Outdoor Gearzine "アウトドアギアジン"

エアーマット界の雄、THERM-A-REST ネオエアーシリーズの最新バージョンでは気がかりだった「アレ」がついに改善されてますますスキが無い

フィールドで長い一日を過ごした後は疲労回復と心身のリフレッシュが不可欠。そのために最も大切なことは落ち着いた食事、そして何よりぐっすりと眠ることです。ぬくぬくとした寝袋と心地よいマットレス(スリーピングパッド)は、過酷なアウトドアの寝床を暖かく快適な寝室に変えてくれます。

このマットレスの重要性にいち早く気づき、約50年前に空気を使用した最初のパッドを発明したのがTHERM-A-REST(サーマレスト)。これまでも革新的なスリーピングパッド製品を幾度となく世に送り出し、現在でもトップランナーであり続けています。そんなサーマレストが2009年にリリースし、現在まで多くの登山家に愛用されているロングセラーシリーズである「NeoAir(ネオエアー)」が一部のモデルで今シーズンアップデートされました。

従来モデルでもすでに抜群の性能と使い勝手によって方々から高い評価を受けてきたこのシリーズですが、これ以上さらに何が変わり、何が進化したのか、今回はバージョンアップしたモデルのひとつである ネオエアーXライトNXT を試してみることができたので、さっそくレビューしていきます。

ネオエアーシリーズでずっと言われ続けてきた「アレ」がついに改善されたのだ

ネオエアーシリーズといえば、軽さと断熱性の高さ、さらにはスピーディなセッティングといった、スリーピングパッドで重視される多くの要素で高い品質を兼ね備えた、世界中で高い人気を誇るエアーマットレスとして知られています。

ただ同時に多くのレビューで「気になる点」として挙げられがちなのが例のアレ。そう、寝返り時などに発生するマットの「カサカサ・パリパリ」といったノイズです。

正直なところ、個人的にはそこまで耐えられないほどではないと思っていたのですが、世間一般の意見をちょっと覗いていみると、やはり気になる人は気になるようで……あのカサカサ音が耐えられないという人のコメントをネット上で見つけることはそれほど難しくありません。

この長年言われてきた厄介な「音の問題」が、今回のモデルチェンジでついに改善されました。

音が小さくなる仕組み

ネオエアーシリーズのノイズは、主にマットの内部(中央部)に挟み込まれたアルミ熱反射板から発せられています。旧モデルまではこのアルミ熱反射板が「1枚のフィルム」でできており、「カサカサ・パリパリ」といった音はこれが屈曲する際に出ていたわけです。今回の新モデルでは、このアルミ熱反射板が「3枚の(より薄い)フィルムを重ねた構造」になりました。こうすると、フィルムが折れ曲がったときに発せられる音が旧モデルに比べてかなり小さくなります(下写真)。

実際にどれくらい音が小さくなったのか?

仕組みが分かったところで、実際の音を聞いてみましょう。改善といったって寝るときの騒音ですから、違いは明らかといってもとても微妙な違いです。以下の比較動画を耳を凝らして聞き比べてみてください(スマホで聞いている人はイヤホン推奨)。

なお下の動画では一応スマホの騒音計アプリを真ん中に置いて、なるべく音を客観的に比べられるようにしてますが、環境も普通の室内ですし、アプリ自体の性能もそれほど精密ではないのであくまでも参考程度に見てください。

こうして比べてみると、旧モデルでは明らかに「パリパリ」とハッキリと聞こえるほどであったノイズが、新モデルでは(無音ではないものの)平均的な断熱フィルム入りエアマットに比べて気になるほどではなくなっていることが分かります。ここまでくれば、もう気になるという人はいないのではないでしょうか。

実際にテントの中に二つを並べて寝比べてみると、(習慣とは怖いもので)これまで「気にならない」と思っていた自分が嘘のように旧モデルのノイズが邪魔に感じられ、逆に新モデルでは小さくなった音が他の音(服とシュラフの擦れる音など)に溶け込んでしまい、ノイズとして際立って感じられることはほとんどなくなりました。

その他にも細かい点で性能がUP

静音性が改善されたという大きな進化の他にも、新モデルではいくつかの点で性能が向上しています。

クッション性(厚み)UPで寝心地がさらに快適に

新旧厚みの比較。※新モデル(左)は実際のところ中央付近ではもう少し厚みが増しているため、点線位置を微妙に高めにしています。

より厚みのあるマットレスは、ごつごつした地面でもロフトを維持しより豊かなクッションを提供してくれることから、基本的に寝心地も良くなることは想像に難くありません。その点、今回のバージョンアップによって膨張時の厚みは6.4cm から7.6cmへと1cm以上厚みが増しました。これでより石や木の根が目立つ凸凹地形でも安定してフラット床を提供することができるし、また特に荷重が集中しがちなサイドスリーパー(横向き寝)にとっても朗報です。

独自の水平方向バッフルも相変わらず調子がいい。細かく分かれたバッフルは過剰な反発を最小限に抑え、各チューブ間の溝(凹み)も浅く、滑らかな仕上がりになっていることで横になったときの凸凹感もほとんど感じられません。

断熱性(R値)UPでさらに暖かく

さらに、新バージョンでは厚みが増したことなどもあって、断熱力を表す「R値」も4.2から4.5へと若干向上。元々「重量当たりの断熱性の高さ」はこのシリーズの魅力のひとつであったので、アップデートによってますますダントツの「軽さ&暖かさ」を突っ走ることに。なおR値=4前後という値は、厳冬期を除いたオールシーズンをカバーすることができる汎用性の高いレンジ。またサーマレストの基準でも、XライトNXTは3シーズンからオールシーズン対応と位置づけられています。

気になる重量・収納性・使い勝手は?

サイズ・重量・収納性・使い勝手の良さは相変わらず◎

色々進化した一方で別の部分が退化してしまっていたとしたら笑い話にもなりません。気になる他の部分に関してもしっかりとチェックしてみます。

まず広げたときの(厚み以外の)サイズに関しては、旧モデルも新モデルもまったく変化なし(下写真)。そして最も気になるであろう重量についても「新:354g、旧:340g」と、ほぼ同じで一安心です。

サイズも重量もほぼ変化なしとなれば、パッキングサイズもやはり同じように変化なし。相変わらずポンプサックを含めてもほぼ1Lのナルゲンボトルサイズで収まるという圧縮性の高さが光ります(下写真)。

そして前モデルから搭載された新しいバルブシステム「WingLock Valve」は健在。大きく頑丈なバルブが簡単な操作で素早いエアー注入と排出を可能にしています(下写真)。

まとめ:トップクラスの軽さと断熱性だけでなく、使い易さと極上の快適な眠りまでも手に入れたエアーマットレスの最終形!?

アップデートしたネオエアーXライトNXTは、元々高い評価を得ていたネオエアーシリーズの唯一ともいえる「静音性」という弱点が見事に克服されていました。さらに他にもさまざまな細かい点で性能の向上や機能改善がみられた一方で、その他の部分に関して以前よりも悪くなったという部分がまったくといっていい程見られないというスキのなさ。前モデルでもすでに死角なしと感じていた自分にとっては、もうお腹いっぱいのところにそっとデザートが置かれたような気分です。

もちろん、そもそもエアーマットが合わないという人や、水平バッフルが苦手、予算レンジが合わないという人にとっては別の選択肢が適しているに違いありませんが、品質だけでいえば、少なくとも軽さと断熱性、操作性、耐久性を重視する(つまりほとんどすべての)ハイカーにとってこれ以上完成度の高いエアー注入式スリーピングパッドを探すのは難しいのではないでしょうか。

ちなみに「ネオエアーXライトNXT」は長さ・幅違いで4種類のバリエーションがあり、さらに長方形フォルムの「ネオエアーXライトNXT MAX」が、最高峰の断熱性を実現した「ネオエアーXサーモ NXT・ネオエアーXサーモ NXT MAX」などがラインナップされており、季節や用途、好みに応じて豊富な選択肢が用意されているのもうれしいところ。

より完成の域に到達した快適エアーマットで、みなさんよいハイキングシーズンを。

モバイルバージョンを終了