもしれません。ただ、居住性(快適さ)を切り捨てたくないけど軽量なテントを探しているハイカーにとっては、バイクパッキングやツーリングなどの自転車旅行をはじめハイキングやバックパッキング、キャンプまで幅広いアクティビティで使える、とても汎用性が高い、良バランスの素敵なテントといえるでしょう。