Review:THULE Guidepost 75L 重ければ重いほど”しっくり”くる、堅牢・快適・スタイリッシュと三拍子そろった納得の相棒

まるで美術館のような――。THULEというブランドについてまず思い浮かべるのは、まだ知識も見聞もほとんどなかった2015年夏、北米で行われたアウトドア・ギア展示会「Outdoor Retailer」で見たTHULEブースです。無骨な山道具の並びに突如現れた、壁一面のカラフルなバックパックたち。ちょっと入るのに躊躇するほど洗練された空間が今でも目に焼き付いています。

引用:Carryology

ただ正直に言うと、その光景を目の当たりにした当時はこのブランドについて何も知らず、「色物」というイメージしかありませんでした。見た目重視で使い心地は我慢してねってタイプかなと。それが2017年、気がつけばぼくの周りには普段使いのビジネスバッグから旅行、そしてもちろん山歩き向けバックパックと、生活の隅々までTHULE製品で溢れています。”カッコだけ”という先入観はまったくの誤解であったことはいうまでもありません。

以前のデイパックのレビューでも紹介しましたが、スウェーデンに本拠を置くTHULEは自動車積載用のラック・キャリアなどでは世界トップシェアを誇るグローバルカンパニー。アウトドア分野には2015年に初参入とある意味新興ブランドであるためか、日本でまだまだ認知度は高いとはいえないかもしれません。実際には既に老舗ブランドに勝るとも劣らない幅広いラインナップを揃え、本格的なアウトドア・バックパックメーカーとして世界中でここ数年ますます存在感が高まってきています。

今回紹介するのはラインナップ中最も重い荷物を長距離・長時間運ぶために作られたバックパックであるGuidepost 75L。垢抜けたデザインからは想像できないずば抜けた安定感や機能性の高さなど、老舗ブランドの銘品がひしめく大型バックパックのなかでも十分ひけをとらない魅力が詰まったこのモデルを早速レビューしていきましょう。

大まかな特徴

荷重を効率よく腰に伝える「Transhubサスペンション・システム」と「強化ヒップベルト」、さらに歩行時の身体の動きに追従するピボット機構のヒップベルトによって、大きな荷重でも快適な背負い心地を実現した背面システムが特徴の大型バックパック。選べるヒップベルトサイズ、背面長を15cmの範囲で変更できる調整機構、ショルダーストラップの幅を3段階に切り替えられる「QuickFitショルダーハーネス」など、柔軟性の高い調節機能を備え、あらゆる体型の人にジャストフィットして快適な歩行を可能にします。大小さまざまなポケット類、トップリッド(天蓋)は取り外して28Lの登頂用サブパックになるなど豊富な収納を備え、さらにヒップベルトは独自の「VersaClickアクセサリー」に対応し、用途に合わせて多彩なアタッチメントにカスタマイズが可能です(耐候性ロールトップポケットを標準装備、その他は別売り)。 

おすすめポイント

  • 重い荷物であればあるほど実感する安定性抜群の背面システム
  • 簡単に手早く調節が可能な背面調節システム
  • 多機能で使いやすい収納・アタッチメント

気になったポイント

  • 腰パッド部分の硬さ(可能であればクッションを足して厚めにしたい)
  • サイドストラップが垂直に並んでいないため長物を刺しにくい(パッキングを工夫すれば問題なし)

主なスペックと評価

スペック
項目 Thule Guidepost 75L
素材
  • 210ナイロン
  • 420 Robicリップストップナイロン
カラー
  • Poseidon
  • Obsidian
サイズ(背面長)
  • 15cmの範囲で調整可能なワンサイズ(ヒップベルトはS/M/Lサイズあり)
容量(リットル) 75
重量(実測) 2,885g(ヒップベルトMサイズ実測、VersaClick Rolltop Safezone Pocket・レインカバー込)
寸法 36.06 x 32 x 85.09 cm
バリエーション
  • 85L
  • 75L
  • 65L

※75・65Lには女性モデルあり

メインアクセス トップ・サイド(ボトム)
背面システム 荷重を効率よく腰に伝えるTranshubサスペンション・システムと強化ヒップベルト。
背面長調整 可能
ハイドレーション対応
レインカバー 付属
収納・機能
  • 取り外せば28Lの登頂用サブパックになるトップリッド
  • 大きなトップリッドポケット、裏面にもポケット
  • 左右からアクセス可能な大きさの異なるフロントポケット×2
  • スナック・電話などの小物類を収納できる右ヒップベルト・ポケット
  • 交換可能なVersaClickアクセサリーに対応(別売)した左ヒップベルト・ポケット
  • 風雨や汚れからギアを守る、取り外し可能なVersaClick耐候性ロールトップポケットが標準装備
  • パックの中身を簡単に出し入れできる、大きなJ字形ジッパー付きサイドパネル
  • 両サイドにはジッパーポケット×2
  • 両サイドにボトルを取り出しやすく斜めに開いた大きさの異なるポケット×2
  • ポールやアックスが収納可能なアタッチメント×2
  • ハイドレーション対応のリザーバー・スリーブ、ドリンクチューブ引出口
  • 取り外し式で視認性の高いレインカバー。嵐の中でも機材を濡らさず保管
  • パック内のPowerPocketにモバイル充電器を入れたまま、ヒップベルトポケット内のデバイスにすっきり接続して充電可能
評価
快適性 ★★★☆☆
重量 ★★☆☆☆
安定性 ★★★★★
使いやすさ ★★★★★
収納・機能性 ★★★★☆
汎用性 ★★★☆☆
耐久性 ★★★★☆
総合 ★★★★☆

詳細レビュー

重い荷物であればあるほど実感する安定性抜群の背面システム

レビューのために10~20kgの荷物を背負い一般登山道を歩いてみました。そこで分かったのは、このパックは本当に「強い」ということ。

際立って剛性の高いヒップベルトが支柱とダイレクトに連結され腰骨をまるっと包み込みがっちりと固定するため、どれだけ重くても荷重は完全に腰へと伝わってくれます。さらに歩行時に腰が左右に揺れるのに合わせてヒップベルトがわずかに回転する「ピボット機構」によってバックパックのブレが収まり、アクロバティックな動きをせずにまっすぐ歩いている限りでは安定感抜群です。このピボット機構、欲をいえば左右のヒップベルトは独立して動いてくれた方がもっと安定性は高いのですが、そうするとここまでの剛性は出せなかったであろうことを考えると、致し方ないかなと。

ヒップベルトの剛性はこれまで出会った大型バックパック中でもトップクラス。どれだけ重くてもヘタらない。

背中から肩にかけてのストラップは人間工学に基づいて流れるように脇下に伸び、身体のラインにしっかりフィットしてくれます。パッド部分に柔軟性と通気性はあるものの、一見すると少し当たりは硬めです。ただここも重い荷物を意識した結果であり、逆に柔らかすぎて重い荷物でくたびれる(ズレる)ということはありません。万が一どうしても気になるようであれば特に荷重がかかる尾てい骨の後ろあたりに各自DIYでパッドを加え厚くすれば完璧です。

身体のラインに沿って必要な部分にクッションが効いた背面パッド。尾てい骨の上部に当たるヒップベルトの上辺がやや気になるので、そこは各自パッドを当てるなど工夫するのがいい。

バックパックは細長め、重心もやや高めで、荷重が素直に身体に覆い被さってくる感じ。肩に負担がかかりにくく本当に疲れにくい。

ボディがヒップベルトよりも高く位置しているため、荷重が上手く腰(尾てい骨の上部)に乗ってくれる。

しなやかな触り心地で耐久性と軽量性を両立させたRobicリップストップナイロンによって、高い耐久性は保ったまま重量は前モデルから約1割削減しています。

高密度に織り込まれたRobicリップストップナイロンは軽くて耐久性も高い。

簡単に手早く調節が可能な背面調節システム

重い荷物になればなるほど重要なのが、バックパックのフィッティングという問題。背面長が調節できるということは珍しくなくなった昨今、さらにこのモデルでは肩幅も身体に合わせてS/M/Lと調節が可能です。決してこのモデルが初めてというわけではありませんが、なかなかここまでやってくれるメーカーはありません。一部の海外ブランドのなかには肩幅が広めのモデルも珍しくないため、これは日本人としては非常にありがたい。

ショルダーベルトは肩幅がS/M/Lの3段階に調節可能。調節もスライドさせるだけと簡単。

自分の体型はそう簡単には変わらないのだから一度合わせればフィッティングの調節は不要かと思いがちですが、経験上、なぜか背負う度にフィット感は微妙に違うものです。そんなとき背面の調整が素早くできたら素晴らしいですが、逆に手間がかかると少し残念。このモデルは前者。ストラップのベルクロを剥がしてスライドさせるだけで瞬時に背面長が調節できます。他モデルと違って肩幅・背面長のフィッティング操作が非常に簡単です。

背面長の調節も簡単に剥がせて固定できるベルクロをスライドさせるだけ。

多機能で使いやすい収納・アタッチメント

メイン収納

旅行も視野に入れた大型バックパックだけあって便利な収納機能も豊富です。メイン収納は底部が小さく上部にいくにつれて大きくなり、入り口部分はかなり大きめ。開け閉めもコードロックにあるループを引くだけのワンタッチ操作で開けられます。

締まった状態(左)からコードロックに付けられたループを引けばストレスなく入り口が全開する。

メイン収納へのアクセスは左サイドから「し」の字に開く大きなジッパーでも可能。どこにパッキングしてもすぐに取り出せます。

メイン収納に横からアクセスできると、テント内などで荷物を整理するのに便利。

トップリッド(天蓋)

もうひとつ特筆すべきはこのトップリッド。とにかくデカくて口も大きいため使いやすく、ついついたくさんの小物を入れたくなります。

かなり余裕のある大きなトップリッドポケット。入れすぎて重くなりすぎないように。

さらに内ポケットの中からずるずると出てきたのは、組み立てて使える28Lの登頂用サブパック。最近の優れた大型バックパックには珍しくなくなりましたが、やはりあると便利です。

トップリッドを取り外して変形すれば、頂上アタックに便利なサミットパックに。

ハイドレーションが収納可能なスリーブは一般的なモデルと変わらずメイン収納の背中側にあり、チューブの口は左右どちらでも振りやすい真ん中に配置。

メイン収納内側のハイドレーションスリーブ。

外側ポケット・アタッチメント

外側フロント部分には2つのポケットがついています。下写真左のポケットはA4サイズ程度で小物や薄い荷物を入れるのに便利。レインカバーもここに収納されています。一方下写真右のポケットは上部も脇も開くことができる大型ポケットになっており、アウターや防寒着などのすぐ出したいかさばる荷物も楽に収納できます。

フロントには左右からアクセス可能なポケットが2つ。前モデルには無かったレインカバーが標準装備。

サイドポケットは両側にひとつずつ。どちらも斜め方向に向いているためボトルを入れておけば、歩きながら取り出しやすい。特に右のポケットはジッパーを開けることで大きな径のボトルでも奥までしっかり収納できます。

右のサイドポケットは大きめで太いボトルも深く収納できる。

サイドストラップにはトレッキングポールなどの長物が収納できます。ただ、写真を見て分かるとおり上下のストラップが垂直に並んでおらず、下部のポケットも斜めしか向いていないため、テントポールなどの長く凸凹のないものはサイドに収納がしにくく、注意が必要です。

サイドストラップは斜めに並んでいるためポールの収納には都合がいいが、逆に径の大きな長物は付けにくい。

カスタマイズ可能な収納「VersaClickシステム」

ヒップベルトの左側にはTHULE独自のアタッチメントシステム「VersaClickシステム」が配置され、さまざまなアタッチメントの中から自分の必要な収納を選んで追加することができます(別売り)。目的に合わせて装備を変更できるなんて、どこまで冒険心をくすぐってくれるのか。正直言ってこういう仕組み、大好物です。

Guidepostシリーズには完全防水・耐衝撃の、安全に電子機器を収納することができる「Rolltop Safezone Pocket」が標準で付いています。このほか汎用性の高いポーチや一眼レフカメラ用ホルスター、トレッキングポールが立ったまま収納可能なフックなど豊富な種類が選べ、それぞれの用途や好みに合わせて自分好みのパックを構築することが可能です。

「VersaClickシステム」は用途に合わせて装備を変更することができるアタッチメント。

まとめ:どんな活動におすすめ?

 

Guidepostシリーズは重荷を背負って長時間歩く人にとって必要なことをとことん考え抜いて、それらを丁寧にバランスよく詰め込んだ、非常に完成度の高い大型パックです。確かに同じクラスのバックパック中でも決して軽い方はないし、人によっては不要な機能も満載かもしれませんが、だからといってムダに重いわけでもなく、多くの機能も洗練されたデザインによってスッキリとさせることに成功している。そのバランスが非常にいい。

重荷でも安定した背負い心地と耐久性のある作り、使いやすく多様な収納から3泊以上の長期の縦走をするハイカーにとっての最高の相棒となるでしょう。また北欧らしい垢抜けたデザインは海外旅行やバックパッキングにも大活躍するはずです。その意味では、長期の縦走合宿も海外一人旅もするという山岳部の学生がいたらまさにピッタリ。もし自分が学生時代にこのパックに出会っていればと悔やまれます。

一方で高めの重心やアタッチメント・ポケットの配置などから見るに、あくまでも穏やかに歩くことが前提に作られており、バリエーションルートや沢登り、冬山などの活動にとっては(無理ではないものの)そのままでは融通が利きにくい部分が感じられます。その点ヨーロッパのブランドでありながら限りなくスルーハイク志向なバックパックとして、そうしたタイプの山好きにはこれから必ず選択肢に入れて欲しいモデルです。

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