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Review:ZPacks Duplex Tent 2人用ながら驚異の550g! 超軽量・コンパクト・堅牢さを兼ね備えたウルトラライト・テントの傑作

Zpacks(ゼットパックス)社は、2005年にアメリカ・フロリダ州で誕生した小さなアウトドア・ブランド。アパラチアン・トレイルのトレッキングに挑もうとした創業者が、長距離・長期間に耐久できるバックパックに巡り会えず、最終的に自宅のガレージで自作したことがきっかけで始まったブランドです。「ウルトラライトの王様」と銘打つトレッカーが多いほど、ZPacksは驚異の軽さち丈夫さだけでなく、使い勝手地も良好なギアを次々と開発しており、アウトドアギアの重量削減を課題とする長距離トレッカーを中心に支持を集めています。日本ではまだ知名度がそう高くはありませんが、大手アウトドア会社の影で着々とファンを集めつつあるZpacksは、まさに知る人ぞ知る実力派ブランドです。

今回紹介するのは、そんなZpacksが販売する2人用テント・Duplexです。普段から愛用しているこの超軽量テントの使用感と感想をレビューしていきます。

Duplex Tentの大まかな特徴

Duplex Tentは、超軽量のバックパッキングとスルーハイキング用に特別設計された2人用テント。ZPacksの代名詞とも言える特殊素材DyneemaR Composite Fabricを全面に使用しているおかげで、超軽量、コンパクト、頑丈の三点を同時に実現しています。 収納時のコンパクトさとは裏腹に、テント内は広々としていて、快適さを犠牲にしていないつくりが特徴。その他大きく開く入り口が左右に1つずつあることにより、2名で使用しても相手をまたぐことなく出入りできる上、通気性も高く、利用者の使い勝手を十分に考慮した工夫が散りばめられた快適性の高いモデルです。

おすすめポイント

  • 2人用テントながら550gと超軽量
  • 収納時のコンパクトさ
  • 撥水性・耐候性の高さ
  • 広々としたスペース

気になったポイント

  • 高価で(日本からは)入手が困難
  • 保証期間の短さ
  • プライバシーの低さ
  • 強風時はバタつき音が気になる
  • ペグやポールは別売り

主なスペックと評価

項目スペック・評価
就寝人数1~2名
最小重量 (公式)550g
本体素材.75 oz/sqyd DyneemaR Composite Fabric (グリーンの場合)
フロア素材1.0 oz/sqyd DyneemaR Composite Fabric
室内サイズ間口230×奥行153×高さ122cm(テント入口高さ91cm)
収納サイズ20.3 cm x 33 cm
付属品
  • スタッフパック(収納袋)
  • ガイライン
居住快適性★★★★☆
設営・撤収の容易さ★★★☆☆
耐候性★★★★★
耐久性★★★★☆
重量★★★★★
携帯性★★★★★
汎用性★★★☆☆
総合評価★★★★★

詳細レビュー

テントを購入すると、届けられるのはテント本体とスタッフパック(収納袋)だけ。フライやその他細かいパーツはないので、無駄をすべて省き、ひとまとめとなったミニマルなつくりになっています。これこそZpacksが追求した超軽量化で、ブランド最大の特徴の一つです。必要最小限の装備しか施されていない分、Zpacks公式ホームページで購入できる追加アクセサリーでカスタマイズできる自由さがあります。

テントの収納時大きさはわずか20.3 cm x 33 cmとコンパクト。

スタッフパックは、テントにも用いられている特殊素材DyneemaR Composite Fabricを使用。開口部はベルクローで閉じ、くるくると巻いた上でバックルで固定するような形です。テントをスタッフパック内に収納しても多少スペースが残っているので、設営時に必要なポールやペグも一緒に詰めることができます。

テントが飛び出る心配もなく、防水もばっちりです。

広げて固定、あとはポールを立てるだけのシンプルな設営

Duplex Tentは非自立式で、設営するにはポール2本とペグ6本が必要です。上記したように、このテントはその他パーツがないので、設営過程は比較的シンプル。しかし説明書には設営方法が文章でしか書かれておらず、かつ英語で書かれているため、テントの扱いに慣れていない初心者は、Duplex Tentの設営に少々戸惑うかもしれません。まずはテントを四方に広げます。四隅にある輪状のドローストリングに、ゆとりを持ちながらペグをくくりつけ、地面に固定します。


次に、テントの入り口となる側面にポールを立てる頂点があるので、そこにポールを挿入し、垂直に立てます。ドアのドローストリングにペグをくくりつけ、地面に固定します。反対側も同様に行います。

あとはテント全体に張りが出るよう、四隅とドアのドローストリングを調整すればあっという間に完成です。


風が強いときや、より頑丈な設営にしたいときは、追加で側壁のドローストリングをペグでくくりつけ、地面に固定することも可能です。ドローストリングの色が蛍光イエローなので、自然の中や夜間の暗さでも目立ち、下手につまずいたりぶつかったりしてくれるのを防いでくれる工夫が施されています。

ただ正直なところ、Duplex Tentの設営には、いわゆる自立式の一般的なテントに比べれば、少しだけ練習の必要が伴ってきます。テント全体に張りが出たと思えばドアが閉まらなかったり、張りにゆとりを持てばテントの高さが足りなかったりと、ちょうどいいテントの微調整には張り具合のコツに慣れる必要があります。しかし一度慣れてしまえば、3分程度であっという間にテントを張ることは分けもありません。公式ホームページには設営方法の動画もあるので、こちらを参考にするのがおすすめです。

なおポールとペグは、テント購入時にセットとして含まれていません(ZPacks公式ホームページ上でこれらの付属品を購入することができます)。このテントの典型的なユーザー層であるウルトラライト・ハイカーの多くは、自分でこだわりをもってペグやポールを選び、所有していることが多いため、そうした人にとっては合理的な仕様といえます。またトレッキングポールを使って登山する人は、テント用ポールと代用してトレッキングポールを使用することが可能なので、荷物を減らせる上、バックパック内に詰めるギア類の重さも減らすことを実現しています。

広々とした居住空間 通気性もばっちり

フライの代わりとなるドアは計4つあり、それぞれ独立して開閉することができるつくりになっています。全ドアを開放すれば室内から景色を楽しめるし、各一つずつだけ開けることも可能で、悪天候時やプライバシーを確保したいときには全ドアを閉めることもできる優れたシステムです。

なおドアを使用しないときはくるくると巻き、テント端にあるフックで捲れます。

フックは全ドアに付いています。

ドアを開くと、中にはもう一つメッシュの扉があります。かなり細かい網目ながら通気性は抜群で、うっとしいコバエや蚊が入り込むことはありません。扉以外にも、テント本体の側壁下にもメッシュが施されているので、「ドアを完全閉鎖すると蒸し暑くなる」という課題は堂々とクリアしています。

虫を呼び込むことなく、風を感じながら景色が楽しめます。

Duplex Tentの最大の特徴は、この室内のバスタブ・フロア構造。浴槽のようなフォルムから名付けられたこのつくりは地面から高さを保ち、外からの浸水を防いでくれるのです。また斜めに走るテント壁がバスタブ・フロアから約12cmほど突き出ているので、テントに当たる雨水が地面へ流れ逃げる上、室内に流れ込まないような工夫が施されています。
しかしテント壁に当たるように大きな荷物を室内端に置いてしまうと、テント壁がバスタブ・フロアから突き出ず、雨水がかえって室内に流入してしまうことも。雨天時は、リュックなどかさばるものは端に置くのを避け、テント壁が正しく設営されているかを確認するようにしよう。

バスタブ・フロア構造のおかげで、テント内が濡れることはありません。

室内は広く、間口230×奥行153cmと二人用テントとしては十分な広さ。天井も最高点で122cmあるので、大人が背筋を伸ばして座っても頭を天井に当てることはありません。一人でDuplex Tentを使用するときは、室内にバックパックを置けるほど十分なスペースがあります。

Lサイズのマットレスを敷いても十分なスペースを確保。

テントの両サイドには、メッシュポケットそれぞれ一つずつ。それほど大きくはないが、携帯電話やヘッドランプ、サングラスを収納するにはちょうどいい大きさです。

メッシュポケットは、メッシュ扉と同じ素材です。

ポケット以外には、このテントに設備はありません。その分、ZPacksが販売している追加アクセサリーで自分好みにカスタマイズができます。すでにこのテントを愛用しているわたしは、ヘッドライトを吊るすことができるよう天井にDuplex Tent用のフックを追加し、夜間の暗がりでも安定したあかりを灯せるようにしました。

両手が空いた状態でテント内が明るく灯されます。

またポールを立てる頂点には小さな輪っかがあるので、カラビナやフックをくくりつければ、ミニ・ハンガーとして活用できます。雨で濡れたレインコートを乾かしたり、ダウンダンジャケットを吊るすのにはかなり便利です。

Duplex Tentでできるちょっとした裏ワザです。

前室も十分な広さがあり、濡れたものや靴、また60L級の大型バックパックも置ける空間になっています。ガスストーブを用いた調理をする際でもスペースを利用すること可能だが、テント素材の引火性が高いため、安全を考慮すると控えるのがベストかもしれません。

メッシュポケットに「火の用心」と大きく書かれているため、調理は控えるべし。

実際に使ってみたインプレッション

Duplex Tent内は非常に広く、二人で使用しても窮屈感がないのがプラスポイント。ほぼ終日テント内で過ごさなければならない大雨のときや積雪時にDuplex Tentを使用したことがありますが、閉塞的ではなく、快く過ごすことができます。というのも、このテントは大の大人が背筋を伸ばせるほど高さがあるため、ピラミッド型の構造ながら縦・横・高さともに十分のスペースが確保されているのです。

大人が座っても天井に頭が当たることはありません。

またテント両サイドにドアがあるのも嬉しい点です。特にDuplex Tentを二人で使用する際は、相手をまたぐことなく出入りできるのに加え、バックパックや靴も自分のサイドに固めて置けるので、散らかりやすいテント内もきっちりと整理整頓できます。

そしてDuplex Tent最大の利点は、やはり超軽量というところです。二人用テントながら重さはなんと驚異の550g! バックパックに詰めているのを忘れてしまうほどの軽さです。またテントにビルドインされている骨組みがなく、かつ必要とする付属品もミニマルなので、わずか20.3 cm x 33 cmというコンパクトサイズににまとめられるのです。テントをきっちりと詰めることができれば、さらに小さくまとめることができるし、バックパックにものを押し込んでもフレキシブルに縮んでくれたりします。

なお超軽量、小サイズながら、耐久性に関する点は妥協していません。特殊素材DyneemaR Composite Fabricは、強風や嵐などに対する耐候性が高いのはもちろんのこと、撥水加工も施されているので、悪天候でも安心して身を守ることができます。台風のような暴力的な雨風下でもこのテントを何度か使用したことがありますが、テント壁から雨水が浸水したり、テントが崩れたことは一度もありません。天気が回復した際は、タオルなどでテント全体を拭け、ほぼ乾いた状態で収納できるのもプラスポイントです。

雪の中でキャンピングした様子。氷点下でもしっかり活躍してくれます。

とはいえ、経験上ドアを閉じるホックがドアに引っかかったり、焚き火で散る火花で小さな穴が空いてしまったことが何度かありました。バスタブ・フロアはさらに分厚い特殊素材を使用しているので、小石や小枝による破損は今のところありませんが、テントを設営するときは念には念を、小石や小枝を綺麗にのぞいくようにするのが必須です。なおこれらの穴や破れは、ZPacks公式ホームページで販売している専用修理パッチでリペアしています。

強風といえば、この特殊素材が風に当たるときの音がうるさかったりします。海辺で使用した際は、張ったビニール袋がブルブルと震えるような音がテント内に響き、耳栓をしないとなかなか寝られないほどの状況でした。これは、閉じたドア同士が当たるときに発生する音によるもの。ドアは地面付近のホックと、ドア中央のホックのみでしか固定されないので、風が強いときは激しい音で睡眠を妨げられてしまうのはマイナスポイントです。

海辺でキャンピングした様子。浅い眠りの人は耳栓を使うのが良いかもしれません。

その他気になる点として挙げられるのは、プライバシー。テントの素材が半透明なので、外からはテント内にいる人のシルエットがぼんやりと見えてしまいます。それほどはっきりと見えるわけではないが、プライバシー面は他社テントよりも劣っているのは確実です。気になる人には少々マイナスポイントになってしまうかもしれません。

テント側壁に手を当てると若干透けて見えます。

太陽光に当たるとシルエットがくっきり。

そしてなにより、ZPacksの製品はかなり高価です。今回紹介しているDuplex Tentは599ドル(≒約63,000円)もする代物で、送料を加えるとかなりの出費は覚悟しなければなりません。その反面、保証期間は2年と比較的短く、万が一破損しても払った代償が大きくなってしまうリスクは無視できません。

まとめ:こんな人におすすめ

ZPacksはアメリカを中心に賞賛されているブランドで、小さい会社ながら利用者が最適なアウトドア体験を送れるよう進化し続けています。Duplex Tentは、特に重量が課題となる長距離トレッカーや長期間バックパッカー、あるいは足腰が強くないキャンピング愛好家にはうってつけの山岳テントです。超軽量かつ頑丈で、コンパクトながら広い居住空間が確保されており、トレッキング仲間やパートナーとともに使えることもできれば、スペースを贅沢に使いたいソロトレッカーにも使えることができます。季節、天候、そして環境を選ばないオールマイティなテントとして活躍することでしょう。

しかしDuplex Tentはかなり高価な製品なので、年に片手ほどの回数しかキャンピングをしない人には、必要以上の投資になるかもしれません。また、あまり難しいことを考えずにある程度まんべんなく揃っていることを望む初心者向けとも言えず、自分なりのアレンジや、ちょっとした修理も面倒だというガサツな人にとってもあまり向いているとも言えません。しかしこれらのポイントをクリアできる人にとって、Duplex Tentは永遠のキャンピング・パートナーになるほどハマることは間違いなしです。

シグリスト亜里沙

スイス・チューリッヒ在住。幼少期をカナダ・アメリカの自然豊かな地域で過ごし、日本帰国後はコンクリートジャングルの東京都で育つ。遠距離恋愛していたスイス人パートナーと結婚前提の同棲を機に、2017年チューリッヒへ移住。以来、登山好きのパートナーの影響でトレッキングの虜になる。山と自然に恵まれた永世中立国に身を置きながら、トレッキングにぴったりな快適で長持ちするウルトラライトギアの追求を続けながら、フリーライターとして活動中。ちなみにまだ肉眼でマッターホルンを見たことがない。

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