サイトアイコン Outdoor Gearzine "アウトドアギアジン"

PAAGOWORKS「ZENN DOME SHELTER & ZENN 2 POLE SHELTER 」実践レビュー:快適さの895gか、極限の410gか。全く異なるアプローチで挑んだ「日本の山の最適解」【軽量シングルウォールシェルター】

装備の中で重たい道具の上位に入る「テント」ですが、最近では軽量でありながら快適性も高いテントは続々と市場にラインナップされています。

しかし、レースで上位を目指す人や、タイムを重視する人、快適性よりも重量を優先させたい人、とにかく体を休める空間さえあればいい人にとっては「快適さ」を追い求めたテントは無駄になってしまいます。

軽くても、「快適さ」を求める人もいれば、「快適さは最低限でいい(だから1gでも削りたい)」人もいます。

PAAGOWORKS(パーゴワークス)のZENNシェルターはそんな要望にピッタリハマるかのように、チョイスを可能にしてくれました。軽さだけではなく快適さも必要な人にぴったりな「ZENN DOME SHELTER」 、とにかく軽量で、1gでも軽く。しかし体をしっかりと休める空間がほしい人にぴったりな「ZENN 2 POLE SHELTER」。

どちらも同じ「ZENN」と名の着くシェルターですが、見た目も構造も全く異なる2つのシェルターの実力を確かめるためにフィールドへと出かけてきました。

PAAGOWORKS:ZENN DOME SHELTER & 2 POLE SHELTERの主な特徴

左:ZENN 2 POLE SHELTER、右:ZENN DOME SHELTER

キャンプ用品からトレイルランニングバックパック、ハイキングギアまで取り扱う日本のブランドPAAGOWORKS(パーゴワークス)が「日本の山の最適解」をコンセプトに開発されたZENNシリーズ。ZENN DOME SHELTER & ZENN 2 POLE SHELTERは「山で安心して眠れること」、「雨風に強いこと」にこだわり、日本の山で使うことを目的に設計されたシェルターです。

ZENN DOME SHELTERは、吊り下げ式のクロスフレーム構造を採用した1人用のシングルウォールシェルターです。最小重量は本体とポールを合わせて895gという軽さでありながら、スタンダードなクロスフレームとハブ構造によって高い剛性を備え、風速20m/sの耐風テストでも形状を保ち、安定した居住空間を維持します。

本体生地には20Dのリップストップナイロンを使用し、シリコン/PUコーティングと縫い目のシーム加工によって高い防水性を確保(耐水圧2,000mm)。止水ファスナーが雨の侵入を防ぎます。出入口は長辺側に配置されており、奥行き80cmと大きめに設計された前室は、靴やバックパックを置いても余裕があるため、悪天候時の調理や荷物の整理にも活躍し、快適な空間を確保できます。

テントポールには超軽量で高強度なDAC社製のFeatherlite NSL(φ8.5mm)を採用。高品質なアルミ合金(7001およびその派生のTH72M)を使用することで、細径でありながら十分な耐風性能・耐荷重性能・居住快適性を備えたシェルターです。

ZENN 2 POLE SHELTERは2本のトレッキングポールを使用して設営する1人用シェルターです。最小限のパーツを使い、生地の継ぎ目を減らすことでわずか410gという軽さを実現。ZENN DOME SHELTERと同様にPUコーティングと縫い目のシーム加工によって高い防水性を確保(耐水圧2,000mm)し、止水ファスナーが雨の侵入を防ぎます。トレッキングポール2本(105〜125cm)とペグ6本で素早く直感的に設営でき、長めのガイラインを標準装備することで、硬くてペグが効きにくい地面にも対応できる設計になっています。

足元側はフレームを内蔵し、空間を立ち上げることでバックパックや靴を置ける実用的なスペースを確保。10cm高のバスタブフロアによって浸水を防ぎ、風で押し潰されにくいため不整地でも設営可能です。上半身まわりにゆとりを持たせたダイヤモンド型のフロア形状は就寝中の圧迫感を軽減し、限られた重量のなかで最大限の快適さを追求したシェルターです。

ZENN DOME SHELTERのお気に入りポイント

ZENN DOME SHELTERの気になったポイント

ZENN 2 POLE SHELTER のお気に入りポイント

ZENN 2 POLE SHELTER の気になったポイント

主なスペックと評価

項目ZENN DOME SHELTERZENN 2 POLE SHELTER
就寝人数1名1名
最小重量895g410g
主素材20D ナイロン シリコン/PUコーティング20D ナイロン シリコン/PUコーティング
耐水圧2,000mm2,000mm
ポール素材DAC Feather lite 8.5mm
サイズ100 × 205 × 95 cm100 × 235 × 95 cm
ドアの数11
収納サイズ27×15×10cm27×12×10cm
   前室あり
付属品ポール2本、ガイライン5本、収納袋(※ペグ、グランドシートは付属しません) 収納袋 (※ペグ、グランドシートは付属しません)
Outdoor Gearzine評価
居住快適性★★★★★★★★☆☆
設営・撤収の容易さ★★★★★★★★★☆
通気(換気)性★★★★☆★★★☆☆
耐候性★★★★☆★★★★☆
耐久性★★★☆☆★★★☆☆
重量★★★★☆★★★★★
携帯性★★★★☆★★★★★
汎用性★★★★☆★★★★☆

詳細レビュー

「軽さ」を突き詰めつつも「快適さ」も妥協したくない人にとっての最適解「ZENN DOME SHELTER」

ZENN ドームシェルターはクロスフレーム構造になっており、この構造のテントは現在の登山用テントとして最も主流な形であると言えます。実際に山岳地帯のテント場に行ってみると一目瞭然で、細かい形状の違いこそあれ、ほとんどがクロスフレーム構造のドームテントです。


「ドームテント」といってもダブルウォール構造とシングルウォール構造がありますが、ZENN ドームシェルターは後者にあたります。そのためダブルウォール構造のドームテントに比べ、幕が一枚少ない分軽量で、最小重量は895gと1kgを切る軽さを誇ります。しかし、この重量は現在の市場ではそこまで驚くような軽さというわけでもありません。

ですが、このドームシェルターは他の軽量テントよりも居住性において優れているポイントがいくつもあり、そのメリットを考えると、この895gという重量は数値以上の高い価値を持っていると感じました。このシェルターはスペックだけでは分からない、価値のある快適空間を確保できるシェルターであることを体感してきたのでお伝えします。

サイドリフターによるテント内の最大活用と耐風性能の向上

ZENN ドームシェルターは、長辺側にテント内空間を最大限に広げるサイドリフターがあります。ツェルトなどによく用いられる機能ですが、このサイドリフターが付いているドームテントは珍しく、しかし非常に高い効果がありました。

ドームテントには珍しいサイドリフター付き

サイドリフターで内部を拡張することにより、テント内で最も長く過ごす中心部の空間が広がります。これにより圧迫感が軽減されるのはもちろん、幕体に体が触れにくくなるため、結露が付着するのを防ぐことができます。シングルウォール構造では結露の発生が避けられないため対策が必須となりますが、このサイドリフターのおかげで、着替え中などに結露した幕体に触れてしまう頻度を減らすことができました。

さらにこのサイドリフターは耐風性能においても効果を発揮してくれます。強風下ではテントをしっかりとペグダウンし、張り綱で補強しても思った以上にテントは揺れますが、サイドリフターがあることでテントが風に煽られた際も揺れを最小限に留め、幕がバタつくのを抑制してくれました。

このサイドリフターとテント四隅のペグダウン、張り綱をしっかりと張ることで耐風性は非常に高くなり、稜線上のテント場でも対応できる性能を備えています。

最大80cmの奥行きの前室、手の届きやすい場所にあるダブルジッパー

設営時のサイズが100×205×95cmあるZENN ドームシェルターは、一般的な1人用のドームテントよりも床面積は少しだけ広めです。そのため1人で使用する場合、寝るスペースのほかにバックパックなどを置くスペースが十分に確保されており、快適に過ごすことができます。

さらにそれだけでなく、奥行きが最大80cmある広い前室を有しており、悪天候時における調理場の確保や、登山靴・バックパックを前室に収納してテント内をより広く使うことが可能になります。天井高が95cmで少し低さを感じたものの、前室が広いおかげでスペック以上の居住空間の広さを感じることができました。

最大で80cmある奥行きがある広い前室。テント内からジッパーに手が届きやすいのも使いやすかった

ZENN ドームシェルターは出入りのためのジッパーがテント内から手の届きやすい場所にあります。これは地味なポイントかもしれませんが、非常にありがたい仕様でした。テントによっては前室の最も奥行きのある箇所にジッパーが設けられているテントもあり、その場合、テント内から手を伸ばしても届きにくく、出入りするために苦労することもありますが、手元にジッパーがあるおかげでそのストレスは皆無でした。

ダブルジッパー構造になっていることで、テント内から外の様子が簡単に伺うことができ、天候を確認するのも便利でした。

ダブルジッパーになっっていることで外の様子を確認しやすい

吊り下げ式で簡単に設営

ZENN ドームシェルターは吊り下げ式の構造になっているため、設営が非常に簡単です。シェルターの4隅にポールをセットし、立ち上げた後にフックをかけていくだけで完成するため、誰でも直感的に設営できます。ダブルウォールテントのようにインナーテントとフライシートの2幕で構成されているテントに比べ、1幕で構成されている分、よりスピーディーに設営ができます。

剛性を高めるハブ構造。向きがあるので設営時に注意が必要

自分が初めて設営した時も2分かからずに設営することができました。自立式のため、設営後の移動や微調整も容易です。非自立式テントと比べ、設営後に風向きに合わせて向きを変えたり、整地をやり直したりと後から調整が効くため、快適な居住スペースを作りやすい仕様になっています。

設営後も簡単に動かせるのはドームテントの強み

居住性の高さと設営しやすさはピカイチだった。軽量テントへのステップアップにぴったりなZENN DOME SHELTER

ZENN ドームシェルターは、入り口と天井部にベンチレーションが設けられ、効率的な換気によって結露の発生を抑える構造になっています。とはいえ、シングルウォール構造である以上、結露を完全に防ぐことはできません。

さらにフロア生地は20Dと堅牢なテントと比較すると薄く、地面との擦れによる摩耗に対して、グランドシートなどで対策が必要になるのと、吊り下げ部の補強も軽量化を優先させた作りになっているため、耐風性が高い構造であっても耐久性において懸念すべき箇所であることは間違いありません。そう言った点で「テント」と言わず、あくまでもシェルターとして位置付けているあたりは留意しておきましょう。テントとして使うと「こんなはずではなかった」と言うことになりかねないためご注意を。

しかし、1人用としては広めに設計された室内サイズや、サイドリフターによる空間拡張のおかげで幕体と体が干渉しにくい構造、さらに広々とした前室を備えたZENN ドームシェルターは、自分にとって快適すぎると言ってもいいほど贅沢なシェルターでした。フロアがあることで気密性も高く、浸水にも強い、頼りになる一幕です。

必要なのはぐっすりと眠ることができるスペースのみ。1gでも軽くしたいハイカーやタイムを追い求める人なら選ぶべきは「ZENN 2 POLE SHELTER」

ZENN 2ポールシェルターZENN ドームシェルターと比べ、快適性において多少の犠牲を払ったとしてもより切り詰めたパッキングを目指す人におすすめのシェルターです。その分、得られるものもは「軽さ」です。

ただし、ただ軽いだけではなく、快適に眠るための空間確保、そして耐風性の高さも備えているため、厳しい環境下において極限まで装備を絞るならZENN 2ポールシェルターです。

圧倒的な軽さ、極狭スペースにも設営が可能なサイズ

ZENN 2ポールシェルターはフレームにトレッキングポールを2本使用して設営する構造のため、本体重量は410gと非常に軽く、クロスフレーム構造のZENN ドームシェルターの半分以下の重量になっています。

設営時のサイズは100 × 235 × 95 cmで、長辺はやや長めなものの、ちょうど1人が横になり装備を置くことができるほどのサイズ。狭いと言い切ってしまってもいいサイズですが、狭い分、設営に必要な面積も少ないということです。1人が横になれるスペースさえあれば設営できてしまうため、稜線上の狭いテント場であっても設営する場所に困るということはまずないでしょう。

稜線上の混み合うテント場でも狭小スペースに設営可能

ペグ6本とトレッキングポールだけで設営ができる容易さ

非自立式シェルターであるZENN 2ポールシェルターは6本のペグと、2本のトレッキングポールで設営することができます。自立式と比べ、設営後は動かせないのはデメリットとも言えますが、ドームテントよりもペグダウン箇所は少ないため、設営は非常に容易でした。

4隅にペグダウンした後、トレッキングポールを取り付け、それぞれのポール部をペグダウンすれば完成です。張り綱など張る必要もないため、短時間で設営することができました。

頭部の圧迫感の無さ。足がテントに干渉しないバスタブ構造

天井高は95cmありますが、尖っているため、頭部のスペースは狭く、座った状態では快適な居住空間とは言えないものの、寝た時の頭部周りの圧迫感はゼロです。このシェルターはテント内で座ってくつろぐ事よりも、横になり休息する際にいかにストレスをなくせるかを優先させていると感じました。ワンポールテントなどは天井高が120cmほどあったとしても、横になった時にテント壁面が顔の目の前にくる形になるため、どうしても圧迫感があります。ZENN 2ポールシェルターは寝た時に最も天井が高く、空間が広い位置に頭部がくる設計のため、横になった時の快適さは非常に高く、また横幅も同様に頭部、肩に近い位置がもっとも幅がある構造になっていることで寝返りなどの際の動きにくさもありませんでした。

ZENN 2ポールシェルターは前室がないため、濡らしてはいけない装備は全てテント内に収容する必要がありますが、足元に短いフレームが内蔵されており、空間を立ち上げることで足元に荷物を置けるスペースが確保されています。この構造によりテント内のデッドスペースはなく、就寝時に不必要なヘルメットや登山靴などの置き場にすることができました。

足元に荷物を置けるスペース

斬新な構造でテントが「たるまない」仕様。耐風性の高さ

既存のテントにはないユニークで斬新な構造なのが、設営すると頭部の床が「浮いた」状態になる点です。最初は設営方法を間違えているのかと思いましたが、これが正しい形です。

頭部のフロアが浮いているため、グランドシートがはっきりと見える

この手のシェルターは四隅に均等にテンションをかけないと生地がたるんで剛性が下がってしまうという弱点があり、自然の不整地で均等にテンションをかけるのは容易ではありません。特に岩稜帯などフラットな場所が少ない環境では困難を極めます。ZENN 2ポールシェルターはこれを解決するため、あらかじめ頭側のフロアを数センチ浮かせた設計になっています。中に人が入ることで適切なテンションが加わり、全体の剛性を保つ仕組みです。

この仕組みにより、フロアに流れてきた結露がすべて寝ている自分のもとへ集まってしまうという別の問題は発生するものの、生地がたるまない分、高い耐風性能を維持できるというメリットを備えた構造になっています。

スペック上の重量だけで比較するのであればファイントラックのツェルト(2ロングで340g)やSix Moon DesignsのGatewood Cape(310g)など、より軽いシェルターは存在しますが、ZENN 2ポールシェルターはしっかりとしたフロアがあるため気密性が高く、また20m/sの強風にさらす過酷な試験でもしっかりと形を保ち、安定した居住空間を維持する耐風性能を備えています。この耐風性能のすごいところは、ドームテントのように全部で13、4箇所のペグダウンをしているドームテントと違い、わずか6本のペグダウンでこの結果を生み出していると言うことです。

実際に自分がフィールドを訪れた際も、稜線上のテント場は常に風が吹いており、時折テントが煽られるほどの強風が吹く環境でしたが、全く問題なく朝を迎えることができました。悪天候時において、ZENN 2ポールシェルターの耐風性能と気密性は、安心して休息を得るために極めて重要であったと感じます。最低限の大きさながら、高い耐風性と安心感を備えている上での410gは、十分に納得できる重量です。

クセは強め、結露対策は必須。しかしぐっすりと眠れるスペースの確保にはもってこいのZENN 2 POLE SHELTER

ベンチレーションはポールの設置場所に2箇所、出入り口に1箇所用意されていますが、出入り口のものは悪天候時に使用できません。そのため雨に降られた際はテント内の換気が不十分になりやすく、ZENN ドームシェルターに比べて結露もかなり目立ちました。
雨風を防げるテント内にいたとしても「濡れ」への対策が必須となるため、初心者エントリー向けとは言えず、ある程度の経験が必要なシェルターだと感じました。しかし、それらの対策ができる人にとって、ZENN 2ポールシェルターは1日中歩き疲れた体を休めるには十分すぎるほどの機能を備えており、限られた重量のなかで最大限の快適さを追求したシェルターだと実感しました。

まとめ:日本の山で使うことを考え抜いた異色のシェルター。あなたにマッチするのは「快適さ」か「極限の携帯性」か

PAAGOWORKSのZENN ドームシェルターとZENN 2ポールシェルターは、「日本の山の最適解」という共通のコンセプトを持ちながらも、まったく特徴の異なる2つのシェルターでした。
それぞれのメリット・デメリットも明確で、どこでどう使いたいのか、どのような山行を想定するのか、自身の経験やレベルにによって非常に選びやすくなっています。ZENNシリーズは、日本の山で3シーズンの山行を楽しむためのシェルターとして、間違いなくおすすめできるシェルターです。

執筆:Yosuke.C(ヨウスケ)

不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。

春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。

20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。

山道具図書館(Mountain GearLibrary)

モバイルバージョンを終了