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もうテント選びで迷わない。NEMO「ドラゴンフライ オズモ」は、軽さ・広さ・耐候性・収納性のすべてを諦めたくない山好きが最後に辿り着く山岳テントの終着駅【実践レビュー】

「軽さを選べば広さは我慢、広さが欲しければ、軽さは諦める」——。多くの登山者やハイカー達が長年強いられてきたこのトレードオフ問題に、とうとう終止符が打たれる時が来た。このテントを目にして、そして実際に一夜を過ごしてそう感じずにはいられませんでした。

NEMO の2026年モデルとして刷新された『ドラゴンフライ オズモ(Dragonfly OSMO™)』シリーズは、単なる前モデルのマイナーチェンジではありません。ミニマリストに愛される「ホーネット」の軽快さと、居住性の極み「ダガー」の快適さ、そして日本の厳しい環境に特化した「タニ」の安心感……。これまでNEMO が培ってきたフラッグシップモデルたちのエッセンスを凝縮し、最新の独自素材「OSMO™ファブリック」で仕上げたこのテントは、まさにNEMO の自立式バックパッキングテントの「集大成」と位置づけるのにふさわしい、「すべて」兼ね備えることを目指した野心的なモデルです。

ではなぜこの自立式ダブルウォールテントが山岳テントの「集大成」であり「終着駅」と言えるのか。さっそくフィールドで使ってみた実感を交えてレビューし、その理由を紐解いていきます。

NEMO「ドラゴンフライ オズモ™ 1P」の主な特徴

NEMO「ドラゴンフライ オズモ™ 1P」は、軽さと居住性の理想的なバランスを追求した自立式ダブルウォールテントです。NEMO独自開発のテント専用ファブリック「OSMO™」は100%リサイクル素材かつPFASフリーでありながら、従来生地と比較して強度が20%向上し、さらに濡れた時の伸縮を3分の1に抑えることで、雨天時の「生地の弛み」というナイロンの弱点を克服しています。テント構造では、独自のハブ構造やPrecurve™(プリカーブ)クロスバーなどとの組み合わせによって頭上のボリュームを従来比34%も拡大。前室には泥や水からギアを守る防水ストレージタブ「Landing Zone™」を装備し、軽量テントの常識を覆す快適な居住空間を実現しました。自立式ダブルウォール構造による設営のしやすさ・耐候性・結露しにくさといったメリットも持ち合わせたドラゴンフライ オズモ™ 1Pは、現代のハイカー・登山者が求めるすべての要素を注ぎ込んだ、NEMOの技術の結晶です。

お気に入りポイント

気になったポイント

主なスペックと評価

アイテム名 NEMO ドラゴンフライ オズモ™ 1P
就寝人数 1名
最小重量 1.0 kg(インナー、フライ、ポール)
フライ素材 OSMO™ リップストップ(ナイロン/ポリエステル複合)
本体・フロア素材 OSMO™ リップストップ(ナイロン/ポリエステル複合)
ポール素材 DAC Featherlite® NFL/NSL + DIAPOLE™リサイクルアルミポール
室内サイズ 長さ223 cm × 幅89 – 81 cm × 高さ100 cm
出入り口の数 長辺に1
収納サイズ 45×10×10 cm (45-50cm × 14-16cm)
フロア面積 1.9 ㎡
前室面積 0.8 ㎡
Outdoor Gearzine評価
居住快適性 ★★★★★
設営・撤収の容易さ ★★★★☆
耐候性 ★★★★★
耐久性 ★★★★☆
重量 ★★★★☆
携帯性 ★★★★☆
汎用性 ★★★★★
適したアクティビティ 無雪期(3シーズン)のテント泊登山や縦走、ロングトレイルハイキング

詳細レビュー

居住快適性:軽くても「広さを諦めない」独自開発ポール構造や収納システム

ここ最近のテント市場では、もう最小重量が「1kg」以下だったとしてもさほど驚かれなくなっています。それほど「軽くて当たり前」の世界になっている。加えて、かつてのような「軽さのためなら何でも我慢するぜ!」といったストイックな軽量思想はトーンダウンし、誰もが手軽に軽量スタイルを嗜むようになった結果、軽いだけでなく色々な意味で「よりストレスやリスクの少ない」作りが求められてきています。

セット一式(左からスタッフサック・ポール・ペグと補修ポールとガイライン・防水ストレージタブ・本体・フライシート)

こうした条件を考えるとテントの構造は、設営場所を選び、設営時にペグ打ちが必須となる「非自立式」ではなく、どこでも立てやすくて安定性・安全性の高い「自立式ダブルウォール」が第一候補になってきます。

ただ、このタイプのテントはどうしても構造上「室内空間が狭い」「パーツが多くて重く嵩張りがち」という弱点があります。このためこれまでの自立式ソロテントといえば、テントが飛ばされないという安心感と引き換えに、身体を思い切り伸ばすことができない「窮屈な住み心地」を覚悟しなければなりませんでしたが、このテントは全く異なります。

「1kg」という軽さを維持しながら、どんな場所でも安心して設営でき、強い雨風にも耐え、それでいて「広々した」極上の居住快適性を提供してくれる。そう、『ドラゴンフライ オズモ』で何よりもまず驚いたのは、一見すると他でも見たことのあるようなシンプルな作りの中に仕込まれた「限られた重量のなかで最大限の広さを確保するための斬新な仕掛け」の数々でした。

壁は垂直に立ち、天井は水平に広くしてヘッドスペースを最大化する独自のポール構造

例えばドラゴンフライのポールは、各セクションが直線ではなく所々大きくカーブを描いています。この新開発の「Precurve™クロスバー」によって壁面は垂直に近い角度で立ち上がり、そして生活エリア側(下写真でいうと右側)の頭部分がちょうど最も天井が高い位置にくることで、同じスペースでもより体感的な広さが感じられるようになっていました。

右側の生活エリアのポールが垂直に立ち上がり、テントの頂点がより生活エリアに近い位置に来るようにデザインされた自立式ポール構造

そしてすべてのポールを一体化させた独自のハブ構造により、天井がすぐに落ち込まず水平に近い状態で広がり、頭上はソロテントとは思えないくらいに広々しているように感じられました(前モデル比で34%もアップしたといいます)。実際に座ってみると、肩周りの空間に余裕があるため、テント内での着替えや支度などのさまざまな動作が驚くほどスムーズです。

独自設計のハブ構造によって、天井の水平エリアが最大限広くなっている

天井の高さは100cmと特に高いというわけではないのに、感覚的には非常に広々と感じられる

幅広(64cm)のマットを置いても縦横に十分余裕のあるフロア

荷物を室内に置かなくて済む ⇒ 室内がより広く使える「Landing Zone™」による前室の効率的な活用

前室に防水ストレージタブをセットできるようになったことで、気兼ねなく荷物を置いておけるようになった「Landing Zone™」

さらに、前室に配置された「Landing Zone™」が秀逸です。これは前室の半分を覆う防水のバスタブ状収納スペースで、雨の日に泥だらけの靴やザックを直接地面に置かずに済みます。この「寝室の外にある清潔な荷物置き場」という発想は、限られた空間を最大化するNEMOらしいスマートな解決策と言えるでしょう。

どこまで置けるか試してみたところ、ほとんどすべての荷物を置けてしまった

ダブルウォール × インナーメッシュ × 天井部のベンチレーションによって結露の心配も限りなく少ない

テストで使用した限りですが、インナーテントの上部にメッシュ素材を採用したダブルウォール構造と、激しい雨の中でも開放したままにできるフライシート上部のストラット(支柱)付きベンチレーションが空気の流れを妨げず内部の湿気を効率的に逃がしてくれるため、テントの風通しは基本的に良好で熱気がこもる心配はありませんでした。結露の心配もかなり低いと思われます。

さらには今回フライシートのフロントドアジッパーが上下どちらからでも開閉可能になり、状況に応じてさらに換気量を増やすカスタマイズが可能です。

フライシートの入口ジッパーが上下開閉式になったことで、より換気性も向上。

設営と撤収:シンプルで誰もが迷わない設営。ただ雨の中での設営は注意

長い一日が終わり、疲労困憊の中で行うテント設営は、小さなわずらわしさがストレスに直結します。「ドラゴンフライ オズモ」はこの点をカラーコードと独自の金具でできる限り直感的に失敗せずに立てられるように配慮されています。

設営は①四隅をペグで留めポールをセットし、②インナーテントのフックを吊り下げて固定し、③レインフライを被せて梁にセットし、④ポールとフライをベルクロ留めし、⑤要所ペグダウン、⑥必要に応じて前室にランディングゾーンをセットすれば完了。

ポールの先端とテント四隅の「Axial™ライトコーナーアンカー」は、グローブをしたままでもワンタッチでロックでき、一度固定すれば設営中に外れることがありません。1人でテントを立てる際、対面のコーナーに刺しておいたポールが抜けちゃって苛立ちを覚えたことがある人はぼくだけではないでしょう。このロックがあれば、もうその心配はいりません。

ポールをソケットに差し込んで固定できる四隅は1人での設営時にとても便利

また、ポール・インナーのウェビング・フライのバックルがすべて色分けされているため、暗闇でも「黒は黒、緑は緑」と合わせるだけで迷うことなく設営が完了します。

「Axial™(アクシアル)ライトコーナーアンカー」は色分けされたポールとソケット同士を色で合わせることで迷うことなく素早い設営が可能

天井部分のフライシート固定はループをクロスポールに引っ掛けるだけと簡単

ただ、他のテントでもそうですが、どうしても馴染めないのが、きれいに張るためにポールとフライをベルクロ留めするひと手間。これは何とかならないものか。雨の日の設営でかなりイラっと来ました。

その他、構造上どうしてもインナー・フライを順番に別々にセットしなければならず、フライ・インナー一体型のテントに比べると設営のスピードは劣ると言わざるを得ません。雨の中での設営ではフライを被せる前にインナーが濡れないよう注意が必要です。これがもし解決されたら、それはもう理想というしかなく、テントに関して求めることは何一つなくなります。

よりズレなくフライをセットするために、ポールにフライの内側をベルクロ留めするのだが、ここだけは正直面倒で不満

撤収時は新形状の「Divvy Cube™」スタッフサックが地味に活躍します 。ロールトップ型で拡張・圧縮ができるため、ポールを含めて入れてもよし、またポールを分けてもちょうどよいサイズに収納することができます。また従来の円柱型ではなく長方形のデザインを採用したことで、バックパックの底や隙間にデッドスペースなく収まりやすく、パッキング効率が向上しています。

パッキング時、ポールを抜いてスタッフサックを圧縮するとナルゲンボトル大程度まで圧縮できる。とはいえポールはあらかじめ曲がっているためややかさばる

耐候性:軽くて、雨にも傷にも強くて、弛まず、長持ち。他ブランドにはない唯一無二の「OSMO™ファブリック」

このテントを他メーカーでは真似できない唯一無二の魅力的なテントたらしめているのは、新素材「OSMO™ファブリック」にあるといっても過言ではないかもしれません。

従来の超軽量・高耐久テントで一般的に採用されていたのはナイロン(リップストップ・シルナイロン)です。ただナイロン素材は、水を多少含む性質をもっており、濡れると生地が伸びて弛みが発生し、これによってフライがインナーに張り付いて結露を誘発しやすくなるという弱点がありました。

しかし、ポリエステルとナイロンの複合素材である「OSMO™」ファブリックは、ポリエステルの濡れても伸びない性質により、濡れた時の伸縮率が従来の3分の1に抑えられています。これが一晩中激しい雨に打たれてもピンと張った状態を維持し続け、耐風性と通気性を損なわず快適な室内をキープしてくれるわけです。また、従来の4倍(持続力では5倍)という撥水性能の高さも見逃せません 。

雨の中でもハリを保つ「OSMO™ファブリック」

最初は半信半疑でしたが、実際に雨の中で張ってみると、通常のリップストップナイロンを使用した他のモデルと比べて、フライシートのたるみは確かに少ないことが分かりました。雨の日にテントに出入りしようとして、水浸しでぐったりとなったフライシートの入口が体に当たって不快な思いをした経験のある方なら、大きな改善と言えるでしょう。この保水しにくくなった素材は、雨での撤収時にもテントが水を吸って重くなるようなことがなく、速乾性も高いため、長い縦走登山ではその差が歴然となります。

しかも強度的に一般的な生地に比べ20%向上、耐加水分解性も高いので経年劣化の恐れも抑えられていると、過酷な環境でガンガン使いたい山屋にとっても納得の耐久性を備えているのだから、まさに隙が無いスーパーファブリックです。

実用性:他にも室内での「暮らし」を快適にする細部の数々

Nightlight Pocket™(ナイトライトポケット)は、天井付近に配置された光を拡散する特殊な素材のポケットです。ヘッドランプを入れるだけで、下写真のようにテント内を均一で柔らかな光が包むランタンのような照明に早変わりします。

その他、、天頂部と足元の両方に大型のギアロフトを備え、天井部には細引き用のループもキチンと備えているなどギアロフト類も充実。頭側にもちょっとしたスタッシュポケットが配置されており、スマートフォンや眼鏡などの小物を整理して置くのに困りません。

また、Gatekeeper™(ゲートキーパー)タイバック(下写真右下)は出入口で巻き上げたドアを固定するためのパーツです。一般的なトグル式と異なり、片手で素早く、確実にドアを固定・開放できます。

テント内の収納は、メッシュのスタッシュポケットが天井部の中くらい(左上)、足元に大きめ(右上)、入り口脇に小さめ(左下)に配置され必要十分。出入口のドアを留める「Gatekeeper™ タイバック」(右下)も便利。

競合との比較:他ブランドのテントと比べてどうか?

登山やハイキングなど山岳アクティビティ向けの自立式ダブルウォールテントは、アウトドアテント市場ではまさに激戦区で、洋邦問わずさまざまな選択肢があるのはご存じの通りです。そんな中でこの「ドラゴンフライ オズモ」と比べてどうなのか。

例えば国産ブランドのほぼすべての自立式テントは基本的に4シーズンでの使用も見据えていることもあり、ドラゴンフライと比べると耐久性は高い一方で重く、居住性も低くなります。またarataなど軽量タイプの国産モデルはドラゴンフライよりもやや軽くはなりますが、やはり居住性に関しては圧倒的にドラゴンフライが勝っています。

その他、海外ブランド勢で非常にクオリティが拮抗しているのが「Big Agnes コッパースプール UL1」と「DURSTON X-Dome 1+」です。これらは居住性の高さはどちらもドラゴンフライと負けず劣らずトップクラス。ただコッパースプールの方が軽量である点、またX-Domeの方が設営が簡単な点ではドラゴンフライでもやや及びません。一方でOSMOファブリックの「雨でも弛まず耐久性が高い」という点に関しては、どちらのモデルよりも勝っているといえます。

あくまでも過去に自分が使用した限りでの印象ですが、ざっくりとした比較が下の表です。比較するうえでは価格面も考慮する必要がありますが、参考までに。

ドラゴンフライを基準として比較モデルが勝っている場合は「○」を、劣っていると思われる場合は「×」を甲乙つけがたい場合は「—」をつけています。

競合モデル 軽さ 居住性 耐候性・耐久性 設営・機能性 寸評
NEMO ドラゴンフライ オズモ 1p
mont-bell ステラリッジ 1/アライテント エアライズ1/Finetrack カミナドーム1/PuroMonte VL-19 × × × 雪への対応や対候・耐久性ではやや劣るが、重量、頭上空間の広さを含めた共住快適性ではドラゴンフライが圧勝。
arata AX-79/ゼインアーツ ヤール1/アライテント SLソロ × × 軽さでは劣るが、快適性やギア収納、居住空間の余裕はドラゴンフライが上回る。収納機能についてはarataも頑張っている。
Big Agnes コッパースプール UL1 × 共住性・収納などの機能性は拮抗しているが軽さはコッパースプールの方が僅かに上。ただ濡れた時の生地のハリ、強さという点での対候性はオズモが有利。
DURSTON X-Dome 1+ × 軽さ同等レベルだが、1+人用という広さ・設営の簡単さではX-Domeが上回る。一方OSMO素材の対候性と前室の使いやすさ、必要な設営スペースの小ささではドラゴンフライが優れている。
MSR ハバハバLT 1 × × コンセプトは近いが、重量と濡れても伸びないOSMO素材、独自の収納機能等で一歩リード。

まとめ:3シーズンのあらゆる山行において「最も弱点が少なく、頼りになる」山岳テント

NEMO「ドラゴンフライ オズモ」は、前モデル以上に重量と居住性、そして使い勝手のバランスが高次元で融合した、かなり嘘偽りないレベルで「欠点のない」山岳テントでした。それはNEMO 歴代の名品の長所を絶妙な塩梅で取り入れつつOSMO™という新テクノロジーで繋ぎ合わせ、従来の自立式ダブルウォールテントが持っていたデメリット(生地の弛み、居住空間の狭さ、重量増)を見事に補完した、個人的にはまさにNEMOのバックパッキングテントの到達点といいたい。

1.0kgという超軽量の部類に入りながら、雨の日でも弛まない信頼性と、座ってくつろげる広さを両立した一張りを、他のブランドで見つけるのは容易ではありません。

確かに価格こそ手に取りやすいといえるものではないかもしれませんが、一度この快適さを体験してしまうと、もう元の不便な軽量テントには戻れないでしょう。無雪期での長期縦走、ロングトレイルまで、軽さも快適さも一切の妥協を許さないハイカーにとって、さまざまなテントを使ってきた末にたどり着く終着駅となる資格は十分にあると感じました。あなたがもしあらゆる場面あらゆるスタイルで活躍してくれる万能テントが必要なら、このテントはきっと答えになってくれるでしょう。

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