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THULE Topio 30 バックパックレビュー:まだまだTHULE の素晴らしさを知らない人が多すぎる

ヨーロッパはもちろん北米、アジアと世界中のアウトドアブランドが流通するここ日本は、世界的にみても山道具好きにとって非常に恵まれた環境にあるといえます。そんな日本では、非常に素晴らしいクオリティにもかかわらず残念ながら多くの人の手に届く前に埋もれていってしまうアウトドアブランドが数知れず存在するのも事実。

こうした隠れた良ブランドのひとつであり、このサイトを始めてからずっと個人的に推し続けているのがスウェーデン生まれの総合キャリア・バッグメーカーTHULE です。もともと車載用キャリアや旅行用カバンで世界的なトップブランドであったTHULE ですが、アウトドア向けバックパックに参入したのは2015年。デビュー当時からその完成された機能性の高さと斬新なデザイン性の高さに、新しい風を感じずにはいられませんでした。

今回はこのTHULEが昨年リリースしたハイキング向け軽量・快適バックパック、Topio 30 をレビューします。「お店でチラっと見かけたことがあるけど、よく知らないメーカーだったから何となく敬遠していた」というあなたにこそ読んでもらいたい。早速レビューをどうぞ。

Thule Topio 30の主な特徴

Thule Topio は日帰りハイキングから軽装の泊まり山行に最適な、30リットルと40リットルの2サイズ展開の多用途型バックパック。軽量ながら通気性と肌当たりの良さを備えたフレーム入りテンションメッシュ構造の背面パネルは背面長の調節も可能で、男女問わず幅広い体型に対して心地よいフィット感を提供。身体のラインに沿ったハーネス形状や高重心フォルムなどによって身体への負担を少なく安定した行動を可能にします。収納面では便利なサイドジッパーを使用して簡単にアクセスできるメイン収納をはじめ、フロント、トップ、サイド、ヒップベルト、とパックを下ろさずに出し入れできる便利な収納がまんべんなく配置されています。サイドジッパーポケットには付属のレインカバーも搭載。トレッキングポールが収納可能なギアループやストラップ、目立たないラッシングポイントなど、クリーンな外観からは想像できない豊富な外部アタッチメントで本格的なハイキングにも対応します。年間通じてトレイルを軽快に進むことができるオールラウンドなハイキング・トレッキングバックパックです。

お気に入りポイント

気になるポイント

主なスペックと評価

アイテム名 Thule Topio 30
容量 30L
実測重量 1.1 kg
素材
  • 420Dオックスフォードナイロン(環境に配慮した1500mm C0 DWRコーティング)
女性向けモデル 男女共通モデル
サイズ 29 x 24 x 59 cm
背面パネル
  • 通気性に優れた張力のあるメッシュの背面パネルと体にフィットするハーネス(10 cmの背面長調整が可能なMicro-adjust サスペンション・システム)
ハイドレーションスリーブ
メインアクセス
  • ジッパーによって大きく開くパネルローディング方式のメイン収納アクセス
レインカバー
ポケット・アタッチメント
  • トレッキングポールが固定できる収納可能なギアループ
  • ポール固定兼サイドコンプレッションストラップ
  • 目立たない位置にあるギア固定ポイント
  • ジャケットや余分な衣服を素早く収納、取り出しができる、前面のShove-it Pocket™
  • 携帯電話やスナックをバックパックを収納可能なヒップベルトポケット
  • メガネやスナックを収納可能なトップジップポケット
Outdoor Gearzine 評価
快適性 ★★★★★
安定性 ★★★★☆
収納性 ★★★★☆
機能性(使いやすさ) ★★★★☆
耐久性 ★★★☆☆
重量 ★★★☆☆
ハイキング満足度 ★★★★★

詳細レビュー

快適性:心地よいフィット感が約束されたテンションメッシュ(背面通気)型背面パネル

このバックパックの魅力が端的に表されているのはやはり従来のような”登山用リュック”然としていないモダンな外観と、絶妙な背負い心地の快適さです。

洗練された風合いを備えたヘザーブラックにバックルやストラップなどが無駄に目立たないクリーンなルックスは「これが登山のバックパック?」と思えるほどあか抜けた印象を与えてくれます。遠くの街まで旅をして、そのままローカルの自然を探索するまでをこのパック1つで完結できてしまいそうです。ちなみにデザインだけでなく、この420dナイロンオックスフォード生地(環境に優しい1500mm C-0 DWRコーティング済み)耐久性・耐候性からみても十分です。

一方背負い心地についても、全体としては基本を押さえつつ、細部で他にはない違いを際立たせています。

まずこのバックパックで採用されている背面構造は、湾曲したフレームの張力とメッシュ生地を利用した、いわゆるテンションメッシュ型(下写真)。これ自体はここ数年で様々なメーカーによって広く普及しており、決して珍しいものではありません。

このタイプの背面パネルは一般的にピンと張られたメッシュの弾力によって優しい肌触りとフラットで適度なフィット感が得られます。Topioの背面メッシュはやや粗めで背中全面に張られており、これによって軽さと肌触り・フィット感・通気性の絶妙なバランスがとれています。また背面から腰回りまでの繋ぎ目もスムーズで、背負った時の違和感はほとんどありません。登山初心者にも嬉しいラグジュアリーさが保たれています。

また背負った際に背中とパックの間に空気が通る隙間ができるため、大量に汗をかきやすい背中の蒸れによる不快感を軽減してくれます(下写真)。ハイキングでは暑い夏はもちろん、しっかり歩けば冬でも全身からの発汗が避けられません。そんな時汗がたまりやすい背中を涼しくドライにしておくことで、汗冷えなどの危険な不快感を避けることができます。

このほか、ショルダーストラップは通気性の高いメッシュ生地や肉抜きされた芯材のEVAフォームなど、軽量化と通気性の工夫が細部にわたって施されています(下写真)。ただ、通気性・快適性は高いもののハーネスの剛性は下がるため、あまりに重い荷物を詰めて歩こうとすると、その軟弱さから方への食い込みが気になるかもしれません(もちろんライトなアクティビティでの使用には問題なし)。

安定性:背面調節機構と重心高めのフォルムがテンションメッシュ型の弱点を克服

テンションメッシュ型の背面は確かにフィット感も通気性も高まるため、一見快適な背負い心地を提供してくれるように思われるのですが、一方で落とし穴もあります。それは構造上、重心が(身体から離れて)後ろに引かれがちということです。

Topio ではこの構造的な弱点もしっかりと織り込み、対策されていました。それがこれから見ていく荷重安定性を高める2つの仕組みです。

ひとつは体型と身体の輪郭に沿ったハーネス構造。小さな容量やテンションメッシュ構造のバックパックでは珍しい、背面長の調節機構「Micro-adjust サスペンション・システム」が搭載され、10cmという大幅な長さ調整が可能に。男女限らず、幅広い身長・体型にぴったりフィットし、安定した疲れにくい背負い心地を実現します(下写真)。

もうひとつはバックパック自体の形状(フォルム)。基本的には細長の円筒形ですが、微妙にパックの底面積が狭く下部にあまり多くのものが入らない一方、上部(特に肩口)は容積が大きく、より多くの荷物が入るようになっています。このため重心が身体から遠く離れることがなく、安定してより背中の上部、肩口近くに重心を位置づけやすくなっていました。

またもし荷物が少なかった場合には外側にあるボトムストラップを絞って、少ない荷物も上部に寄せることができます。

上部により荷物が多く収納できる、高重心デザインのパック形状

バックパックをしっかりと身体に引き寄せるためのショルダースタビライザーがパックの揺れを最小限に抑える。

重量:ここまで手厚いにもかかわらず「軽い」のである

ここまで、テンションメッシュの快適な背負い心地をキープしながら荷重安定性を犠牲にしないという巧みな構造を見てきましたが、Topioの素晴らしさはここで終わりではありません。さらにこのバックパックが驚きなのは、こうしたリッチな快適性にもかかわらず平均以上の軽さを備えているという点です。Topio 30の1,100グラムという重さは、同じくテンションメッシュで背面長調節を備えたGregory ズール30(M/Lサイズ1,420グラム)や、若干大きなOsprey ストラトス34(1,430グラム)と比べても300グラム以上軽く作られています。

収納性・機能性:軽量モデルとは思えない豊富な収納とアタッチメント

パッキングや使い勝手においても品質高さは健在で、ギアを整理して収納するためのさまざまなオプションが備わっています。

メイン収納はサイドまで大きく開くジッパーによるパネルローディング式(40リットルタイプは雨蓋式)。素早く出し入れでき、中央や底部へのアクセスも容易と、このサイズにとっては妥当な形状といえます(下写真左上)。

上部には地図や財布、エナジーバーやキーなどの小物を収納するためのトップジップポケット(下写真右上)。若干口が開きにくいですが、それ以外は問題なく便利です。ちなみにハイドレーションスリーブとチューブ孔もこの付近に配置されています。

サイドにも小物が入るジップポケットがあり(下写真左下)、ここには付属のレインカバーが予め搭載されています。左右のヒップベルトはスマートフォンを収納しても余裕があるほど十分な大きさを備えています(下写真右下)。

フロントの「Shove-it Pocket™」は、文字通り大きめの荷物であってもさっと押し込んでしまえる伸縮付きの大きなポケット(下写真左上)。追加の防寒着や雨具、すぐにアクセスしたい行動食などのアイテムを収納するのに便利です。両サイドのストレッチメッシュポケットは斜めに向いているので立ったままドリンクが出し入れ可能(下写真右上)。ボトムとサイドにはトレッキングポールその他を固定できるアタッチメントループもしっかり配置されています(下写真左右)。

ちなみにサイドのコンプレッションストラップはポールの固定用ベルクロがついている他、メイン収納のジッパー開閉の邪魔にならないようにすぐに取り外し・位置変更ができるようになっていたりと、わずらわしさを回避するオプションが備わっています。この辺の丁寧さがAクラスとその他大勢を分ける差なのだとつくづく思う。

よくよく探さないと見つけられないボトムのこの位置(下写真)になんとカラビナやバンジーコードを通すための固定ループが搭載されていました。ビギナーから脱してすこしこだわった使い方をしようとしたとき、こういうのがあるのと無いのとでは実用性が大きく違ってきます。

ちょっとしたアクセントにもなっている前方のキャリーハンドルは旅行等で重宝します(下写真右)。

まとめ:無名ブランドと侮るなかれ。キャンプや散策からハイキングへの敷居を下げてくれる、初心者におすすめ良バックパック

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Thule Topio バックパックは、認知度こそ低いものの、実際には基本的な作りの良さもさることながら、北欧らしいシンプルさと機能美にあふれ、スマートでスタイリッシュ、安全で環境に対する配慮も忘れず、細部にわたって積み上げられた工夫によってユニークかつ完成度の高いモデルです。本文でも少し触れましたが、同じコンセプトをもった競合の「Gregory ズール30」や「Osprey ストラトス34」と比較してもまったく見劣りしないばかりか、軽さという武器も備えています。

軽量で背負い心地が良く、高い通気性を備えたバックパックは、ハイキングからある程度本格的な登山まで広くカバーし、最小限のコンパクトな装備なら一泊の山行も可能。さらに40リットルモデルは日帰りにはちょっと大きすぎるものの、より本格的な数日の登山でも対応できるでしょう。総じてキャンプや自然散策からアウトドアの魅力を知り、もう少しチャレンジングなこともしてみたいと思い始めたハイキングビギナーに強くおすすめしたい一品です。

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