山でカメラを使うなら、岩や木の枝・砂利・ホコリ・雨といったさまざまな障害からレンズを保護するために欠かせないのがレンズフード。また逆光の撮影なども頻繁にあることから、フレア・ゴーストを抑制するのにも役立ってくれます。
その時に悩ましいのがレンズフードの着け外しにかかる手間です。自分は普段純正のレンズフードを使っているのですが、毎回カメラを取り出してから、
- レンズに逆さまにセットされた硬いプラスチックのフードを回して取り外し
- 前後をひっくり返してレンズの先端にカチャッと着ける
という動作を繰り返さなければなりません。そして撮り終えたらまた逆の動作で仕舞う。また次の撮影ポイントに来たら……ああ鬱陶しい。
結局ズボラな自分はいつも硬くてごついフードを着けたままの状態でフロントパックに突っ込んでしまいます。かなり不格好になだけでなく、何よりかさばるし、バッグによってはしっかり口が閉められず、落としそうで危なっかしいことこの上ない。
目次
メーカー・モデルを選ばず装着可能、ガラスの映り込みなしの便利なレンズフード
そんな折、目の前に現れたのが現在Makuakeにてクラウドファンディングが行われている、写真アクセサリーメーカー KUVRD による新製品「ユニバーサルレンズフード(ULH)」です。
折りたたみ可能なシリコンレンズフードは、設計者によるとメーカー・モデルを問わず99%のレンズに適合し、フレームの四隅にケラレを発生させることなく、さらにガラス越しの撮影でもしっかりと光をシャットアウトしたきれいな撮影が可能だとか。おまけに従来より着脱もより簡単で、複数のレンズを持っていく人にとってはそれぞれの専用レンズフードを持っていく必要がないため、結果的に荷物も手間も少なくて済みます。
聞いているといいことずくめで、これはもしかすると自分のカメラスタイルをさらに一歩前進させてくれるのでは!?そんなわけで、さっそくプロジェクトの実行者であるハンズエイドさんにコンタクトして製品を送ってもらい、試用してみることになりました。
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KUVRD ユニーバーサルレンズフードの主な特徴
新しいレンズフードは先述した特徴の他にも、カメラ撮影をさらに快適にしてくれるさまざまな特徴・機能が備わっています。まずはクラウドファンディングページに書かれている7つの製品特徴を以下にまとめてみます。
- 簡単な着脱
- 形がくずれない、はずれない
- 様々なレンズのメーカー、サイズに装着可能
- 窓ガラス越しでも映り込みなく撮影できる
- レンズの口径と異なる各種レンズフィルターが利用可能になる
- カメラ保護のクッションにもなる
- 破損時の無料交換保証
個人的に刺さった点はフードとしての使い勝手の良さだったのですが、普段の利用であれば「窓ガラス越しでも映り込みなく撮影できる」ということの方が意外とありがたみがありそう。なにはともあれ、さっそく届いたアイテムを装着して軽く近くで山歩きしながら使ってみました。
使ってみました~車中編~
今回はヤビツ峠から大山への気持ちの良い尾根を歩くことにしました。峠までのウネウネした林道を行きながら、途中で車内からカメラを構えてみます。
純正のフードを付けて撮影してみますが、ガラス窓にフードをくっつけて撮影しても映り込みがわずかですが消せずに残ってしまいます(下写真左の点線内)。一方このULHを装着し、ガラス窓にフードを密着させて撮影してみると、確かに映り込みなく撮影することができました(下写真右)。もちろん、車窓だけでなく、水族館や動物園、飛行機などさまざまなシチュエーションでガラス越しの撮影が可能でしょう。
使ってみました~ハイキング編~
次にハイキングなど山の中でも自分の使い方で上手く機能してくれるかどうか、いろいろな角度から使い勝手をチェックしてみました。
好きなところ
フードをつけっぱなしでも簡単な収納・セット
これは今までずっとプラスチックのフードを使っていて不便に思っていたことなので、使い心地のシンプルさには感動しました。フードをセットするには、フードの口を広げてレンズに被せるようにはめ込みます。柔軟なシリコン素材はある程度力を入れれば簡単に広がり、レンズにかぶせることができます。ただ多少なりとも押し付ける力が必要なので、三脚にセットした状態でそっと装着するといったことはできませんでした。
フードは柔軟で折りたたみも簡単なのに加えて、必要なときにはすぐにまた形状を回復することができます(下写真)。
さっと取り出してフードを伸ばし撮影したら、フードを折りたたんでフロントのカメラバッグへ。この一連の動作がスムーズに行えるため、そこはこれまでのストレスが嘘のように減り、確かに快適そのものです(下写真)。
どんなレンズにもしっかりフィットして外れにくく、形も崩れにくい
伸縮性のシリコンは自分の使用しているすべてのレンズにピッタリと密着し、レンズを思い切りブルブル振っても外れたりズレたりすることはありませんでした。またレンズを振ったときに一瞬フードの形は崩れますが、すぐに元通り。このため素早く振りながらの高速連射といった極端な使い方までは分かりませんが、風景を写している限りではまったく問題ありません(下写真)。
フードの長さも調節できるので、どんなレンズでもケラレの心配がない
形の固定されたフードの場合、万が一大きさが合わないとレンズの四隅に黒いフードの影が写り込んでしまう、いわゆるケラレが発生してしまいます。特に広角よりのレンズではその心配が大きいのですが、このフードの場合蛇腹のように折りたためば深さを調節できるので、その心配は一応ありません(下写真)。
ただこれは後ほど述べますが、広角レンズの場合、フードをセットする位置によってはケラレがどうしても発生してしまう場合があります。
異なる径のフィルターが併用できる(CPLフィルターなど動かすものは不可)
一般的にはレンズフィルターはレンズの先端に固定するものですが、このレンズフードの内壁の間にフィルターを押し込むことによって、通常であればサイズが大きすぎてつけられない円形フィルターを、フード内側に固定して利用することができます。さまざまな径のレンズそれぞれで必要であったフィルターが、今後不要になるかもしれません(下写真)。
ただ、一度内壁に固定するという仕組み上、可変NDフィルターやCPLフィルターなどでフィルターの外周を動かすことはできませんので、すべてのフィルターが共有可能というわけではありませんでした。あくまでも外出先で万が一忘れてしまったときなどで緊急対応として使える機能です。
気になったところ
長さが変わるズームレンズでは、装着位置次第でシリコン部分がズームを邪魔することも
逆に期待に反して気になった部分もいくつか。自分はズームの際にボディの長さが伸縮する24-70mm F2.8レンズを主に使用していますが、伸縮部分にシリコン部分が重なってズームを邪魔してしまう場合があります(下写真)。
長さが変わるズームレンズでは(丁度いい場所に調節しないと)ズームリングと干渉して、操作の邪魔になってしまう
それじゃあと、その伸縮部分を避けて奥の方までレンズフードを押し込むと今度はズームリングと重なってズーム操作がしにくくなったり、ズームリングを完全に被せるようににセットするとフードが後ろ過ぎて足りなくなってしまいます(下写真)。
最終手段で伸縮部分・ズームリングをすべて避けて先端付近にセットすると、これはやはり先っぽすぎて外れやすい(下写真)。しかも最も縮んだ状態にしてもケラレが発生してしまう。
結局上記をすべてクリアするような位置というのが存在しないため、レンズフードを一定の位置で使い続けることが難しく、ズーム機能を利用して焦点距離を変える度にフードの位置を調節する必要が生じてしまいました。もちろん、長さの変わらないズームレンズではこういったことは起きないので心配ないのですが(下写真)、自分の使い方にはピンポイントで影響してしまいました。
ホコリがつきやすい
もう一つ気になったのはホコリ問題。シリコンゴムはホコリが吸いつきやすい性質があり、残念ながらこのフードも例外ではありませんでした。しかも静電気の影響で一度付着したゴミやホコリが払っても払っても取り除くことができず、レンズ周りにホコリを集めてしまいます。野外ではちょっとしたホコリだけでなく細かい砂や雑草まで多種多様なゴミが多いため、結構なストレスになってしまいました。
まとめ
ユニバーサルレンズフードはこれまでのごついプラスチック製のレンズフードの代わりとなり、しかも複数のレンズで使い回せてフィルターも共用できるという点などでは非常に興味深い製品です。また破損時の無料交換保証など、快適に使い続けるサービスについても安心です。ただ正直なところ、自分が今使っているズームレンズ(FE 24-70mm F2.8 GM)では焦点距離によって調整が必要だったり、また日常によりもタフな環境であるアウトドアではその利便性をフルに享受することは難しかった面もありました。ただハマったときの便利さ、使いやすさは確かにあると理解できるため、個人的にはその点が非常に惜しいと感じざるを得ませんでした。
この製品が活きてくるであろう用途やシーンは、厳しめの環境でハードに使うというよりも日常から一般的な旅行といったカジュアルな場面でしょう。また主に単焦点レンズを使用しているのであれば、このレンズフードは多少の不便を補って余りあるメリットを得ることができ、迷うことなくおすすめです。単焦点レンズを何個も持ち歩いているような場合は収納スペースと時間を節約でき、さらに快適になるはず。あるいは長さが変わらないズームレンズを主に使用しているユーザーも、レンズの操作でフードが干渉することがないため、非常に快適に使用することができるでしょう。
一方、街使いであっても主に長さが変わるズームレンズで撮影している自分のようなユーザーの場合には注意が必要です。ズームを操作するたびにベストな位置へと調節が必要となり、逆に多くの時間を費やすことになってしまうかもしれません。そうしたメリット・デメリットを踏まえて、旅やアウトドアのようにさまざまなシチュエーションでレンズの着け外しが生じる場面において、地味だけど手放せないアイテムになってくれるでしょう。
KUVRD ユニーバーサルレンズフードは現在Makuakeにてクラウドファンディングを実施中。興味のある方は下記のリンクから詳細情報をご確認のうえ、支援してみてはいかがでしょう。
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