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Review:TERRANOVA Laser Competition 1 アップデートを重ね続ける、軽量テントのパイオニア

今でこそ世の中には、軽量と呼ばれるテントは有象無象にありますが、2004年にTerranovaから発売されたLaser Liteは、当時のテント市場で初めて1kgを下回る商品を送り出し、軽量テントとしてギネス記録にも認定されました。発売後は様々な賞を受賞し、Terranovaは軽量テントの基準となり、軽量テント界のパイオニア的地位を獲得しました。

今回レビューするレーサーコンペティション1は、Laser Liteの後継モデルで、重量こそ発売当時とほとんど変わっておらず、当時ほど驚きはありませんが、アップデートを積み重ね、安全性・耐久性を向上させてきました。

軽量テントの歴史を変えたこのテントの今を、実際に使用してみたレビューとともにお伝えします。

レーサーコンペティション1の大まかな特徴

軽量テントのパイオニアTerranovaが長年販売し続けている レーサーコンペティション1は、今でこそ軽量性という点では、同社が販売するLaser Pulse Ultra 1など500gを切るような超軽量テントの影に隠れてしまいがちですが、軽量化に完全に傾いているテントにはない、耐久性・耐候性などを持ち合わせています。そしてその性能以上にリーズナブルな値段設定も光る、非常に高いバランスの取れたコストパフォーマンスの高いモデルです。

フライ、フロア素材は5,000mm以上の耐水圧をもち、防風対策もしっかり取れており、設営もスピーディー・スムーズと、山岳シーンでの使用を想定された作りで、登山家からアドベンチャーレーサー、長期間歩くスルーハイカーまで、幅広い層が満足する性能の高さを訴求しています。

なお今回は一つ前のモデルを使用してレビューを行っています。念のため最新版のサンプルをメーカーからお借りして確認しましたが、細かな部分のアップデートのみで基本的な作りは同じのため、変更点については本文で必要に応じて触れております。

おすすめポイント

気になったポイント

主なスペックと評価

項目 スペック・評価
就寝人数 1~2名
カラー グリーン
公式最小重量 860g(ペグ・収納袋含めて970g)
実測重量 1024g(ペグ・収納袋含めて1117g)
フライ素材 シルナイロンリップストップ (耐水圧:5000mm) 
フロア素材 シルナイロンリップストップ (耐水圧:6000mm)
ポール素材 DAC社製 8.55mm Fatherlite
サイズ 間口220×奥行62/93×高さ45/95cm
収納サイズ 本体:12×42cm、ポールcm
フロア面積 1.3㎡
前室面積 0.5㎡ 
付属品
  • スタッフサック(収納袋)
  • ペグ 10本 (各5g)
オプション
  • フットプリント(283g)
居住快適性 ★★☆☆☆(ソロ使用であれば★★★☆☆)
設営・撤収の容易さ ★★★★☆
耐候性 ★★★★★
耐久性 ★★★☆☆
重量 ★★★★★
携帯性 ★★★★☆
汎用性 ★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆

詳細レビュー

シンプルな構造で設営時間を短縮

パーツは、本体・フライ・ポール3本・ペグ10本です。収納袋は大きめで、1つの袋に全て収納できますが、ポールを別に収納することによって、本体・フライは小さくまとめられます。収納袋はシルナイロン製なので、スルスル滑って出し入れはしやすい。

ポールはDAC社の8.55mm Fatherliteで、実測147g。ポールは一本で設営する非自立型のおかげで、重量はかなり抑えられています。フライの長辺端に高さを持たせるための補助ポールが2本付属しています。この補助ポールはカーボン製で、各22gです。
*アップデート版の補助ポールはアルミ製に変更になっています。

ペグはチタン製(各5g)で、10本付属しています。しかしこのペグ、かなり細いので、チタン製とはいえ打つ場所には気を使います…
*新作のペグは確認できませんでしたが、メーカーサイトではアルミ製11g×11本となっています。

テントはトンネル型の非自立式。初見ではパッと見複雑そうですが、一度仕組みさえ理解してしまえばとても単純な構造です。設営はまずフライのスリーブにポールを通します。

ポールを入れるスリーブの出入り口には反射素材が貼ってあるため、暗狩りでもライトがあればわかりやすくなっています。

長辺の両端をに補助ポールを使い立て、ペグで留めればこれだけで自立します。風が強い時でも比較的楽に設営できます。

あとはインナーテントをフライ内側からぶら下げ、各点をペグで固定すれば設置完了。自立式と異なり、しっかりと張りペグで固定する必要があります。

居住性にはやや不満が…

「ソロテント」として使用すれば室内は十分な広さ。これに関しては他のメーカーのソロテントとも遜色はありません。しかしメーカーは1-2名用としているので、2名なんとか泊まれるスペースは確保してほしいものですが、2名だとかなりキツイ…まずマットを2枚敷くスペースはありません。足元と枕元には同サイズの三角形メッシュがあります。

そして室内にはヘッドランプや紐をぶら下げるループや、小物入れなどは一切なく、完全に平素な個室です。

前室は最長部は50cmと広く、ソロテントとして使用する限りは、料理や荷物を置く程度であれば余裕です。室内とは真逆に、2名でも前室は余裕。室内とのバランスがもう少し取れているとよいのですが…

通気性は可もなく不可もなくといった印象です。インナーテントの入り口の半分がメッシュになっているので、フライを捲っておけば通気はよさそうなのですが、フライを閉じると、外からの通気孔はなくなってしまい、季節によってはかなりの蒸し暑さになることが予想されます。そして3箇所ともメッシュを塞ぐことはできないので、逆に冬は風が入ってきて冷えそうです。メーカのスペック通り3シーズン用での使用が適当でしょう。

実際に使ってみたインプレッション

ソロテントとして高いパフォーマンスを発揮

メーカーは1〜2名用としていますが、どう考えても2人で寝るには窮屈。想定される無理やり2名での使用は、山岳レースくらいではないでしょうか。とにかくレース中は濡れずに寝たい!必須装備にテントが入っているなどの時、軽量でコンパクトになり、風雨にも強い設計のこのテントは、うってつけのテントになるでしょう。

しかしそんな使用方法する人は一握り。通常の使用ではソロテントとして考えるべきです。1kgを下回る軽量性、高い耐候性、スピーディーな設営と、全体的にバランスが高くハイパフォーマンス。居住性も悪くありません。最初の設営こそインナーテントを吊り下げる作業がありますが、以降はそのまま撤収可能なので、以降は設営はかなり早くなります。メーカーは設営時間5分と謳っていますが、この数値がかなり絶妙。慣れてしまえば本当に5分で設営できます。

ファストパッキングシステムという、インナーテントを使用しないフロアレステントとしてツェルト様に使用する方法もあり、そのシステムではポール込みでも600gを切る軽さとなります。よりウルトラライト的にも使用することができ、テント・ツェルト両方を持たずに済むので一石二鳥です。

収納もコンパクトになります。収納袋はポールの長さに合わせて作られているので、ポールを別に収納すれば、本体・フライはかなりコンパクトに。
*現在はツーリング向けにレーサーコンパクトという、同重量ながらポールの収納サイズが2/3ほどになるモデルも販売されており、よりコンパクトに収納できそうです。値段もほとんど変わりません。

フライはダブルジッパーになっているので、上から開ければ雨天時の調理も空気はこもらず換気はバッチリです。

しかし室内の通気はいまいち。好天時や感想している時はフライをまくれば、入り口の半分がメッシュになっているので通気は十分ですが、フライを閉めてしまうと、足元・枕元にある小さいメッシュに頼ることになり、全く空気が循環しません。高温多湿な日本の気候下では通気は不十分です。
*新作はフライにも、足元・枕元のメッシュ部分と同じ場所にメッシュがあり、通気性が向上しています。そしてインナーのメッシュはベルクロで閉じられるようになりました。一番のアップデート部分でしょう。フライのメッシュ上部には、雨が入らないように小ぶりな屋根が配置されています。

耐久性にも今ひとつ不安が。生地の縫い目が弱く、数度の使用でテンションがかかる箇所にすでに劣化がありました。他にもフライとインナーテントを繋ぐパーツなど、ゴムパーツを多用しているので、劣化が心配です。

あと特記として、ポールカバーがあります。フライのポールスリーブ上をこれで覆うことにより、風の影響を受けにくくなるので耐風性がアップ。森林帯など風の影響を受けない場所でしか使用しないことがわかっている時は外していけば、多少の軽量化(グラム数)にもなります。

まとめ:こんな人におすすめ

とにかく軽量製・耐候性・強度のバランスが高い。強風でもしっかり立っているので、風が吹き荒れる高標高のがれ場でも不安なく使用できます。メーカーのスペックでは2名までとなっていますが、よほどストイックでない限りソロテントと考えておいてください。適応シーズンに関しては、メーカーが3シーズンと謳っているように、冬の使用は考えない方がよさそう。夏も高温で多湿な環境だと厳しいでしょう。あくまで春から秋までの、山向けです。しかしアップデート版は多少通気性を向上させているようなので、日本の夏でも快適に使えるかもしれません。

テントを軽くしたいけど、タープやツェルトはちょっと…というウルトラライト派、何日も歩き続ける縦走、遠くへ行きたいファストハイク。あくまで重要なポイント抑え犠牲にしていないレーサーコンペティション1は、そんな人たちにはピッタリ。後悔しない選択になるでしょう。

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