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【2023年版】今シーズンおすすめの日帰り・小屋泊登山向けバックパックと、失敗しないバックパックの選び方

登山やハイキングとは、行動(=生活)に必要なすべての道具・食料を自分で持ち運びながら目的地へと向かうアクティビティです。その意味では荷物を持ち運ぶためのバックパックが最重要アイテムのひとつであることは言うまでもありません。より高く、より困難な挑戦を求めていった登山の歴史とともに、バックパックは過酷な環境で多くの荷物を安全・快適に持ち運ぶための技術と工夫を長年にわたって積み重ねていきました。

こうした進化を続けてきたバックパックは、現在では容量・サイズ・機能(目的)などによって数え切れない程多くのモデルが存在しています。その複雑さに加え、実際に背負ってみないと本当の実力が分かりづらいという点も、バックパック選びを難しくしています。せっかく選んだザックが実際に使ってみたらそうでもなかった、そればかりか変な痛みすらでてしまったなんてときの残念さといったら!

そこで今回は、ハイキングや登山に最適なバックパックのなかでも特にはじめての人におすすめの中型サイズ(30~49リットル)について、目的やこだわりに合わせて厳選し、今シーズンのベスト・モデルを選んでみました。

後半では皆さんが自分に最適な登山用バックパックを選ぶために知っておくと役に立つポイントについてもまとめています。お店の壁に鈴なりに並んだバックパックの中から、名前に惑わされずあなたにピッタリの1点を見つける手助けになれば幸いです。

【部門別】今シーズンのベスト・週末登山向け(30~49リットル)バックパック

ベスト・バランス(ビギナーにおすすめ)部門:GREGORY ズール35/MILLET サースフェー NX 30+5/Osprey ケストレル38

季節やアクティビティ、こだわりに合わせて多様な種類のバックパックが存在するなかでも、最も汎用性が高く、万人向けのモデルとして今シーズン特におすすめのモデルがこの4点。背負い心地から軽さ、丈夫さ、使いやすさなど、全般において欠点が少なく高いレベルでバランスのとれている点が何よりも魅力です。キャンプやハイキングをはじめ沢登りやバリエーションルートなど、登山全般で、初心者から健脚までおすすめできます。いずれもやはり老舗のバックパック専門メーカーの定番モデルだけあって、どれも長年積み重ねてきた実績と経験による完成度の高さは初心者でも安心。それでいてたとえば「背負い心地の快適さのグレゴリー」「快適・安定・強さのミレー」「使いやすさと実用性のオスプレー」といった具合にそれぞれが理想とするバックパック像が微妙に異なるところがオモシロい。

GREGORY ズール35

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お気に入りポイント

MILLET サースフェー NX 30+5

お気に入りポイント

Osprey ケストレル38

お気に入りポイント

ベスト・軽量バックパック部門:MAMMUT Ducan 30/macpac ヘスパー 40

全体的なバランスと基本機能を一通り備え最低限の使い心地の良さは保ちつつも、可能な限りの軽さを実現するという難しい課題にチャレンジしたバックパックの中でも今シーズンおすすめの注目モデルをピックアップ。今回選出した2モデルはどちらも平均的なバックパックの重さに比べて500mlペットボトル1本分以上軽い。もちろん、もっともっと軽いウルトラライト系のハイキングバックパックもあるのは確かですが、それらは往々にして高価であったり、何らかの利便性や快適性が削れられていたり、入手しにくかったりするので、ビギナーにとってはやや敷居が高いことは否めません。その意味でこの2モデルは軽いにも関わらず、重荷でもしっかりと安定した背負い心地と快適さを提供する金属製の背面通気型フレームを採用して背負い心地に関しても妥協していません。機能も決して豊富ではないにしても、理不尽な程の削られ方はしていないため、初めての人が使ったとしても不便さを感じるようなこともないでしょう。

MAMMUT Ducan 30

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お気に入りポイント

macpac ヘスパー 40

お気に入りポイント

ベスト・コストパフォーマンス部門:MILLET ウェルキン30/VAUDE Brenta 30

一通りの基本機能はもちろん、十分快適な背負い心地も備えながら、手に取りやすい価格を実現したコストパフォーマンスに優れたモデルの中でも、特に満足度の高いモデルがこちら。どちらもハイエンドモデルと比較しても引けをとらない、決して侮れない実力を備えています。

MILLET ウェルキン30

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お気に入りポイント

VAUDE Brenta 30

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お気に入りポイント

ベスト・背面ベンチレーションパック部門:Osprey ストラトス36/Thule Topio 30

背中とバックパックの間に空気が通る空間を作り、背中の汗の不快感を軽減する構造のバックパックは「ベンチレーションパック」とか「テンションメッシュ・バックパック」などと呼ばれ、バックパック専門メーカーのDeuterが開発し2000年代から急速に普及していったモデルです。はじめてこれを背負ったときの、まるで背中に扇風機が付いているかのような驚きの涼感は今でも忘れられません。今では大きめのメーカーならばもれなくこのタイプのバックパックをラインナップするまでになりました。

しかし時がたつに連れ、えぐれた背面による通気性の高さは重心の不安定さやパッキングのしにくさといった短所とも表裏一体であることがいわれるようになり、流石に一時のブームは落ち着いた感があります。ただそれでも、うだるような蒸し暑い夏の日本では特に人気もまだまだ健在。数あるバックパックの中でも一大カテゴリーといえるほどの大きな存在感を示していることは間違いありません。現在の最先端はこの背面の高通気性は前提として、いかに短所を克服し、またさらなる軽量化・快適化などの付加価値をつけていけるかといった新たな競争の局面に進んでいるといえます。

今シーズン、そんな背面ベンチレーションパックのなかから厳選したベスト・モデルは2点。オスプレー ストラトス36は背面の快適さと完成度の高さという点でここ最近では特に頭一つ抜き出た存在といえます。また革新性と王道的な作りの良さがミックスされた高品質なものづくりで個人的におすすめなのがThuleから昨年登場したTopio 30(40Lもあり)も捨てがたい。期待通りデザイン・快適性・使い勝手とスキがない完成度の高さにまたも感服でした。

Osprey ストラトス36

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Thule Topio 30

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お気に入りポイント

ベスト・タフネス&コンフォート部門:deuter エアコンタクトライト40+10

お気に入りポイント

近年の新作バックパックは間違いなく「丈夫さ」よりも「軽さ」、「重荷に対する快適さ」よりも「軽い荷物のときの軽快さ」に重点をおいたモデルが主流です。ただ現実でもそんなに皆が皆、軽い荷物で軽快な登山をしているかというと、実際のところそうでもない場合が少なくありません。荷物はやはりいつだって大きくて重いし、広々としたトレイルばかりではなく険しい道をくぐり抜けなければならない場面もなくはないわけで、そんなとき、薄くて軽いバックパックであったことを後悔することがないようにしたいものです。

そんな「軽快に歩くことより、しんどい歩きをしたくない」という守り重視の志向をもつ人に最適な、伝統的な堅牢性と重い荷物でもしっかりと安定・快適さを保つ、バックパック本来の目的をきっちりと果たしてくれる(別の意味で初心者向けの)今シーズンベスト・モデルがこちら。

質実剛健さで定評のあるドイツの老舗バックパック専門ブランド、deuterの縦走用バックパックの軽量モデルです。しっかりとした安定感と背負心地ながら、その中でも軽量・コンパクトな部類だから過度に重すぎるといったこともなく、贅沢なクッション性による極上の快適さと先端のスマートな機能性の高さを備えた秀作です。

ベスト・収納・パッキング部門:MYSTERYRANCH ブリッジャー 45

お気に入りポイント

長い日帰りや1泊を超える山行になってくれば、荷物の出し入れは頻繁になり、パッキングのしやすさに対するニーズも高まってきます。そんな収納部分も含めた実用性の高さでおすすめなのが、スマートかつ独創的なアイデアで異次元の使いやすさを実現するMYSTERYRANCH ブリッジャー 45です。このブランドではおなじみのアイテムの出し入れがしやすいメイン収納のジッパー構造に加え、ランニング用のベスト型パック由来の幅広ショルダーハーネスなど、さらに収納性を高める工夫が盛りだくさんです。快適かつフィット感の高い独自の背面パネルや耐久性のある生地など、全体的な作りの良さ、品質の高さも実感してもらえるでしょう。

登山向けバックパックの選び方:登山・ハイキング向けバックパックを賢く選ぶ7つのポイント

ポイント1:自分の身体にフィットするサイズを選ぶ

100年以上の歴史を誇るドイツのパックメーカー、ドイター(deuter)のスポークスマンは

まずは一番フィットするパックを見つけること。サイズとアクティビティはその後に選ぶ。

と語っています。こうした発言を例にとるまでもなく、自分にとって最適なバックパック選ぶ時に絶対に忘れてはいけないことは、何よりも自分の身体にフィットしているかどうかです。

重い荷物を背負って1~2歩歩くだけならばいいのですが、長時間歩くことは人の身体に想像以上のダメージを与えます。もし仮に身体に合っていないバックパックを背負ってしまっていると、30分、1時間と歩き続けたときに肩や腰、下半身などに必要以上の疲れや痛みが現れてきてしまいます。このため、特にまだ重い荷物を背負ったことのないビギナーにとっては、身体に合ったサイズの快適なザックを選ぶということが最も大切になってきます。

バックパックが自分の身体に合っているかどうかは、多くのザックを背負ったことがある人ならばある程度サイズ表から予測がつく場合もありますが、確実性をとるならばやはりお店で実際に背負ってみるしかありません。その際はできる限り中に重りを入れるなどして本番に近い状態で、またフィッティング方法に自身のない人はお店の人に合わせてもらいましょう。

その上で、どこかどう合っていればフィットしているといえるのか、以下のポイントをチェックします。

背面長(トルソー)の長さが合っているか?

最適なバックパックのサイズを合わせる第一歩は背面長(トルソー)を合わせることが基本中の基本です。背面長とは第七頸椎(俯いたときに首の裏に突起した大きな部分)から垂直に下りた腰骨の末端までの長さ。中型以上のザックでは同じ容量のパックでもS/M/Lなど異なる背面長のモデルがあるものや、背面長が調整可能なモデルがほとんどなので、購入前には必ず自分の背面長に合わせてフィット感を確認することが重要です。

ショルダーハーネスの幅、長さは合っているか?

肩口から脇下に回っているショルダーハーネスは、自分の肩幅に合わせた方向に延びていることが理想です。まれに広すぎたり狭すぎたりして、肩の変な部分に当たってしまうことがあります。そうしたことがないかどうか、背負ったときにしっかりと肩に乗っているかどうかを確認します。またショルダーハーネスの長さも、長すぎたり短すぎたりすれば、適正なフィットができなかったりパッド部分が邪魔になったり足りなかったりといった不都合が起こりますので、自分の体型に合った長さになっているかチェックしましょう。

ヒップベルト(ウェストハーネス)は合っているか?

多くの登山用のバックパックには、超軽量モデルでないかぎり、腰回りを覆うようにヒップベルトが付いています。これは荷重をしっかり腰に乗せるための重要な部分で、万が一短すぎてパッドが腰骨をカバーしきれない、長すぎて締めても緩い、などの問題がある場合にはそのパックはフィットしていませんので注意しましょう。また正しく締めたとしても、薄い・細い・固いなど、お店で試した時点で既にフィット感・快適さに不安がある場合も要注意。その不快感は歩き始めるとより強く感じるはずです。

女性ならば、女流向けモデルも試してみよう

最近のバックパックでは、機能はほぼ同じながら女性にとってよりフィットするように設計された女性向けモデルがラインナップされていることが多くなってきました。これらのモデルは男性用パックに比べて背面長が短く肩幅も狭かったり、より湾曲したショルダーストラップや短いヒップベルトなど、女性の体型によりフィットしやすくなっています。すべての女性がこのタイプでなければいけないほどの違いはありませんが、男女両方用意されている製品については、女性はこちらのバージョンから試してみることをおすすめします。

ポイント2:目的に合わせたバックパックの構造・タイプを選ぶ

アクティビティ・スタイルによる分類

実際には登山用バックパックのなかにも細かいアクティビティに応じていくつもの種類があり、目的が絞られていればそれに特化したモデルを選ぶのが最適なパックを選ぶ近道です。

それぞれ何が違ってどんな特徴があるのか、以下の表にまとめてみました。ただ、はじめてのパックを選ぶというケースに限っていえば、縦走用(オールマイティ)のパックから選ぶのがほぼ間違いない選択となるはずです。

タイプ ハイキング・縦走向け アルパインクライミング向け ウルトラライト・ハイキング向け トレイルランニング向け バックカントリースキー・スノーボード向け
イメージ
用途・特徴
  • 基本的に重い荷物を背負って登山道やトレイルを長距離歩くこと(縦走)を想定したモデル。
  • 初心者に最適。
  • パック内部にフレーム(あるいはパネル)が入っており、その他ハーネスやストラップを調整可能。
  • 寝袋やテントなど特定のアイテムのための2気室(セパレート)構造のモデルがある。
  • 岩稜、雪稜登攀(一部沢登り)等に最適化されたモデル。
  • アプローチ時よりも登攀時に役に立つ機能に特化している。
  • 容量は25~55L程度で1サイズが一般的。
  • 長距離トレイルをなるべく軽量でシンプルな装備で行動するこをと志向したモデル。
  • 経験豊かなウルトラライトハイカーに最適。
  • サイズは大きくても65L程度で、40L前後が一般的。
  • トレイルを走ること前提で設計されたモデル。
  • 主に数時間~日帰りを前提に作られている。
  • サイズは大きくても数リットル~十数リットル。
  • 荷重を腰で受けるのではなく胸部を前後で挟んで受け止めるベスト型構造。
  • バックカントリースキー(スノーボード)で利用するために最適化されたモデル。
  • バックカントリー、スノーハイク冬山縦走などに最適。
  • 日帰り用の20Lから1泊40L前後までのサイズが一般的。
強み
  • 一般的に重い荷物を最も快適に背負うことができる。
  • ポケットやアタッチメントが他のパックに比べて多めに付いており、出し入れが容易。
  • ほとんどのパックでハイドレーションシステムを効率的に収納・設置できるようにできている。ウォーターボトル用のサイドポケットなど給水方法も好みに合わせて配置できる。
  • 日帰り~長期縦走までさまざまなサイズ(容量)バリエーションがある。
  • アイスアックスやピッケル、クランポン(アイゼン)・ロープの便利なアタッチメントがある。
  • 摩耗に強い生地素材
  • 天蓋やヒップベルト、バックパネルなどを好みに応じて取り外せる機能を持っているモデルがある。
  • 天蓋を含めて余計な部品が一切無く、とにかく軽量。
  • ほとんどのパックでハイドレーションシステムを効率的に収納できる
  • 一般的には軽くても耐久性の確保された生地を使用している(ただしその分高価になりがち)
  • 軽量
  • 背面フレームなどはなく、上半身にフィットし腕の振りなどによる動きにも柔軟に対応する
  • 通気性と速乾性に優れ、大量の汗をかいてもより快適
  • ハイドレーションシステムを効率的に収納できる
  • ショルダーストラップ周りにフラスコや行動食など細かいものを収納するポケットがたくさんついている
  • スコップ、プローブ、スキー(スノーボード)、ヘルメットを効率的に収納できる構造になっている。
  • 最近ではアバランチ(雪崩用)エアバッグシステムを設置されたモデルも。
弱み
  • 比較的重く、かさばる。
  • 登攀をはじめとしテクニカルな動き(手足を大きく動かしたり、ヘルメットを被って顔を上げたり)がしにくい。
  • 登攀時の性能を優先し、縦走時の快適さを犠牲にしている。
  • ポケットや中身へのアクセスしやすさなどの便利な機能も省略している場合が多い。
  • 極量重量を削っていることを前提としているため、かなり軽量な荷物でないと快適な背負い心地は期待できない。
  • アタッチメントやポケットがほとんど無いため、計算されたパッキングとそのスキルが必要。
  • 大きな荷物を背負うようにできていない
  • 生地素材も極限まで薄いため、摩耗耐久性も弱い。
  • ランニング以外のアクティビティで利用するには不便な点が多い
  • スキーしなければ使わないアタッチメントがある。
  • 冬以外で使用するには余分な機能があるため、アイテムによっては他の用途と重複して使いづらいモデルがある。

背面フレームの有無による分類

登山向けバックパックのほとんどには、大きくて重たい荷物でも快適に持ち運べるように、背面部分全体に硬質のフレームが内蔵されています。主にアルミステーやシート状のプラスチックなどで構成され、このフレームが支柱となることで荷重を的確に腰部分に伝えるとともに、バックパックが背中の形状に合わせてしっくりとフィットすることをサポートします。

一方、超軽量ハイキングを志向する人向けに作られた、フレームが内蔵されていないバックパックというのも存在します。パック自体の重量は大幅に軽くなりますが、逆に重荷を腰で支えることが難しくなります。このため荷物を軽くすることができていなかったり、重荷を背負い慣れていない人にとってはフィットしにくく、軽量化への明確な目的意識を持っていない限りはこの背面フレームがないモデルはおすすめしません。

背面パネルの通気性による分類

バックパックを背負って山道を何時間も歩けば、背中が汗でじっとりと濡れることはほぼ避けようがありません。とはいえ、不快な汗とオーバーヒートを少しでも防ぐことができれば、より旅は楽しく快適になるはずです。

そこで考え出されたのが、背面に大幅な通気性を確保したバックパックです。「ベンチレーションパック」や「テンションメッシュバックパック」とも呼ばれ、背面フレームがトランポリンのように背中から数センチ離れているデザインで、背中が柔軟で通気性の高いメッシュ生地に接するように作られています。

これによって背中は常に風が通っているため、通気性は抜群。行動中どんなにたくさん汗をかいていても不快感はなく、汗も気がつけばいつの間にか乾いてくれますので、春夏の暖かい時期のハイキングにはこれ以上なくおすすめといえます。

ただこのテンションメッシュフレームの弱点として、背中がくぼんでいる分メイン収納の容量が減少しパッキングもしにくくなるということ、また背中に空間ができることで重心が後ろにもっていかれがち(重い荷物の場合振られやすい)という2点がよく言われます。また個人的には寒い冬場は背中を通る風によって少し寒さが感じやすい気がします。その意味でこのフレームのバックパックは完璧ではなく、寒すぎない時期の荷物の多すぎない旅に使うのが理想です。

最近では、テンションメッシュにしなくても背面の通気性・速乾性をかなりの程度実現したモデルが開発されてきています。それらは各メーカー細かい点でやり方は異なりますが、大まかなアプローチは同じ。背面に空気の通り道を確保した凹凸形状のフォームや、弾力性と通気性を兼ね備えたパッドとメッシュ生地を組み合わせた背面パネルによって、背中とバックパックとの距離を遠ざけることなく通気性を上げることができます。これならば背面の快適性はそこそこありながら、重心の安定感やパッキング性能を損なうこともありません。

通気性と重心の安定性。春夏の軽い登山しかしないならば通気性をとっても構いませんが、年間通しての汎用性を重視するならばテンションメッシュはおすすめではありません。自分はどちらか(どちらが好みか)を考えながら選んでいきましょう。

収納部の入り口タイプによる分類

トップローダー式

30L以上の中型登山向けバックパックになると、多くは「トップローダー」式と呼ばれる開口部の構造をしています。トップローダー式のバックパックは基本的にメイン収納の入口の上に固定式の雨蓋(天蓋やトップリッドとも呼ぶ)を被せるような構造のことを言います。この構造は雨などを防ぎやすいだけでなく、上から荷物を圧縮しやすいので、登山のように大きな荷物を運ぶのには適した作りと言えます。また一般的に雨蓋には小物が入るポケットが付いており、すぐに取り出したい小物を収納するのに非常に便利です。

シッパー式(パネルローダー式)

ただ、30L前後の小さめモデルには、トップローダー式の他にジッパー式(またはパネルローダー式)の開口部も存在しています。こちらは見た目通りメイン収納にジッパーから簡単にアクセスできる利点があります。なかにはU字型に大きく開くモデルなどもあり、旅行用のスーツケースのように荷物の出し入れがしやすく便利です。軽いハイキングや旅行に向いています。

ロールトップ式

開口部をクルクルと丸め、両端バックルで留める「ロールトップ式」は、軽量性、容量の拡張性、荷物の出し入れしやすさ、水の浸入も防ぐといった利点から、主に軽量バックパックではおなじみのデザインとなりつつあります。ただし慣れるまでは操作が煩雑なことや、雨蓋ポケットが使えないといった利便性の観点からは入門用バックパックにはあまり見られません。

トップローダー・ジッパー式・ロールトップ式それぞれに一長一短はありますが、登山向けバックパックをはじめて購入するような慣れていない人で特にこだわりがなければ、まずは汎用性の高いトップローダーモデルを選ぶことをおすすめします。

ポイント3:適切な容量を選ぶ

極論を言えば、大きなバックパックさえ持っていれば、どんなに長さの旅でも対応することができます(貧乏学生時代には70リットルのザック1つを日帰りから2週間まで使ってましたし…)。とはいえ、小さすぎるバックパックでは長い旅の荷物は入らないし、あまりにも大きすぎるパックでは荷物が中で動いて振られたりして危険だし、無駄な重さによる疲労もバカになりませんから、適正サイズのバックパックを選ぶことが望ましいのは言うまでもありません。

アクティビティや個人の趣向によって多少の違いはあるものの、多くのガイドや個人的な経験などから、適正なバックパックの容量は以下のように考えるのがよいでしょう。

はじめて登山を始める人は、最初はもちろん日帰りでしか使用しないと思いますが、長くやってステップアップを考えているならば、はじめから35Lくらいのバックパックを選んでもよいと思います。このサイズは夏の日帰りにはやや大きいかもしれませんが、冬であれば荷物の量も増えるので決して大きすぎるというほどでもありません。何よりこのサイズならばギリギリテント泊も可能。また冬山・クライミング・沢登り・スキーなど用途も幅広く使えて汎用性も高いため、なるべく1つで済ませたいという場合にはこの辺のサイズがおすすめです。

ポイント4:耐久性・快適性とのバランスがとれた重量を選ぶ

バックパックは決して小さな道具ではないので、重量は山装備全体から見てもインパクトの大きな要素です。

一般的に重いバックパックは太いフレームや厚手のパッド、丈夫な生地などが使われており、より重い荷物を背負ったときでも安全・快適であるように作られています。昔に比べて飛躍的に道具が軽量化された現在ならば、昔ながらの作りがややオーバースペック気味になるということは確かです。ただそうはいっても、それは山慣れた人にとってであって、初めての人や鍛えられていない人にとってもそうだとは限りません。

山を始めたばかりの時には分かり易い魅力である「軽さ」にどうしても目を惹かれがちですが、特にタフでもない自分が、20年の登山経験から言えることは「(歩き慣れていない人ほど)軽量化を理由に、パッドや背面フレームをケチってはいけません」ということです。ベテランのウルトラライトハイカーたちによれば、バックパックの軽量化はそれ以外の道具でやりつくした後、最後に着手する領域といわれています。自分もその通りだと思うし、たった500グラムを節約によって旅の大部分での快適さを棒に振ることはしないようにしましょう。

参考までに目安として一例をあげると、35~40リットルのバックパックならば1,500グラム前後が標準、1,000グラム前後であれば軽量でサポート力は低め、1700グラム以上あれば耐久性・サポートの高いザックであるといったんは考えてよいかと思います(30リットルであればそこから200グラムくらいずつ低めに見る)。

ポイント5:ちょうどいいクッション・サポートを選ぶ

荷重を支える背面パネル全体のなかでも、特にショルダーストラップ(ショルダーハーネス)とヒップベルト(ウェストハーネス)のパッドの厚みと質は、快適な背負い心地を構成するための重要な要素です。

正しくフィットしたバックパックの場合、およそ80%の重量が腰にかかり、ショルダーストラップや背中部分には残りの小さな荷重が全体にまんべんなくかかっていることが理想です。バックパックを背負ってみて、これらのパッドのバランスがとれているか(必要以上に少なく・多くはないか)、当たり具合に違和感や擦れる箇所がないか、よく注意してみてください。

中型以上のバックパックのハーネス部分には、荷重の衝撃と負荷を吸収するために弾力性のあるフォームが使用されています。ソフトで圧縮性の高いフォームは肌への当たりが心地よく快適ですが、過度に柔らかすぎるパッドは、重い荷物を背負ったときにしっかりとその大きな荷重を支えてはくれません。背負って最初のうちは気持ちいいかもしれませんが、長く重い荷物を運んでいるうちにダメージがたまってきてしまいます。もちろん少なすぎ(硬すぎ)てもよくありませんが、クッション性とサポート性のバランス、そして自分の好みを考慮しながら選んでみてください。

また上でも少し書きましたが、このパッド部分は汗のたまりやすい部分でもあるため、クッション性・サポート性だけでなく、通気速乾性も重要です。メッシュや軽量フォームを使用するなどして暑い気候も配慮されていることが優れたバックパックのポイントです。

ポイント6:パッキングのしやすい収納を選ぶ

「荷物の出し入れがしにくい」「荷物の整理がしにくい」「荷物が隙間なく収まりにくい」などのバックパックは、登山前日の夜にイライラさせるだけならばまだしも、荷物の出し入れが頻繁な泊りの登山などではいっそう耐え難い問題になってきます。当然のことながらパッキングのしやすさは登山用のバックパックにとっても大切なポイントです。

メイン収納のクリアランスと外からのアクセスしやすさ

バックパックのうち最も多くの荷物が収納されている大きな収納部分をメイン収納(メインコンパートメント)といい、ここには大きさや形、柔らかさの異なるさまざまな荷物を出し入れします。

このメイン収納の形がシンプルな円筒型であればそうしたさまざまな道具も隙間なく埋めやすいのですが、多少湾曲していたりすると空間ができやすく、きれいなパッキングにとってはマイナスです。

また出し入れに関しても、一般的なトップローダー式のバックパックでは上部の大きな開口部から中のアイテムにアクセスするようになっており、中の道具を取り出すのは以外と面倒です。万が一バックパックをスマートにパッキングしていないと、パックの底から何とか荷物を引っ張り出すといった厄介な作業が必要になってしまいます。そんなときに内部へのアクセスを簡単にしてくれるのがサイドやフロント、ボトム部分に取り付けられたダイレクトアクセスジッパーです。これがあるとないとでは取り出しやすさが段違いに違いますので、パックの容量が大きければ大きいほど必ずチェックしておきたい項目です。

各所に配置されたポケットの使いやすさ

メイン収納とは別にバックパック外側にも登山での使い勝手を考えたポケットやアタッチメント類が数多く取り付けられています。すぐに取り出したい道具など(行動食や手ぬぐい、ボトル、手袋、日焼け止めなど)は、各所に取り付けられたこれらのポケットに収納できると便利です。それらはあればあった方が便利なことは間違いないのでたくさんあるのが好きな人もいれば、余計な重量を増やしたくない人は必要最低限のポケットで済ませたいという人もいるでしょう。いずれにせよ、自分が使わないポケットは不要であること、それぞれの収納はサイズと使い勝手が自分の使い方にしっくりとくるものかどうかということを念頭に吟味する必要があります。

雨蓋(トップリッド)ポケット

雨蓋についているポケットは一般的に行動中すぐに取り出したい小物を入れるために設計されています。例えば行動食、日焼け止めクリーム、地図、ヘッドランプ、手袋など。大きすぎても不格好ですが、小さすぎても使いづらく、また1つよりも2つに分かれている方が整理もしやすいです。なるべく大きく、入り口のジッパーも広いもの、整理がしやすいものが使いやすいです。

サイドポケット

外側側面についているのがサイドポケット。このポケットはマチがついていたり伸縮性のある生地で作られており、細長いアイテム、例えばポールやウォーターボトル、サンダルなどを入れておくのに便利です。なるべく大きく、深い方が物は入れやすいのですが、マチ部分がダブつきすぎているものは枝などに引っ掛かりやすいし個人的に見た目も好みではありません。モデルによっては特にボトルを入れることを考えて歩きながら取り出してすぐに水分補給ができるような気の利いた作りになっているものもあるので、要チェックです。

フロントポケット

すべてのバックパックというわけではありませんが、パックの正面に大きなフロントポケットが付いているモデルは最近の流行りのひとつでもあります。比較的大きいので、防風・防寒ジャケットや帽子などをはじめ色々と入れられる、使い勝手の良い良いポケットといえます。メッシュ地は便利で使いやすいのですが、地面と擦れて破れやすい位置にもあるため生地の丈夫さには注意しましょう。

ヒップベルトポケット

ヒップベルトの位置にある小さなポケットは、バックパックを脱いだり、立ち止まったりすることなく出し入れできる場所とあって飴や羊羹、スマートフォン、リップクリームなど特にすぐ取り出す可能性が高いアイテムを入れておくのに最適です。ただ経験上、往々にして小さすぎるため実際にはそこまで便利に使いこなせたことがありません(ミレーのサースフェーに付いている折りたたみ式ヒップベルトだけは使い勝手抜群でした)。

ショルダーハーネスポケット

同じようにザックを下ろさずに出し入れができるということで便利なのが、ショルダーハーネスに取り付けられたポケットです。これも主に行動中に簡単にアクセスできて便利なもの、例えばカメラやスマートフォンなどを入れるのに使います。このポケットは必要性の観点からまだ標準で取り付けられているモデルはそれほど多くなく、付いていても自分の期待通りのサイズでない場合がよくあります。自分の場合はスマホをこの部分に収納することが好きなので、こうした場合に対応するためいろいろなメーカーから出ているサードパーティ製のポーチを使っています。

アタッチメントやストラップ

トレッキングポールやピッケルはパックの中には仕舞えませんので、これらはパックの外側にある「アイスアックス・トレッキングポールアタッチメント」を使います(これが付いてないというバックパックはまず無いはずです)。

パックの外側に縫い付けられた「デイジーチェーン」はそこにカラビナやストラップを自分で取り付けることで、ヘルメットやクランポンなど、メインバッグに入りきらなかったものを取り付けることができます。

サイドに1つ以上取り付けられた「サイドコンプレッションストラップ」は、パック全体を締め付けて中の荷物を圧縮し重心安定性を高めたり、長いもの(テントのポールなど)をサイドポケットに収納した際に固定するのにも便利です。

さらに外側の底部に「ボトムストラップ」が取り付けられていると、ここにクローズドセルフォームのスリーピングパッドを取り付けることができます。ちなみにマットレスはここがなかったとしても他にサイドや雨蓋に挟むこともできます。

ポイント7:その他あるとうれしいパーツや機能

レインカバー

万が一山の中で雨に降られた場合、バックパックが雨ざらしでは中のギアが濡れて使い物にならなくなってしまいますので、パックのレインカバーは必需品。そのカバーが標準装備されているモデルは機能的にも価格的にも間違いなくお得ですので、確認しておきましょう。ただしこのレインカバー、装着したとしても肩の裏側まではノーガード。そこからはどうしてもパック内部に水は浸入してきますので過信は禁物です(パック内部でも濡れたらまずいギアの防水を忘れずに)。

高撥水(耐水)生地

登山向けバックパックの多くは生地自体にDWR(耐久撥水)加工が施されているため、ある程度の水滴をはじくようにできていますが、強い雨や長時間の雨にはレインカバーがなければ耐えきれません。とはいえこの撥水性能もメーカーや生地によって良し悪しがあり、より撥水性能の強固なモデルはレインカバーを必要としないくらいしっかりと浸水を防いでくれるものもあります(例えばダイニーマコンポジットファブリックは高価ですが、軽量なのに強度と耐水性に優れた生地として人気があります)。

なお、どんなに耐水性が高かったとしても本当に濡らしてはいけないものは防水スタッフサックやドライバッグに入れて、浸水からきちんと保護しておくことは忘れないようにしましょう。

ハイドレーションポケット・アタッチメント

行動中に水分補給できるハイドレーションシステムが好きな人にとっては、パック内にハイドレーションを収納できる内ポケットやチューブを外に通すためのホールがあるとないとではそのパックの使い勝手が大きく変わってくるでしょう。その上、口元にチューブを固定するためのチューブアタッチメントなどが付いているとさらにハイドレーション利用が捗ります。

トレッキングポールアタッチメントループ

歩いていて不意に現れる岩場など、両手を使って登りたくなる場所が出てきたとき、持っていたトレッキングポールを(ザックを脱ぐことなく)脇差のように固定できる「トレッキングポールアタッチメントループ」は一部のバックパックには採用されており、何かと便利です。

まとめ

バックパックはやはりアウトドア道具の花形。今シーズンもまた新たな進化を見せてくれたモデルがたくさん生まれ、ギア好きとしては今後も目が離せません。

今回紹介したモデルはどれも自信をもっておすすめできるものばかりですが、やはり自分にしっくりくるかどうかは実際に背負ってみなければ分からないもの。購入に際してはぜひとも実際にお店でフィッティングして、疑問点はなんでもお店にぶつけて相談してみるなど、納得いくまで検討してみてください。

最後に、バックパックのフィッティング方法の基本4ステップを紹介してお別れします。では今シーズンも素敵な山旅を。

1.骨盤左右の上の方の出っ張りにヒップベルトの中心(大体へこんでいます)を当ててベルトを締めて固定します。

→この時、荷重のほとんどがしっかりと腰に乗っていることを確認してください。

2.ショルダーハーネス(ストラップ)を締めます。

→ショルダーハーネスがしっかりと肩に吸い付き、ハーネスの付け根が肩甲骨の上端辺りに来るように背面長を調整してください。

3.チェストストラップを締めます。

→高さは脇の下の延長線上に来る高さです。

4.トップスタビライザーを締めてパックを身体に近づけて終了です。

→パック上部とショルダーストラップをつないでいるテープです。締め付けすぎるとショルダーストラップが引きあがってズレるので注意してください。

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