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【忖度なしの自腹レビュー】MILLET サースフェー NX 40+5 どんなアクティビティも、どんな季節も頼りになる盤石のオールラウンドバックパック

週末に登山道を歩いていてこのバックパックとすれ違わない日はない──。MILLET(ミレー)のサースフェー バックパックといえば、それくらい日本で最も多くの愛用者を抱えるメジャーなバックパックのひとつといえるのではないでしょうか。

ブランドの看板といえるような定番アイテムは歴史のあるブランドであればたいてい一つや二つあるものですが、この長きにわたって日本の登山文化を支えてきたフランス生まれの総合登山ブランドにとっては、このサースフェーが間違いなく現在のそれにあたります。

そんなブランドの「顔」であるサースフェーがついに今シーズン重い腰を上げて大幅にアップデートしました。そこで今回は大きな進化を遂げたこの注目モデルを、メーカーからありがたく自由にレビューOKという条件で提供いただきましたので、1ヵ月のテストの結果を早速レビューしていきます。

MILLET サースフェー NX 40+5の主な特徴

従来のCORDURA®ナイロン素材に独自のシリコン加工を施すことで撥水性能を大幅に向上させた山岳向けバックパック。本体部分について縫製部分を極力減らした筒型形状にすることでより軽量で浸水しにくく、スムーズな荷物の出し入れなどを実現。前モデルまでに培われてきた背面パネルの優れた快適性と安定性や、背負ったままボトルが取り出しやすいサイドアクセスポケット、ウェストの折りたたみ式大型フォールディングポケットなどの使い勝手抜群の収納は今作でも健在。さらにチェストハーネスにはボトルからスマホまで多彩な用途に利用できるメッシュポケットが新たに追加。ビギナーから経験豊かなハイカーまで、温暖な季節から厳冬期まで、ハイキングからアルパインクライミングまで、あらゆる季節とアクティビティで十分なパフォーマンスを発揮してくれる、オールラウンド登山用バッグパック。

お気に入りポイント

  • 重心が腰に乗り安定感抜群で疲れにくい背負い心地
  • クッション性と通気性を両立させた背面・腰・肩パッド
  • スリムで重心が上部に位置しやすい縦長フォルム
  • 容量の拡張性
  • 大型ヒップベルトポケットとメッシュショルダーポケット
  • フロントに回してクランポンやわかん、スノーシュー等を留められるサイドコンプレッションストラップ
  • ザックカバーが不要なほどの雨への強さ
  • 十分な耐久性

気になるポイント

  • (サイズのバリエーションはあるものの)背面長調節ができない
  • メイン収納上部へのアクセスがしずらい(雨蓋を開けずともアクセスできる大きなフロントジッパーがない)
  • サイドアクセスポケットの口が狭すぎてボトルの出し入れがやや難しい
  • 砂埃等の汚れが付着しやすく取れにくい

主なスペックと評価

アイテム名MILLET サースフェー NX 40+5
容量40~45リットル(他に30リットルモデルあり)
重量実測:約1.5kg(Lサイズ)
素材
  • 本体:コーデュラ®オックス 210D ナイロン100%(耐水圧1,500mm以上)
女性向けモデルあり
サイズ/背面長調整不可
ハイドレーションスリーブ
メインアクセストップ・ボトムアクセスジッパー
レインカバー
ポケット・アタッチメント
  • 2気室構造
  • 雨蓋に2つのジッパーフラップポケット
  • 本体の左脇にサイドジッパーポケット
  • 背負ったままボトルの出し入れが可能なサイドアクセスポケット
  • スノーバスケットサイズ等に合わせて調節可能なアイスアックス・トレッキングポールホルダー
  • フロントに回しても留められるサイドコンプレッションストラップ
  • ウエストポケットと拡張式ウエストポケット
  • 左右のショルダーハーネスにメッシュポケット
  • ハンドレスト
  • ボトムコンプレッションストラップ
  • ホイッスル
評価
快適性★★★★☆
安定性★★★★★
収納性★★★★☆
機能性(使いやすさ)★★★☆☆
耐久性★★★★★
重量★★★☆☆

詳細レビュー

素材と外観:新バージョンでは一層上品な佇まいに、さらなる撥水力という頼もしさが追加

外観をみてまず思うのは、今回のアップデートでの大きな目玉であるメイン収納部の「縫製を極力省いた1枚生地の筒型構造」への変更です。シンプルでクリーンな表面はデザイン的に優れているだけでなく、引っ掛かりやほつれなどの消耗リスクも減り、縫い目処理による重量も抑えられる(前モデルに比べて全体重量もやや軽くなっている)、縫い目からの浸水もしにくく、そして内側の面がスムーズになることでパッキング時に煩わしさも軽減されたりと、メリットだらけ。ウルトラライト系のバックパックでもこうした縫い目の少ない寸胴デザインを多く見ることはできますが、従来型バックパックのスタイルでここまで違和感なく仕上げるのは簡単なわけがなく、着眼点も含めてさすがといえる進化です。

他モデルにはない縦長スリムで自立する寸胴シルエットは今回のアップデートでも基本的に踏襲されています(下比較写真)。この縦長形状は荷物を詰めた際に重心が上部にいきやすいという効果があり、おかげで長時間の重荷行動でも負荷を感じることが少なく歩くことができるので、個人的に気に入っている部分です。

また興味深いのは、本体生地に採用されたコーデュラナイロン生地。これまで同様軽さと強度のバランスが絶妙な210D(デニール)のコーデュラナイロンオックスに独自のシリコン加工を施すことで撥水性能が大幅に向上。試しに2度ほど使って水洗いした後に水を吹きかけてみたところ、まだまだ十分に水を弾きまくっていました(下写真)。本格的な雨の場合はさすがに染み込んできますが、ちょっとした通り雨でいちいちレインカバーをつける必要はなさそうです。ちなみにレインカバーはいつも通り付属しており、これだけで雨への対策は万全です。

ただ(使用に問題があるわけではないものの)個人的にやや気になったのは、高密度で特殊加工の施された生地には土埃などの汚れが手で払ったくらいではぬぐえないくらい、これまで以上に付着しやすかったこと。表面が滑らかかつ織の密度が高いからか。使った後は放置するのでなく、しっかりと水で洗い流さないといけませんね(←むしろ正しい使い方)。

背負い心地(快適性):実際のシーンを想定した荷重分散性、汗ぬけとクッション性を両立したパッドによる完成度の高い背面システム

背面パネルに関してはほぼ従来と変わらず(下写真)で快適さと安定感を兼ね備えた安心の背負い心地を実現しています。目立った違いといえば後述するショルダーハーネスのポケットくらいですが、実際にはショルダーハーネスの付け根の角度が新モデルではやや外側に(肩の方向に)調整され、よりなで肩気味の人にもフィットしやすくなっています(自分の体型が痩せ型だからか、ほとんどその違いは感じられませんでしたが)。

「フィルターフォーム」と呼ばれる適度なクッション性と通気・速乾性に優れたパッドや、湿気が抜けるように空間が設けられた中心部分、荷重が肩ではなく腰に乗りやすいように微妙に下向きに角度がつけられたウェストハーネスなど、快適な背負い心地と安定した荷重分散を可能にする完成度の高い仕組みが細部までいきわたっています(下写真)。

実際背負って歩いてみても、背骨にフィットするフレームに硬すぎず柔らかすぎずのクッションは長時間の行動でも快適さを持続し、重心は身体から離れず重みの大部分が腰に乗ってくれるため負担を感じにくくブレにくく、さらに汗ばんでも汗だまり感やべたつき感がしにくく、総合的な意味での背負い心地の良さがはっきりと感じられます。

またサースフェーの良好な背負い心地にとって細かいけど重要なパーツ、パック本体とウェストハーネスを連結しているストラップがさらに改善されているのが個人的には刺さりました。これまではザック本体のウェストハーネス付け根部分から伸びていたストラップが、本体のフロント部分から伸びるようになったことで、パックの重心をより身体に寄せやすくなっています(下写真)。しかもこれはパックを圧縮する役割も担うため、サイドストラップと合わせてこのストラップを締めてパックを圧縮すれば、容量が少なかった場合でも荷物がブレたり荷物に背中を引かれたりすることがない、まさに一石二鳥の仕組みです。

とはいえ気になる(残念な)のは、やはり(主要な競合モデルにはほぼ搭載されている)背面長調節機能がまだないこと。もちろんS/M/Lとサイズ展開はありますが、本当のジャストフィットはやはり自由に細かく調節できること。より納得感のあ的る理想なフィッティングのために、今後のさらなるアップデートが望まれます。

収納性と使いやすさ:基本の収納+個性的な便利収納で幅広いアクティビティにフィット

ポケットやアタッチメント(ストラップやループ)などの収納について、基本的には長年の経験に裏打ちされた、登山用バックパックではおなじみのものが一通り(細やかな使いやすさへの気遣いとともに)過不足なくとり揃っており、登山をはじめて経験する人にとっても迷わないものとなっています。

手袋をしていても簡単・確実な操作が可能なバックルなど、耐久性と実際のフィールドでの使いやすさが考えられたパーツ類

メイン収納へはトップの巾着状の入り口からアクセス可能(下写真)です。新しくなった一枚生地デザインと、両側を開く動作で簡単に緩めることができるドローコードによって非常にスムーズな荷物の出し入れが可能です。またここにはクライミングロープ等を固定できるコンプレッションストラップもあり、幅広いアクティビティに対応できます。

正面ボトムにはシュラフなどの出し入れを想定した伝統的なボトムアクセスジッパーが配置されています(下写真)。ちなみにメイン収納部は2気室になっており、上下に分けて荷造りすることができます。

ただ個人的に欲を言えばメイン収納へのアクセスはトップ・ボトム以外にもあってよい気がしました(50リットル以上のサースフェーには搭載されている)。贅沢といえばそれまでですが、40リットルクラスのバックパックでも最近では雨蓋を開けずに何らかの方法で上方の荷物へアクセスできるモデルは山ほどあり、その方が便利であることは間違いありません。

サイドにはコンプレッションストラップと浅・深型のマチ付きストレッチポケットが配置(下写真)。サイドストラップは比較的長いためここにクローズドセルマットを括り付けることもできてしまいます。

他にもボトムストラップやフロント(サイドストラップをフロントに回して留める)、トップ(雨蓋に挟む)と、大きな荷物もさまざまな方法でパッキングすることができるのは非常にありがたい(下写真)。特にフロントに回せる仕様のサイドストラップは、積雪期にスノーシューやわかんなど、かさ張る荷物を括り付けるのにもってこいです。

深型のマチ付きストレッチポケットには1Lのナルゲンボトルなら縦に、500mlのボトルなら横向きに収納・出し入れできるようになっており、入り口が縦横についています(下写真)。これによって立ったままザックを下ろさずともボトルを出し入れできる(前モデルからあった)便利な仕組み、なのですが、新モデルでは残念ながら出入口が前モデルよりも狭くなっており、出し入れには(できないわけではないのですが)結構手間がかかってしまいました。理想としてはやはり細身の500mlだけでなく、幅広い大きさのボトルが安全に出し入れできる仕様であって欲しいところです。

ポールやアックス用のループはフロントに2つ配置され、使い勝手は問題なし(下写真)。

トップリッド(雨蓋)ポケットは上下に2つ(下写真)。薄いものと厚みのあるもので整理して収納でき、ここにレインカバーも収納されています。

大好きなウェストハーネスの折りたたみ式大型ポケットは健在(下写真)。500mlのボトルも入ってしまうほどの大容量が、行動中のストレスを軽減してくれます。

さらに、今回新しく(ついに)設置されたショルダーハーネスのメッシュストレッチポケット(下写真)。ボトル、ソフトフラスク、大き目のスマホもキチンと入る十分な容量で安心しました。

ハイドレーションは内部のスリーブに入れて固定でき、チューブを通す孔の位置も中央で出しやすい位置にあるのでストレスなくセッティングできました(下写真)。

まとめ:トップクラスの快適さとタフな山行に対応する機能性が融合した盤石のオールラウンドバックパック

定番アイテムはその愛用者の多さゆえに思い切ったリニューアルが往々にして難しいものです。従来モデルの良さを消してしまってはこれまでのファンが去っていくし、新しい魅力を付加しないと新しいファンは獲得できない。そんな矛盾を抱えながら新しい一歩を踏み出すのには、注意深い慎重さと勇気ある決断の両方が求められます。今回のアップデートでは基本的な背負い心地の快適さと安定感という魅力はそのままに、さらに撥水力や軽量・高耐久性、ショルダー収納といった実用的機能を相変わらずのユニークなアプローチで加わえたという意味で、ポジティブに評価できるアップデートであったといえるのではないでしょうか。

レビューの通り、サースフェーが他のバックパックに比べて抜きんでているのはいい意味での汎用性の高さ。もちろん汎用性の高さは、下手をすれば「単なる中途半端」ということにもなりかねません。しかしサースフェーに限っていえばまったくそういうことはなく、万人にとってうれしい快適な背負い心地と、老舗登山ブランドとして培われた厳しい環境やハードなアクティビティにも対応する確かな機能が高いレベルで融合した、真の意味での汎用性を体験できる、オールラウンドバックパックといえます。

ただその完成度の高さゆえに、孤高の理想形に向かう一方で(他の最新バックパックで当たり前になりつつある)細かい部分での使いやすいパーツや仕様については少しずつ取り入れてほしい気もします。例えばメイン収納へのダイレクトアクセスであったり、背面長調節機能は、40リットルクラスでもあってよいはず。ただいずれにせよ現時点でも、初心者から健脚まで、春夏秋冬、ハイキングからバリエーション登山まで、これさえ持っていれば1年中あらゆるマウンテン・アクティビティに応えてくれる優秀さを備えていることは間違いありませんので、この新しくなった山岳バックパック日本代表候補に興味があれば、ぜひ試しにお店へ足を運んでみることをおすすめします。